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 月が明るく昇り始めた静かな山村は、今日だけ多くの人が訪れ賑わっている。そこに一台の車が止まり、中から負けないくらい賑やかな声が聞こえてきた。「小父さん、ありがとうございます」「いいんだよ、友達同士で行った方が楽しいだろ?」「はい」
 車から降りてきたのは、まひる一家とその友達たちの一行だ。今日は旧暦の七夕。光が丘からそれほど遠くない山村で七夕祭りが行われると聞いてやってきたのだ。まひるの父が仕事の関係で一度訪れたことがあると言い、連れて行ってくれることになった。折角だからということでまひるがかぐやをはじめ、右京や左近などの友達にも声を掛けて大所帯で出かけることになった。
「迷子にならないでね」とまひるの母が声を掛ける。「もし迷ったら、神社の境内にね。9時に全員集合だから」「はーい!」 まひるの父の注意に元気良く答えるまひるたち。お目当ては祭りの行われている境内の中の夜店だ。ここは、丘の上にある神社の本殿の下に長い参詣路があり、たくさんの夜店が並んでいる。七夕の飾りも多く並び、短冊には地元の子供たちの願い事が書かれている。地元の商工会のテントが置かれ、観光客や参詣客に短冊を書くように促している。まひるたちも短冊を手にとって何を書こうか思案した。
「やっぱり、ここは大会での優勝とか?」 美香が短冊を片手にまひるの方を見る。「いやいや、ここは彼氏が出来ますようにとかって書くのが定番なんじゃ?」と則子。「それはどうかなぁ」と苦笑するまひる。「学生だもん、学業優先だよね」という雪奈の意見に「おー、真面目委員長は違いますなあ」と茶化す則子。「ねえ、かぐやは?」とまひるがかぐやの方を見ると、かぐやは既に短冊を書いてしまった後のようだった。「お願いごとは内緒でしょ?」と笑って誤魔化すかぐや。
 散々悩んだ挙句、ようやく願い事を書き込んだ全員は、夜店の参道へと繰り出す。お小遣いの範囲で、色々と楽しむ全員。たこ焼きや綿菓子を皆で割り勘したり…則子がカタヌキやつり風船にはまったりと皆が楽しんでいる。かぐやが輪投げに挑戦して、輪を投げるのだがうまくいかない。「かぐや、何か欲しいのがあるの?」「ええ、あの兎の人形がかわいいなと思って」「ちょっと待って、私結構こういうの得意なんだ」 まひるが輪を投げると2,3回惜しい所で失敗したが、次はうまく輪が掛かって取ることができた。まひるが人形を手渡すと嬉しそうにするかぐや。残った輪でオロ○ミンCを取ると二人で飲んだ。かぐやが、お礼に何かしたいというので、まひるは射的で虎のぬいぐるみを取ってもらう。「お嬢ちゃん、スナイパーの素質あるねえ」と射的屋のオヤジさんが渡してくれたのを恥かしそうに受け取って、まひるに渡した。ニッコリと笑うまひる。
 そんなこんなではしゃぎすぎて疲れたのと、折角だから集合場所を確認しようと、神社の本殿まで行ってみることにした。石段を登り、境内に入る。それほど大きな作りではないが、狛犬ならぬ狛兎や三日月形の池などが配されている。ボンボリの明かりが灯され、何となく幽玄な気配がする。神社は小高い丘の上にあるので、下の夜店の明かりが地上の銀河のように見えてとても美しい。
「神社の中、人居ないね?」「いーじゃん、これなら集合しやすいし」「そうだね」 全員で本殿の階段に座る。「かぐや、大丈夫?」 ちょっと疲れた顔のかぐやにまひるが声をかける。「ちょっと人混みに酔っただけ。少し休めば直ると思う」 かぐやがぎこちなく笑う。
