「月下の手品」(2008/12/07 (日) 00:10:52) の最新版変更点
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**月下の手品
夜の森の中を、一人の少女が彷徨っている。
軍服の様な服装に身を包んだ背の高い少女で、
蒼く長い髪はポニーテールになっており、
体型は程よくスレンダーで機能的な美しさがあった。
しかし、少女の表情は虚ろだ。
さらに言えば、彼女の体は、
まるでバケツでぶっかけたかのように
血まみれだった。
少女の名前はレオナ=ハイデルン。
この名前は本名では無く“コードネーム”であり、
ハイデルンの苗字は、養父であり上官でもある男から
もらった物である。
彼女は養父の指揮する傭兵部隊の一員なのだ。
彼女の実の両親は、もうこの世にはいない。
彼女自身が殺してしまったからだ。
厳密に言えば彼女の中に“潜むモノ”がであるが・・・
「・・・・・・・」
虚ろな表情で森の中をふらふら歩くレオナの
体に大量に付着した血液や肉片の主も、
“ソレ”に今しがた殺された女好きの格闘家である。
「・・・・・・・」
“オロチ”。
それが彼女の内に潜む怪物の名前だ。
厳密に言えば“オロチ”の眷族である
“オロチ八傑衆”の“血”である。
彼女の人生はこの血統により、大きく狂わされてきた。
そして今も。
「・・・・・・・」
フラフラと力なく歩いていたレオナの足が不意に止まった。
俯いていた彼女の眼に一つの人影が目に入ったからだ。
ゆっくりと顔を上にあげる。
はたして、そこには一人の男が立っていた。
そのまま、二人は言葉も無く、しばらくの間見つめ合っていた。
黒い鍔の広い山高帽に、同じ色の背広着た男だ。
年齢は、容貌から考えれば恐らく20程度だろうか。
墨みたいに黒い髪は肩口ぐらいまである長い物だ。
その髪の下に、恐ろしく美しい顔があった。
肌は、まるで蝋の様に白い。
凄まじい優男で、顔だけ見れば女性に見えないこともない。
それも絶世の美女にである。
月の明かりを背に受けて、
山高帽の影の中にぼんやりと浮かぶ
白い顔は、まるでこの世のものではない
かのように幻想的であった。
否、顔ばかりではない、
月のせいであろうか、その身にまとう雰囲気も、
まるで幻の様で、はたして彼が本当に実在する
人間であるかというこすら覚束なくなるような
幻惑的なものであった。
だからかもしれない。
彼女が、そんな事を聞いたのは。
「あなたは・・・・」
レオナが生気の無い目で青年を見つめながら口を開く。
「悪魔・・・・それとも天使か?」
青年は微笑んで言った
「さあ、どっちだと思う?」
「君には良くないモノが“憑いてる”みたいだな」
最初に口を開いたのは黒衣の青年だ。
彼はそう言うと、レオナに音もなく歩み寄ると、
彼女の額に不意に触れる。
レオナが反応するでもなく、何故か青年の顔をぼんやりと見ている。
するとそうであろう。
青年の指先が、何事も無いかのように、
レオナの額の中に徐々に徐々に沈んでいくではないか。
気が付けば、五本の指は全て彼女の頭の中に吸い込まれ、
もう手頸まで入ろうとしている。
何故か何の反応も示していなかったレオナだが、
ここで初めて反応を示した。
いや、レオナではない。
彼女の内側に潜むオロチの血が。
「ようやく気が付いたか。
だが、焦らなくてもいいさ。
僕の方からオマエの方へ行ってやる」
青年もレオナの内側の反応に気付いたのか、
そんな事を言ったが直後、どう言う魔術か、
まるで吸い込まれるように、青年の姿はレオナの中に消えてしまったのだ。
後に残るのは茫洋としたレオナと
白い月ばかりであった。
暗く、何もない闇の空間の中で、
二つの存在が対峙していた。
一人は先ほどの青年。
そしてもう一人、否、もう一つの「なにか」が
青年の真向かいにいる。
それはレオナとよく似た姿をしていた。
ある3点を除けば、そっくりそのまま彼女そのままである。
一つ、体に纏うまるで獣のような殺気と空気。
一つ、白眼をむいた恐ろしい双眸。
そして、まるで血の色のように赤い髪だ。
「ナンダキサマハ」
レオナの姿をした“ナニ”か、
レオナの体に宿る“オロチ”が青年に吠える。
まるで地獄の獄司のような恐ろしい声だ。
「いや、何。宿主が迷惑がってるから立ちのいてもうらおうかとね」
