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「あー…ダメだ。全然ダメ」

風呂から上がり客間でだべりながらフリープレイをしていたミキオは、手に持っていた1枚の手札をテーブルに放って頭をくしゃくしゃとする。
向かい側に座ったタンサンは「ブン回った~」と笑っている。

「途中までは順調なんだけどなぁ」

強化合宿と銘打って始めたこの泊まりで、ミキオの戦績は良くはない。
こんな調子では、いずれ再戦したいと思っていた諏訪部睦月には到底及ばないだろう。という焦りもあった。

「姉さん~。ババァーンと強くなる方法ないすかねぇ?」

少し離れたところで武志と一緒に観戦していた姉さんは、テーブルの上のカードに目を落とし「さっきから見てて思ったんだけどね、」と口を開いた。
結われていない髪が彼女の動きに合わせて揺れ、表情は解り辛い。

「あんた、少し勘違いしてるのかも」

姉さんは鼻で息をついて立ち上がった。機嫌が悪いのか、言葉には棘がある。
手にはデッキケース…市販品に何枚かシールが貼ってある物で、”いつもの”白デッキが入ったものだ。

「…勘違い?」

姉さんが気分屋なのは知っているが、いったい今度はなんだ。
と、見上げるミキオ。

「もしそうだとしたら…プレイヤーとしてのあんたは、間違いなく”失速”する」

さらに続ける彼女に、さすがにミキオもむっとする。彼女が何に対して不機嫌なのかがまるで解らないのだから当然の反応だ。
姉さんはお構いなしに右手首に付けていたゴムで後ろの髪を結ぶ。いつものプレイスタイル。

手に持ったデッキと、この髪型が指すのはひとつ。…対戦だ。
声のトーンを落とした彼女を、ナツキやタンサンは何事かと見やるが、武志だけは「やれやれ」と言いたげに眉を上げた。
姉さんはミキオの向かい側――何秒か前までタンサンが座っていた場所――に腰を下ろすと同時に彼を見る。

「だから、師匠としてあたしが…本田京子が見極める」


第27(33)話 師弟



「テスタメントガンダム(カイト機)をプレイ」

お互いに2枚のGカードが並んだだけの場に、後手の姉さんが最初のユニットを出す。
テスタメントガンダム(カイト機)は、2国力で配備できるユニットとしては破格の戦闘力を持つ反面、破壊されれば敵軍に渡ってしまうデメリットを持っているカードだ。

「ターン終了よ」
「…了解」

姉さんは落ち着いた口調でそう言い、手札を纏める。
このターン、テスタメントが出撃しなかったのは、次のターンも配備したいユニット(又はそれに順ずるカード)があるからか。
と観戦していた武志は考えた。

「配備フェイズ、ギンガナム軍を配備。ターンエンド」
「あたしのターン。配備フェイズ」

姉さんは手札からロゴスの私兵をヴァリアブルで場に出した後、――武志が考えていた通り――追加のユニットであるガンダムアストレイ・アウトフレーム(バックホーム装備)をプレイした。

「ターン終了よ」
「そうかッ!」
「…何?」

「あ~!」と気付いたように声を上げるミキオに、姉さんは思わず眉をひそめる。
不機嫌そうだった彼女のその表情が少し崩れた。

「テスタメントはあれっすね?リングの防御用」
「さ、どうかしら?」

ミキオは姉さんの表情を見て、ほっとしてカードを引く。対戦開始時より機嫌は悪くなさそうだ。
だが、まだ彼女はミキオの何が”勘違い”なのかを言わない。そのことにミキオは多少の苛立ちを覚える。

「配備フェイズにヴァリアブル宣言。エネルギー吸収を場に出して、シャイニングガンダム《16》を配備ッ」
「了解よ」
「ターンエンド!」

ミキオは手で空を切り、ターン終了を宣言した。
手札は悪くはないが、キャラクターが引けていないのだ。MFが白に匹敵するサイズを振り回すにはどうしても必要なキャラクターカードが。

「配備フェイズ。歌姫の騎士団を出して、ストライクノワールを配備」
「ノワール…」
「古いけど、代役のいない器用なユニットよ。私は好き」

「私は好き」を少し強調したように聞こえたが、ミキオは冷やかさないでそのカードを見据える。
銃とソードを構えたイラストは「不敗の流派」のものだ。

「攻撃ステップ。地球にノワールとバックホーム、宇宙にカイトテスタメントを出撃」

バックホームの効果でハンガーに中東国の支援とガンダムアストレイ(レッドフレーム・マーズジャケット)が移ったのを確認して、ミキオに向き直る姉さん。
2ターン目から4ターン目までの連続したユニット配備に加え、次のターンのユニットもハンガーに見えている。
デッキが彼女の本気に応えているのだ。彼女には”そういう力”がある。と相対するミキオは勝手なことを思う。

「おもしれぇ。何が”勘違い”か知らねぇけど…全力でいくぜ!」
「中東国の支援をプレイ。カードを2枚ドローするわ」

11打点全てを通し、ノワールへの補給を告げて彼女ターンを終えた。
ミキオはカードを引こうと本国に手をかけた。が、姉さんは彼の眼前に1枚のカードを差し出すことでそれを静止する。