「時間も軍資金も残り少ない……せめて軍資金だけでも増やしてもうちょっと楽しみたーい」 しばらく話している家に突然、則子が立ち上がる。「のりぽ隊員、今こそ一粒の真珠で万倍の夢をかなえる時だ」「良く言った、美香隊員」 左右コンビで盛り上がって夜店へもう一度行くことにした。まひるはかぐやともう少し休んでから行くことにする。雪奈は、二人が暴走しすぎないように見張りに行くと言って彼女らと一緒に出かけていった。苦笑いしながら、残されるまひるとかぐや。落ち着くと月の明かりとボンボリの明かり、そして夜風が吹いて気持ち良い。まひるとかぐやは、手をつないで今までのことを話始めた。
「もう半年近くになるんだなー」「何が?」「まひると知り合ってからよ」「そうかあ、こんなに仲良しになるとは思わなかったねー」
 感慨深く話す二人。かぐやが夜空を見上げた時だった。月を背景に何かが浮かんでいる。飛行機……ではない。何かの乗り物のような感じがする。「ま、まひる。あれ、何?」「ん?」 まひるも目を凝らす。「もしかしてUFOって奴? 初めて見た」「ちょっと違うと思うけど」「ってかぐや、UFO見たことあるの」「本場だったし」
 その何かがゆっくりと近付いてくる。「こ、こっちくるよ」「未知との遭遇ね」 目の前に現れたのは輿のような乗り物だった。中に誰かが倒れてている。その乗り物はゆっくりと二人の前に着陸した。「大丈夫?」 中をのぞき込む二人。古風な着物を着た少女が一人うつ伏せで倒れている。軽くゆすったりしていると気が付いたのか動きそうな気配を感じた。「ねえ、この子かぐやに似てない?」 少し見えた横顔を見ながらまひるがかぐやと顔を見比べる。「そうかしら?」とかぐや。
 その時だった。月がぐにゃりと歪んだような気配を感じた。「闇の気配を感じるレジ」 オレンジたちが境内の茂みから飛び出す。「あんたたち、どこ行ってたの?」「そんな事より気をつけるパプ」「そうピピ」 月がゆっくりと欠けていき、その影が二人の所にも差してくる。「なに?」 月を見上げる二人。月から伸びる影が周囲を包み込み、神社全体が闇の世界に包まれる。同時に空から幾つもの黒い者たちがものすごい勢いで迫ってくるのを感じた。轟音と土煙を上げて影の化け物たちがまひるたちを取り囲む。悲鳴を上げる少女。反射的にキュアパストを構える二人。「変身よ」「うん」 プリキュアに変身して戦う二人。「オレンジたちは、その子を守って!」「分かったレジ」 人間態に変身すると輿を担いで逃げ出すオレンジたち。巨大な黒い者たちは、前に戦ったことのあるシャドウクライナーに感じが似ている。一瞬、顔を見合わせてうなずくとダッシュで猛攻をかける二人。何とか影の者を追い払うと欠けていた月は元通りになり、眼下の夜店の明かりも最初と変わらない感じに戻っている。
「終わったかレジ?」 オレンジたちが徒歩で戻ってきた。さっきの少女が彼らの後に続いている。古めかしい衣装を着た少女は、自分をティアナ姫という月の世界の姫であると紹介した。「そちたちの先ほどの戦いのほどを、とくと見せてもろうた。その上で頼みがある」 ちょっと偉そうな物言いであったティアナ姫が頭を下げる。「こうして頭を下げてお願いがある。わらわの国を助けてたもれ」「?」 突然の展開にまひるとかぐやはびっくりだ。
