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カジノ・ロワイヤル 水瓶vs蟹(+射手・羊) 774チップ 2007/09/29(土)20:33

92の続きです。第七ターンに入ります。



甲板で昼寝をしているときも破産者の出たアナウンスだけは大きな音で流れる。
蠍が破産したというアナウンスが流れたとき射手は空を眺めながら、直感的に
(ああ、またひどいことが起きた)と確信した。
しばらくその場でくつろいでぼんやりした時間を過ごし、また船内へと戻る。
賭博場に入ってプレイヤーたちの様子を観察して、ある一点で顔をゆがめた。

射(ああ。”何か起きてしまった”んだ。どうにかならなかったのかなあ。
  俺にできることなんてたかが知れてるけどさ、でもどうにかならなかったのか)

変貌をきたした蟹が、ポーカーの卓で水瓶の前に座っている。
優しいまなざしは失われ、何も喋らずに破壊的なオーラをずっと水瓶へ浴びせかけていた。
一時的に出しているのではなく何らかの要因でそれが身についてしまったのだとわかる。
時々最低限、「レイズ」「コール(チップ継続)」などの宣言をする声が無感情で冷たかった。
水瓶は鏡のような目で動じずにそれを受けて立つ。

射(相手がガメじゃ組み合わせが悪いや。見てて凍えそうな冷たさだ。
  ……ヒツがいればもう少し見てて耐えられるのになあ。あいつどこに行ったんだろ?)


賭博場のトイレでは、羊が洗面台に手をついて鏡の向こうを見据えている。
本人は戦略を練ったり気分を一新するためにやっている仕草なのだが、
周囲からはその視線の先がわからず鏡に映った自分の顔を見つめているととられがちだ。
彼自身、蠍破産以降の蟹との戦いでチップを削られていた。

羊(水瓶が踏ん張ってるうちに戻らねーと。あいつはマジで目がイッててやべえっ。
  あー久しぶりに顔見て戦いたくねえ……獅子みたいなタイプならいくら強くても受けて立つのに)

自分ほどではないが、席を立つ前に水瓶もチップを削られていた。
蟹は大賭けこそしないが小さな鋏でじわじわと確実にチップを削ってくる。
少しずつ削られて押されているということは向こうの守りが硬いのだ。
精神に異常をきたしているのか、こちらから仕掛ける駆け引きや挑発の類が全く効かない。

羊(蠍が落ちる前と後とで全く別物になってやがる。いや、踏ん張れ俺。しっかりしろ。
  あれを決勝まで残しといたらやべえっ)

全開にした水道で何度も顔を洗う。こうして活を入れるのも羊の手馴れた癖だ。
そのとき人のいないトイレに見知らぬ男が入ってくるのを、羊は構わずにいた。
男は羊がトイレに入るのを前もって見ていたのだろう。
トイレに入るとスムーズな動作で懐から銃を取り出し、迷わず銃底を振り上げて
顔を洗っている羊の首を殴打する。

羊の意識の中を強い衝撃が走った。

羊(……!?)

洗面台にぶつかり、床に倒れこむ一瞬までは意識があった。
もう一度首を殴られ全てが音を立てて断絶する。
床に倒れたまま動かなくなる羊の姿を男が見下ろしている。すぐに二人目が来て羊の身体が
引っ張り上げられ、運搬されるまで、ものの数分もかからなかった。


卓では水瓶が蟹相手に戦いを続けている。
相手の姿をその瞳にクリアに映しこみ、分析しながら応戦する様にはクリスタルじみた
一種独特な華があった。
蟹の戦いぶりは不気味だが技術的には未熟な部分が見え隠れする。
彼の恐ろしい目に捕らわれなければ、それが見えてくる。

水(羊は席を立ってから長いな。双子ほどではないにしろ、僕も本気でやるときは調整時間が
  欲しいんだが。……この相手は消耗するよ)

蟹の目は沈黙を保ったまま、たった一つの思念に延々侵されている。
蠍が彼の腕の中で”死んで”から時間の概念がなくなってしまったらしい。
蠍の死体でも抱いて残りの生物は皆殺しにするくらいの心積もりでいるのだろう
水瓶が少しでも疲れを見せた途端に彼は勝利をおさめ、水瓶から少しずつチップをもぎ取っていく。