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#27 旅立つ友の背中に


「じゃあ、エマ・シーン(4)をツヴァイにセットして効果でドロー、地球に出撃だ!」
「今場にあるユニットはツヴァイ1枚。使わせてもらうわ、寸断!」

コストの合計値が一番低いユニットを破壊する白のコマンド…ユニット1枚の今の状況じゃ、確実にツヴァイを破壊できるわ!
本当はもっと早く使いたかったんだけどね…そのためにハイマットとか犠牲にしたのに。

「ヴァリアブルにするか迷って正解だったぜ…エマでドローしたこの1枚の手札、慈愛の眼差し!」
「破壊無効カード!?」

おっと予想外…!
松岡は資源7を支払いツヴァイの破壊を無効にした。

「いいか?7点だぜ?」
「いいわ7点受けてあたしの本国は1枚…」
「つまり、負けだな」

松岡がうれしそうに口を開く。
いいえ、負けじゃあないのよ、これが!

「リロールフェイズにこのカードをプレイするわ!」

あたしは、あたしを勝利に導くカードをプレイした。

「清浄なる世界か!?」
「なに期待してんのよ?あんたの本国なんか回復させますか!それぞれのできること(10)よ!」

手札とGを好きな枚数廃棄して、その3倍回復するコマンド。
使うタイミングが微妙だったからとっておいたけど、まさかここまで本国が削られるとはね…このカードのタイミングに感謝。

「あんたは手札なし、本国は慈愛の資源で残り数枚…回復するけどいい?」
「あぁ…投了だ」

松岡は手をあげる。勝った!
…これでまだ1回戦なのよね。藤野はどうなったのかしら?

「慈愛をヴァリアブルにしておけばよかったのに」

あたしはカードを片付けながら言った。
あそこで慈愛で回復されたら、どうなっていたかわからなかったのに。

「そうか?Gとか廃棄すると結局負けだぜ」
「ていうか慈愛とか持ってたのね。フォトグラフでも買ったの?」

あたしたちは、日々遊んでるから相手が持ってるカードは結構知ってるつもりだったのになぁ…いつの間に手に入れたんだろ?

「あれはな…」
「松岡、詩織のことなんだけど…」

松岡の言葉を遮って、あたしは思い出したかのように言った。実際忘れさせてもらってたんだけどね。
ここまできたらもうノリで話すしかない!

「な、なんだよ?」
「付き合ってるんだって?」

あたしはデッキをトントンと机でならし、ケースにしまう。松岡は、なんであたしがそのことを知ってるのかと驚いた様子。

「なんで知ってるんだよ?」
「ばーか。詩織に相談されたに決まってるでしょ?」

場に流れる静寂。

「そ…そうか」
「そうよ!詩織、悩んでたよ。あんたの気持ちがわかんないってさ。デートとか最初の1回以外行ってないんでしょ?」

松岡は黙る。
なによ!何とか言いなさいよ!

「俺さ、初めてだからそういうのあんまわかんねぇんだ…」

松岡がようやく口を開く。そこから出たのは意外な言葉。
あれ?あたしの予想だと、女経験多い松岡が他の理由かなんかで、詩織と上手くいってないって感じだと思ってたんだけど…??

「…と、ともかくデートしてみなさいよ!」

無理やり感のあるあたしの台詞。
あたしだって経験ないんだから…そういうアドバイスはできっこない。

「そ、そんなもんかよ!?」
「そんなもんよ、きっと!」

あたしは断言した。
なんだ、松岡も悩んでたんじゃん。
心の靄が晴れたわ。

そして、あたしにできることはもうない…。

「松岡、詩織のこと好き?」
「…ああ。無論だ」

やや唐突気味に聞いたあたしに、松岡はきっぱりと答える。

「なら、行って二人で考えなさいよ」

そう、お互いのことを想いあってる二人で考えれば、きっとなんとかなるよ。
あたしは詩織の家までの道を書いた地図を、松岡に渡す。

「そう…だな。サンキュ、京子!…この地図じゃわかんねぇだろ」
「そんなのどうにかしなさいよ!さ、行った行った!」

あたしは手を振って松岡を促す。

「いろいろありがとな、京子。俺、行ってくるわ!」
「うん」

松岡は出口に向かって歩き出す。ふと見ると、机に残されたデッキケース。

…それが意味するのは一つだ。

「そうだ京子…幹夫を頼む。エロガキだけどな」

松岡は扉に手をかけたところで振り返った。

「まかしといて。あたしの弟子にしてあげる」

あたしは拳を出す。松岡は安心した顔で「じゃあな」と手を振って扉を閉めた。


…去っていった友。
でもあたしや藤野との仲は変わらない…はず。


 ”藤野、京子、これやろうぜ”

 ”黒中なめんなよ藤野?”

 ”ギャプランに歯向かうなぁ!”

 ”ターン終了だ、京子”

松岡の言葉が蘇る。
何でだろう…涙が出るよ…。

「トイレ…貸してください」
「いいよ。大丈夫かい?」

信ちゃんは一部始終を見ていたのか、涙目のあたしを気遣ってくれる。

「はい。全然大丈夫です」

そう言ってトイレに入った。

つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.06.24
更新日:10.04.14