 ティアナ姫の住む月の国をフーテンタイガーという奴が自分の物にしようと暴れているのだという。「うん、わかった」 ティアナ姫の話を聞いて立ち上がるまひる。「ちょ、ちょっと待ってよ。そんな突然」と躊躇するかぐやだが、まひるのかぐやと同じ顔の女の子が困っているのを見過ごせないという意見を聞いてティアナ姫の顔をしばらく見つめる。そして顔にふっと笑みを浮かべるとうなずいた。「分かったわ、まひるの行くところなら私も行くわ」「でも、どうやっていくの?」 まひるの疑問にティアナ姫がどこからか小さな光のワンダースターライトを取り出すと軽く振るう。すると彼女が乗ってきた輿が浮かびながらやってきた。「これに乗ればひとっ飛びじゃ」 恐々乗るまひるとかぐや。二人とオレンジたちが乗ったのを確認するとライトを大きく振る。途端に輿が大きく勢い良くと飛び上がった。まひるたちが一斉に悲鳴を上げる。そんなことにはお構いなく輿はどんどん上昇していく。「わぁ、地球がどんどん小さくなっていくー」 まひるがようやく目を開けると地球がはるか眼下に見える。宇宙空間に出ているはずなのに苦しくない。それはとても不思議だった。
 輿はどんどん月に近付いていく。「このままだとぶつかるけど大丈夫なの?」 かぐやの言葉にティアナ姫が振り返って笑う。「大丈夫だ。わらわにまかせておきなさい」 月面まであとわずかというところで、月がいきなり輝きだした。光の中で通路が開かれる。「月の国への通路なのじゃ」 その通路を通ると目の前に大きな三日月が浮かんでいる。輿が段々近付いて行くと街が見えてくる。規則正しい碁盤の目のような街で、その中央に巨大な御殿が建っている。「何か雅な世界だねー」 まひるが下をのぞきながら言う。「あの月光の城がわらわの城じゃ。まだ、街はフーテンタイガーに襲われてはおらぬ」 輿が月光の城の庭にゆっくりと着陸する。すると目の前には女官たちが並び頭を下げて控えてる。
「姫さーまー」 月光の城の入口から一人のティアナ姫より小さい少女が駆け寄ってくるのが見えた。「心配しておりました。フーテンの手の者に追われたと聞いて……どこにもお怪我はありませぬか?」 少女は心配そうにティアナ姫の体をペタペタ触る。「何か、まひるっぽいわね、あの子」「えーそうかな?」 ひそひそ話し合っていると、少女がまひるたちに気付く。「姫様、この者たちは何者なのですか?」「ああ、この二人は伝説の戦士プリキュアじゃ……そう言えばそちたち名前を何ともうしたかの?」「まひるです」「かぐやです」「はー、これがプリキュアでございますか? そうそう私はチクリンと申します。姫様専用の女官でございます」「はぁ…」 チクリンに促されて二人とも月光の城へと入る。月光の城と呼ばれる建物は、昔話のかぐや姫の挿絵で見たような豪華な物で黒い漆と朱色のコントラストが美しい。初めて見る光景にまひるとかぐやは周囲を見回しながら進む。
「せっかくだからお召し物のお着替えを。姫様はこちらに」 チクリンが姫様を促し奥の部屋へと進んでいく。残されたまひるとかぐやは現れた女官たちによって着替えさせられた。最初は突然のことに大騒ぎをした二人だが、着替え終わると綺麗な着物に思わず顔がほころぶ、かぐや。「何で、私だけかぐやみたいな着物じゃないのー」 まひるの絶叫が示すように彼女の服装は女官たちと同じもので、かぐやのそれとは全然違う。
「ティアナ姫様と同じお顔のかぐや様を粗雑に扱うことはできませぬゆえ、つーかお前かぐや様お付きの女官ではございませんのか?」 どこからともなくチクリンが現れる。「そんなわけないでしょ」とキレ気味のまひるを無視してさっと礼を取る。「ティアナ姫さまのお越しでございます」
 ティアナが美しい着物に着替えて部屋に入ってきた。まひるの声が気になったらしい。チクリンはその場で何事もなかったように振る舞い、ティアナ姫もそのまま上座の御簾の中に座る。まひるは諦めてブーたれながらもそのままかぐやの隣に座った。かぐやが済まなそうに苦笑する。
