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SS第07話「ハッピバースデーまひる!」


「あかりを点けましょ、ろうそくに。お花も上げましょ、プレゼント。五人そろってパーティだ、今日は楽しい誕生日~♪」
 朝からひな祭りの替え歌でうきうきとケーキを飾り立てているまひるがいた。自分の誕生日に自分でケーキを作るというのもおかしな気がするが、家族や友人には任せられなし、買ってくるのも芸がない。せっかく誕生会ということで友達を招待しているのだから、これくらいのご馳走はしなきゃと思う。それに夜には改めて家族でお祝いの食事に出かけるし、夕ご飯の面倒を見なくていいだけでもまひるには嬉しかった。
 部屋の真ん中に大き目のテーブルを置き、真ん中にケーキを飾る。イチゴのつまみ食いは、製作者とメインの特権。飾りつけも完璧だ。最初は、則子からカフェ・アルジェントでやらないか? という案が出たのだけど、さすがにバレンタイ以降天城先輩と顔を合わ辛い。しかももうすぐ卒業式で逢えなくなってしまうし、なおさらだった。
「お姉ちゃん、ケーキ作ったの? ちょっとでかくない?」
 あさひがテーブルの中央にデンと置かれてるケーキに目を丸くする。しかし、その目は『いーなあ、食べたいなー』という期待にあふれてる。
「別に作ってあるから、そっちを切り分けて食べなよ」「わーい」 一目散に台所へ向かっていくあさひ。やっぱり家族用も作っておいて良かった…。
 準備がほぼ整ったところで、玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
 まひるが返事をして玄関に出ると、かぐやと雪菜の姿があった。
「誕生日おめでとうございます」「今日はお招きありがとう」「いえいえ、どういたしまして」
 玄関先でお辞儀をする三人。生真面目な挨拶に思わず笑みが漏れる。そのまま上がってもらって部屋に通す。
「本当なら私たちがパーティーとかやってあげるんだろうけど、ごめんねー」「別にいいよ、そんなの」
 テーブルについてもらう。二人ともまひる特製の特大ケーキに驚いている様子だ。
「二人とも一緒に来たの?」とまひる。「うんん、玄関前でばったり委員長に会ったの」とかぐや。「則子と美香はまだ来てないんだね」と雪菜。
「たぶん、すぐ来るんじゃないかな? ご馳走を前に遅れてくるとは思えないし…」とまひるが言った直後にチャイムが鳴る。
「「おっ誕生日おめでとーっ」」 玄関先で元気な声が聞こえる。やはり思ったとおり則子と美香だった。彼女らもまひるに促されて部屋に入る。
「それでは、今日は私の誕生日を祝って…」と則子が第一声をあげる。「違うでしょ!」とお約束の突っ込みが。
 飲み物をそれぞれのコップに注いで、再度乾杯の仕切りなおしをする。そしてバースディケーキのろうそくに火が点けられる。
「はーぴばーすでぃ、つーゆー~♪」
 みんなの声が部屋中に響き、そしてまひるがろうそくの火を一気に吹き消して、拍手につつまれた。
「それでは、月宮かぐやさんと朝日奈まひるさんの初めての共同作業です」
 美香が二人にナイフを渡す。まひるとかぐやは両手を添えてケーキにナイフを入れた。途端に湧き上がる拍手。雪菜までが苦笑しつつ拍手をしている。
「あんたたちねえ……。よし、のりぽと美香のケーキは小っちゃくてもいいよね」
 かぐやからナイフを受け取りつつ、にっこりと笑うまひる。
「わーごめん」「洒落よ、洒落だってば」 慌てる二人。そんな二人の様子にまた部屋の中が笑いで満たされる。
 ケーキを配り終わると、それぞれが持ち寄ったお菓子も開けて賑やかなパーティとなる。学校でのおしゃべりの雰囲気そのままに、次々と話題が移っていく。学校での噂話や先生の話、雪菜の兄貴自慢、則子の渾身のギャグ、そして大暴露大会とか。全員呼吸困難になるまで笑ったり、苦笑したり、シラケまくったり姦しい。
「宴もたけなわですが、ここで本日の主役まひるさんへのプレゼントタイムといたします」と、手を叩きながら則子が仕切る。
「では、月宮さんから順番に」と美香が提案して、そのまま時計回りにプレゼントを渡していくことにする。かぐやからのプレゼントは、きれいな写真の入った詩集(ただし英語版)。かぐや曰く「私が一番好きな詩集なの。英語は簡単だから読めるはず」だとか。雪菜からは、手作りのアクセサリー。そして、則子と美香からは共同でとのことだった。
「「じゃーん! カフェ・アルジェントの限定ロールケーキだ!」」
「それって、もしかして一日10本限定の奴?」 『限定ロールケーキ』と聞いてかぐやの瞳が輝く。
「ケーキ食べてまだケーキ食べるの?」と呆れる雪菜。
「結構、頑張りました!」「こんな時でもないと買えないです!」 則子と美香が自画自賛する。
「そして、まひるさんにはもう一つプレゼントがあります」と、則子が綺麗に包装された箱を取り出す。
「まあ、まひるにとってはこっちがメインかもね」と、美香がいたずらっぽく笑う。
「?」
 まひるは理由が分からないまま開けてみる。則子と美香はそんなまひるをニヤニヤしながら見ている。
「あ!」
 包み紙を取ると、『誕生日おめでとう 朝日奈さんへ』というバースデーカードのが添えられている。送り主の名前は天城先輩だ。開けてみると、キャンデーとクッキーとマシュマロの詰め合わせになっている。
「何やら天城先輩の苦悩が見えるような感じね」 雪菜の冷静な声だ。「こういうのは14日に贈るべきなんじゃないの?」
「さすがに3年生は、その頃は卒業しちゃうから難しいんじゃいかな?」 かぐやがフォローする。
「本当の春よりも先にまひるに春が来そうねー」と則子が茶化す。
「もーう、そんなんじゃないって」
 まひるが顔を赤くしながら否定する。あまり深追いするとまひるが暴れそうなので、その辺で止めておくのがいいだろうと全員で思った。
 そんなこんなで楽しい時間は過ぎ、夕方になる。さすがにまだ居るわけにはいかないので、かぐやたちはお暇することにした。
「みんな、ありがとうね。とっても楽しい誕生日だったよ」
 まひるがお礼を言う。
「何の何の、今度はお返しを期待してるから」
 則子がいたずらっぽく笑う。そして挨拶をして帰っていった。
 部屋に戻ると後片付けをする。今まで賑やかだった部屋が静まり返って食器を重ねる音がやけに響く感じがする。カフェ・アルジェントの特製ロールケーキは結局みんなで切り分けて食べてしまった。
 ふと目が天城先輩からのプレゼントに留まる。どんな気持ちでこのプレゼントを則子たちに託したんだろう? そんなことを思いながらカードを手に取る。男の人の字が先輩らしくて凄く良かった。次に会えるのは卒業式だろうか。
 そんなことを考えていると、いきなりドアが開く。
「!!」
 まひるは心臓が飛び出すかと思うくらいびっくりする。振り返るとあさひが立っている。
「あさひー、ノックしなさいよ」
「ちゃんとしたよ」 まひるの剣幕に『何言ってんの?』といった表情で答える。
「お母さんたち帰ってきたよ。出かける準備はどうかって?」
「ここを片付けたら行くよ」 まひるが返事をするとあさひがそのことを伝えに行く。
 今度は家族とのお祝いだ。まひるの誕生日祝いは、まだまだ続く。