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#31 放たれた21弾


遠くで鐘が鳴る。
…なんの鐘?

「って、うわぁ!」

あたしは、それが家のベルだと気付くと同時に、ベッドから落ちた。
時計は朝の11時を刺している。あ、そういや今日…。

「はいはい?」

あたしは、昨日ちあきに切ってもらったばっかりの髪をぐしゃぐしゃっとしながら、玄関の扉を開けた。

「うわっ…なんスかその格好?あんまり遅いんで、藤野さんが迎えに行って来いって」
「あー、そりゃどうも。あいつ自分で来なさいよ、自分で」

あたしはそう言いながら、玄関の扉を閉めた。


あたしのガンダムウォー Season2


暑い日差しの中、あたしは手に持った団扇を動かした。

「あー、暑い暑い暑いー!」
「そんなに暑い暑い言っても変わりませんて」

栗田があたしの背中を押す。
少しは歩き安くなった反面…。

「あんた…それ以上”下”触ったら殺す」
「っ…ばれたか」

図星かよ!
あたしは少し歩みを早くして栗田の手を離す。

「あんまエロいと、早死にするんだってよ!テレビの伝道師が言ってた」
「んなわけないですって。そしたら世の中の男全員!」
「あ、そっか!」

あたしたちはそんなやり取りをしながら、カキヨのドアを開けた。

「武志たちならもう来てるよ~」

あたしと栗田を見たカキヨ婆は、そう言って空き家の方向を指差した。
今日は、21弾が遅ればせながらあたしらの地方にも入荷する日。
なのにあたしは寝坊…不覚だ。

「らしいね。21弾まだある?」

あたしは前髪のねぐせを押さえつけながら、カキヨ婆に聞いた。
20弾のときはなんか発売日から品薄だった気がするから、ちょっと心配になった。

「まだあるよ。今回は少し多めに入荷したからね~」

そう言ってショウウィンドーの中を指差すカキヨ婆
あたしは1BOX買って、カキヨを出た。

「もっとパーっと買って、俺に茶のカードくれよ姉さーん」

栗田がぶーぶー言う。
いやいや、1BOXでも頑張ったほうよ?

空き家の前に来て気付いたけど、今日は結構人がいるみたい。
発売日だし土曜だからかな。

「チワー」

前にいた栗田が、相変わらずすべりが悪いドアを開けた。
中は別に冷房があるわけじゃないので、外と変わらない温度。

「あ゛?」

あたしは最初に目に入ったものに驚き、間抜けな声を上げた。
空き家の中には、端のテーブルで公旗と菊池さんに混ざって買ったばかりのカードを広げて話をしている武志と、なぜか大会ある日でもないのにガラスを拭いている信ちゃん。
そして、中央のテーブルで対戦形式でカードを広げているのは…松岡と詩織。
…詩織!?

「ちょちょちょ…!」

あたしは上手く舌が回らず、わけわからんことを言いながら、二人のテーブルに駆け寄る。

「なんだ、京子か」
「あ、京ちゃん」

二人はあたしの顔を見て、普通の反応を見せる。
ん?

「いや、なんでここにいるわけ?」
「勇くんがカードゲーム教えてくれるって言うから」

ふーん。
彼女にそんなん教えんなや。
てか…

「松岡、あんた止めたんじゃないの?」

あたしは面倒だからストレートに聞いた。
確かに一月ほどまえの大会でデッキを置いて、「栗太を頼む」とか言って出てったはず。(#27参照)
あの感動の(?)別れはなんだったわけ?

「いや、休止だよ休止」

なんだそれは…。

「じゃあ、なんでデッキ置いていったの?」
「あー。あの時は完全に忘れてたぜ」

まさか…まさか?
あたしはある可能性を考えながら、もうひとつの質問をする。

「”栗田を頼む”…って?」
「相手してやれなくなるだろ?だから」

うーん。これは、まさかの…あたしの勘違い?

去っていった友。でもあたしや藤野との仲は変わらない…はず。

とか思い出して自分で、なんか急に白けた。

「あぁーもういい!栗田、やるよ」

あたしはデッキケースを出して、栗太に対戦を促した。
21弾開封しようかと思ったけど、なんか気分がすぐれませんわ(笑

「えー、先に開封ー」
「いーや!対戦が先!」

デッキのカードを10枚ずつに分けてシャッフルを始めたあたしに、松岡が数枚のカードを渡す。

「何これ?」
「白の新しいカード、使ってみてくれよ」

こいつ、そんな急に…まぁいいか。
あたしは手早くカードを差し替えて、シャッフルに戻る。
そこ、適当構築とか言わない!

「「じゃんけん」」

あたしが勝って先攻だ。
Gをおいてターン終了を宣言するあたしに、栗田は茶の基本Gを置いて、ボルジャーノン《15》を出した。
茶単MFはもう読めてるわ!

つづく




txt:Y256

初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.08.18
更新日:10.04.14