 お茶とお菓子が運ばれてきた。抹茶っぽい飲み物とお団子、季節の和菓子などである。さっきの怒りも忘れてご馳走になるまひる。お茶席には慣れているのか、意外と動きづらそうな着物での立ち振る舞いに問題のないかぐや。一通り、お茶を頂いたところでティアナ姫が本題に入った。
「三日月の国の真裏に月影の城という場所がある。そこの城主、フーテンタイガーと申す者がいての……」
 ティアナ姫の言う話では、フーテンタイガーが彼の支配する地域と三日月の国とを一つにしようと企んでいるのだという話だった。そのために姫に近付いたが、彼女はフーテンタイガーの考えを嫌い、拒絶した。その結果、力による征服を始めたのだという。
「この国は社の宮の結界によって守られておったのじゃ。じゃが、何ゆえか急激に力をつけたフーテンタイガーに乗っ取られてしもうた。この城も今は安全じゃが、それも時間の問題であろうの」 ティアナ姫が悲しそうな表情をする。
「力で自分の思い通りにしようなって一番やっちゃいけないことだよね」 まひるが思わず立ち上がる。その気配に押されてうなずくかぐや。「私たちができることならお手伝いします」「まさに恩に着るぞ」 うれしそうなティアナ姫。
 そこに不穏な影が近付いていることも知らず、和んでいる一同。突然、城内の明かりが消える。女官たちが慌てる中、オレンジが叫ぶ。「闇の気配が近付いてきてるレジ」「ダークネス?」 チクリンがティアナ姫を安全な所に移そうとした時、城全体が揺れた。大きな音がし、建物の一部が壊れる。「何事!」「姫様、こちらにですわ」 城内の壁が壊れ外から黒い影がいくつも現れる。ティアナを襲ってきたあのシャドウクライナーっぽい奴だ。「変身するパブ」 パープルの叫び声にうなずく二人。「あ!」 二人が同時に叫ぶ。着替えさせられたせいでキュアパストが手元にないことに気付いたのだ。「私たちのキュアパストは?」 まひるが大声で叫ぶ。「キュアパストって何でございますの?」 チクリンがティアナ姫を避難させながら聞き返す。「あれがないと、プリキュアになれないのよ」「えー?」 逃げ惑う女官たちでパニックになっている室内では、探すにも探せない。外からの明かりだけが頼りな中でキュアパストを探すのは至難の技だ。ようやく探し当てて変身しようと構えた次の瞬間、「きゃあ、まひる、まひるー」 突然、かぐやの絶叫が響く。
 まひるが振り返るとさっきまでそこにいたはずのかぐやの姿がない。それまで暴れまわっていたクライナーの姿も消えた。何が起こったのか分からずに立ち尽くすまひる。城内の明かりが再びともりはじめると、残されたのはめちゃくちゃに荒らされた室内と恐怖に震える女官たちの姿のみ。
「かぐや、かぐやは?」 慌てて周囲を見回すがかぐやの姿はどこにもない。「皆様、大丈夫でございましたか」 壁がくるりと回って、中からチクリンとティアナ姫が姿を現す。まひるはかぐやの姿が見えないことをティアナ姫に伝えた。落ち着きを取り戻した女官たちも手伝って探すが、やはり見つけることはできなかった。結局、ティアナ姫と間違われて攫われたのだろうという結論に達した。
「おもてなしと思ったことが裏目になってしもうて・・・本当に申し訳ない」 ティアナ姫が悪いとは思わなかったが、次の瞬間に声を上げて泣き出しそうになるまひる。でもぐっとそこをこらえて涙を拭う。「かぐやもキュアパストを持っているから大丈夫」

