第5話 行事計画と不落要塞


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行事計画と不落要塞



「クラスマッチ・・・ですか?」

 授業より先に生徒会室(今日知ったのだが、会議用の部屋は地下に存在する。しかもなぜか地底湖の中にである。当然、周りの景色は水だ。)に来たのだが、
 そこで言われたことは、クラスマッチになにをしたい、であった。

「球技大会じゃないんですか?」

 クラスマッチといえば球技大会しか思いつかない。この人はそれだけじゃだめなのだろうか。
 いや、きっとだめなんだな。この人は。

「去年は球技大会だけだったのだが、さすがにつまらなくてな。今年は1日空けて2日目になにか別の競技をしようと思うのだ」

 去年は球技大会だけだったのがむしろ驚きだ。

「去年は何も思い浮かばなくてな」

 この人でもそういうことあるのか。新鮮な気分だ。

「お、そうだ、じゃあガンサバイバルとかいいんじゃねえか?」

 名案でも思いついたかのように語る輝先輩。

 それはさすがにない、と思った。

 なんだ、ガンサバイバルって。ゲームじゃないんだし。

 というか校舎内で、そんなの出来るわけない。さすがに。いくら広いといっても。

 当然、会長も却下すると思ったのだが、

「名案だな。それにしよう」

 決まってしまった。なぜだ。なぜこうなる。
 一切の議論なしに決まってしまった。会議用の部屋で執行部メンバーが揃っている意味がない。

「これに関しては議論すべきですよ、聖王」

 カシー先輩が当然のことを言う。

「ム、それもそうだな。でなければここに人を集めた意味がないな」

 当然無視すると思っていた俺は、その真っ当っぷりに驚いた。

 で、こういう場面で驚愕の表情を浮かべていれば当然―

「なんだ貴様、俺が人の意見を聞かないように見えるか」
「すいません。そう見ていました」
「今回は見逃してやる。次はないと思え」
「は、はい」

 虎口を逃れる、という言葉の意味を今身をもって知った気がする。冷や汗が止まらない。

 まったく、俺をどれだけ非常識に思っているのだ、とか聞こえてきたけど、非常識にしか思えないでしょう。
 会長さん。

「で、何か他に意見のあるものは」

 改めて左右を見渡して意見を聞く。

 うーん。改めてガンサバイバル以上にすごいものって聞かれると・・・
 皆一様に腕を組んで考え込む。

 誰も思い浮かばないようだ。
 輝先輩は勿論、考えている様子はない。

「ないようだな」

 そう言ってシンキングタイムを終わらせる会長。

 となると次なる議題はルールということになる。

「俺が考えた基本的なルールだが」

 会長が語ったルールの要点をまとめるとこうだ

 1.全員、特別なジャケットを羽織る。これにはセンサーがついており、ポインターがあたると反応する。
 1.センサーが反応した参加者はその時点で脱落とする。
 1.1学級を1チームとする。
 1. 会場は校舎内とする。
 1. 各学科ごとにわけて行う。

 ざっとこんなところだ。開催は一週間後、とのことらしい。
 まぁ、決まってしまったものは仕方ない。面白そうだからいいけど。

 さて、帰り際、会長にここに来てから疑問に思ったことを聞いてみた。

「会長、ところでなんでわざわざこんなところに会議室なんか」
「それについてはだな。昔見たアニメの秘密基地が、東京湾に隠されていたんだ。それを再現したくてな」
「・・・さ、さようですか」

 金があると本当に何でもできるんだな。そう思った瞬間だった。
 金と権力とアイディアがあれば本当になんでもできるんだな。うん。

「授業があるのだろう。早く教室へ戻ったらどうだ」
「あ、はい」

 そう言って会議室のエレベーターのボタンを押そうとしたとき、待て、と呼び止められた。

 この前といい、どっちなんだ。

「今日は初日だからな、おそらく学校案内のはずだ。今頃は恐らく、図書館だろう」
「あ、ありがとうございます」

 しかし、自分は移動する気のない会長を見て、思わず聞いてしまった。

「会長は移動しなくてよろしいので?」
「俺はこの後用事があるのでな」
「そうですか」

 改めてエレベーターにのりこみ、図書館に向かう。

 ・・・図書館ってどこだ。

 幸い、地上に出て、建物を出たすぐのところに、敷地内地図があった。
 公園とかにあるアレだ。

 いや、地図を見ようとしたときに気がついた。

 見える。

 建物が。

 でかでかと資料館ってかいてある。
 図書館ってかかれてないけどあれだろう。

 いや、看板つきですか。

 それより下手な博物館より大きいとはこれいかに。いや、もう慣れたけど。
 ここの規格になれると、後で別の場所行ったとき苦労しそうだ。

 しかし、今までなぜ気がつかなかったのか。
 普通科校舎のすぐ後ろだ。

 まぁ、それはともかく資料館に向かう。


 会長の予想通り、皆図書館にいた。

 ちょうど、1年生が見学にはいるところだ。
 神崎先生が気がついて俺に声をかける。
「おう、鵜飼。戻ってきたか。よし、今から一緒に中を見て回るぞ」
「はい」

 先生の背中を追って恐ろしくでかい建造物に足を踏み入れる。
 学校の資料館なのに中が総大理石とはどうなっているのやら。

 クラスの皆もどうやら驚きを通り越して呆れているらしい。
 中には、この大理石いくらか持って帰ろう、などと言っている人もいるけど。

 一応、学級委員だし注意しようと思った矢先、神崎先生が
「持って帰る?ハッハッハ、やってみろ。出来るものならな」
 ときた。頭が痛くなる。確かにそうだけど、教師がそれでいいのか。

