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「あいにく、今日はこのデッキしか持ち合わせていません」

真理はコートのポケットに入っていたデッキケースを出し、中に入っているデッキを指す。
「迎えに来ただけなのに、デッキ持ってるのかよ!」とミキオは内心で突っ込んだ。

「かまわんさ」

そう言って、ハタドーは自分のデッキをシャッフルし始め、真理もそれに習う。
彼女は、カードを10枚並べたところで思い出したように手を止めた。

「なぜ私がプレイヤーだと?」
「心眼は鍛えている」

ハタドーは鼻を鳴らし、手を止めずにそう返す。
真理は返事もせずにカードを1つにまとめ、カットのために差し出す。

「この対戦にどんな意味があるんだよ」という対戦スペース全体の雰囲気を無視するように、相手のデッキをカットする2人。
ミキオたち3人も、観戦するべくテーブルに近寄る。

「少々お待ちください、姫様。10分で済みます」
「フフッ。面白い…いざ、勝負!」


第14(20)話 先駆ける駆者



射勢家と来栖家はナツキの祖父が生きていた頃からの付き合いで、来栖真理もナツキが物心付いたときにはすでに射勢に出入りしていた。
6つも年上のはずの真理が自分に敬語で接するたび、幼いナツキはよく「なんで?」と不思議がった。

ナツキは真理が好きだ。
主従関係などでは言い表せない信頼を感じていたし、曲がったことはしないところが好きなのだ。
それは、彼女が高校を卒業して正式に「使用人」となった今も変わることはない。

「真理が勝つような気がする」

まだ、――真理は赤の、ハタドーは緑の――Gカードが1枚ずつしか並んでいないテーブル上を見ながら、ナツキがそう言った。
その言葉に、隣に並び立っていた2人がすぐに反応する。

「なんで?あの人、初心者だろ?」

そう言って首をかしげるミキオ。
対戦を横取りされたからか、口調は少し不機嫌だ。

「そうなんだけどね。でも、なんかそう思った」
「思い当たることでもあるの?ナッちゃん」

というタンサンの問いに、ナツキは「うん」とうなずく。

「家での対戦は、いつもウチの勝ちだったんだ。もう圧倒的ってくらいね☆」

ナツキに圧倒的に負けるって…とミキオとタンサンは苦笑いで顔を見合わせる。
彼らの視界の端で先攻のハタドーが2枚目のGとして、紫基本Gを出した。
どうやら緑紫デッキらしい。

「でも、真理はウチとの対戦では絶対に使わない”古いスリーブに入った”デッキを持ってる。ホラ、今使ってるやつ」

ナツキはテーブルの上、真理の本国を指差す。
本国として置かれたカードに装着されたスリーブは、お世辞にも新しいとは言えない代物である。
色は深紫で、中央に「GUNDAMWAR」のタイトルロゴが黒文字で入っていた。

「古いスリーブ?」
「うん。で、思ったんだ。ウチと対戦する時はワザと”手加減デッキ”を使ってるって」

ナツキは「きっとそうだ」と何度もうなずいた。
どうやらナツキは、「実は真理は、ウチに教わる前からガンダムウォーをやっていた凄腕のプレイヤーなんだ!」と推理したらしい。
スリーブからとんでもない方向に推理したな…とミキオは少し呆れながらも、場に目を移す。

真理側の配備エリアには、モノクロ絵柄の赤基本が2枚と内部調査がある。
よく見ればGカードは古いフォーマットのもので、エキスパンションマークは”翼のマーク”、内部調査は”Zガンダムの角のマーク”だ。

「…マジか」

ナツキがあげたものではないことは一目瞭然。まさか…。
とミキオは口に手を当てながら考えた。不機嫌だったことも忘れ、ワクワクしはじめていた。

3ターン目、ハタドーは対ガンダム調査隊とACEカード、ユニオンフラッグ&グラハムをプレイし、真理は雲散霧消をヴァリアブルプレイした。
雲散霧消を見て、ナツキは少し目を輝かせる。推理は当たってるじゃん!と。

「私のターン。配備フェイズ、緑基本Gを配備。さらに…」
「はい」

真理はここまでの4ターンそうしてきたように、表情を変えずに許可を出した。

「アヘッド近接戦闘型『サキガケ』をプレイ、戦闘フェイズに入る!」

ハタドーはにやりと宣言し、Gカードを4枚でロールコストを支払いACEに地形適正を得させる。
ユニオンフラッグ&グラハムは格闘と耐久が24弾ACE中一番低いが、その分地形適正を得るロールコストが自軍ターン、敵軍ターン共に4なのだ。