 かぐやが目を覚ますと、そこは見慣れない空間だった。どうやら、クライナーに掴まれた時に気を失ってしまったらしい。手にキュアパストが握り締められていることを確認するとちょっと安心する。周囲を見回すと木造の巨大な建物の中にいることだけは分かる。わずかながら明かりがあるのがありがたい。扉が開く音がした。その音の方へ顔を向けるかぐや。薄暗い所から何者かが入ってきたのが分かった。「ようやくお招きすることができましたな、ティアナ姫」 野太い声の主の顔がわずかな明かりに浮かび上がる。獣人の顔に思わず悲鳴を上げそうになるが、こらえるかぐや。すぐにそれがフーテンタイガーであることを悟る。どうやら、ティアナ姫とかぐやを間違えているらしい。
 毛深くて太い指がかぐやのあごを持ち上げる。深く見つめる目には妖しい光が宿っている。「ティアナ姫、目の色はどうされましたかな?」 そのままかぐやを吹き飛ばす。壁にぶち当たり、苦悶の表情を浮かべる。「影武者とは、小賢しいまねを。お前は何者だ」 フーテンタイガーから怒りのオーラが噴出しているのが分かる。「私は、月宮かぐや・・・キュアナイトよ」 かぐやが立ち上がるとキュアパストを構える。プリキュアに変身する。そして、フーテンタイガーと戦った。最初優勢に見えたナイトだったが、フーテンタイガーの圧倒的な力に押され、変身が解ける。着物姿のまま床に倒れるかぐや。
「お前がプリキュアか・・・何かに使えるかも知れんな。命は助けてやろう」 キュアパストを取り上げると、闇のロープで彼女の体を縛る。そして、高笑いをしながら部屋を出て行った。

 まひるは、しばらく準備ができるのを待って街外れの社の宮へと向かっていた。月光の城を中心にして広がる街の外れに位置している。ちょうど、フーテンタイガーの根城である月影の城から三日月の国を守る結界としての位置に置かれている。まひるとティアナ姫が一つの輿に乗り、続く輿にチクリンとオレンジたちが乗っている。まひるは虎の人形を見つめながら、かぐやのことを考えていた。その人形にティアナ姫が気付く。「虎の人形じゃな。フーテンタイガーもそのように可愛ければよいものを……」 つぶやくように姫が話す。「これかぐやから貰ったんです。かぐやは私が取った兎の人形を持っていて……」「そうか、離れていても心は一つか。わらわもそうなりたいものじゃのう」 まひるにその言葉の意味は分からなかった。
 意識を取り戻したかぐやは、自分が縛られているのに気が付いた。起き上がることができるが逃げ出すことはできない。キュアパストがない。不思議なことに替わりにまひるに取ってもらった兎の人形が握られていた。小さな人形を見つめていると勇気が湧いてくる気がする。「まひる……」 そっとつぶやいた彼女は、物音で顔を上げた。
 目の光をなくした侍女のような者たちが入ってくると、かぐやの衣装を整え始めた。白い着物に着替えさせ、頭にベールのような布を被せる。準備ができると部屋の外へ連れ出された。暗い通路を進んでいくと出た場所は、神聖な儀式の行われると思われる場所だった。中央に置かれた三日月型の鏡を中心に宝物のような石像が並んでいる。それを背景にしてフーテンタイガーが立っている。「一体……」 口を開いたところでフーテンタイガーに何かの術を掛けられ口が利けなくなってしまう。
「さあ、俺とティアナ姫との婚礼の義を始めろ」 フーテンタイガーが大声で吠える。神官とおぼしき人物たちがフーテンの威嚇におびえながらも、厳かな態度をとり儀式を始める。
「ここが社の宮じゃ」 輿から降りたまひるは、キュアパストを構える。カードをスラッシュしてプリキュアに変身する。そして、社の宮へと突っ込んでいった。ティアナ姫たちも後に続く。厳重な壁を突破して内部に侵入するサンディたち。
