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#22 大会へのリベンジ


「今日は松岡は?」

あたしは机に荷物を置きながら、藤野のほうを見た。
土曜日の今日は、藤野の誘いで『カキヨ』の大会に出ることになってたけど、木曜、金曜と風邪で学校を休んだ松岡…あいつ来るのかなぁ?

「あーそういやさっきメール着たぞ?遅れるけど来るって」
「ふーん」

どうでもいい風を装ったけど、あたしは内心大激怒だ。
詩織とデートしなくて、大会には来るってわけだ。まぁここに来ないことには問いただすこともできないわけだけど…。

『カキヨ』に早くつきすぎたのか、空き家には私たち二人しかいなかった。
フリープレイを挑んできた藤野に、あたしはデッキケースからデッキを出す。

「どうしたんだよ。今日変だぞ?」

藤野がGを出しながら、あたしの顔を見る。あたしは「そんなことない!」と言った。口調が強くなりすぎた…ぜんぜんそんなことあるじゃん。

「ターン終了」

あたしは、自分の3ターン目の終了を宣言した後、手札にバックホームがあるのを忘れてたことに気付く。
…最悪だ、心ここにあらずでまともにプレイもできないなんて。

「俺のターンだな?」
「投了」

あたしは静かに言って、一人でデッキを片付けた。

「はぁ?」
「お、いるな?少年少女」

藤野が眉をひそめた向こう側で、空き家のドアが開いた。

「公旗…さん」

あたしと藤野の視線は、今入ってきた公旗のほうに向けられる。
公旗は荷物を置きながら「今日は少し早くつきすぎたかな?菊池も信一郎もまだのようだ」と言った。

「時間もあることだし、どうかな?お嬢さん」
「あ、えっと。今日は遠慮しときます」

デッキケースを出す公旗に、あたしは頭を下げた。さっきみたいにテキトウな戦いじゃ、きっと迷惑だ…。

「こいつ、今日なんか変なんです。俺と戦いませんか?」
「そうか…。いいだろう藤野少年」

公旗はあたしのほうをチラッと見て、藤野とフリープレイを始める。あたしは黙ってそれを観戦する。
今日の大会はやめようかな…。こんなんじゃ相手に迷惑かけるだろうし。

「どうしたんだい?そんな顔して」

あたしの頭をぽんぽんと叩く誰か。振り返ると、そこにはいつの間にか信ちゃんがいた。

「お久しぶりです」
「今日は大会に出るんだね?」

信ちゃんはそう言って、一番前の机にスコアシートとかを置いた。
あたしは信ちゃんの問いに首を振る。

「今日は…出ません。少し考えることがあって」
「悩み事かな?」

後ろで結われた長い髪を揺らして、信ちゃんは振り返る。

「はい…」
「うん、なら大会には出るといいよ。ここまで来たんだ、何もせずに帰ることはないだろ?それに…」

信ちゃんはフリープレイをしている二人を見る。公旗がカードを出しながら笑っている。

「ゲームをしているときは、悩み事を忘れられる。違うかい?」

違います。あたしはそう答えそうになり、とっさに「はぁ…」と言った。
信ちゃんの好意を無駄にするわけにもいかない…よね。

「じゃあ決定」

あたしの「はぁ…」を参加の意思とった信ちゃんは笑った。
気付くと、参加者たちが空き家に集まってきていた。藤野たちはフリープレイを終え、周りの人と話している。

「あの…ひとつお願いがあるんですが…」

あたしは口を開く。信ちゃんは「なんだい?」と言ってあたしのほうを見る。

「今日、少し遅れてくる友達がいるんです。その…」
「わかったよ。ただし、1回戦の全部の試合が終わるまでに来なかったら、不戦負だよ?」

信ちゃんはあたしの言わんとすることをすぐに理解し、そう言ってくれた。そろそろ大会が始まる時間だ。
信ちゃんはスコアシートを広げ、裏返しにして軽く混ぜた後、机に1枚ずつ置いていった。

「これより試合を始めます。自分のスコアシートがある席についてください」

信ちゃんは良く通る声でそう言った。
あたしは自分お名前を探す。そういや、1ヶ月前に初めて試合に出たんだっけ…早いもんね。
あたしのスコアシートは、一番端の席にあった。そして対戦相手は…

…松岡 勇。
偶然か、それとも全てお見通しの信ちゃんの仕業か…そんなことはどうだっていい。松岡に問いただす時が来た。

「では、1回戦をはじめてください」

信ちゃんが言った。今日の参加者は8人。
田舎の大会だから、面子はそう変わらない感じ。公旗と戦ってる人は記憶にないから、前のときはいなかったハズ。
あたしは藤野の机に行く。あいつは手札のチェックを終え、ゲームを始めるところだった。相手は、確か前の大会で優勝した菊池とかって人。前回はガンダムデッキだったけど、今回もだろうか?

