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「栗田ミキオ様が勝ちで、佐木ハルキ様が負けでよろしいですね」

大会受付の係員はパソコン画面に情報を入力し、スコアシートをミキオたちに返す。
1回戦の試合も各所で決着がつき始め、会場内は人の往来が増えたように感じられた。

「今の受付嬢カワイイな、とか思ったでしょ」

1回戦の相手に会釈をして大会受付を離れたミキオに、着いてきたナツキが得意げにそう言った。

「…鋭いな」
「なんか最近、ミキオがグッと来るポイントがわかってきたかも☆」

「知るか」と返して、ミキオはまだ決着がついていない対戦を観戦しようと歩き始める。
赤単色vs捲土ツヴァイ、緑ウィニーvs緑ウィニー…様々な対戦が眼下を流れていく。
やはり大きい大会はいいな、とミキオは頷いた。

「あ。MFの」

赤単色vs赤単色の対戦を観戦していたミキオに誰かが声をかけた。
その軽い声の主がすぐには思い浮かばず、ミキオは声がしたほうを見る。
相手の姿を認めるのと同時に「あ」と声を上げる。誰が来たのだろう、とナツキは彼の後ろから除き見る。

「…KING!」

諏訪部睦月が「やぁ」と手を上げて立っていた。


第32(38)話 決闘者達



「シード権選手だから、午後から参戦するんだと思ってたぜ」

睦月にそう言いながら時間を確認するミキオ。
シード権とは、午前中の2戦を不戦勝で突破できる権利で、ショップ大会で成績の良いプレイヤーに与えられるものだ。
COOPの大会で連続優勝中だった睦月がそれを持っているのは想像に難くない。

「あー、あれかぁ。権利くれるって言ってたけどボクは辞退したよっ」

思い出すように睦月はさらっと言い、一回戦の結果…「勝ち」が記入されたスコアシートを出して見せた。
ミキオはそれを見て目を丸くする。

「1回戦から出場しても負けないと思うしねっ。それに、いろんな相手と戦えたほうが面白いよ」

睦月は「でしょ?」とミキオの顔を見る。
身長は彼のほうが随分小さいが、妙な自信と威圧感がある。

「おもしれぇ。待ってろ、お前と当たるまで勝ち進んでやるぜ!」
「うん、ガンバッテ」

ひらひらと手を振る睦月。
勝ち点が同じプレイヤー同士が当たる対戦形式であるため、勝ち進めば進むほど彼と当たる可能性は高くなる。
2人はそれだけ交わし、別れた。


×××


「それでは2回戦の組み合わせを発表します」

タンサンも合流し、発表された組み合わせを確認する3人。
それぞれ自分の席を確認して歩き出した。

「あ、オッサン☆」

自分の席に着いたナツキは、隣の席に座っていた谷本総矢を確認してそう声を上げる。
谷本とは遠征したときに一度対戦しており、青デッキについてアドバイスを受けたことがあった。

「第一声がそれはないんじゃないかな、射勢ちゃん。この席ってことは…1回戦は勝ち?」
「うん!相手が事故ってくれた」

ラッキーでしょと、笑うナツキ。
その時、彼女らの席のほうに一人の少年が歩いてきた。
姉さんや武志くらいの年に見える少年で、黒い髪に『常勝』と書いてある鉢巻をしていた。

「お」

ナツキは自分の対戦者かな、と顔を上げる。
が。予想は外れ、その少年は谷本の向かい側に座った。どうやら彼の対戦相手らしい。

「変な格好」
「こらこら…」

率直な感想を口にするナツキを、眉を上げながらなだめる谷本。
そこで今度は、ナツキの向かいの椅子が音を立てて引かれる。
今度こそ対戦相手が来た!と向き直ったナツキは、相手の顔を見て「あー!」と叫ぶ。

「ん?あぁ、君か」

向かい側に座った対戦相手は…ストライプが入ったダークグリーンのスーツを着込み、整った顔に不釣合いなサングラスをつけた男。
真理と対戦した、あのミスターハタドーだ。

「名前が漢字だったからわかんなかった。ミスターなんちゃらって偽名だったのね」

うぅむと唸るナツキに谷本は「当たり前だろ…」と苦笑した。
そこで司会が2回戦開始をコールする。

「それでは2回戦、ガンダムウォー、レディィイ、ゴー!!」

倍くらいの差があるその2つの拳が出される。
じゃんけんに勝ったナツキが先攻だ。

「ウチのターン、ホワイトベース隊を配備。ターン、エンド」
「青!前回、君のデッキは拝見してはいなかったな…こちらは、緑基本Gを配備」
「そっちは今日も緑紫でしょ?」

頷いてターンを終了するハタドー。
ナツキは青基本Gを、ハタドーは紫基本Gを出し2ターン目を終えた。

「青基本Gを配備。ターン、エンド」
「破壊工作をヴァリアブル。そう言えば、彼女は元気かな?使用人の」

3枚目の国力を出してターンを終えたハタドーは、思い出したようにそうナツキに聞く。
前回、真理との対戦はハタドーが一方的に放棄するという形で幕を下ろしたのだった。

「うん☆リベンジなら今度にしてよね」
「そうだな、ターン終了だ」

ナツキの台詞にハタドーは少し笑い、ターンを終えた。
相変わらず、黒いサングラスで目の表情は読み取れない。
真理との戦いではサキガケが目立つデッキだったな、とナツキは思い返す。