しかし青年は、何処から取り出したか、
指に挟んだ紙巻き煙草に紫煙をくゆらせて、
まるで動じた様子も無くそんな事を言う。
「フザケルナヨニンゲン。
キサマノメノマエニイルノガナニカワカッテイルノカ」
「解っているさ、化け物。
昔から未練たらしく人様の体を勝手に借りては
生きながらえている情けない奴ってことぐらいはね」
“オロチ”の恐るべき咆哮に、
何の恐れも見せず、青年は軽口を叩いている。
「ホウ、ソウカ。シカシ、ココハワタシノ“セカイ”ダ。
ソコニノコノコジブンカラハイッテキテクレテ、テマガハブケタ・・・
オロカモノメッ!シネ!」
眼にも留まらぬ速さで“オロチ”が青年に襲い掛かった。
“オロチ”の素早い動きへの反応すら見せず、
青年の生首が飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が飛んだ
オロチが手を振るう。青年の右足が千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓がぶちまけられた。
オロチが手を振るう。青年の生首が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右足が再び千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が再び千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓が再びぶちまけられた。
オロチが手を振るう。青年の生首が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右足が三度千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が三度千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓が三度ぶちまけられた。
オロチが・・・・・
「ナゼダ・・・・ナゼシナナイ」
“オロチ”が愕然とした叫びをあげる。
はたして何度この青年を八つ裂きにしただろうか。
はたして何度この青年の首を引きちぎっただろうか。
はたして何度この青年の四肢を切り裂いただろうか。
はたして何度この青年の内臓を腹から引きずり出しただろうか。
しかし、何度死んでも青年は何事も無かったかのように目の前に立っているのだ。
「ひとつ・・・・」
今まで黙って殺され続けていた青年が口を開いた。
「ひとつ、勘違いをしているようだから言っといてやるよ」
ここで“オロチ”はようやくある事実に気が付いた。
“彼(と呼んでいいものか)”の頭上と真下から
徐々に徐々に迫って来る何かがある。
そう、それは・・・
「僕が『お前のセカイ』に入ったんじゃない」
「お前が『僕の影の中』に入ったんだ」
「ここは『お前のセカイ』じゃない」
「ここは『僕の作った』闇の中だ」
二つの巨大な手のひらだった。
“オロチ”はようやく気がついた。
まるで釈迦の手のひらで遊ぶ孫悟空のように、
自分が青年の手のひらの闇で遊ばされていたという事実に。
「ほうら、つ か ま え た 」
青年がパンッといい音を立てて、
手のひらを閉じた。
再び開けばそこにはホコリ一つない。
「はい!影も形もありません」
そう言うと青年は、“我々(書き手の私も含めて)”に向かって
帽子を脱ぎながらお辞儀をしたのだ。
何処からともなく拍手が上がり、
頭上の闇から黒幕が下がり、青年の姿はその後ろに消えた。
レオナは目を覚ました。
頭上には白く怪しい月と、
それと並ぶ様に美しい男の顔があった。
「じゃあな、“レオナ”。また会う事もあるだろう」
それだけ言うと男は何処かへと霞のように夜の闇の中へ消えてしまった。
何が何だか解らないレオナが額をこすると、
不意に耳に青年の声が入ってきた。
「夢幻です」
「僕の名前は、夢幻魔実也というのですよ」
【H-3 森の中 /12月20日 午前2時35分ごろ】
【レオナ・ハイデルン@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:呆然・オロチ封印状態
[道具]:基本支給品・ランダム支給品
[標的]:?
