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#39 覇道を行く彼女に


公旗の昔話の次の日…つまり、煉さんが菊池さんを呼び出した日。
あたし達は空き家のドアを開けた。

「なんだ…お嬢さんたちか」

一番に声をかけたのは公旗。
空き家には公旗と菊池、信ちゃん、それに松岡と詩織がいた。
なんだかんだ言って、昨日のメンバーがそろったわけね。

「俺達も観戦していいっすか?」
「あぁ、構わない」

武志の質問に公旗が答え、あたし達はテーブルに着いた。

「どんな感じ?」

あたしは松岡と詩織に声をかける。
今日の詩織は、珍しく髪の毛を三つ編みにして…いつもと違う感じ。

「デッキはとりあえずできたよ」
「俺のカードからじゃ、あんまりいいの出せなかったけどな」

二人は、真新しい白いスリーブに入ったデッキを見せてくれた。
あれ?松岡の持ってるカードからあんまり良いの出てないってことは、黒以外のデッキ??

「てか、その髪型どうしたの?」

あたしは詩織の三つ編みを指差して言った。

「えっと…その」
「?」

どもる詩織。
あたしなんか変な質問した…?

「勇君がこっちのほうが良いって言うから…」
「おう、こっちのほうが断然!」

あ゛?
質問したの失敗だった。ここでノロケるなっての!
あたしは二人の世界から離脱して、椅子に座った。

時計を見ると、ちょうど17:00…
外の風もちょうど止み、暑さも峠を越えた時間。そして、彼女が来る。

「あら?こんな時間なのに、ずいぶん人がいるわね」

ドアを開けた煉さんは、少し驚いた表情でそう言った。
昨日の話を聞いたからか、あたしには彼女が昨日ほど悪い人には見えなかった。

”そうして現れた、焼け爛れた赤黒い皮膚。それは胸まで続き、まだところどころ血が滲み、歪んだ皮膚を濡らしていた”

昨日の公旗の話が蘇り、あたしは煉さんの右手に釘付けになった。
長袖から覗く手は陰になってよく見えない…。でも、昨日の話が本当なら今も傷が…?


「な、る、ほど…なるほど、なるほど」

煉さんは、不意に鋭い眼差しをあたしに向けた。
背筋が凍るような冷たい目つき。でも、口は不適に笑っている。
蛇ににらまれた蛙ってこんな感じかな…。

「公旗もおしゃべりだな、昔話することはない」

そう言って彼女は袖を捲くり始めた。
…!?

「煉…!」

公旗の声を無視して煉さんは火傷の腕を見せつけるように前に出す。
炎に焼かれたであろう、茶色く変色した皮膚が目の前に現れる。
詩織が小さく悲鳴を上げた。

「小娘、お前が見たかったのはこれだろう?」
「そんな…」
「おい!」

公旗が珍しく声を上げた。
煉さんは、やれやれという風に袖を戻す。

「煉、あんまりいじめないでくれ。うちのお客さんなんだ」
「からかっただけよ」

信ちゃんの言葉に煉さんは軽く流して椅子につく。
彼女にとってその傷は…そんなに軽いものなの…?

前言撤回。
あたし、この人と上手くやってける自信ない。

「大丈夫か?京子」
「う、うん」

立ったままのあたしに武志が声をかけてくれる。


×××


「さてと…私が先攻だな?」

テーブルに落ちたコインを見て煉さんは言った。
向かい側に座った菊池さんが頷く。

「ジェネをプレイしてターン終了」

煉さんは基本Gをだしてターン終了を宣言した。
基本Gの色は…黒。やっぱり。

「ドロー…配備フェイズ青基本Gを出して、北極基地を出してターン終了だ」
「…ガンダム」

煉さんが口を開いた。
ガンダム?

「やはり、お前はそうか。”流行のデッキを上手く回す”…結構だが、いいカモだ」
「…どうかな?」
「前環境じゃ、シャアデッキでも使ってたのか?」

煉さんはおどけたように言った。
確か、菊池さんは20弾あたりでもガンダムだったはず。

「いいや。俺にだって好き嫌いはあるんでな」
「あら、御免なさい。流行デッキばかり使って”俺強えー”してる人は印象が薄くてねぇ」

煉さんはそう言って黒の基本Gを出した。


つづく


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txt:Y256

初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.09.10
更新日:10.04.14