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 ろうそくの灯りだけが照らす薄暗い部屋の中、寝台の天蓋布が揺れたような気がした。
「誰だべ?」と声を出す前に唇を塞がれた。懐かしく、暖かい唇の感触。その唇の主は、たとえ暗闇の中であったとしても間違うことはない。唇を離して相手の胸に飛び込んだ。
「悟空さ!」
「チチ・・・」
悟空はチチの小さな頭を黒髪ごと抱えて、その厚い胸板に閉じ込めた。・・・だが。
「なあして、悟空さがここにいるだあ!!こっただとこ、おっ父に見つかったらどうするだあ!」
雄叫びとともに、戦闘力130のアッパーカットが、悟空の顎を的確にとらえた。
「ぐはっ!!」
悟空は天井近くまで飛ばされ、寝台の外に転げ落ちた。慌てて上半身を起こすと、目の前にはチチが目を吊り上げ、両手を腰にあて、仁王立ちになって見下ろしている。
「いってぇーなー。何すんだよー」
「何すんだとは、こっちのセリフだべ!なして、ここにいるだ?!」
「でっけえ声出すなって。護衛の奴らが来るぞ」
部屋の外から女性の声がした。
「チチ様。何やら物音がしましたが、いかがなさいましたか?」
チチの寝所を守る、女性護衛兵の隊長である。
「な、何でもねえだ。ご、ご苦労だったな。も、もう、下がってええだよ」
「そうですか?では・・・」
甲冑(かっちゅう)の触れあう音が遠ざかって行った。

「ふぅ――っ」
チチは肺の空気を全部吐き出すと、寝台にドサッと腰を下ろした。悟空は、それみたことか、とばかりにニヤニヤと笑って、後を追うようにその隣に腰掛けた。
「なして、ここにいるだ?」チチはうつむいたまま言った。
「おら達が逢っているところを、おっ父に見つかったら、二人ともただでは済まされねえだぞ」
悟空の方を向き、真摯に見つめてくる大きな瞳には、涙が滲んでいる。
「そりゃ、分かってけどさ・・・会いに来たんじゃねえか・・・どんくれえ会わなかったと思う?」
「・・・半年だ。」
「半年も会えねえで、おめえは平気だったんか?チチ?」
チチは首を激しく振った。どれだけ会いたかったか。どれだけその逞しい腕に抱きしめられたかったことか。チチは悟空の首に抱きつき、自らその唇を求めた。
互いに貪るように、口を吸いあう。いつの間にか、悟空の手はチチの着物の裾をまくり、その白い脚を撫でながら、次第に太ももに近づいて行く。悟空の舌の動きに翻弄されていたチチが気付いたとき、悟空の指は、その中心の溝に差し伸べられようとしていた。
「いやっ!やめてけろ。悟空さ」チチは身をよじって、その腕から逃れようとした。
「やめていいんか?もう、こんなに濡れてんのに」
悟空は、チチの谷間から溢れる泉を指ですくって、自分の鼻先にもってきた。隠しようのない証拠を見せつけられ、チチは首筋まで真っ赤になった。
「恥ずかしがることねえさ・・・オラだって・・」
悟空はチチの手首を掴むと、自分の股間に押し付けた。

 話は一年ほど前にさかのぼる。
 天地をつかさどる天帝の一人娘・チチは、幼い頃からの想いが叶い、天界の勇者・孫悟空と結ばれた。ところが問題はその後おこった。この孫悟空という男、毎日毎日、修行にかまけ、一向に働こうとしないのだ。無論、新妻は「働いてけろ!」と躍起になって尻を叩くのだが、少しも効き目がない。それもそのはずだ。眉を吊り上げ、口から唾を飛ばしながら怒鳴っても、惚れた弱みで、修行に出掛ける夫に愛妻弁当を持たせているのだから。
そんな妻を可愛いと思うのだろう。昼間の仕事は全くしないが、夜の仕事ぶりは大層なモノらしく、毎晩、寝所の外まで嬌声が響いた。天帝の一人娘でも、チチは機織(はたおり)をするよう言いつかっている。ところが、夜の仕事で疲れてしまうのか、結婚後は機織り機に触れることもなくなってしまった。
こんな娘夫婦の不甲斐なさに、父である天帝は激怒した。自分の一人娘と結婚したからには、将来は天帝として、下々の者達の手本になってもらわねば困る。天帝に求められるのは強さではない。人々の模範となるべく、真面目に働き、平和な家庭を築くことだ。天帝は断腸の思いで一つの決心をした。
「おめえたづ!もう別れろ!二度と会ってはなんねえ!!」
この命令には当の本人達ばかりでなく、家臣達も愕然とした。チチは涙を流して許しを請うたが、天帝は、その小山のような巨体を震わせ、首を横に振るばかりだった。

