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#17 呼び出されて


「愛をこめて~花束を~♪」

あたしは口ずさみながら雑誌のページをめくる。
今日は藤野と公旗のいい試合を見せてもらって、あたしも頑張ろうと心に決めたはずだった。けど、帰ってMステ見てお風呂入ったらそんなこと忘れてたし…。
ぼけっとそんなことを考えてると、机の上のケータイが鳴る。この着信音はメール。

『明日カキヨに来てくれ』

松岡だ。すげーそっけないメール。
てか、松岡から誘ってくるのすごい久しぶり。いつもは藤野があたしたちを誘って遊ぶのに…まぁ藤野に頼まれた松岡が、ってことも考えられるけど。

『いいけど、松岡が誘ってくるの珍しいね』

と返信する。
でも、メールはそれきり返ってこなかった。

「京子、明日早いから俺は寝るぞー」

親父があたしの部屋の扉の前で言った。そういえば明日はゴルフとか言ってたっけ。

「うん、おやすみ♪」

あたしは部屋のドアを開けて、顔を出して親父に言った。
松岡から返信ないけど、あたしもそろそろ寝ようかな…。

×××

前髪のクセを直しながら、あたしは歩いた。今日は雨降るっていうから、自転車じゃなくて傘2本持参。
1本は結局返すの忘れてたカキヨ婆から借りたやつ。

「おっちゃん、今日は何が安い?」

商店が点在する道の向こうに『おもちゃのカキヨ』はある。
あたしは肉屋の前で足を止めて、カウンターで暇そうにしてる『肉の赤坂』のおっちゃんに声をかけた。

「おぉ、京子か。今日は鳥だな」
「じゃあ帰りに寄ってくかも」
「おまけしてやるから絶対寄ってけ」

おっちゃんは、押し付けがましい笑顔であたしに手を振る。今日の晩飯は鳥っと。

あたしは『カキヨ』の扉を開けた。いつもどおり暗い店内。…入り口の”電池で動く恐竜型ロボット”は1個減っていた。
カキヨ婆はカウンターでうとうとしている。

「カキヨ婆?傘返しに来たよ」

あたしの声でカキヨ婆は起きる。起しちゃ悪かったかな…?

「あぁ~京子かい。松岡なら隣だよ~」

そう言ってカキヨ婆は空き家のほうを指差した。
あたしは「ありがと」と言って店を出る。空き家に入る前に、結局直らなかった前髪をピンで留めた。

「おは。松岡いるー?」

中には、テーブルでカードを広げる松岡がいた。少し怒った感じ…かな?

「京子、おせーぞ。俺たちは昼前からいるんだからな!」
「いや、時間指定してないでしょ!」

あたしは反論する。
そこで気付いた。”たち”って、藤野もいるの?
あたしは、松岡のいるテーブルの向こうを見る。最初は気付かなかったけどそこにはもう一人、中学生くらいの少年がいた。
座高から考えられる身長は、松岡よりずいぶん小さい感じ…あたしより小さいかも。そのくせ髪の毛は松岡と同じような明るい色に染めてある。

「で?そっちの彼は?」

あたしは少年を指差す。

「こいつは…」
「アニキ、自己紹介は自分が。…松岡アニキの一番弟子!栗田 幹夫だ!おまえ…京子だな?」

少年は立ち上がりあたしの前に立つ。背はかろうじてあたしのほうが大きい。
松岡の弟子?てかすげー見下した言い方!むかつく!

「ふーん」

怒りを抑えて、あたしは手提げカバンを机に置く。

「今日はこいつの相手をしてもらおうと思ったんだが…」

松岡は平然と言った。

「は?松岡がしてやればいいじゃない。師匠なんでしょ?…藤野は来ないの?」
「俺とは何回も戦って、手の内が読めすぎなんだ。藤野は誘ったんだが…まだ来てない」

なるほど、どんな経緯で松岡の弟子になったのかは知らないけど、戦う相手が必要だったわけね。

「いいわ。初心者講習みたいなもんね」
「初心者講習?本気で来いや、京子!」

一瞬松岡が言ったのかと思ったけど、それは栗田の台詞だった。なんでこんな喧嘩腰なわけ?呼び捨てだし。

「態度悪いガキね。いいわ、叩きのめしてあげる。負けたらあたしのこと『京子ねえさん』って呼びなさいよ」

勝てる保証がないけど、松岡の弟子ってくらいなんだから、松岡への対策ができてるこのデッキなら普通に回れば勝てるわ、たぶん。

「おい、大人気ないぜ京子。それに『京子ねえさん』ってなんだよ」

松岡が呆れてあたしを止める。しかし、栗田は笑って「いいっすよアニキ、俺やります」と言った。

「でも、京子が負けたら…胸触らせろよ!」

と言ってあたしの胸を指差す。
は!?なんでそうなるわけ?エロガキ!死ね!

「なんでそうなるわけ!?」

一呼吸おいたおかげで冷静に返せた。

「いや、条件出してきたのはそっちだろ?だからこっちも条件だぜ!」

一瞬納得しそうになったけど…おかしいでしょ!

「いいじゃないか京子、おもしろそうだ。それに、お前のパンケーキ並みに薄い胸、触ったところでどうにかなるわけじゃないしな」

松岡は口を押さえて笑った。
パンケーキ?例えが意味不明!欧米か!

「そういう問題じゃない!」
「じゃあはじめるぜ。シャッフル早く終わったほうが先攻で」

そう言って、デッキを10の束にわけ始める栗田。なんだその俺ルール…。
そう思いつつも、あたしは手を動かす。もう後には引けないか…なら、勝つしかないわね!そのためには、

「シャッフルでも負けるわけにはいかない!」

あたしは手に握られたカードを、横にばら撒くように切り分ける。これぞ京子スペシャル!
なんとか先にシャッフルしたあたしは、「ドン」と音を立てて栗田の前にあたしのデッキを置く。

「早っ!!」

テーブルの横に座り、観戦しようとしていた松岡が驚いた。さすがにシャッフル鍛えてるだけあるわ(ウソ)

「じゃあ、しょうがないから京子先攻で」

栗田は悔しそうな顔ひとつしないでそう言った。

「当然。じゃあ始めるわよ、手札はこのままでいいわ」
「俺もだ」

あたしはターンを開始した。白基本Gを場に出してターン終了する。

「アニキ、見ててください。俺はこいつを倒して、胸を揉んで見せますよ!」

アホなことを言いながら、栗田はドローする。

「配備フェイズ、白基本Gを場に出すぜ」

栗田は手札から白の基本Gを出す。
白!?松岡の弟子って言うくらいだから当然黒かと…。
まさかのミラーマッチに、あたしは不安を覚えた。

つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.06.06
更新日:10.04.14