 微かな衝撃音をフーテンタイガーは感知していた。体を青黒く闇のオーラで光らせると、体からシャドウクライナーたちが次々と飛び出していく。それは震動源へ向かって一直線に向かっていった。神官たちはその恐ろしい光景を見ない振りをして儀式を進めていく。
 一斉にサンディたちに襲い掛かるシャドウクライナーたち。逃げ惑うティアナ姫やチクリン、そしてオレンジたち。「ここは私が食い止めるから、ティアナ姫たちはかぐやを探して」 サンディの声に物陰に隠れながらうなずく全員。サンディは、シャドウクライナーに向かって突っ込んでいく。力の限り拳やキックをお見舞いし、次々に撃破していくクライナー。数は多いが、仮面をつけた本物ではないので何とかなりそうだ。そのまま突き進む。
 サンディが社の奥に消えた後で、ティアナ姫たちは隠れていた物陰から顔をだした。「危なかったレジ」「かぐやを探すプル」「ティアナ姫なら、場所は分かるんじゃないピピ」 ティアナ姫が言うには、建物の後ろにある社の洞窟の中にある岩屋だろうということだった。そこは、昔三日月の国を荒らした鬼を閉じ込めた場所として今も牢屋のようになっているらしい。ティアナ姫とチクリンの先導で一斉にその岩屋の方へ走り出す全員。無事に岩屋にたどり着くと、かぐやは居なかった。しかし、明かりの具合などから、誰かがさっきまで居たことは確かだ。そして、チクリンが「あれは、キュアパストではございません」と叫ぶ。岩屋のさらに奥の所に闇のカプセルに入ったキュアパストが浮かんでる。オレンジたちが牢の隙間から中に入り、そのカプセルに手を触れる。途端に雷のような衝撃が走り、オレンジの体から煙が……。「闇のパワーが強すぎて駄目レジ」「ならば、わらわが」 ティアナ姫が髪飾りを清めて投げつけると、カプセルにヒビが入り、そして割れた。床に落ちるキュアパスト。
「これをかぐやに届けるプル」「でも、かぐやはどこにいるピピ」 全員が顔を見合わせる。ここに居ないとなればかぐやの居場所はわからない。その時だった。チクリンの髪飾りがゆっくりと光ったり消えたりしているのに気が付いた。「姫さま、この光は…」「そうじゃ、婚姻の儀式が行われておるのじゃ」「ええレジ!」
「では、フーテンタイガーとティアナ姫の婚姻の誓いの証として、全ての宝物に光を。全ての宝物より光の祝福があれば、その婚姻は成立するなり」 神官の長が厳かに宣言して、宝物の入っている扉を開いた。そこには石の像となっている三日月の国の伝説の宝物たちが並んでいる。フーテンタイガーがゆっくりと片手を前に差し出す。ティアナ姫の身代わりにされているかぐやもつられるように片手を前に出す。宝物が、ゆっくりと光始めるが……その光が消えてしまう。ざわめく神官たち。
「な、何故だ!」 うろたえるフーテンタイガー。「そのティアナ姫は偽物だからじゃ」 入口にティアナ姫が立ち憮然とした表情で、城内を見回している。「ティ、ティアナ姫が二人!」 神官たちが驚きの表情を見せる。本物が現れたことでニヤリと笑うフーテンタイガー。その時、儀式の間の壁が崩れ、サンディが飛び出してくる。彼女にまとわり着いていたシャドウクライナーの残りを一撃で倒し、そのままかぐやを攫う。ティアナ姫の隣に着地すると、かぐやをゆする。必死にかぐやの名前を呼び続けるサンディの声が届いたのか、かぐやの瞳に光が戻る。「サンディ……?」 かぐやは我に返って状況を理解したようだ。「私のパストは?」「これプル」 パープルが手渡す。すぐにキュアナイトに変身し、ティアナ姫を守るように立ちはだかる。「フーテンタイガー、もうあなたの好きにはさせない」 ナイトの目が怒りに燃えている。
