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「したかったなぁ…対戦前のチュー」
ナツキは冗談交じりに呟くと、対戦表にあった5回戦の席に着いた。
相手は既に席についている。恰幅の良い長髪の男だ。
遅れて座ったナツキがギリギリ準備を終えたタイミングで、司会が威勢の良い声で時間を告げた。
相手は既に席についている。恰幅の良い長髪の男だ。
遅れて座ったナツキがギリギリ準備を終えたタイミングで、司会が威勢の良い声で時間を告げた。
「最終ゥ!5回戦ッ!…ガンダムウォー、レディィイ、ゴーッ!!」
第42(48)話 いともたやすく行われるえげつない行為
「青基本Gを配備してターン、エンド」
「歌姫の騎士団を配備」
「白…かぁ」
「歌姫の騎士団を配備」
「白…かぁ」
ナツキは出されたGカードを見て唇を僅かに動かす。
白は嫌いな勢力”だった”。
白は嫌いな勢力”だった”。
「L3-X18999コロニーを配備してターン終了。効果でドロー」
「ウチのターン。配備フェイズ、ホワイトベース隊を配備」
「ウチのターン。配備フェイズ、ホワイトベース隊を配備」
ナツキは2枚目のGに加えて、さらに手札のカードを出す準備をする。
前分けした黒髪の向こう、彼女の瞳は相手を見据えていた。
前分けした黒髪の向こう、彼女の瞳は相手を見据えていた。
「ユニットカードを配備するよ…アンマンとガンダムMk-2(エル機)!」
「いいだろう。殴りたまえ」
「いいだろう。殴りたまえ」
ナツキが出したユニットは、2国力で戦闘配備と格闘力3を持つ優秀なユニット。
オマケに、戦闘エリアに敵軍キャラクターがいなければダメージも受けないのだ。
オマケに、戦闘エリアに敵軍キャラクターがいなければダメージも受けないのだ。
相手は大人しくナツキの攻勢をうかがう。
かなり太めの男だったが、手札をテーブルに置く動作を始め、動きは繊細で無音だった。
かなり太めの男だったが、手札をテーブルに置く動作を始め、動きは繊細で無音だった。
「言われなくてもボッコボコ!…急ごしらえでカードを2枚引いて、地球に出撃っ!」
「3点受ける」
「ターン、エンド」
「3点受ける」
「ターン、エンド」
フフン、とガンダムMk-2を手元に戻しながらナツキは宣言する。
相手は伏せていたカードをいつの間にか手にしており、ターンを開始した。
相手は伏せていたカードをいつの間にか手にしており、ターンを開始した。
「私の手札には既に女神が握られている…フレイ・アルスター《12》!このカードをコロニーにセット」
「フレイ・アルスター?」
「フレイ・アルスター?」
0/0/0という低い戦闘修正を見たナツキは、弱そうなカードだねと思う。
対する相手は、心外そうにそのカードを差し出した。
彼からしてみれば、このフレイ・アルスターが順調に出せるか次第でデッキが動くかどうかが決まるのだが、ナツキはお構いなしだ。
対する相手は、心外そうにそのカードを差し出した。
彼からしてみれば、このフレイ・アルスターが順調に出せるか次第でデッキが動くかどうかが決まるのだが、ナツキはお構いなしだ。
「このキャラクターが場に出た場合、自軍本国から子供を持つキャラクター1枚を手札に加えることが出来るのだ」
「ふーん、で?」
「本国が被っているダメージは3…必ず手にするッ」
「ふーん、で?」
「本国が被っているダメージは3…必ず手にするッ」
そう言いながら本国をサーチする相手。
程なくして、1枚のカードを表にして手札に加える。白の3国力キャラクター…。
程なくして、1枚のカードを表にして手札に加える。白の3国力キャラクター…。
「もちろん、ディアゴ・ローウェル」
「…ん」
「…ん」
ナツキは軽く確認して頷く。
が、瞬時に思い直し「待った!」と声を上げた。