「青Gを配備。ターン、エンド」
「私のターン、紫基本Gを配備」

緑2枚に紫2枚…サキガケのコストは満たせないので事故かな?とナツキは頷く。
だが、ハタドーはそれをあざ笑うかのごとく、ユニットカードを1枚表にした。

「マスラオを配備!」
「ます…らお?」

ハタドーは頷きカードを見せる。
マスラオはドラマチックブースター『乱世を生きる漢たち』で登場した緑紫の00ユニット。
戦闘配備と速攻・強襲を持ち、さらにダメージを受けている敵軍ユニットを本国に戻すテキストを持ったカードだ。

「サキガケと何が違うわけ?」

ナツキはマスラオのカードを返しながら、首をかしげる。
同じ戦闘力と似たようなバウンステキストからそういう印象を受けたらしい。

「その言葉、今は甘んじて受けよう。…戦闘フェイズ、マスラオを地球に出撃させる!」
「6ダメージ受けるよ」
「ターン終了だ」

ナツキはターンを開始する。
4ターン目にユニットを配備できなかったが、手札は悪くない。このターンから反撃開始だ!と5枚目のGカードを配備した。

「ユニコーンガンダムをプレイ!」

まだ少ない捨て山ではなく、十分な枚数がある本国から、慣れた手つきで箱をセットする。
むしろ最初から決めていたようにも見える。

「戦闘フェイズに入るよ」

ユニコーンガンダムの上に伏せられたカード。
もう1枚の手札…箱。そして、それは”可能性”のカード。

「姫様…この箱を開ければ、ユニコーンガンダムは無二の力を発揮するでしょう」

手に入ったこのカードを使うと決めたとき、真理はそう言った。

「ですが、それは…デッキのカード全てが”いっぺんに”姫様の手に委ねられるのと同じ力」

このカードの真価、それを生かすも殺すも使い手のナツキ次第だということを真理は言った。
数ヶ月前まで初心者だった自分にそれを使えるのかと問われれば…どうだろう。とナツキは考える。

真理…。でもウチ、開けるよ。
ナツキは一拍置いて、そのカードを表にした。

「換装宣言、ユニコーンガンダム(デストロイモード)!」
「…!?」

谷本が見たという彼女の構築には無かったカード。
単純に所持していなかっただけとは聞いていたが…ここでか。とハタドーはニヤリとする。
隣で対戦していた谷本も、思わずそのカードを見る。

「規定、宇宙エリアに出撃!」
「6国力を満たしていないそのカードは”拝見テキスト”が無効になっている状態。この6点は受けよう」

ユニコーンガンダム(デストロイモード)が持つ、手札を見てユニットを奪取するテキストを指してそう言ったハタドー。
ナツキは「よし」とユニコーンを帰還させ、ターンを終了した。
カードを引いたハタドーは、ユニコーンガンダムに怯む事無く3枚目の緑Gを配備する。

「そちらは”出揃った”ようだな。こちらも、このカードで場は成立する…高機動型ゲルググ(マサヤ・ナカガワ機)を配備!」

ハタドーはカードを配備し、そのまま戦闘フェイズを宣言した。
そのカードも戦闘配備を持つため、すぐに攻撃が可能だ。

「宇宙にナカガワゲルググ、地球にマスラオを出撃させる!」
「ユニコーンガンダムに再換装☆」
「よかろう。脅威のサーチ能力だ」

ナツキはパッと笑い、本国のカードをサーチする。
箱はもちろん裏向きでセットされる。

「防御は出ないよ!どっちにも勝てそうにないしね」
「ならば、ダメージ判定ステップ規定前。宇宙エリアのナカガワゲルググのテキストでユニコーンガンダムに2ダメージを!」

高機動型ゲルググ(マサヤ・ナカガワ機)は、自軍ユニットが持つ宙間戦闘の合計値ぶんだけ敵軍ユニットにダメージを与えることができるユニット。
ダメージを与えた敵軍ユニットをマスラオで本国の上へ戻すことができるため、相性がいいのだ。

「配備エリアに戻るサキガケとは違い、このマスラオは本国に戻った敵軍ユニットに直接手を下す!バウンス対象は、もちろんダメージを受けたユニコーン!」

ハタドーは箱がセットされたままのユニコーンを指差す。
ナツキは自分の手元にあるそのユニットを見て、小さく首を振る。2つに結んだ髪がそれに合わせて静かに揺れる。
潔く本国に戻す気はなかった。彼女の手に委ねられているものは…。

「カットイン、箱…勇猛果敢をプレイ!」

ナツキは音を立てて箱を表にする。青には珍しい敵軍ユニットを手札に戻すコマンドだ。
ハタドーは目を見開き、口元に意味深な笑みを浮かべた。

「甘く見ないでよ。あんたが相手にしてるのは…ウチのデッキ全部なんだからさ!」


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.06.10)
掲載日:10.06.10
更新日:10.06.11