ATAGUN@Wiki
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日付が変わる頃、男子は客間に布団を敷き、ナツキは自分の部屋で、姉さんは真理の部屋で、寝ることとなった。
強化合宿が終わろうとしている。それぞれ得るものはあったのか、それともなかったのか―。
強化合宿が終わろうとしている。それぞれ得るものはあったのか、それともなかったのか―。
第29(35)話 夜は長く
「そう言えば」
漆黒の中、隣に敷いた布団のほうから声が聞こえ、真理は「はい」と返す。
明かりを落とした直後だったので、慣れていない目では相手を見ることはできないだろう、と彼女は天井を見たままで返事をした。
明かりを落とした直後だったので、慣れていない目では相手を見ることはできないだろう、と彼女は天井を見たままで返事をした。
「あなたと対戦するの忘れてた」
声の主はもちろん、同じ部屋で横になっているもうひとり―姉さんだ。
真理は今日行った対戦を思い返して数秒。
真理は今日行った対戦を思い返して数秒。
「…言われてみれば」
と言った。
ブースタードラフトでは対戦したものの、自分のデッキで対戦は…していない。
強化合宿と銘打った手前、どうしても『高校生組VS年長組』という図式が多かったのだ。
ブースタードラフトでは対戦したものの、自分のデッキで対戦は…していない。
強化合宿と銘打った手前、どうしても『高校生組VS年長組』という図式が多かったのだ。
「でしょ?まぁ…そのうち、ね♪」
ふふんと鼻歌でも歌いだしそうな口調で続ける姉さん。
真理は視線を感じて彼女のほうを見るが、やはり目がまだ慣れていないのを確認すると、天井に視線を戻して目を閉じる。
真理は視線を感じて彼女のほうを見るが、やはり目がまだ慣れていないのを確認すると、天井に視線を戻して目を閉じる。
「でも、今までどこでプレイしてたの?」
姉さんは少し感じていた疑問を口にしてみる。
昔から地元でプレイしてきたプレイヤーならば、同じく地元でプレイしている自分たちと顔を合わせたことがないはずがないからだ。
少し慣れてきた彼女の目は、真理の横顔の輪郭だけは捉えた。
昔から地元でプレイしてきたプレイヤーならば、同じく地元でプレイしている自分たちと顔を合わせたことがないはずがないからだ。
少し慣れてきた彼女の目は、真理の横顔の輪郭だけは捉えた。
「こちらに越してきたときには既にプレイヤーではありませんでしたので」
「なるほ。…てかさ、敬語苦しくない?あたしのが2つも年下だよ?」
「習慣ですので」
「なるほ。…てかさ、敬語苦しくない?あたしのが2つも年下だよ?」
「習慣ですので」
彼女の口元が少しだけ緩んだのが、口調からわかる。
姉さんは「ん?」と少し体勢を起こして真理のほうを覗き込んだ。
姉さんは「ん?」と少し体勢を起こして真理のほうを覗き込んだ。
「いえ、そういう”些細な事”は気にしないタイプの人かと思ってたので」
「あら。こう見えてもちゃんと考えてるんですけど」
「自分で言いますか」
「あら。こう見えてもちゃんと考えてるんですけど」
「自分で言いますか」
姉さんは小声で笑って、衣擦れの音と共に今度はちゃんと上半身を起こす。
「あなたとはいい友達になれそうだわ」
「…。寝ぼけてます?」
「んー。よく言われる」
「…。寝ぼけてます?」
「んー。よく言われる」
ははっと笑って右手を差し出す姉さん。
真理もそれに応え右手を差し出す。
真理もそれに応え右手を差し出す。
「まぁ…ナツキちゃんには嫌われてるけどもね」
と手を離した姉さんは目を閉じて難しい顔をした。
それを察して、真理は口にするべきか少し思案した後「そんなことはないと思いますよ」と言った。
目を閉じたのがきっかけで急激な眠けに襲われていた姉さんは、真理の言葉で起きて「寝るとこだった」と頬をぺちぺち触った。
それを察して、真理は口にするべきか少し思案した後「そんなことはないと思いますよ」と言った。
目を閉じたのがきっかけで急激な眠けに襲われていた姉さんは、真理の言葉で起きて「寝るとこだった」と頬をぺちぺち触った。
「ああいう性格ですので口では言いませんが、姫様は本田さんのことをそこまで嫌ってないかと」
「…そうかなぁ」