「リロールフェイズ、切り開く力をプレイ」
「っ…了解」

お互いにヴァリアブルの1国力だけが、”自分の色”を発生している形となった。
ミキオの手札には規定の効果と合わせて2枚のカードが加わる。

「封殺する気かよ…でも!」

ミキオは手札からカードを場に出す。
姉さんに見せるように…ではなく、カードを逆さまに置く効果で。

「オレの手札には2枚目のヴァリアブルがある!出土品をヴァリアブルで場に。ニュータイプの排除を配備」
「それは仕方ない…わね」

姉さんは自分の手札を確認するまでもなく、そう言った。
白国力が1では、逆に彼女側が何もできない。

「ニュータイプの排除のテキストを使用してギンガナム軍を廃棄」

ハンガーに移ったのはローズガンダム(ローゼスハリケーン)のカード。
このカードも指定国力は2である。

「ハリケーンローズをプレイ、手札からサイ・サイシー《24》をセット。さらにACEカード…ゴッドガンダム&ドモンも配備だッ!」

カードを次々と場に配備するミキオ。
残りの手札は1枚となるが、場には相当な戦力が並ぶ。

「攻撃規定、シャイニングをリング!」

姉さんは少し目を見開いて、ミキオが持っている1枚の手札を見た。
が、何か言いたげなその口は「ストライクノワールを防御に」と言う台詞を宣言したのみだった。

「ハリケーンローズのテキスト、5点火力と効果無効を宣言ッ!」
「特殊シールドで減殺して、2ダメージとテキスト無効を受けるわ。ま、指定を満たせてないからどの道ノワールのテキストは使えなかったんだけどね」

姉さんはそう言いながら他に使うカードがないことを確認する。
お互いに相打ちを了承し、2枚とも破壊状態となった。

「破壊状態のシャイニングを本国の下に送って、ゴッドガンダムをテキストで場に出すぜ!」
「…はいよ」
「ターンエンド」

5ターン目を迎えた姉さんは、ハンガーをチラリと確認してから手札のGカードを場に出した。

「ハンガーのマーズジャケットを配備。バックホームにアンドリュー・バルトフェルド《15》をセット」

テキストを無効化できるキャラクターのプレイ。
ハリケーンローズの返しターンにこれか…とミキオは内心うなだれる。

「攻撃ステップ。地球にマーズジャケットとバックホームを出撃させるわ」

ハンガーに移ったカードは、フリーダムガンダム&キラとニュートロンジャマー・キャンセラー。

「…防御規定前にハリケーンローズの5点火力をバックホームに使いたい」
「アンディをロール。そのテキストを無効にするわ」

5枚のGカードと1枚のオペレーションでゴッドガンダム&ドモンは防御に出撃できるが、マーズジャケットと相打ちが限界。
手札の無いミキオにとって、ドローソースを潰すのは気が進まない。

「6ダメージ通しで」
「マーズジャケットに補給してターン終了よ」

姉さん側にもドローを補強するACEが控えているとなると、戦局を動かすならこのターンが狙い目。
ミキオはそう考えながら、規定ドローに加えてACEの効果でGとオペレーションを捻ってカードを引いた。

「ニュータイプの排除でGを切って、ハンガーにドモン・カッシュ…!よし、このまま一気に攻める!手札からガンダムシュピーゲル(シュツルム・ウント・ドラック)をプレイッ!」
「じゃあ、あたしはハンガーのフリーダムガンダム&キラを配備」

ACEは敵軍配備フェイズにも配備することができるカードであり、次のターンから早速ドローテキストを使用することが可能だ。
ミキオはドモンをウント・ドランクにセットし、戦闘フェイズを宣言する。

「攻撃規定前にハンガーのジャマーキャンセラーでバックホームをリロール。アンディの効果でローズのテキストを無効化」
「厄介すぎるぜ…攻撃規定だ!宇宙にハリケーンローズ、地球にゴッド。そして…リングにウント・ドランクを出撃ッ!!」

この数ヶ月で成長した自信はある。
本気の彼女を打ち負かすことで、迫る地区予選や睦月との再戦への自信は得られるはずだ。姉さんの言う”勘違い”は解らないが、ここは決めさせてもらう!
と宣言にも力が入るミキオ。

「クイックキャラ…プリペンター・ウインド《5》をマーズジャケットにセット。このカードは場に出た場合、ターン終了時まで+1/+1/+1を得るわ」
「急にでかく…!」
「防御規定でテスタメントは宇宙、マーズジャケットはリングに出撃!」

マーズジャケットの格闘力、防御力は共に9。ウント・ドランクは、速攻・強襲はおろか、ドモンのテキストも活かすことなく一方的に負ける。

「リングでは…単純な力の差で、あたしのユニットが勝ちよ」
「…クソッ!」

姉さんは手早く本国のカードを5枚捨て山に移しながらそう告げる。
『絶対的な自信があった攻撃が威力不足に終わった』ミキオがそう感じるには、奇襲攻撃によるウント・ドランク+ドモンの敗北は十分なものだった。
テスタメントはローズとの戦闘で破壊されたため、破壊無効と補給が適応されミキオの配備エリアに移る。

「じゃあダメージ判定ステップ規定後、マーズジャケットのテキストで自身の上のコインをバックホームに移すわ」
「え…?」

ウント・ドランクの廃棄を確認した彼女は、帰還させるだけだったそのユニットの効果を突如宣言した。コインは、バックホームの上に移る。
交戦に一方的に勝利したといっても、8ダメージはターン終了時までは蓄積されている。つまり、戦闘修正コインを失ったマーズジャケットは破壊状態となるのだ。
ミキオは意味が解らず唸る。が、その応えはすぐに姉さんの手札から示される。

「そして、ジェネシスのカードをプレイするわ!」
「!?」
「このカードの条件は、ダメージ判定ステップに自軍ユニットが破壊状態であること。リング内であろうとも、よ」

姉さんはそのコマンドカードを見せるようにしてそう告げた。
効果が解決され、全てのユニットが破壊された。


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.05.25)
掲載日:10.05.25
更新日:10.05.25