ATAGUN@Wiki
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網の上にあった食材はその姿を消し、格子の奥の火もその勢いを弱めた。
バーベキューが終わりを迎えようとしている。
バーベキューが終わりを迎えようとしている。
吐き出し窓の縁に座った武志が「食った食った」と言って紙皿と割り箸を置き、Tシャツの下端を持ってバタバタと動かした。
6人の周りの空気は、余熱のせいか少々暑い。
6人の周りの空気は、余熱のせいか少々暑い。
「焼きそば買ってあるんだけど」
他の5人の顔から終わりの雰囲気を感じ取った姉さんは、片眉を上げて「ちょっと待って」とそう言った。
伊勢家で炊いたご飯を頂いたのだから、焼きそばは要らないだろ。という視線を背中に感じつつも、姉さんは残ったキャベツの陰から焼きそばの袋を出す。
3人前が2袋で、ちょうど6人分だ。
伊勢家で炊いたご飯を頂いたのだから、焼きそばは要らないだろ。という視線を背中に感じつつも、姉さんは残ったキャベツの陰から焼きそばの袋を出す。
3人前が2袋で、ちょうど6人分だ。
「…そういや、そんなの買ってたな」
武志は「俺はパス。そんなに食えるかよ」と飽きれたように目を細める。
ミキオたちも同じ意見のようで、ナツキなどは「そんなに食べて、豚にでもなるつもり?」と舌を出した。
さすがにそれには姉さんも反撃しそうになるが、真理が小さく上げた手に目がいく。
ミキオたちも同じ意見のようで、ナツキなどは「そんなに食べて、豚にでもなるつもり?」と舌を出した。
さすがにそれには姉さんも反撃しそうになるが、真理が小さく上げた手に目がいく。
「私はいただきます」
彼女は静かにそう言うと、水を取りに部屋に上がった。
それを見て「やっぱおれっちも貰おうかな、白飯食べてないし」と再び箸を握るタンサン。
それを見て「やっぱおれっちも貰おうかな、白飯食べてないし」と再び箸を握るタンサン。
「案外、真理さんとは気が合うかもね」
涼しい顔でそう言う姉さんに「なにを根拠に言ってるんすか」とミキオは笑って、ナツキと武志から受け取った紙皿と割り箸をまとめてビニール袋に捨てた。
武志は、焼きそばの袋を開ける姉さんを軽く見流し、嘘くさい咳払いをひとつして立ち上がる。
武志は、焼きそばの袋を開ける姉さんを軽く見流し、嘘くさい咳払いをひとつして立ち上がる。
「さて、諸君。腹ごしらえも済んだことだし」
「?」
「…ブードラやろうぜ!」
「?」
「…ブードラやろうぜ!」
緑色のパッケージの『ブースタードラフトエントリーセット』が荷物から顔を出した。
第21(27)話 ゲーム開始!
藤野武志は、テキトウに見えて(いや、結構テキトウなのだが)、なかなか行動力がある人間だ。
温和で人懐っこい性格に似合わず、「これはこうしよう」「次はあれやろうぜ」などという決定は素早い。そう言う意味では頼れる人間と言える。
姉さんが愚痴りながらもずっと一緒にいるのは、そういう部分に起因するのかもしれない。
温和で人懐っこい性格に似合わず、「これはこうしよう」「次はあれやろうぜ」などという決定は素早い。そう言う意味では頼れる人間と言える。
姉さんが愚痴りながらもずっと一緒にいるのは、そういう部分に起因するのかもしれない。
そんなことを考えていたミキオは、「うーん、これは勝てねえなぁ」と言う言葉でテーブルの上の対戦に視線を戻す。
緑のキャラクター、シャア・アズナブル《EB2》がセットされたジムカスタム(ベイト機)とその他数枚のユニットを見て投了を宣言した武志。
対戦相手…ナツキは「あと1国力あればこんなのも出せたんだけどなぁ~☆」と手札のユニコーンガンダム(デストロイモード)を見せる。
対戦相手…ナツキは「あと1国力あればこんなのも出せたんだけどなぁ~☆」と手札のユニコーンガンダム(デストロイモード)を見せる。
結局、バーべキューを片付けた後にブースタードラフトをやることになり、リーグ戦で姉さんにしか負けていないナツキが優勝に決まりだ。
「勝っちったー☆」
ミキオに振り返り、ニカっと笑うナツキに「ん、あぁ」と返すミキオ。
気のない返事に頬を膨らませた彼女は「うがー!」と声を上げて、彼にすがる。
気のない返事に頬を膨らませた彼女は「うがー!」と声を上げて、彼にすがる。
「なんか違うこと考えてたでしょー!」
「んなことねーよ。んーと…よくそんなに良いカード揃ったな」
「んなことねーよ。んーと…よくそんなに良いカード揃ったな」
即興で並べた感想に、またナツキが声を上げた。
