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 「勘違いするな。俺は別におまえを好きでもなんでもねえ。ただ、お前が本当に超サイヤ人を
産むのか確かめたいだけだ。」
 バーダックは起き上がり戦闘服を羽織りながら厨房の外に出た。
 背後からすすり泣く声がする。肩越しに見ると女は背中を向けて横たわっていた。雪のような
白い背中に漆黒の長髪が滝のように流れている。肩が小刻みに震えていた。
 女の太腿の辺りの床が赤く染まっている。戦いの最中に見慣れた土埃まみれの、どす黒い血
とは違い、それは鮮やかな赤い色だった。
 「男は初めてか?」
 小さな頭がコクリと動いた。

 「本当です、バーダックさん。初めて見たとき、それはもう心臓が止まるかと思いました。」
 「そのまま止まってしまえば良かったものを。このインチキ占い師が。」
 惑星ベジータの場末の安酒場。粗末な身なりだが、品の良い顔立ちの初老の男に悪態をつく
バーダックに、トーマ、セリパ、トテッポ、バンブーキンはドッと笑う。
 「本当です。この先に評判のいい食堂ができたと聞いたので行ってみたのですが、そこの娘の
顔を見て驚きました。間違いありません。私の家に先祖代々伝えられてきたサイヤ人の人相帳に
よれば、あれは超サイヤ人を産む相です!」
 場末の飲み屋に似つかわしくない丁寧な口調で「インチキ占い師」と呼ばれた男は真顔で言う。
 「じゃあ、一目拝みに行こうじゃねえか。その超サイヤ人を産む女とやらに。」

 路地の突き当たりの小さな店の中は客でごった返している。
 「頼んだものがまだ来てねえぞー!」
 「へーい!ただいまー!」
 両手に皿を抱え上げた若い女が、サイヤの男共の間をかきわけて出てきた。
 女は汚れたエプロンをつけ、長い黒髪を後ろで一つに束ねている。切り揃えられた前髪は
汗で額に張り付いていた。
「はい、お待ちどうさま!」
 皿をテーブルに置くと、また客の間をかきわけ厨房に入って行った。
 「あの娘です。超サイヤ人を産む相の女というのは。」
 案内してきた占い師がバーダックに耳打ちする。バーダックは厨房で大きな鍋を振るう女の
背中を見つめた。

 「やいやい、てめえら、さっさと席を替わりやがれ!」
 突然、人垣を押しのけ5,6人のサイヤ軍兵士が店に入ってきた。
 「おい、割り込むな!」
 並んでいる客達から怒声が飛ぶ。が、闖入してきた男達が声のする方を睨みつけると水を
打ったように静まりかえった。
 「おめえ達、何やってるだ!」
 厨房から先程の娘が出てきて男達の前に立ちはだかった。
 「他のお客さん達はずっと待っててくれてるだ。順番だ。並んでけろ!」
 両手を腰に当て、臆することなく男達を睨みつける。
 「なんだとお?おまえの所は美味いと聞いてわざわざ来てやったんだ。俺達は軍の・・・」
 「軍がどうしたって?」
 男の一人が女の襟首に伸ばしかけた手を横からバーダックが掴んだ。
 「バーダック!」
 男達が顔を見合す。店内にとげを刺すような空気が流れる。

 「バーダック、てめえ、なんでここに?」
 「卑しい生まれだからな。場末の飯屋にメシを食いに来たのさ。俺だって並んでいる。
後から来たてめえらに先を越される筋合いはねえ。それとも何か?順番も腕ずくで決め
ようか?」
 鷹の目で睨むバーダックの後ろに、トーマ等バーダック一味が立ち並ぶ。
 「お、お前ら、別の店に行くぞ!」
 他の客達の喝采と歓声の中、男達は転がるように店を出て行った。
 「ありがとうごぜえますだ!」
 後ろの女がバーダックに深々と頭を下げた。
 「もう少し客あしらいを勉強しろ。あんな連中まともに相手していたら、命がいくつあっても
足りねえぞ。」
 「今度から気ぃつけるだ。」
 女は頭を上げるとバツが悪そうに笑ってバーダックの顔を見た。