隣の席で対戦していたプレイヤーが迷惑そうな顔をするのも気付かず、手札に加わる寸前のディアゴを指差した。
が、瞬時に思い直し「待った!」と声を上げた。
隣の席で対戦していたプレイヤーが迷惑そうな顔をするのも気付かず、手札に加わる寸前のディアゴを指差した。
「ウチ、そのカード知らない。見せて☆」
半年前のナツキなら「勝手にどうぞ♪」と言ったかもしれない。
だが、今は違う。見れるものは見なければ。相手が意図して引き込んだカードなら尚更だ。
だが、今は違う。見れるものは見なければ。相手が意図して引き込んだカードなら尚更だ。
「良いだろう。表にして手札に加える以上、君にはその権利がある」
相手は静かな口調だが、自信が感じられる。
ディアゴ・ローウェルは、自軍女性キャラクターがいる場合、手札にあるユニット1枚を地球エリアに出してそのユニットに移る効果を持つキャラクターだ。
指定国力はおろか、――5以下であれば――合計国力も無視して出すことが出来るため、ひとつのデッキタイプを形成するほどの存在であった。
ディアゴ・ローウェルは、自軍女性キャラクターがいる場合、手札にあるユニット1枚を地球エリアに出してそのユニットに移る効果を持つキャラクターだ。
指定国力はおろか、――5以下であれば――合計国力も無視して出すことが出来るため、ひとつのデッキタイプを形成するほどの存在であった。
「あー。そっか」
「ターン終了」
「ターン終了」
ナツキはテキストを見ながらそう口にする。
ディアゴの効果を使うには女性キャラが必要で、フレイはディアゴをサーチすることが出来る女性キャラ。
収録されたタイミングは全然離れているのに、驚くほど相性がいい組み合わせだ。とナツキは関心した。
もっとも、カード枠のフォーマットから推測しただけで、2枚のカードがそれぞれどのエキスパンションに収録されていたかまでは彼女は知らない。
ディアゴの効果を使うには女性キャラが必要で、フレイはディアゴをサーチすることが出来る女性キャラ。
収録されたタイミングは全然離れているのに、驚くほど相性がいい組み合わせだ。とナツキは関心した。
もっとも、カード枠のフォーマットから推測しただけで、2枚のカードがそれぞれどのエキスパンションに収録されていたかまでは彼女は知らない。
「なにが出てくるにしても、ウチは無視するもんね。青Gを配備して、攻撃!」
「3点だ」
「ターン、エンド」
「3点だ」
「ターン、エンド」
相手が本国の上のカードに手をかける。
既に手札には3枚目のGカードとディアゴ、そして効果で出すユニットが揃っていて、このターンの動きは決まっている。
既に手札には3枚目のGカードとディアゴ、そして効果で出すユニットが揃っていて、このターンの動きは決まっている。
「待って」
「…?」
「パワーハラスメント。このターン、そっちの手札とハンガーにあるカードは合計国力+1されるよっ!」
「…?」
「パワーハラスメント。このターン、そっちの手札とハンガーにあるカードは合計国力+1されるよっ!」
ナツキは得意な顔でコマンドカードを見せる。
知っているカードが他のプレイヤーより少ない彼女にとっては、使うタイミングを迷う場面も多いカードだ。
だが、相手のキーカードがディアゴだと判明しているこのゲームでは、迷わない。
知っているカードが他のプレイヤーより少ない彼女にとっては、使うタイミングを迷う場面も多いカードだ。
だが、相手のキーカードがディアゴだと判明しているこのゲームでは、迷わない。
「どーだっ☆」
と強気なまなざしを向ける彼女。
相手は許可して、ドローフェイズ規定の効果でカードを引く。
相手は許可して、ドローフェイズ規定の効果でカードを引く。
「3枚目のGを配備した後、ハッキングをプレイ」
「うん。合計国力は+1されて3だね。おっけー」
「うん。合計国力は+1されて3だね。おっけー」
3枚見たカードの一番下。相手は目を見開き、場のフレイ・アルスターを見る。