「牛魔王よ。そう固い事を言うでないぞ。」
騒然とする宮殿の大広間を、亀の甲羅を背負い、サングラスをかけた老人が進み出た。天帝の武術の師である武天老師だ。天帝を「牛魔王」と名で呼び、天帝に意見が言える唯一の人物である。
「若い二人のことじゃ。毎晩、ぱふぱふだの、ぱんぱんだの、上になったり下になったり、後ろから前から、あーんなことや、こーんなことをしてるのじゃろう。仕事のことは、わしからも悟空によく言ってきかせるから、離縁などさせるものではない」
途中、二人の夜の営みを思い浮かべたのか、鼻血を出しながら天帝を諭した。
「いんや。いっくら武天老師さまの頼みでも、こればっかりは勘弁ならねえですだ。」
天帝は敬愛する師の頼みも断った。二人が憎くて、こんな酷な命令を下すのではない。
物心つかぬ時に母親に死に別れ、男手一つで育てた、文字通り目に入れても痛くない一人娘。
その娘が想いを寄せる悟空とて、実の息子のように思っている。悟空は、武天老師の元で共に修行した兄弟子・孫悟飯の孫であり、これまで幾度となく世界の危機を救った英雄である。加えて、それぞれの天地をつかさどる天帝達の頂点に立つ、界王の覚えもめでたい。何よりも、その心根はどこまでもまっすぐな青年なのだから。
だが、天帝という地位にあるからこそ、厳しくしなくてはならないのだ。
「じゃが、二度と会わせないとは、余りにも酷いことじゃ。せめて、年に一度だけでも、逢瀬の機会を与えてやってはどうじゃ?」
こうして、悟空とチチは天の川を挟んで別離を余儀なくされ、年に一度、七月七日だけ会うことを許されたのである。その間に、二人が心を入れ替えて、真面目に働くようになったら、直ちに一緒にしてやるように、と武天老師は天帝に念を押した。

 その一年に一度しか会ってはならない二人が、七月七日まで数ヶ月を残し、なぜ、寝台の上で体を重ねているのか?当然、チチも疑問に思うのだが、その理由を聞こうとする口を、悟空は唇で塞いでしまっている。
唇を塞ぎながら、チチが身にまとった幾重にも重なる唐(から)衣(ころも)を、一枚一枚、剥いでいく。やがて、眩いばかりのチチの裸身が、ろうそくの炎だけが照らす中に浮かび上がった。白磁のような肌は柔らかく、粉をふいたようにサラサラしている。形良くふくらんだ胸、桜色の突起、柳のような腰。すらりとした脚の付け根には、チリチリとした光沢のある陰毛が、大事な処を隠すように覆っている。その秘めた場所に立ち入ることは、宇宙広しといえど、自分だけに許された特権なのだ。悟空は乾いた笑い声をたてて、その隠された場所に指を這わせた。
「はっ、やん、悟空さぁ・・・」チチはピクンと身体を震わせた。
「おっ?チチィ。おめえ、ココ、弱ぇなあ」
そんなことは百も承知なのだが、初めて知ったかのように、割れ目から顔を出した蕾を攻め続ける。くちゅ、くちゅと水音が鳴る。既に悟空を迎える準備は整った。悟空はチチの太ももの間に自分の太ももを割りいれると、下穿きの中からゴソゴソと、形を変えてそそり立つ自身を取り出した。
かり首だけを挿入すると、チチの背中を両手で抱きしめ、体重をかけて腰を落とした。
「んふっ、は、はあ、ん・・あ、ああん」
半年振りに身体の中に進入してくる異物感に、チチは堪らず声を漏らした。悟空は根元まで、ずっぷりと己を沈めると、チチの脚を押し広げ、激しく腰を打ちつけた。

 身体の奥底で暴れる夫に、チチの意識が朦朧としかけたとき、悟空はチチの肩を掴んだ。
「一緒にイケっか?チチ・・・?」
夫の申し出に、チチはただ、こくこくと頷いた。悟空の腰の動きが激しくなり、チチは声を抑えようと、自らの指を噛み締めた。「くっ・・」耳元で悟空の低く呻く声を聞き、チチも身体を硬直させて、終焉を迎えた。
チチがぼんやりとした意識の中で薄目を開けると、目にチカリと弱い光が飛び込んできた。光の差した方向に顔を向けると、チチの鏡台にろうそくの灯りが、反射しているのが分かった。鏡には、薄暗い中で身体を重ね合わせた男女が、寝台に横たわっている姿が映っている。それは紛れもなく自分たちなのだ。
「あっ・・」チチは羞恥心から、思わず声をだした。
「ん?どした?」
何事かといぶかった悟空が、チチの視線の方向に目を向けると、ぼんやりと鏡に映し出された二人の姿が目に入った。
「へー。オラ達って、いつも、あんな風にヤッてんのか。」
まるで、新しい遊びを考えた子供のように、悟空は一つの悪戯を思いついた。
チチを抱きながら、身を起こすと、自らは寝台の上にあぐらをかいて座り、自分の腿の上にチチを向こう向きに座らせた。丁度、鏡台の正面に位置して座る格好になった。鏡には巨木に背後から抱えられているような、華奢な女の姿が映っている。この時、チチは悟空の思惑に気がついた。

