ATAGUN@Wiki
#29
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#29 あたし対イカサマ
「今さっき、あたしは昔からの友達を快く送り出したとこなの。それなのにあんたね…最低よ、イカサマなんて!」
あたしは伊賀を指差して強い口調で言った。伊賀は何も動揺することなく、本国から1枚カードを捨て山に移す。
たった1枚…そのために公旗は助言してきたんじゃない。”これが伊賀という人間なのだ、今後も注意しろ”と忠告してきたんだ。
たった1枚…そのために公旗は助言してきたんじゃない。”これが伊賀という人間なのだ、今後も注意しろ”と忠告してきたんだ。
「だから…」
「もういいです、続けてください」
「もういいです、続けてください」
何か言おうとした伊賀に、あたしはきっぱり言った。
こいつだけは絶対に倒す!
あたしは手札を持ってないほうの手を握り締めた。
あたしは手札を持ってないほうの手を握り締めた。
「配備フェイズ、密約をプレイ」
伊賀は本国の上から、カードを2枚ドローした。
「黒基本Gをプレイ、ガンダムヴァーチェをプレイします」
「はい…どうぞ」
「はい…どうぞ」
藤野がよく使うカード。
でもこいつが使うそれは、藤野と同じカードのはずなのに、どこか禍々しい。
バックホームを帰したのは、このターンで破壊できるから…。
でもヴァーチェがあったなら、さっきのターンでプレイしてバックホーム破壊したほうがはやい…ということは、今引いた…?
そんなタイミング良く来るんだ?何かイカサマ…?いや、考えても…。
でもこいつが使うそれは、藤野と同じカードのはずなのに、どこか禍々しい。
バックホームを帰したのは、このターンで破壊できるから…。
でもヴァーチェがあったなら、さっきのターンでプレイしてバックホーム破壊したほうがはやい…ということは、今引いた…?
そんなタイミング良く来るんだ?何かイカサマ…?いや、考えても…。
「なにもなければ攻撃ステップ、宇宙エリアにガンダムヴァーチェを出撃させます」
「なにもありません…」
「なにもありません…」
あたしは本国に5点のダメージを受ける。
伊賀は「じゃあ範囲兵器を」と言って資源を払う。範囲兵器の効果で、バックホームは破壊された。
伊賀は「じゃあ範囲兵器を」と言って資源を払う。範囲兵器の効果で、バックホームは破壊された。
「ターン終了」
「ドロー…」
「ドロー…」
バックホームを破壊されたことで、序盤のドローが乱れたのかなぁ…Gが来ない。
とりあえずの4G。ストライクノワールで攻撃してもいいけど、ここは手札を切ってヴァーチェを破壊することを考えたほうがいいわね。
とりあえずの4G。ストライクノワールで攻撃してもいいけど、ここは手札を切ってヴァーチェを破壊することを考えたほうがいいわね。
「配備フェイズ、ハッキングをプレイします」
「許可です」
「許可です」
…3枚の内にGはなし。でも、ハッキングがなかったら、しばらくGを引くことができなかったわけだから結果オーライ!
「プラント最高評議会を出してストライクノワール!」
今引いたばかりの、プラント最高評議会を出す。これで次のターンは確実にGを確保できる!
「ターン終了よ」
「ノワールは00のユニットと相性がいい…事故気味のGの展開を補助するために、防御にまわりますか…」
「ノワールは00のユニットと相性がいい…事故気味のGの展開を補助するために、防御にまわりますか…」
伊賀はドローしながら言った。
さっきから思ってたけど、この人喋り方が変。力がこもってないっていうか…棒読み。
さっきから思ってたけど、この人喋り方が変。力がこもってないっていうか…棒読み。
「そんなところよ」
「配備フェイズ、赤基本Gをプレイして攻撃ステップ」
「配備フェイズ、赤基本Gをプレイして攻撃ステップ」
伊賀はヴァーチェを宇宙に出撃させる。
普通に考えれば、ノワールのテキストであたしの手札にある4国以上のカードと、ヴァーチェの1対1の交換だけど…なにかあるの?
普通に考えれば、ノワールのテキストであたしの手札にある4国以上のカードと、ヴァーチェの1対1の交換だけど…なにかあるの?
「ちょっと考えさせてください」
「どうぞ」
「どうぞ」
あたしは、戦闘エリアにいるヴァーチェを前にして考えた。
アドバンテージは失わないはず。でもなんだろう…この感じ。
アドバンテージは失わないはず。でもなんだろう…この感じ。
「ストライクノワールを宇宙に出撃!」
あたしはノワールを宇宙に移す。
考えたって仕方ない!手札からスピットブレイクを切ってヴァーチェを破壊してやる!