 それが二人の出会いだった。

 「毎度、ありがとうごぜえましたー!」
 女が最後の客を見送り戸を閉めようとしたとき後ろから声がした。
 「もう看板か?」
 「バーダックさ!」
 花が咲いたように笑みが漏れ、大きな瞳が輝く。
 「いんや、バーダックさなら特別だ。入ってくんろ!」
 二人だけの店内。残り物で悪いけんども、と女はいそいそとバーダックの席に皿を並べていく。
 「俺のことは何か聞いたか?」
 「あの後、お客さん達から聞いただ。バーダックと言えば知らねえ者はいねえって。下級戦士
なのにすっごく強くて、軍の上の人達からも一目置かれているって。」
 女が笑うたびに白い歯がこぼれる。女は他のサイヤの女と比べると手足が細長い。サイヤ人の
証の尻尾は折れそうなほど細い腰に巻きついている。激しい気性を表す鋭い目つきではなく、睫毛の
長い大きな瞳が印象的だ。何よりもバーダックが目を留めたのは背中にかかる長い絹のような黒髪だ。
サイヤ人は男も女も逆立った堅い髪をしているのに。
 「随分、訛っているな。どこの生まれだ?」
 「生まれたのは、ここからずっと離れた所だべ。」

 ベジータ王の宮殿のある都から遠く離れた片田舎で生まれたこと。幼くして二親を立て
続けに亡くした後、王族の屋敷に奉公に出て、やっと年季が明けたので、貯めた金を元手に
都の場末に小さな店を出したこと。
 テキパキと店を片付けながら、女はニコニコと身の上を話す。
 「・・・と、まあ、お屋敷で覚えた料理が役に立って良かっただ。」
 「ああ。おまえの料理は美味い。俺もインチキ占い師から美味い店があると聞いてここに来たんだ。」
 バーダックは真の目的を隠した。
 「インチキ占い師?」
 「汚ねえ格好のくせに、やけにご丁寧な口をきくジジイさ。」
 「ああ、あの人け。あの人な、おらの顔を見るなり、いきなりおらの手を握って『あなたは超サイヤ人を
産む相です!』なんて言っただよ。」
 真の目的を先に女に言われ、ターレスは思わず身を乗り出した。
 「それで、おまえどう思った?」
 「どうって・・・おらも小せえ頃、死んだおっ母から聞いたことがあるだ。千年に一度の伝説の戦士の話。
金色の髪に翡翠のような瞳をしてるんだってな。だども、そんな話はおとぎ話だべ?おらに超サイヤ人が
産めるわけがねえだ。」
 女はコロコロと笑った。当人が全く信じていないことにバーダックは焦りを覚える。

 「あの占い師、今でこそ、こんな場末でその日暮らしをしているが、4年前までは王宮付きの
占い師だったんだ。」
 「王様に仕えてたのけ?」
 女は丸い目を更に丸くした。
 「今から4年前、王子が生まれたとき、あの占い師は王子の顔を見て『決して一番にはなれぬ
相です』とぬかしやがった。当然ベジータ王は怒り、本来ならその場で打ち首になるところを、
生きて辱めを受けろと、尻尾を切られて王宮から放り出されたというわけさ。」
 「尻尾さ切られたのけ?」
 「そうだ。おまえも知ってるだろ?尻尾はサイヤ人の証しだ。なければサイヤ人として認められない。」
 「かわいそうだべ・・・」
 女は眉を顰め、自分の尻尾に手をやった。
 「あの人の占いは当たらねえのけ?」
 「いや、俺はそうは思わねえ。その王子様だが、今はフリーザ軍に遊学中だ。遊学なんて聞こえはいいが、
なあに、ていの良い人質さ。」
 「しーっ、そっただこと誰かに聞かれたら・・・」
 女は唇の前に人差し指をたてバーダックを制したが、バーダックは続けた。
 「あいつはバカ正直に本当の事を言った間抜けなだけで、インチキ占い師とは言っているが、俺はあいつの
人相を見る目は確かだと思っている。そいつがおまえの事を超サイヤ人を産む相だと言った。だから俺はここに
確かめ来たんだ。」
 ガタン、とバーダックは椅子から立ち上がった。テーブルを拭いていた女の手が止まる。
 「確かめるって、何をだべ?」
 「エリート戦士じゃない俺が超サイヤ人になれるわけはねえ。ならば俺の血を引くガキが超サイヤ人になって欲しい。
そのためには、どんな馬鹿げた占いにもすがりたい。」