「ならば、俺を倒すが良い」 フーテンタイガーが飛び上がり天井を突き破って外に出る。追いかけるサンディとナイト。フーテンタイガーがどこからか鞄を取り出すと、そこから武器が現れた。「例えプリキュアと言おうとも素手では武器に勝てまい」 武器から弾丸が発射しゃれる。かろうじて数発は避けるが、あまりの弾数に避けきることができない。地上に叩き付けられるサンディとナイト。
「ああ、プリキュアが圧倒的に不利レジ!」 オレンジたちから悲痛な声があがる。「姫さま、このままではプリキュアがやられてしまいます」「わかっておる。あの者たちはわらわたちの希望の光じゃからな」 ティアナ姫の手がチクリンの頭を探る。その手には小さな髪飾りが握られている。「これを使う時がきたようじゃ」 天上で繰り広げられている戦闘の中、ティアナ姫は宝物の前に立ち、髪飾りを握った手をゆっくりと前に差し出す。すると、石像たちが光はじめ、髪飾りに吸い込まれてしまう。すぐに3つの光の玉となって再び現れた。
「プリキュア、そち等に力を授けてあげるのじゃ」 ティアナの言葉とともに3つの光の玉のうち2つがプリキュアに向かって飛んでいく。サンディとナイトの前に玉が浮かぶと、光が消え、笛と琴に変わる。
「新たなる光の力を、プリキュアホーリーフルート」「新たなる希望の力を、プリキュアルナティックアロー」 サンディとナイトの叫びに呼応するかの様に笛と琴が、剣(つるぎ)と弓に変わる。
「何! あれが三日月の国に伝わる伝説の武器か」 一瞬たじろぐもののフーテンタイガーは間髪入れずに攻撃する。新しい力を手にいれた二人が地面を蹴って空を駆け上っていく。フーテンタイガーの攻撃を避け、サンディがホーリーフルートで攻撃を叩き落し、ナイトがルナティックアローで反撃する。見事なコンビネーションでの反撃にさすがのフーテンタイガーもたまらず、地面に叩きつけられる。
「何故だ、俺の力が通じないのか! ダークネスから貰ったこの闇の力が…!」 ボロボロになりながらもフーテンタイガーが咆哮する。「「「「「ダークネス!?」」」」」 
「全てを力でねじ伏せようとする、そちの考えが間違っておるのじゃ」 いつの間にかフーテンタイガーの傍らにティアナ姫が立っていた。「お前は俺を拒絶したではないか」「おまえ自身を拒絶したことなどない。わらわは、そちのその考えが嫌いじゃと申したはずではないか」 ティアナ姫の怒りとも哀れみとも取れる表情を見上げながら、フーテンタイガーは再び地面に顔をうずめる。
「ならば、俺の欲した力は、全て無駄だったというのか…」 ティアナ姫に拒絶され全てを失ったと思い荒れていた時、他の世界からやってきたダークネスと名乗る者たちの姿。それから、闇の力を注入され、今までにない圧倒的な力を得た瞬間……その光景が走馬灯のようにフーテンタイガーの脳裏を駆け巡る。
 ティアナ姫から光が現れてフーテンタイガー共々包み込んだ。二人しかいない世界。その中でティアナ姫とフーテンタイガーはお互いを見詰め合っていた。「最初からこうしてお互いが手を取り合っていけば良かったのじゃ」「俺の罪を許してくれるのか?」「許すも何もわらわとそちは最初から表裏一体の関係だったのじゃ。日の光で輝く月のようにな」「ティアナ姫……」
 二人が手を取り合いフーテンタイガーの瞳から邪悪な火が消えた。ホッとする面々。しかし、次の瞬間フーテンタイガーがティアナ姫を突き飛ばす。そのまま地面に転がり悶え苦しむフーテンタイガー。彼の体から黒いもやのような物が噴出し、巨大な影になっていく。フーテンタイガーの形をしたクライナーが現れる。今度のクライナーは仮面がついていて、本物だ。フーテンタイガーはぐったりとしたまま動かない。どうやら全ての力を失ってしまったようだ。