 そういっていた数人の生徒も笑いながら
「まさかー、こんな装備じゃ持って帰れないよ。もっと掘削機材とかないと」
 などといっている。

 ・・・

 えらいことだ。数秒間硬直してしまった。

 掘削機材?いや、本気でそんなことを考えているわけじゃないだろう。うん。

「ドリルとか電気カッターとか持ってくるよ。もらうときは」
「そうか。しかし、中々難しいぞ」

 ニヤリと唇をゆがめる神崎先生。止める雰囲気なんて微塵も感じられない。

「俺も去年試そうとしたんだがな、しかけてあった警護システムに持ってきた重機やらなにやらを破壊された」

 恐る恐る訊ねる。

「あの・・・お咎めは?」
「そうだな・・・思い出した。生徒会長に、『二度とやらぬように。下手すると死人が出る』
 と注意されたな」

 本人にお咎めはないのか。それでいいのか。よくないだろ。なぜ罷免されない。
 しかもなんだ、警護システムって。

「ああ、そこら中に、盗難防止用のビーム砲とかあるんだ。人間を簡単に殺せるらしい」
「・・・・」

 聞いてはいけないようなことを聞いた気がする。

「本が燃えたりとかは考えられていないんですか?」
「仕掛けた本人に聞け」

 それを聞いていた、盗みを計画していた生徒達はと言うと
「すげえ!みてみてえ!」
 馬鹿だろうか。自殺願望者にしか見えない。
 冗談だろう、と高をくくっているのかもしれないけど、あの会長のことだから絶対にある。

 勘が告げている。本能が警告を出している。
 間違いなくこのままだと死人が出ると。

「皆!馬鹿なマネはやめて!本当に死ぬ!あの会長は絶対に設置してる!馬鹿げた夢を実現できるだけの金と技術と人がいる!」

 最早怒鳴り声であった。ついでによほど恐ろしい形相だったらしい。

 計画していた人達は、若干顔を引きつらせながらも、中止を決断してくれた。

 この様子を見ていた炎村さんがこっちによってくる。

「鵜飼ィ。お前が頼れる存在に見えたの初めてだぞ~?いや、やれば出来るんだな。アハハ」

 そして背中をバンバン叩く。力の加減を覚えて欲しい。痛い。

 ガヤガヤうるさくなってきた。どうやら俺のせいらしい。
 まぁ、さっきのことでもネタに話しているんだろう。
「アイツがあんな大きい声が」とか聞こえるし。

 ここになって先生が手をパンパンと叩く。この乾いた音は意外と響く。
 それに気がついて、生徒が静かになる。
 初めて神崎先生が教師らしいところみた。

「よし、とりあえず手短に案内を済まそう」

 ようやくだよ。というか資料室で大理石盗む話を聞いてそれをあおる教師がどこにいるんだ。
 ところが、動こうとしない。

「実はな、あまり広くて一々回るのが面倒だ。ということで、ここで大まかな説明にしておく」

 一同シーンとする。そこらじゅう見せてくれるわけではないらしい。

「さて、資料室だからな。本だけではなく、DVDやCDがある」

 そういってエスカレーターとエレベーターを指差す先生。

「1階は図書。2階はCD。3階はDVDだ」

 これには皆驚く。階ごとにおいてあるものが違うのか。となると3階は全部DVDということになる。

「さてだ、本については、まず著者別にわけてある。そして同じ著者では作品名のアイウエオ順にな
 っている。CDも同じだ。DVDはジャンル毎に分けてあり、その中でアイウエオ順だ」

 これだけ言って全員の顔を見渡す。
 これだけで終りなのか?

「質問はあるか?ないようだな」

 質問を考える時間すら与えず、質問タイムを終わらせる先生。
 成る程、これなら会長が首にしない理由が分かる。
 会長の面白いという基準に当てはまっているのだろう。

 踵を返してさっさと出て行く先生。慌ててみんなその後を追う。

 おかしい。なぜ普通科校舎に向かっている。

 一人の女子が質問する。

「あのう、先生。教室にもどっているようにみえるんですけど」
「見えるのではなく戻っているのだ」
「え?でも、この後も予定が」
「疲れた。今日はこれで終りだ」

 この答えに唖然とする一同。しかし、直後に歓喜の声が上がる。

「やったあ!今日はもう終りだ!」

 皆が皆喜んでいる。まぁ、施設案内だし、大丈夫か。

 そんなわけでものすごく早い時間に終りの号令をかけて部屋に戻った。

 まぁこういうのもいいか。最近疲れっぱなしだから。

 そんなわけで昼間から布団にもぐりこんだ。

 昼食食べ損ねた。

 昼の分まで夕食食べたから回りから好奇の視線で見られた。

 昨日に比べれば平和だった。