 店の灯に寄せられた羽虫がジジジ、と焼けた。小動物を追い詰める野獣のように
一歩一歩近づいてくるバーダックの目に、女はこの男の真の目的を察した。
 「バーダックさ、冗談だべな?酔ってるんだべ?そんな占い本気にしてねえべ?」
 努めて笑顔を保ちながら女は後ずさる。が、ドンと背中が壁に当たった。
 「おまえもサイヤ人の端くれなら、超サイヤ人の母となってみてえだろ?」
 女は首を激しく横に振った。恐怖の余り声が出ない。バーダックは女の前に立ち、
その手首を掴んだ。
 「ひいっ!」
 喉の奥から細い悲鳴をあげ、女はバーダックの手を振りほどこうと暴れたが、
そのままバーダックは女を抱きすくめると床に押し倒した。弾みで棚やテーブルの
鍋や皿がガラガラと崩れ落ちる。
 「い、いやっ!離してけれっ!!」
 「おとなしくろ!暴れるな!!」
 手足をバタつかせる女の両手を押さえつけ、バーダックはその両脚の間に体を据えた。
 「超サイヤ人を産んでみろ。サイヤ人として光栄に思わねえか?」
 「いや!いや!」
 女は髪を振り乱して首を振る。抵抗する女にバーダックは怒鳴った。
 「おまえは俺が嫌いか?!」
 一瞬、女の動きが止まった。間髪をいれず、バーダックは女の汚れたエプロンとその下の
粗末な服を剥ぎ取った。

 草木は一本残らずなぎ倒され、累々と死体が重なりあう。フリーザに依頼された星を
一つ制圧して、バーダックのもとに仲間が集まってきた。
 「今回は楽だったなあ。」
 「ああ。大猿になるまでのこともなかった。つうッ!」
 バーダックは目尻に鋭い痛みを感じた。手を当てると指先に赤い血がついてきた。
気付かぬ内に傷を負わされたらしい。その朱色の血はあの夜の女の血と同じ色だった。
 あの晩、バーダックの進入を頑なに拒む肉の口を無理矢理こじあけ、寸分の隙なく
つまった肉の花びらを蹴散らした。
 (蒔いた種がどうなったか見に行かねえとな。)
 バーダックの腹の底から、湯玉が湧くように笑いが込み上げてきた。

 惑星ベジータの場末の飲み屋街。小さな店の前を女は俯いてほうきで掃いていた。
 「なんだ。今日はもう店じまいか?」
 「バーダックさ!」
 女は手を止めて、バーダックのもとへ駆け寄った。
 「バーダックさ!来てくれただな、良かっただー。おら、あのまま、来てくれなかったら、
死んでバーダックさの所に化けて出ようかと・・・あ!バーダックさ!ケガしてるでねえか!」
 女はバーダックの目元の傷に気がつき指先で触ろうとした。
 「かすり傷だ。大したことねえ。」
 差し伸べられた女の手をバーダックは邪険に払う。
 「だども、目の近くでねえか。下手すりゃ目が見えなくなったかもしれねえだぞ。」
 (おかしな女だ。)
 バーダックがこれまで見たこともないサイヤ人の女。そして、底知れぬ力と希望を秘めた
金の卵。
 「おまえがどうしているか見に来てやったんだ。」
 女の曇った顔がパッと明るくなる。
 「今晩は・・・泊っていってくれるだか・・・」
 女は顔を赤らめた。