[思考]:1.何が何だか解らない
【夢幻魔実也@夢幻紳士シリーズ(冒険活劇版を除く)】
[状態]:健康
[道具]:不明
[標的]:未定
[思考]:せっかくなので、このゲームを大いに楽しむ。
**月下の手品
夜の森の中を、一人の少女が彷徨っている。
軍服の様な服装に身を包んだ背の高い少女で、
蒼く長い髪はポニーテールになっており、
体型は程よくスレンダーで機能的な美しさがあった。
しかし、少女の表情は虚ろだ。
さらに言えば、彼女の体は、
まるでバケツでぶっかけたかのように
血まみれだった。
少女の名前はレオナ=ハイデルン。
この名前は本名では無く“コードネーム”であり、
ハイデルンの苗字は、養父であり上官でもある男から
もらった物である。
彼女は養父の指揮する傭兵部隊の一員なのだ。
彼女の実の両親は、もうこの世にはいない。
彼女自身が殺してしまったからだ。
厳密に言えば彼女の中に“潜むモノ”がであるが・・・
「・・・・・・・」
虚ろな表情で森の中をふらふら歩くレオナの
体に大量に付着した血液や肉片の主も、
“ソレ”に今しがた殺された女好きの格闘家である。
「・・・・・・・」
“オロチ”。
それが彼女の内に潜む怪物の名前だ。
厳密に言えば“オロチ”の眷族である
“オロチ八傑衆”の“血”である。
彼女の人生はこの血統により、大きく狂わされてきた。
そして今も。
「・・・・・・・」
フラフラと力なく歩いていたレオナの足が不意に止まった。
俯いていた彼女の眼に一つの人影が目に入ったからだ。
ゆっくりと顔を上にあげる。
はたして、そこには一人の男が立っていた。
黒い鍔の広い山高帽に、同じ色の背広着た男だ。
年齢は、容貌から考えれば恐らく20程度だろうか。
墨みたいに黒い髪は肩口ぐらいまである長い物だ。
その髪の下に、恐ろしく美しい顔があった。
肌は、まるで蝋の様に白い。
凄まじい優男で、顔だけ見れば女性に見えないこともない。
それも絶世の美女にである。
月の明かりを背に受けて、
山高帽の影の中にぼんやりと浮かぶ
白い顔は、まるでこの世のものではない
かのように幻想的であった。
否、顔ばかりではない、
月のせいであろうか、その身にまとう雰囲気も、
まるで幻の様で、はたして彼が本当に実在する
人間であるかというこすら覚束なくなるような
幻惑的なものであった。
だからかもしれない。
彼女が、そんな事を聞いたのは。
「あなたは・・・・」
レオナが生気の無い目で青年を見つめながら口を開く。
「悪魔・・・・それとも天使か?」
青年は微笑んで言った
「さあ、どっちだと思う?」
そのまま、二人は言葉も無く、しばらくの間見つめ合っていた。
「君には良くないモノが“憑いてる”みたいだな」
最初に口を開いたのは黒衣の青年だ。
彼はそう言うと、レオナに音もなく歩み寄ると、
彼女の額に不意に触れる。
レオナが反応するでもなく、何故か青年の顔をぼんやりと見ている。
するとそうであろう。
青年の指先が、何事も無いかのように、
レオナの額の中に徐々に徐々に沈んでいくではないか。
気が付けば、五本の指は全て彼女の頭の中に吸い込まれ、
もう手頸まで入ろうとしている。
何故か何の反応も示していなかったレオナだが、
ここで初めて反応を示した。
いや、レオナではない。
彼女の内側に潜むオロチの血が。
「ようやく気が付いたか。
だが、焦らなくてもいいさ。
僕の方からオマエの方へ行ってやる」
青年もレオナの内側の反応に気付いたのか、
そんな事を言ったが直後、どう言う魔術か、
まるで吸い込まれるように、青年の姿はレオナの中に消えてしまったのだ。
後に残るのは茫洋としたレオナと
白い月ばかりであった。
暗く、何もない闇の空間の中で、
二つの存在が対峙していた。
一人は先ほどの青年。
そしてもう一人、否、もう一つの「なにか」が
青年の真向かいにいる。
それはレオナとよく似た姿をしていた。
ある3点を除けば、そっくりそのまま彼女そのままである。