考えたって仕方ない!手札からスピットブレイクを切ってヴァーチェを破壊してやる!
「では、同じ防御ステップに…カードをプレイします」
伊賀が静かに口を開いた。
…エクシア?でもね、ノワールの効果で最低でも1枚ユニットを破壊させてもらうわ!
…エクシア?でもね、ノワールの効果で最低でも1枚ユニットを破壊させてもらうわ!
「野望の毒牙…対象はGになっているロゴスの私兵」
「!?」
「!?」
しまった…!?赤黒には、ランデスにもなる破壊カードが!
あたしは震えそうだった左手で、机の端を握る。
Gは3枚…ノワールは効果を使えずにただ破壊されるだけ…。
あたしは震えそうだった左手で、机の端を握る。
Gは3枚…ノワールは効果を使えずにただ破壊されるだけ…。
「いいですか?」
「はい…」
「では何もなければ、通常の交戦でノワールは破壊」
「はい…」
「では何もなければ、通常の交戦でノワールは破壊」
その後、伊賀はターン終了を告げた。
…あたしのGは事故とランデスで3枚、対して先攻の伊賀は6ターンで6枚の基本G。
…あたしのGは事故とランデスで3枚、対して先攻の伊賀は6ターンで6枚の基本G。
「最高評議会の効果を使用します」
「では、カットインでサラサ再臨を」
「どうぞ」
「では、カットインでサラサ再臨を」
「どうぞ」
あたしは、最高評議会で移す手札を並べるところだったので、伊賀を見ないで許可を出した。
なんでこのタイミングでサラサ…?
あたしは伊賀のほうを見た。
しまった…!
伊賀は”6枚のカード”の中から、1枚選んで手札に加えていた。
なんでこのタイミングでサラサ…?
あたしは伊賀のほうを見た。
しまった…!
伊賀は”6枚のカード”の中から、1枚選んで手札に加えていた。
「あ…」
あたしはあっけにとられて、それしか言うことができなかった。
その間に、伊賀は残りの”5枚”を本国の下に移す。
その間に、伊賀は残りの”5枚”を本国の下に移す。
「はい?」
「い…今、カード何枚見てました?」
「サラサですから5枚ですけど?」
「い…今、カード何枚見てました?」
「サラサですから5枚ですけど?」
そんなわけない…今のは絶対6枚だ。でも、もう遅い…Gの枚数の差から来る焦りと、最高評議会の効果を考えていたあたしの隙を突いてきたんだ…くそ!
そういえば、さっきのドローのときも不自然なこと言ってた…あれも何か別のイカサマにつながって…。形式的な台詞だから、棒読みに聞こえたんだ!
そういえば、さっきのドローのときも不自然なこと言ってた…あれも何か別のイカサマにつながって…。形式的な台詞だから、棒読みに聞こえたんだ!
こいつ…黒すぎる…全ての行動がイカサマにつながってるっていうの?
「配備フェイズ、白基本Gを出して中東国の支援」
「許可です」
「許可です」
手札はそろってきてるんだけど、Gが間に合わない…
ここは時間を稼いで。
ここは時間を稼いで。
「部品ドロボウをヴァーチェに」
「許可です」
「許可です」
その間も伊賀は、ペチペチと小さな音を立て、本国の一番上のカードを触っていた。
あたしが何もできないとわかって、ドローの準備?いや…イカサマ?
あたしが何もできないとわかって、ドローの準備?いや…イカサマ?
「ちょっと!なにしてんの!?」
「触ってるだけですが?」
「だから…」
「触ってるだけですが?」
「だから…」
なんて言えばいい?これってルール違反なの?
「ターン終了!」
あたしは怒鳴りつけた。
「リロールに切り開く力をプレイします」
「許可です。追加ドロー…」
「許可です。追加ドロー…」
そう言って、通常のドローと同時に追加ドローする伊賀。
伊賀の手札は5枚…このターンは何もできないはず。次のあたしの攻撃で逆転できる…か?
あたしは心に現れ始めた”怯え”を隠し、伊賀がターンを終了するのを待った。
伊賀の手札は5枚…このターンは何もできないはず。次のあたしの攻撃で逆転できる…か?