 草木は一本残らずなぎ倒され、累々と死体が重なりあう。フリーザに依頼された星を
一つ制圧して、バーダックのもとに仲間が集まってきた。
 「今回は楽だったなあ。」
 「ああ。大猿になるまでのこともなかった。つうッ!」
 バーダックは目尻に鋭い痛みを感じた。手を当てると指先に赤い血がついてきた。
気付かぬ内に傷を負わされたらしい。その朱色の血はあの夜の女の血と同じ色だった。
 あの晩、バーダックの進入を頑なに拒む肉の口を無理矢理こじあけ、寸分の隙なく
つまった肉の花びらを蹴散らした。
 (蒔いた種がどうなったか見に行かねえとな。)
 バーダックの腹の底から、湯玉が湧くように笑いが込み上げてきた。

 惑星ベジータの場末の飲み屋街。小さな店の前を女は俯いてほうきで掃いていた。
 「なんだ。今日はもう店じまいか?」
 「バーダックさ!」
 女は手を止めて、バーダックのもとへ駆け寄った。
 「バーダックさ!来てくれただな、良かっただー。おら、あのまま、来てくれなかったら、
死んでバーダックさの所に化けて出ようかと・・・あ!バーダックさ!ケガしてるでねえか!」
 女はバーダックの目元の傷に気がつき指先で触ろうとした。
 「かすり傷だ。大したことねえ。」
 差し伸べられた女の手をバーダックは邪険に払う。
 「だども、目の近くでねえか。下手すりゃ目が見えなくなったかもしれねえだぞ。」
 (おかしな女だ。)
 バーダックがこれまで見たこともないサイヤ人の女。そして、底知れぬ力と希望を秘めた
金の卵。
 「おまえがどうしているか見に来てやったんだ。」
 女の曇った顔がパッと明るくなる。
 「今晩は・・・泊っていってくれるだか・・・」
 女は顔を赤らめた。

 女の体はまるでガラス細工だ。
 華奢な体は、バーダックが少しでも腕に力を込めると折れてしまいそうだ。
 互いの欲望と性器を剥きだしにして、射精の行為だけを求めるケダモノじみた
サイヤ人の女と違って、この女は裸になるのを恥ずかしがり、声を出すのも恥ず
かしがる。
 バーダックの言うがままに体を預ける女だが、ただ一つ、尻尾を触られること
だけは異様に嫌った。
 「おら、尻尾は弱いから。」
 「サイヤ人の弱点が尻尾だってことは有名だ。鍛えておかねえと戦えねえぞ。」
 「おらは戦闘タイプじゃねえだ。おらの死んだおっ父もおっ母も戦士じゃなかった。
戦士になれねえ下働きだったんだ。」
 サイヤ人の中で、下級戦士以下の最も底辺で生きる民の生まれだと言う。
 「弱いのは尻尾だけじゃねえだろ?」
 ほら、ここも。バーダックは手を前に伸ばしスリットから顔を出す赤く膨れた芽に触る。
 「やっ!!」
 女は魚のように身体を跳ねた。
 他のサイヤ人のように黒々とした茂みではなく、まるで綿毛のような女の恥毛をかき分けて
バーダックは指を進める。
 最初は面倒に思ったバーダックだが、自分の指の動き一つで表情を変え、声を出す女としての
開花ぶりを見ると、この女の体をさらに開発していくことが楽しみになっていた。
 それから仲間達に冷やかされようとも、バーダックは足しげく女のもとに通った。

