第1章第32話「拾うは不思議なスケッチブック/ただ影は月夜に照らされ」


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作:サイショ

PM 18:30 中央公園

公園ではネクシアスは主の現在の状態にただ困り果てていた。

『……不味い。体力が殆んど回復していない……このままでは……』

起き上がることも困難……最悪一日は動けないだろう。
現に命李の息はほとんどか細くなっていた。

『敵対反応は……無いですが、一つ生体反応が来ています……一先ずはネクスライダーを戻して命李をベンチに移すことが先決ですね』

ユックリと命李は浮かびベンチへと降りる。
その姿はまるでベンチで寝ている少女だった。苦しそうに息をしていなければ誰もが「不用心だな」と思う位だ。
次にバイクがひとりでに消え……その場には命李を除けばふしぎな光景は消えていた。

暫くすると公園に一人の青年が息を切らせながら入ってきた。

『……人……ですか。随分慌てているようですけど……』

その青年はすぐに命李に気づき走り出していた。

「命李ちゃん!」

命李が座っているベンチに駆け寄り肩を揺さぶる青年……風瀬 列。
だが、命李は荒い息を口から漏らすだけで返事はなかった。

「くそっ、何で命李ちゃんが……と、とにかく救急車をっ!」

列は慌てた様子で携帯を取り出そうとするが手を滑らせてしまう。
落ちた携帯を拾おうと手を伸ばしたその時……スケッチブックのようなモノが落ちている事に気がついた。

「これは……スケッチブック。だよな」

列はふと気になり拾い上げページをめくっていく。
其処にはよく分らない絵が描かれていて……ただ困惑するだけだった。

途中でどこかで見覚えがある雰囲気の絵などもあるがさほど気にせずにページをめくっていく。
そして良く分らない二つに分かれた少しだけ妹に似た少女の絵をめくると……。

そこには『工業団地に行け』とだけ書かれたページがあった。

「…………」

あからさまにあやしい雰囲気が漂うソレ。
だが列はなぜかそれに賭けようと思った。

「晃輝か? 命李ちゃんは見つかった。警察も今から呼ぶから公園に来てくれ……後、俺は少し工業団地の方にも行ってくる!」
『は? ちょ、お前……命李の事は分かったけど。おい、きいてるの…』

自らの友人が何かを言っているがもう列には聞こえなかった。
警察に命李の場所を教え自らは工業団地へと駆け出していた。
友人の妹を放ってなぜ生きたいのか。
ソレは彼にはわからない、だが心で理解は出来かけていた。

即ち、自分の妹はそこにいると。

「華枝……っ! 無事でいてくれ!!」

心の奥底の思いを口にして列は工業団地へ走りだした。

PM 18:10 森林の手前の獣道

突然切れた携帯を手にして晃輝はただ携帯を見るだけだった。
だがすぐにこうしてはいられないと急ぎ足で公園へと向かった。

「……にしても何でまた工業団地?」
『さぁな……何か手掛かりでも見つけたのだろう』

ギルファリアスの言葉を聞きながら晃輝は公園へと走っていく。
何か嫌な予感を……感じながら。

「……くそ、いやな月だな……笑ってやがる」

晃輝は舌打ちをして月を忌々しく見上げた。

『三日月か……あの感じだとそろそろ新月だな』

ギルファリアスはどこか……憂鬱そうに空を眺め呟いた。
こうして彼等は森林の奥には行かずに公園へ向かった。
ソレが正しいか……正しくないかは別として。

PM 19:20 工業団地 路上近くの工場屋根

そこでは戦いを終え息を整えているゼベイルをただ見続けている青年がいた。
何が面白いのだろうか、その場から決して動かずに彼は戦いの一部始終をすべて見ていたのだ。

「……見事、といいたいが……。最後に出てきた下郎……もう少しあの場に居れば私が直々相手をしてやろうと思ったが……まさか、感づいて逃げたか?」

最後まで戦いきったゼベイルを見ながら青年は途中で割り込んできた赤い女と黒いローブを思い出す。
たしかラビリンスといった組織の幹部的な存在だったな。と思いだしてすぐに彼はそんな二人を忘れてた。

彼からすればラビリンスなど所詮人が作り上げた組織にすぎない。そして手を組むか組まないかは彼ではなく六将が決める事なのだ。
故に彼は我関せずでゼベイルを見ていたが……何かに気づいたのか空を見上げた。

「……ん? シンガーのスケッチブックを誰かが拾ったか……ほう……なるほどな、そのような運命となるか」

少し驚いた口調で彼は感じたことを口にした。
なぜわかるのか……答えは単純だ。
実は彼は妹の場所がいつでもわかるように自らの忠君であるネームレス中級を常に妹や妹に関連している人物に送っている。
当然彼等は襲い掛かるわけがない、ただ常時主である彼に連絡を送り現状を教えるだけだ。

戦う時は……やはり主である彼が攻撃を命じたときくらいだろう。
ソレくらいに忠君であり彼もまた信頼してその任を任している。なんとも完璧な主従関係である。

「……指示変更。フセ レツへの監視も開始しろ。代わりに闇の契約者の探索を一時打ち切れ」

了解、と言う合図は聞こえない。
だが彼はもう命令を言わない、なぜなら忠君である彼等が裏切ることはないのだ。

「……あぁ、それとシンガーのスケッチブックに『工業団地へ行け』っと……ほう、もう書かれていたか。大方メッセンジャー辺りか……仕事が早い女だ」

ゼベイルを見ながら彼は妹の忠君の一人である女性を思う浮かべやや関心しながらも呆れていた。

「さて、彼女の兄が来るまで何事も無ければいいが……」

そう言い彼は敵がいないか気配を読み取るために目を瞑ることにした。
月は……ただそんな彼を僅かに照らすだけに輝いていた。


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