※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

カジノ・ロワイヤル 天秤と双子 1/2 774チップ 2007/10/01(月)18:59

続きです。



少年の腕の中に、三人分のサンドイッチとジュースの入った紙袋がおさまっている。
天秤は”あの船倉”に至る廊下でじっと立ち尽くしていた。怖い場所だとわかっているのに、
それ以上にあの「小麦粉」に引きつけられている。
小麦粉を注射して酔っ払ったあの男が気がかりでならない。酒に酔って荒れ果てた兄の姿を思い出すからだ。
──自分はどうしたらいいのだろう。あの小麦粉のたったひとつかみで、酔っぱらいができて、
きっと自分の家のように破滅した家がたくさん生まれてしまう。

天(いやだな。よその家のことなんて放っておけばいいのに)

大きくて、強くて、優しかった兄を変えてしまったのは賭け事と酒だ。
ひたすら酒を飲み続ける兄に対して悲しむことすら許されなかった家の空気を少年は思い出す。
何も問題はない、牛は酒が好きなだけだからと両親が笑っていて、
だから自分だけ泣くことなんて許されなかった。問題は何年間も完璧に取り繕われていた。

天(やっぱりあの粉を放っておけない。警察に知らせないと。
  ……でも、実際に知らせに行くのは怖いよ)

天秤は無視と通報の中間の道をとってしまう。紙袋を抱えながら、また同じ道を
そろそろと歩き出してしまったのだ。様子を見るだけ、奥には行かないと自分に言い聞かせながら。
少年は自ら人目につく場所から離れていってしまう。角を曲がり、誰もいなくなった廊下から
船倉へのドアの前につくと、心なしか冷気がドアから伝わった気がして腕が冷えた。
戻ろうとして角に知らない男が立っているのに気づいた。素人ではないその筋のチンピラ。

「てめぇ、何してる。……お? もしかしてお前ゲームに出てたお坊ちゃんか?」

涎をたらしそうな嫌な笑みが男の顔に貼りつく。ショーの痴態まで見られたとすぐにわかった。
恐怖で足がすくんでいるところに近寄られ、腕を捕まれ、持っていた紙袋が床に音を立てて落ちた。

「獅子さんの前でも最初は気持ち良さそうにしてたもんな~。きっと誰にも股を開くんだろう。
 若いっていうのはいいねえ。お兄さんもちょっと楽しませてくれないか」

天「いやだ。たすけ……むうっ」

引き寄せられて手で口を塞がれる。そのまま近くの空き部屋に押し込まれた。
機関室の一部とおぼしき部屋の床に押し倒され、殴られそうになって手で顔を守る。
自分の腰から抜き取られたベルトで両手首を括り付けられ、夢中で叫んだ。

天「たすけて」

「誰も来やしねえよ。ここは誰も通らねえ場所なんだ。おお白い肌。
 ねえちゃんが買えないこの船じゃごちそうだぜ。いただきまーす」

靴が脱げ、靴下を脱がされて口に押し込まれる。

天「~! ~~~!!!」

頭の中でたすけてと叫び続けた。兄の顔を強く思い浮かべながら、必死で暴れる。
男の身体が上にのしかかってくる──。

扉が開く音がして二人の動きが止まった刹那。ひゅんと何かが空気を裂き、
男の頭に何かが当たる鈍い音がした。男の身体はそのまま天秤の上に落ちる。
びっくりして痙攣まじりに少年が第三の男を見ると、
男は手にバールのようなものを持って弾む息に肩を上下させていた。

双「ああ、殺してないかな? 慣れてないことさせるな。様子がおかしいと思ったら」