「おらな、あの占い師から、もう一つ言われたことがあるんだべ。」
 バーダックの腕を枕にして女が囁く。
 「超サイヤ人を産む相の他に何と言われた?」
 「それは・・・ううん。なんでもねえだ。」
 「言いかけてやめるな。気になるじゃねえか。」
 「そ、そうだ、バーダックさに大事なこと言うの忘れてただ!」
 女はバーダックの手を掴むと自分の腹に当て、ニッコリと微笑んだ。
 「まさか・・・おまえ・・・」
 目を見張るバーダックに、女は静かに頷いた。
 「そうか!子供ができたんだな!」
 超サイヤ人の可能性を秘めた俺のガキ。バーダックは拳を握り締める。
 「バーダックさ。お腹の子の名前だども、おらがつけてもいいけ?もう決めてあるだ。」
 「気が早いな。名前なんか勝手にしろ。で、なんて名前にするんだ?」
 女は愛おしそうに腹を撫でさすりながら言った。
 「カカロット。」

 赤ん坊の元気な産声に陣痛に耐えかねて気を失っていた女は目を覚ました。
 「男だよ。」
 腰の曲がった産婆は素っ気無く女に赤ん坊の顔を見せた。バーダックそっくりの赤ん坊が
大きな口を開けて泣いている。
「カカロット・・・」
 女は産婆から赤ん坊を受け取り腕に抱いた。赤ん坊は尻尾の先をクルリと丸めた。
「よかっただ・・・ちゃんと尻尾があるだ。」
「当たり前だ。サイヤ人だもの。」
 産婆には取り合わず、女は生まれたばかりの赤ん坊の髪を撫でる。
「早く、おめえのおっ父、来ねえかな。」
 女から懐妊の知らせを受けたその日を境にバーダックの足は遠のいた。息子が誕生した
今もカナッサ星の制圧に出向いている。
「おっ母も早くおっ父に会いてえだよ・・・やっぱり、あの占いは当たっただな。」

巨大な光の玉が惑星ベジータを飲みこんだ。
「うわー!」
バーダックは跳ね起きた。全身に生ぬるい汗が滲んでいる。
(まただ・・・また、この夢だ)
カナッサ星でトオロに「幻の拳」を受けてから、惑星ベジータが巨大な光の玉に
飲み込まれて爆発する夢を見る。そして、その光の先に盟友と信じていたフリーザがいる。
「体を休めろ、バーダック。惑星ミートなら俺達だけでも片付けられる。」
不思議な夢に苛まれるようになったバーダックをトーマ達が気遣う。
赤ん坊に会って来いと言い残して出て行った仲間達の後ろ姿を思うと、また頭が
割れるように痛み始めた。
(もしも、サイヤ人がフリーザによって滅亡させられるのなら、救う手段はただ一つ・・・)
仲間の後を追って惑星ミートに向かう途中、バーダックは残された最後の小さな希望を
その目で確かめることにした。

「戦闘力たったの2だと・・・?」
目の前の保育器の中で眠る我が子にバーダックは愕然とした。スカウターのゲージを
何度も調整するが数値は変わらない。
「バーダックさにそっくりだべ?」
声のする方を向くと長い髪を垂らし、質素なガウンをまとった女が立っていた。産後の
肥立ちが悪いのか、夕顔のような青白い顔をしている。
「この赤ん坊が俺のガキか?!」
「そうだべ。な?バーダックさにそっくりだべ?」
「ふざけるな!戦闘力たったの2だと?クズが!」
バーダックは青筋を立てて怒鳴った。
「戦闘力2なんて超サイヤ人であるはずがねえ!占いは外れた!インチキ占い師め!」
「そんな占いさ本当に信じていたのけ、バーダックさ?超サイヤ人でなくとも、この子は、
カカロットはおら達の子だ!」
「戦闘力2のクズに用はない!こいつの力でも制圧できそうなどこかの辺境惑星に送り込む!」
「そんなひどいことはできねえ!この子はおらが育てるだ!そんな所にやらねえで!」
ラディッツを他の星に送ることを決めたとき、その母親は「ふーん」と言ったきりだった。この女の
ベトベトした感情が余計にバーダックを苛立たせる。
「おまえ、それでもサイヤ人か?!」
髪を振り乱し、泣き叫びながらすがりつく女をバーダックは突き飛ばした。

