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乙「もし」
蟹「(乙女に気づいて顔を見る)……」
乙「……済まない。人を探している。高校生ぐらいの少年をどこかで見かけなかったか」
蟹「(うすら寒い口調で)いや」
乙「そうか。どうも」
蟹「…………あんた」
乙「ん?」
蟹「ステージで犯されたとき、どんな気分だった?」
乙「(絶句する)」
蟹「俺の相棒も死んでしまった。……いや、なんて呼べばよかったのかな? 友人? 子ども?
  中を見てくれないか。中に入れない」
乙「(思わずトラウマに涙ぐみながら)……」
蟹「どうしても中に入れない。カギはあいてるから、中に入って見てくれないか。
  俺が来てることは、言わずに。頼むよ」
乙(……こいつ、気がふれている。蠍と水瓶はこいつにやられたのか)

乙女は蟹の粘着的な目に、逃れることもできずに蠍の部屋へ入った。
電気は全て消され、音一つない。蠍は簡単な衣服を着せられたままベッドで眠っていた。
息はしているが寝返りひとつうたない。死人のような顔の白さだ。
乙女が声をかけても、起きない。

乙(本当に死人のような寝方をしているな……。こいつも何日か眠れてなかったのかもしれない)

そのまま、足音を立てないようにして部屋を出る。ドアを開けて悲鳴をあげそうになった。
ドアを開けてすぐ、顔がくっつきそうな距離のところで蟹が血走った目を見開いていた。

乙「(か細い声で)どいてくれ。出られない」
蟹「……(そっとドアの前から離れる)」
乙「(外に出ながら)蠍は寝てる。すごく消耗しているようだから起こさない方がいい」
蟹「(ごくわずかに微笑みながら)あんたが余計なことしたら殺すつもりだった」
乙「……」
蟹「そうか。やっぱり俺のせいだな。カギをかけなきゃ。このままほっといて変なやつが入ってきたら
  大変だな。カギをかけさせないと。どうしよう。見張りは要るのかな……。
  あ、あんた、ありがとう。でももう入らないでください。入らないでね」

胸に虚無でも入っているようなふらついた歩みで蟹は去っていった。
乙女の背中を寒気が一気に駆け上る。昨日天秤が遭遇したのはもしかしてこいつではないかと
思ったほどだ。すぐに他の部屋に入って天秤を探したが、そちらもやはり見つからなかった。

乙(ああ、くそっ! 羊でも双子でもいいから勝ってくれ。
  ……(山羊の顔を思い浮かべて)あんたも勝てるなら勝ってくれてかまわない。
  いずれにせよ、あいつだけは勝たせてやるな。あれが一位になったんじゃ他の奴らが浮かばれない)