「やはり女神だ。フレイ・アルスター…」と口走り、一番下のカードを手札へと加えた。
打つべき手を打ったナツキは、様子を見ることしかかなわない。
「やはり女神だ。フレイ・アルスター…」と口走り、一番下のカードを手札へと加えた。
打つべき手を打ったナツキは、様子を見ることしかかなわない。
「遅延という『不幸』が起こっているようだが…それは”わたしの場ではない”」
「…は?」
「モルゲンレーテ試験場を配備。効果によって、そちらのガンダムMk-2にディアゴをセット!」
「…は?」
「モルゲンレーテ試験場を配備。効果によって、そちらのガンダムMk-2にディアゴをセット!」
モルゲンレーテ試験場は、敵軍のガンダムに手札からキャラクターをセットして奪取する拠点ユニット。
効果で出すキャラクターは通常のコストを支払うことが条件であるため、コストに関する効果を適用することが出来ないのだ。
効果で出すキャラクターは通常のコストを支払うことが条件であるため、コストに関する効果を適用することが出来ないのだ。
「ガンダムMk-2を貰い、これで駒は私の手元に揃った…!戦闘フェイズッ」
「う…」
「資源2を支払い、ディアゴの効果を使用…ドジャ~ン」
「う…」
「資源2を支払い、ディアゴの効果を使用…ドジャ~ン」
手札から現れたのは、アルヴァトーレ。
緑と紫の指定国力を持つ00ユニットであるが、ディアゴには”そんなこと”は関係無い。
緑と紫の指定国力を持つ00ユニットであるが、ディアゴには”そんなこと”は関係無い。
「いともたやすく行なわれるえげつない行為」
相手はコインケースからコイン2枚を取り出し、アルヴァトーレにのせる。
マイナス修正を与える粒子コインだ。
即座にテキストが使用され、修正コインは2枚ともアンマンに移る。残りの防御力は1。
マイナス修正を与える粒子コインだ。
即座にテキストが使用され、修正コインは2枚ともアンマンに移る。残りの防御力は1。
「フレイ・アルスターのテキストを使用し、ディアゴのテキストを無効にすると共に戦闘修正を与え…」
「うーんと、6+2+2…格闘10!?」
「うーんと、6+2+2…格闘10!?」
ナツキは数えながら驚く。
3ターン目からいきなりこれは…想像していた以上に酷い。
3ターン目からいきなりこれは…想像していた以上に酷い。
「…受けるよ」
「ターン終了だ」
「ターン終了だ」
ナツキはカードを引き、安堵する。
打点は酷かったが、なんとか間に合った。
ナツキの表情が崩れたのがわかった相手は、眉をひそめる。
打点は酷かったが、なんとか間に合った。
ナツキの表情が崩れたのがわかった相手は、眉をひそめる。
「4枚目のGを配備後、アンマンをロールして5国力目をはっせーい☆」
「よかろう」
「覚悟は良い?…ユニコーンガンダムっ!!」
「よかろう」
「覚悟は良い?…ユニコーンガンダムっ!!」
ナツキは手札の中央に待たせていたそのカードを表にすると、本国のカードを手に取って確認し始める。
反撃の狼煙を上げるためのカードを探す彼女の顔は明るい。
反撃の狼煙を上げるためのカードを探す彼女の顔は明るい。
「あれ?」
本国のカードを器用にスライドさせていた手が、最後の1枚まで確認してピタリと止まる。
少し汗ばんだ指でカードを握りなおし、手早くもう一度本国のカードを確認するナツキ。
最後の1枚…政治特権に再び行き着く頃には、彼女も状況を把握し始めていた。
少し汗ばんだ指でカードを握りなおし、手早くもう一度本国のカードを確認するナツキ。
最後の1枚…政治特権に再び行き着く頃には、彼女も状況を把握し始めていた。
「…ない。デストロイモードがないー!?」
つづく
txt:Y256
初出:mixi(10.07.16)
掲載日:10.07.16
更新日:10.07.16
掲載日:10.07.16
更新日:10.07.16