そんな彼らに苦笑しながら武志は、対戦結果を書き綴ったインデックスを並べて、「さて、順位は」と首を捻る。
そんな彼らに苦笑しながら武志は、対戦結果を書き綴ったインデックスを並べて、「さて、順位は」と首を捻る。
「ナツキちゃんは優勝だとして」
と、ナツキの名前が書かれたインデックスを6枚の中から抜き出し、2位以下は武志、姉さん、ミキオ、タンサン、真理の順番に決まった。
「真理さん、図ったでしょ」
姉さんはしたり顔で、”ピックの順番がナツキの隣だった”真理に耳打ちする。
ナツキのデッキを見た印象から、なにかを推測したらしい。
ナツキのデッキを見た印象から、なにかを推測したらしい。
「なんのことでしょう」
真理はすました顔でそう言った。
姉さんは「あらあら」と肩をとんとんと叩いて、テーブルに広げられたレアに目線を移す。
レアカードは順位に関係なく、カードが足りていないミキオたち3人に多く分配され、年上3人は足りないカードを拾う程度で終わった。
姉さんは「あらあら」と肩をとんとんと叩いて、テーブルに広げられたレアに目線を移す。
レアカードは順位に関係なく、カードが足りていないミキオたち3人に多く分配され、年上3人は足りないカードを拾う程度で終わった。
一通り片付けを終えた客間のテーブルに、真理がお茶を出す。
湯のみ茶碗に入った緑茶だった。
湯のみ茶碗に入った緑茶だった。
「オレ、一回あんたと…あんたの赤デッキとやってみたいんだけど」
あくびをするタンサンを横目に、ミキオは真理を指差してそう言った。
遠征先で見たあのデッキと対戦してみたい、という思いは前からあった。強化合宿と銘打っているのだから、こういう機会にやらなければ損だ!
と彼は強い眼差しで真理を見る。
それに応じるように、彼女は小さく頷いて立ち上がり「デッキを取ってまいります」と廊下へと続く扉の向こうに消えた。
遠征先で見たあのデッキと対戦してみたい、という思いは前からあった。強化合宿と銘打っているのだから、こういう機会にやらなければ損だ!
と彼は強い眼差しで真理を見る。
それに応じるように、彼女は小さく頷いて立ち上がり「デッキを取ってまいります」と廊下へと続く扉の向こうに消えた。
「ミキオと対戦したかったけど、藤野っちで我慢するかぁ」
ナツキは露骨にため息をついて、デッキケースを取り出す。
いきなり話をふられた武志はお茶を咽た後、「藤野っちって…」と苦笑する。
バーべキュー前び対戦したままテーブルの端に置きっぱなしにしていたデッキケースをチラリと見て少しの数秒思考。
いきなり話をふられた武志はお茶を咽た後、「藤野っちって…」と苦笑する。
バーべキュー前び対戦したままテーブルの端に置きっぱなしにしていたデッキケースをチラリと見て少しの数秒思考。
「まぁいいぜ。俺の青カードがどういう風に使われてるのか興味あるし」
武志はそう答え、荷物を引き寄せて――置きっぱなしのデッキケースとは違う――デッキケースを取り出す。
「あたしらはどうしよっか、羽鳥。対戦?観戦?」
「いや、おれっちはブードラで手に入れたカードで構築を少し」
「いや、おれっちはブードラで手に入れたカードで構築を少し」
にわかに動き始めた周りに、姉さんはタンサンはお茶を飲みながらのんびりとそんなやり取りをする。。
タンサンはブースタードラフトで手に入れたカードを見せて「カード見ながら、どういうデッキで活躍させてやろうか考えてるときが一番楽しいじゃないですか~」と続けた。
タンサンはブースタードラフトで手に入れたカードを見せて「カード見ながら、どういうデッキで活躍させてやろうか考えてるときが一番楽しいじゃないですか~」と続けた。
「何?『デッキビルダーに俺はなる!』的な?…あたしは実況でもしようかな」
そんなことを言っている間に、真理が戻って来た。
手元には赤いデッキケースが握られており、間違いなく遠征の時に見たデッキだと確信するミキオ。
手元には赤いデッキケースが握られており、間違いなく遠征の時に見たデッキだと確信するミキオ。
「手加減はモチロンいらないぜ」
「…承知しています」
「…承知しています」
真理はデッキを手早くシャッフルしてミキオに差し出す。
ミキオも、シャッフルしておいたデッキを渡す。
軽いカットを終えたデッキは、お互いの手元に戻る。
ミキオも、シャッフルしておいたデッキを渡す。
軽いカットを終えたデッキは、お互いの手元に戻る。
「さぁ、ゲーム開始だ!」
つづく
txt:Y256
初出:mixi(10.05.10)
掲載日:10.05.10
更新日:10.05.10
掲載日:10.05.10
更新日:10.05.10