 社の宮を破壊して、街の方へと向かうクライナー。サンディとナイトが再び飛び立ち、クライナーと対峙する。しかし、武器を使っての攻撃もあまり効果がないようだった。巨大な手で払いのけられ、墜落する。砂煙を上げて地面にめり込むプリキュア。もうすぐ街に達しそうなクライナー。街では三日月の国の住人たちが慌てふためいている。
「ブレスを呼び出すピピ」 ピンクたちがアドベンタルキーを呼び出し、ブレスを召還する。ブレスが装着されて再び元気を取り戻すサンディとナイト。何とか街の手前で食い止めようと果敢に立ち向かう。必殺技を放つ二人。しかし、その力を吸収してしまうクライナー。勝利の鍵を確信した二人だったが、そのあっけなさに一瞬呆然とする。クライナーの攻撃が二人を襲う。
 ティアナ姫たちから悲鳴があがった。「信じられないレジ」 愕然とする全員。しかし、ティアナ姫は希望を捨ててはいなかった。自分の周囲を巡る残された光の玉を手に取る。「これが最後の力じゃ。プリキュアよ、受け取るのじゃ」 光の玉が小さな光に別れ、ティアナ姫だけでなくオレンジたちにも渡る。光の玉は、小さなライトに変化した。「ワンダースターライトじゃ、これでプリキュアに力を授けるのじゃ」 ティアナ姫がライトを振る。オレンジたちも一生懸命振る。「みんな、プリキュアに力を与えるレジ!」 オレンジが叫ぶ。ライトの先端についている小さな流れ星が振るに従って輝きを増していき、最後にライトから飛び出す。無数の流れ星が、倒れているプリキュアの二人に注がれていく。
 流れ星の中から立ち上がった二人の姿は、新たな形に変貌していた。ブレスの力と三日月の国の伝説の武器の力が溶け合い、スーパープリキュアとして生まれ変わったのだ。再び、空を舞う二人。今までとは違う圧倒的なパワーでクライナーを叩く。攻撃の激しさに膝を着くクライナー。「人の心の弱さにつけ込むなんて絶対に許さない」 今までの不利の分を跳ね返すように攻撃が続く。「力なんか無くたって、二人で新しい世界を作っていけるわ」 サンディとナイトが必殺技を発射する。ブレス以上の力を持った強力な光がクライナー全てを包み込み闇を侵食していく。そして、クライナーは砕け散り、シャイミーのカードが残された。

 クライナーが倒れると、変身が解け武器もそれぞれの石像の姿に戻る。「まひるにかぐや、そちたちにそれほどの礼を述べればいいのか、わらわには分からないくらい感謝しておる」「まひるさん、かぐやさん、三日月の国を救ってくれてありがとうございました」 ティアナ姫とチクリンにお礼を言われて照れる二人。「フーテンタイガーはどうするの?」 気を失っているフーテンタイガーの方に目をやるまひる。「もう大丈夫じゃ。二人でこれから、三日月の国を守ってゆける…」「そっか、良かった」
 ティアナ姫の顔に逃げ出してきた少女の面影は無い。本当に国を守っていける姫になったようだった。

「あれー、ふたりとも寝てるよ」「どうも来ないと思ったら、何だかなー」「手なんかつないじゃって、らぶらぶぅ」 神社の境内に明るい声が響いている。集合時間になったので、お祭りにきた全員が集合していたのだ。まひるとかぐやは社の階段にもたれて眠っていた。
 二人の真上には三日月があり、二人を照らしている。神社の入り口にある笹には「いつまでも皆仲良く」と書かれた短冊が揺れていた。
「二人を起こして帰るよー」「はーい」

終劇(じゃーん、じゃーん)