「宇宙にサキガケ、地球にフラッグ&グラハムを出撃させる」
「4と6…10ダメージを受けます」

真理は1枚1枚きちんと枚数を確認させるように、捨て山にカードを送る。

「ターン終了だ」
「ドロー。配備フェイズ、赤基本Gを配備…」

真理は続けてカードをプレイしようと、手札のカードをつかむ。
が、ナツキの視線を思い出したかのように息を呑み、出そうとしたカードを手札に戻す。
数秒の沈黙をはさみ、彼女の口から発せられた言葉は「ターン終了」だった。

姫様に教わる前からガンダムウォーをやっていた事実を、決して秘密にしていたわけではありません。
だからこの対戦も受けたのです。しかし、いざ姫様の前で晒すとなると…。
真理は手札のカードに目線を落としながら、そう思った。

「手を抜くというのか?」

ハタドーの台詞に、真理は顔を上げる。
黒いサングラスの向こうに、鋭い眼光が見えたような気がした。

「それとも、私を侮辱するか!ならば…!」

ハタドーはユニオンフラッグ&グラハムのドロー効果を使い、規定のドローと合わせて手札を5枚まで増やす。
配備フェイズを宣言しGを配備、さらに戦争の先にあるものをプレイした。
5枚のGカードと1枚のオペレーション。ドローテキストを起動して尚、ユニオンフラッグ&グラハムは地形適正を得ることができる。

「攻撃ステップ。サキガケとフラッグ&グラハムを攻撃に出撃させる!」
「10ダメージを受けます」
「ターン終了だ」

毎ターン10ダメージを出すことが出来るハタドーのユニット郡を前に、真理の本国は瞬く間に薄くなる。
その容赦ない攻撃は「侮辱されるくらいなら、引導を渡す!」というハタドーの意思を表しているかのようだ。
ターンを貰った真理は、カードが1枚増えた手札を見やる。

「真理!!」

痺れを切らしたようにナツキが声を上げた。
対戦スペース中に反響する怒った彼女の声音。

「何やってんのさ!そんな奴、とっとと倒しちゃいなよ!」

ナツキの視線を痛いほど感じた真理は「姫様…」と口ごもる。

姫様に教わる前からガンダムウォーをやっていた事実を、決して”秘密にしていたわけではありません”。
しかし、正式に「使用人」になるのを機にコレクターに転身した自分のことなど、希望を抱きこのゲームに入ってきた彼女にとっては”知らなくてもいい事”なのです。

姫様の成長を見守ろう。そう決心して、再びデッキという形で手にしたカード。
しかし、バインダー越しではなくこの手に戻ったそれらに、気付かされてしまったのです。
常にデッキを持ち歩いていたのは、この男の対戦の誘いに乗ったのは、他ならぬ”プレイヤーとして、まだ戦いたがっている未練の自分”だと。

「わかりました」

小さくうなずく真理。
「見守る」ではなく、彼女の傍らに立ち「共に歩む」…望まれるのなら、選ぼう。

「ご用命とあらば」
「うん!やっちゃって!」

ナツキの言葉に後押しされるように、ハタドーに向き直る真理。
沈黙の間、彼は何を考えていたのか、いなかったのか、口元に笑みを浮かべた。

「配備フェイズ、慈愛の眼差しをヴァリアブルで場に」
「国力を伸ばさないだと…いや、聞くまい!」

逆さ向きで場に出されたカードを見て、ハタドーがそう言った。
慈愛の眼差しはヴァリアブルで場に出すことが出来るコマンドであるが、Gカードとしての効果は国力の発生ではない。

「このカードは重いんだ。だから…」

真理は手札のカードに目配せし、「このカード」と指したカードとは別のカードを出す。

「占領政策」
「なんと!」

占領政策は敵軍のGカードを奪取するセットオペレーション。
奪ったGカード…対ガンダム調査隊は無論国力を発生しているため、慈愛をヴァリアブルで出したこのターンも真理は新たな国力得たことになる。
…5国力目だ。

「赤4国力と緑1国力、資源2を支払い」
「…!」

真理は「黙らせる」と強い語彙でそのユニットを場に出した。

「クシャトリヤ」


つづく


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初出:mixi(10.04.05-06)
掲載日:10.04.06
更新日:10.04.06