あたしは心に現れ始めた”怯え”を隠し、伊賀がターンを終了するのを待った。
「ターン終了。何をそんなに怯えているんだい?」
あたしの心を見透かしたかのような伊賀の言葉。
「そんなわけあるかぁ!」
あたしは机の端を叩く。
語尾が震えているがバレただろうか…それに伊賀の今の言葉はまた棒読み。作戦だ…。
語尾が震えているがバレただろうか…それに伊賀の今の言葉はまた棒読み。作戦だ…。
「ともかく…あたしのターン。このまま…押し切る!」
あたしはドローし、白Gを出した。
「フリーダム(ハイマット)をプレイ!地球に出撃!」
今度は確実に数えさせてやる!6点を!
「防御ステップ、エクシアを地球に出します」
「カットイン、オペレーション・スピットブレイク!宇宙に逃げさせてもらうわ」
「では、ダメージ判定ステップにザンネック・キャノンをハイマットに」
「カットイン、オペレーション・スピットブレイク!宇宙に逃げさせてもらうわ」
「では、ダメージ判定ステップにザンネック・キャノンをハイマットに」
破壊カード!エクシアであたしの手札を誘って、出てきたところを殲滅された…。
「…ターン終了」
「ドロー」
「ドロー」
イカサマはあたしが思ってた以上に、アドバンテージを得られるんだ…。それこそ、パワーカードを連打できるほどに!
ダメだ…違いすぎる…。
きっとあたしが気付かないところでも、たくさんのイカサマでゲームを有利な方向に持っていってる…。
ダメだ…違いすぎる…。
きっとあたしが気付かないところでも、たくさんのイカサマでゲームを有利な方向に持っていってる…。
やめればよかったんだ。
あたしなんかが戦える相手じゃない。
あたしなんかが戦える相手じゃない。
あたし、いつも強気なこと言ってるけど、本当は強くない。全部強がり。
今だって、泣き出しそうなのに…なんでここに座ってるんだろう…バカ。
今だって、泣き出しそうなのに…なんでここに座ってるんだろう…バカ。
伊賀はヴァーチェをプレイしたらしく、知らない間にエクシアとヴァーチェが攻撃に出撃していた。
いっそのこと、ここで10点受けてこのまま負けようか…。あたしにはそれがお似合いかもね…。
いっそのこと、ここで10点受けてこのまま負けようか…。あたしにはそれがお似合いかもね…。
「どうしたんです?10点ですよ?」
「えぇ…受けま…」
「えぇ…受けま…」
あたしは宣言しようとした、その時。
「京子!イカサマなんかに負けるなよ!」
少し離れた席で対戦していたはずの藤野があたしに向かって叫んだ。
「藤野…」
あたしは手札を見た。
まだ粘れる手札があるのに、あたしなに考えてるんだろ…こっちのほうがバカみたい!
ありがと、藤野。
まだ粘れる手札があるのに、あたしなに考えてるんだろ…こっちのほうがバカみたい!
ありがと、藤野。
「お嬢さん…」
後ろに立っていた公旗も口を開く。まるで「諦めるな」と言うように。
信ちゃんもあたしに向かって微笑んでる。
ありがと、公旗、信ちゃん。
信ちゃんもあたしに向かって微笑んでる。
ありがと、公旗、信ちゃん。
「ギャラリー…うるせぇ…」
その様子を見て、伊賀がイラついたように言った。
これは棒読みじゃない…おそらくこっちが本性…。
これは棒読みじゃない…おそらくこっちが本性…。
「伊賀…カードゲームは一人じゃできないのよ。防御ステップ、フォースインパルスをプレイ!宇宙のエクシアを防御するわ!」
「なに言ってるんです?意味不明。エクシアの効果を使用、雲散霧消でインパルスの宙間戦闘を無効化して討ち取りです」
「結構!」
「なに言ってるんです?意味不明。エクシアの効果を使用、雲散霧消でインパルスの宙間戦闘を無効化して討ち取りです」
「結構!」
もう迷わない!イカサマに惑わされちゃダメだ!まっすぐ、相手だけを見ろ!本田京子!
「5点受けて、あたしのターン!!最高評議会で手札を入れ替えて…配備フェイズ、STARGAZER!」
「っ…。許可だ」
「っ…。許可だ」
あたしは勢い良く手札からカードを出す。
「最高評議会を取り除いて、2ドロー!」
今できることは、相手に怯えることなんかじゃない!
…自分のデッキを信じてあげること!
…自分のデッキを信じてあげること!
「このカードで逆転よ!!」
つづく
txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.06.27
更新日:10.04.14
掲載日:08.06.27
更新日:10.04.14