ガラス細工が砕け散るように倒れた女の体から、茶色い紐のような物が落ちた。
女は慌てて、その紐を掴むと胸の下に隠した。
「見せてみろ!」
必死になって胸の隠そうとする女の両腕をこじ開けて、その紐を掴み出した。
「こ、これは・・尻尾?!」
女が落とした物は、精巧に作られた「尻尾」だった。女の尻には何もついていない。
「おまえ、サイヤ人じゃねえのか?なぜ尻尾がない?」
「ち、違うだ!おらも、おらのおっ父もおっ母も、この星で生まれたサイヤ人だ!
だ、だども、おらは生まれつき尻尾が生えてなくて、それで、おっ母が・・・」
涙で声を震わせながら女は話した。尻尾のない我が子の行く末を案じた両親が作り物の
尻尾をつけてくれた。このことは決して誰にも知られてはならないと。
「じゃあ、お前の祖父母はどこから来た?!その先祖は?!まさか、他の星から・・・?!」
「そ、それは・・・」
女は言葉を詰まらせた。

バーダックは目の前が暗くなった。激しい頭痛がまた彼を襲う。
他の星から連れてこられた奴隷達。その子孫がサイヤ人と結婚し、惑星ベジータの底辺で
生きている。
華奢な体つきに、絹のように柔らかい髪。丸い大きな瞳。深い情愛。そして戦闘力2のクズ。
バーダックの中で全てのパズルが埋められる。
この女の異質さを思えば、なぜ奴隷の子孫の可能性を疑わなかったのか?超サイヤ人を
産む相などという占いを真に受けて浮かれていたのか、それともこの女に溺れたのか。
バーダックは己を責める。
「すまなかっただ。おら、バーダックさにだけは本当のこと言おうと思っただども・・・」
バーダックの両腕をとり、女は涙ながらに訴える。
「おまえが純粋なサイヤ人でないと知っていれば、俺はあんな占いなど信じなかった。」
「そんな・・・バーダックさはおらのことが好きでなかったのけ?」
「何度も言ったはずだ!俺はおまえが超サイヤ人を産む相をしているという占いを信じた
だけだ!おまえのことなど何とも思ってねえ!」

女の瞳孔が大きく開き、その瞳にたちまち涙が溢れる。バーダックの体に
手をかけながら女はずるずると崩れ落ち、床に突っ伏して泣き出した。
「ちっ!」
バーダックは舌打ちした。途端、頭が鈍器で殴られたように痛み出した。
立っていられないほどの激痛に、バーダックは両手で頭を抱えながら床に
崩れ落ちた。
「バーダックさ。どうしただ?具合でも悪いのけ?」
女は顔を上げ、泣きはらした目でバーダックの頭に手をかけた。
「やめろ!おまえの、その、くだらねえ同情があのガキの中にも流れているか
と思うとヘドが出るぜ!とにかく、そのガキは明日、送り出すからな!」
バーダックは痛みに耐えて、女の手を振り払い立ち上がった。
「やめてけろ!おらのカカロットを取り上げねえで!」
半狂乱に泣き叫ぶ女にバーダックは背を向け歩き出した。
「バーダックさのバカ!もう一つの占いは当たっただよ!でも、でも・・・そんな
占いも当たらなければ良かっただ!」
もう一つの占いの中身より、超サイヤ人どころか純粋なサイヤ人でもない我が子
よりも、惑星ミートに出陣した戦友達のことが気になった。バーダックは構わず歩き
続けた。女の泣き声は次第に遠くなり、やがて聴こえなくなった。