松岡と面と向かって話すことができるのがわかったせいか、あたしは少し気が楽になっていた。
切り替えろ、京子。

「京子?なんだ、お前また不戦勝?」

藤野があたしのほうを見て言った。そういや前の大会も1回戦は藤野の戦いを観戦したっけ。

「ううん、今日は違うよ。1回戦は松岡待ち」

あたしは笑って答えた。今は笑える。
そうよ、きっと松岡にも、なにかデートできない理由があるはず。だからそんなにくよくよせずに目の前の戦いを楽しめばいいわ!

×××

「黒基本Gを出して、ガンダム(ラストシューティング)をプレイします」

先攻の菊池が言った。丁寧な言葉使いで藤野に許可を取る。藤野の場には、内部調査と赤基本G2枚、周辺警護の特殊Gが1枚だ。
松岡はまだ来ない…。

「はい」
「ではミリバラで4回復。何もなければターン終了」

菊池はそう言った。菊池の場には青と黒のGが2枚ずつあり、さらにミリタリーバランスがあった。青黒ガンダムだろうか?いや、この人がガンダムと決め付けるのはよくない。

「ドロー、青基本Gをプレイして密約。さらにサラサ再臨をプレイ」

藤野は本国の上のカード5枚を見る。前も思ったけど、カード傾けすぎじゃない?5枚のカードは、あたしの位置からでも確認できた。藤野は迷わず中央にあったガンダムエクシアを手札に加えた。
ガンダムエクシア…00ユニットの中でも防御面で抜きん出た能力をもつユニットね。早い段階から手札に持てると安心。それに、キャラが乗ってないユニットの格闘を*にできるから、事実上ラストシューティングは無力化!

「ターン終了」
「ドロー。黒基本Gを出して、攻撃ステップ。ラストシューティングを宇宙に出撃させるよ」

追加されたのはGだけ。少し不気味だけど、まずはエクシアね。

「防御ステップ、介入だ。ガンダムエクシア!効果を使用するぜ」
「…カットイン。ラストシューティングに刹那・F・セイエイをセット」

冷静に対処する菊池。これでエクシアのテキストは空振りで相打ち…でもラストシューティングの効果は起動してしまう…!!
藤野のジャンクには密約とサラサの2枚だから、ラストシューティングの格闘は7。藤野の本国の上のカードが、7枚廃棄される。これでジャンクヤードはエクシアを加え10枚。2枚目のラストシューティングとかがあったらひとたまりもないわね。

「回復がほとんど無意味…さぁ、どうするかだな」

藤野が言った。確かに惹かれあう魂のような回復カードじゃ、ジャンクに落ちてしまったカードは回収できない…ってことは下手にラストシューティングを破壊せずに、ダメージ受けまくって全回復すればいいんじゃ?

「ターン終了」
「ドロー。またジャンク増えちまうがしょうがね、サラサ再臨」

藤野は手札にカード1枚を移して、すぐにそれを出す。

「ガンダムヴァーチェ!」
「カットインで周辺警護。対象は内部調査で」

また冷静に…着々とジャンクが増えてるわね。

「考えてもどうにもならない…出撃するぜ!」

藤野はヴァーチェを地球に出撃させる。菊池は本国に5点受けて、ターンを開始した。

「政治特権をプレイ、カットインで急ごしらえ」
「どうぞ」

菊池の手札が一気に増える。このターン、来る…!
藤野もそう思ったのか、顔をしかめる。

「カードは来るんだけどね…肝心のあれが来ないよ。まあいいか。ガンダム(ラストシューティング)をプレイ。ミリバラが起動」
「どうぞ」

藤野…こういうときにカウンターがないわけね。まぁ、あと1ターンあるわ。

「アストナージをプレイ」

アストナージ!?やば…ここでリロールして出撃してくる!

「いや、作戦の看破で」
「了解だ」

危ない…看破は持ってたってわけね。

「では、別のキャラクターで行こうかな。ライラ・ミラ・ライラ(1)をラストシューティングに」
「はい…?」
「あぁ、このキャラクターは、与えたダメージ分の捨て山のカードを、帰還ステップにジャンクヤードに送るキャラクターだ。格闘も2ある」

うえ…。これじゃダメージを受けた後回復戦法もダメだわ…。もしかしてアストナージは囮だったりした…?いやそんなわけ…。

「ターン終了」

菊池は静かにターンを終えた。

「ドロー…いいカードだ。アストナージをカウンターしておいて正解だったぜ」

藤野は引くなり宣言した。そんなこと言っていいのか…。

「宣言しちゃっていいのかな?」
「はい」

藤野は笑って「攻撃ステップ、ヴァーチェを地球に出撃」と言った。このターン使えるカードじゃないわけか…

「受けるよ」

それを見た藤野はターンを終了した。
菊池が待ってるカードはなんだろ…あたしは菊池の顔を見た。

松岡、まだ来ないなぁ…


つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.06.16
更新日:10.04.14