「はい。私はそう感じます」
「にゅーたいぷ?」
「…そうかなぁ」
「はい。私はそう感じます」
「にゅーたいぷ?」
姉さんはニッと笑って真理の布団をつつく。
その時、部屋の扉が突然開き、廊下の明かりが差し込んだ。
その時、部屋の扉が突然開き、廊下の明かりが差し込んだ。
「やっぱ2人で楽しそうな話してるし!」
ナツキが目を擦りながら立っていた。
姉さんは、噂をすればとクスクスと笑って「ほら、こっちおいで」と手招きして見せた。
姉さんは、噂をすればとクスクスと笑って「ほら、こっちおいで」と手招きして見せた。
「馬鹿にしてるでしょ?」
犬でも呼ぶような手つきにナツキはそう憤慨するが、扉を閉めて部屋の中に入る。
彼女は小言を言いながらも、真理と姉さんの間に倒れこむようにダイブした。
彼女は小言を言いながらも、真理と姉さんの間に倒れこむようにダイブした。
×××
客間の電気は未だ点いており、男子3人はテーブルでペットボトルのお茶を囲んで話していた。
話題が切れたところでミキオが、思い出したように話を切り替える。
話題が切れたところでミキオが、思い出したように話を切り替える。
「で?姉さんと寝たときの感想を、ズバリ」
リポーターのような口調で――マイクに見立てたのだろう――ペットボトルを武志に向けるミキオ。
いきなりそっち系か、と武志はお茶を吹いた。盛大に。
いきなりそっち系か、と武志はお茶を吹いた。盛大に。
「…は?」
布巾でテーブルを拭きながら、半笑いでそう返す武志。
タンサンが「ミキオちゃん…ストレートすぎるだろ」と腹を抱えて笑う。
タンサンが「ミキオちゃん…ストレートすぎるだろ」と腹を抱えて笑う。
「いいじゃねーかよ。夜の猥談は合宿の定番!だろ?」
妙に納得するタンサンを横目に、武志は神妙な顔で「よし」とうなずいた。
ミキオは期待して少し武志側に寄る。
ミキオは期待して少し武志側に寄る。
「あいつとの初めてはな、…って違うわ!」
武志は表情を崩してミキオの肩を叩く。
「乗り突っ込みですか…」
「つか、どこから違うんですか?」
「つか、どこから違うんですか?」
期待してただけに拍子抜けした2人だが、なおも食い下がる。
武志は「そもそもさ、」と頭をかきながら口を開く。
武志は「そもそもさ、」と頭をかきながら口を開く。
「なんでオレとあいつが付き合ってることになってるんだ…?」
途端に静まった2人。顔を見合わせてから、「ハァ!?違うの!?」と顔を歪めた。
ミキオなどは、武志の肩を持って揺りながらだ。
ミキオなどは、武志の肩を持って揺りながらだ。
「なんでそう思ったんだかしらねえけど…違うぞ?」
「うは、マジか。『普段は勝気な姉さんだけど、本番のときはオ・ン・ナ・ノ・コ(はぁと』みたいなの期待したのにッ!」
「お前なぁ…」
「うは、マジか。『普段は勝気な姉さんだけど、本番のときはオ・ン・ナ・ノ・コ(はぁと』みたいなの期待したのにッ!」
「お前なぁ…」
力説するミキオに、武志とタンサンはため息をつく。
藤野武志は確かに姉さんの「相方」だ。
しかし、想像していたような「相方」ではなかったらしく、タンサンは「ふーむ?」と首をかしげた。
しかし、想像していたような「相方」ではなかったらしく、タンサンは「ふーむ?」と首をかしげた。
「それより、お前はナツキちゃんだろうが」
武志は「俺の話はオシマイな」と言わんばかりに話題を変える。その言葉に、ミキオは少し目を大きくする。
彼の脳裏には、夕飯の時の”変な”照れ方のナツキを思い出される。
彼の脳裏には、夕飯の時の”変な”照れ方のナツキを思い出される。
「藤野センパイ…それ結構、地雷になりつつあるかも」
「あ、まじ?」
「あ、まじ?」
タンサンが真顔でそっと指摘する。
武志はそれを聞いて「おっと、失礼」と口を噤んだ。
武志はそれを聞いて「おっと、失礼」と口を噤んだ。
「嘘教えんな!ナツキは”ナシ”だろ!!」
と慌てて訂正するミキオ。
武志は小さくあくびをして時計を見た。
武志は小さくあくびをして時計を見た。
そんなこんな夜は更け強化合宿は静かな幕切れを迎えた。
つづく
txt:Y256
初出:mixi(10.05.29)
掲載日:10.05.29
更新日:10.05.29
掲載日:10.05.29
更新日:10.05.29