 「おお!バーダックさん!」
 廊下の向こうから老占い師が片手を振りながら小走りにやってきた。
「お子がお産まれになったと聞いて参りました。是非、私にも超サイヤ人の子を見せ・・・」
「やい、インチキ占い師!あの女は純血のサイヤ人じゃねえ!産まれたガキは超サイヤ人
どころか、戦闘力2のクズだ!やっぱり、てめえはインチキ占い師だ!信じた俺がバカだった!」
占い師の胸倉を片手で掴みバーダックは持ち上げた。
「ま、待ってください、バーダックさん。純血なサイヤ人でなくとも超サイヤ人になれます。
生まれながらの超サイヤ人などいないのです。成長していく中で、その秘めた力を発揮するのです!
それは我が家に伝えられた・・・」
「てめえのゴタクは聞き飽きたぜ!」
バーダックは占い師の体を床に叩きつけた。枯れ木の折れるような乾いた音がした。
「そうだ。てめえ、あの女にもう一つの占いを見立てたそうだな?」
床に伸びた占い師は顔を上げた。話そうと口を開けると血を吐いた。
「ぐふっ・・・あの女は、愛した男からひどい仕打ちを受けても、愛し続け、必ず、待ち続ける相をしている
・・・不憫な女だ・・・」

手が届きそうなほど先にフリーザがいる。殺された仲間の仇とバーダックは
単身で戦いを挑んだが、圧倒的な力の差を見せつけられただけだった。
フリーザの涼しげな顔から発せられた光はバーダックと惑星ベジータを飲み
込もうとしている。
眩しい光の中でバーダックはまたあの夢を見た。
フリーザと対峙する青年。その姿形はバーダックにそっくりだ。ただ一つ似て
いないところがある。目だ。太い眉の下の丸い大きな目は紛れもなくあの女の目だ。
(カカロットなのか?)
バーダックは泣き叫ぶ母親から取り上げ、辺境惑星送りにした我が子の名を呼んだ。
青年の体が金色に輝く。黒い髪は天に向かって伸びる炎のような金髪になり、黒い瞳は
緑色の鋭い目つきに変わる。
(まさか、カカロット、おまえ・・・)
その金色の戦士がバーダックを睨みつける。
― とっくにご存知なんだろう?
(本当に超サイヤ人なのか?・・・当たりやがった、あの占い。)
巨大な光に身を焼かれながらバーダックは女の顔を思い浮かべた。
(もう一つの占いも当たったのか。それでも、おまえは俺を待っているのか。)

我が子は二度とその腕に抱くことも叶わず、小型宇宙船に入れられて宇宙の彼方に
発射された。女は額を窓にくっつけ、宇宙船が小さくなり、やがて消えた方向を見つめ続けた。
星を侵略することなく、どうか、いい人に巡りあって幸せになって欲しい。女は願う。
(あんな占い当たらなければよかっただに。)
子供を取り上げられても尚、あの男のことを憎むことができない我が身の不幸を女は呪った。
我が子同様、あの男も無事に帰ってきて欲しいとも思う。
突然、女の視界に光の玉が飛び込んできた。驚く間もなく光の玉は巨大な炎となって空を覆う。

フリーザ曰く「花火」となって惑星ベジータは消滅した。

「悟空さはなーんもわかっちゃねえだ。おらが一体どんな気持ちで待ってたか!」
ナメック星、ヤードラットを経て2年ぶりに帰宅した悟空に、チチは暴風雨のように荒れ狂う。
悟空といえば、ひたすら嵐がおさまるまで首をすくめ、怒号が頭の上を通過していくのを
ジッと待っているだけだ。
「とにかく、おら、悟空さがまたどっかに行っちまって戻って来なかったら、二度と待たねえかんな!」
「そんなこと言うなよ、チチィ。おら、ちゃんと帰って来たじゃねえか。」
「おら、ぜーったい、待たねえだ。他の人さ好きになって、さっさと再婚しちまうかんな!」
わかった、わかった。頬を膨らませて怒る妻を悟空はなだめる。
「でもさ、おめえ、やっぱり、待っててくれるんだろ?」
「なんか言っただか?!」

いや、なんでもねえ。チチに聞かれたらメシ抜きの刑になるので、悟空は素知らぬ顔を決め込んだ。

(終)