「やっ!何するだ?!悟空さ!離して・・・」
だが、悟空はチチの身体を少し持ち上げると、また力を蓄えなおした肉棒を、チチの中に突き入れた。
「はあ!ああ・・悟空さ・・・」
イッたばかりの身体は、どこを触っても感じてしまうくらいに昂ぶっている。
「チチ。おめえがいいように、腰を動かしてみろよ。」
そっだら、はしたねえこと出来ねえだ。チチの道徳心は叫ぶのに、正直な身体は、最も感じる内壁を悟空のモノがこするように動き、一番奥の突起までもこすりつける。目を開けると、鏡には髪を振り乱し、上下に動く自分が見えた。腰を浮かせる度に、赤黒いモノが見え隠れするが、アレは夫なのだろうか?思わず顔を背けると、悟空はチチの顎をとらえ、鏡を見ることを強制した。
「やあん!んんっ!!あ、ああ、あっ!!」
白い乳房がぷるんぷるんと上下に揺れる。チチの声が大きくなる。
「しょうがねえなあ・・」悟空は一人ごちると、チチの顎先を掴み、自分の方に向かせ、その唇を、声と共に吸った。
―― 本当はおめえの声が聞きてぇんだけどさ。
警護の者達に聞こえては厄介だ。
半身をひねり、悟空と口付けを交わす格好になったチチだが、その内部は悟空を絞るように、きつく締め付け、うねうねと動いた。
「チ、チチッ!よせって・・・」
図らずも悟空自身を苛(さいな)むことになってしまい、自業自得ではあるが、悟空はチチの中に全てを吐き出してしまった。

 お互いの髪を触りあいながら、呼吸を整えたチチが、やっと質問を口にした。
「悟空さ。どうやって、ここまで来ただ?」
父・天帝の目を盗み、自分の寝所に忍び込んできたのは明らかだ。だが、宮殿の奥にあるチチの寝所の周りは、何百という女性兵士が十重二十重に取り囲んでいる。女性ではあるが猛者ぞろいだ。いくら夫が宇宙最強の戦士とはいえ、この厳重な警備網を、物音ひとつ立てずに突破することは容易ではあるまい。
「瞬間移動だ!」
「しゅ、しゅんかんいどう・・・?」
「ヤードラットって星の連中が教えてくれたんだ。」
天界の遥か果てに、ヤードラット星人という不思議な技を使う者達がいることは聞いたことがある。天の川の対岸の星にいるように言いつけられているのに、そんな所まで行っていたのか。チチは絶句した。
「人を思い浮かべて、そいつの気を感じ取ると、一瞬でそこへ行けるんだ!」
悟空は得意満面で話し続けた。
「えれえ苦労したんだけどさ。これで、いつでも、おめえに会いに来れっぞ!な、チチ!」
「そっだら根性さあったら、仕事してけれ!」
「・・・・・オラ、酢豚が食いてえな。明日、作ってくれよ。チチィ。」
「話をそらすでねえ!・・って、悟空さ、明日も来る気だか?!」

 明日どころか、あさっても、その次の日も、悟空は毎晩、チチの寝所に現れた。
額に人差し指と中指を置く瞬間移動のポーズをとり、とぼけた顔で、やれ腹が減ったの、宇宙の平和がどうのと言いながら。勤労意欲は爪の先ほども見られなかった。
一方チチも、今夜限りだ、もう武道はやめさせる、明日から働いてもらう、と金切り声を上げるのだが、悟空のしどろもどろの言い訳に折れて、結局、毎朝、一緒に目覚めた。
引き離したら、心を入れ替えて真面目に働くであろうという天帝の思惑は外れ、悟空は一向に仕事をせず、チチも機織り機の前で居眠りをしてしまうという、前と何ら変わらない日々が続いた。
七月六日の晩。―― 悟空はチチを腕枕しながら、その絹のような髪を弄んでいた。
「明日は七月七日かあ。正面きって、おめえに会いに来られるな。」
「・・・悟空さ。明日、一日くれえ、来ないでくんろ!」
「いい?!なんでだよー?・・・あ!おめえ、もしかしてセイリってやつか?・・なに、オラのことなら気にすんなって。そりゃ、おめえの下の口の方がいいけどさ、オラ、別に上の口でしてもらえば、がはぁっ!!」
戦闘力130のエルボードロップが、悟空の鳩尾(みぞおち)に入った。

明日は七夕―――
 引き離された二人が、一年に一度、会うことを許された日、と伝えられている。

(終)