一つ、体に纏うまるで獣のような殺気と空気。
一つ、白眼をむいた恐ろしい双眸。
そして、まるで血の色のように赤い髪だ。
「ナンダキサマハ」
レオナの姿をした“ナニ”か、
レオナの体に宿る“オロチ”が青年に吠える。
まるで地獄の獄司のような恐ろしい声だ。
「いや、何。宿主が迷惑がってるから立ちのいてもうらおうかとね」
しかし青年は、何処から取り出したか、
指に挟んだ紙巻き煙草に紫煙をくゆらせて、
まるで動じた様子も無くそんな事を言う。
「フザケルナヨニンゲン。
キサマノメノマエニイルノガナニカワカッテイルノカ」
「解っているさ、化け物。
昔から未練たらしく人様の体を勝手に借りては
生きながらえている情けない奴ってことぐらいはね」
“オロチ”の恐るべき咆哮に、
何の恐れも見せず、青年は軽口を叩いている。
「ホウ、ソウカ。シカシ、ココハワタシノ“セカイ”ダ。
ソコニノコノコジブンカラハイッテキテクレテ、テマガハブケタ・・・
オロカモノメッ!シネ!」
眼にも留まらぬ速さで“オロチ”が青年に襲い掛かった。
“オロチ”の素早い動きへの反応すら見せず、
青年の生首が飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が飛んだ
オロチが手を振るう。青年の右足が千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓がぶちまけられた。
オロチが手を振るう。青年の生首が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が再び飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右足が再び千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が再び千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓が再びぶちまけられた。
オロチが手を振るう。青年の生首が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右腕が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の左腕が三度飛んだ。
オロチが手を振るう。青年の右足が三度千切れた。
オロチが手を振るう。青年の左足が三度千切れた。
オロチが手を振るう。青年の内臓が三度ぶちまけられた。
オロチが・・・・・
「ナゼダ・・・・ナゼシナナイ」
“オロチ”が愕然とした叫びをあげる。
はたして何度この青年を八つ裂きにしただろうか。
はたして何度この青年の首を引きちぎっただろうか。
はたして何度この青年の四肢を切り裂いただろうか。
はたして何度この青年の内臓を腹から引きずり出しただろうか。
しかし、何度死んでも青年は何事も無かったかのように目の前に立っているのだ。
「ひとつ・・・・」
今まで黙って殺され続けていた青年が口を開いた。
「ひとつ、勘違いをしているようだから言っといてやるよ」
ここで“オロチ”はようやくある事実に気が付いた。
“彼(と呼んでいいものか)”の頭上と真下から
徐々に徐々に迫って来る何かがある。
そう、それは・・・
「僕が『お前のセカイ』に入ったんじゃない」
「お前が『僕の影の中』に入ったんだ」
「ここは『お前のセカイ』じゃない」
「ここは『僕の作った』闇の中だ」
二つの巨大な手のひらだった。
“オロチ”はようやく気がついた。
まるで釈迦の手のひらで遊ぶ孫悟空のように、
自分が青年の手のひらの闇で遊ばされていたという事実に。
「ほうら、つ か ま え た 」
青年がパンッといい音を立てて、
手のひらを閉じた。
再び開けばそこにはホコリ一つない。
「はい!影も形もありません」
そう言うと青年は、“我々(書き手の私も含めて)”に向かって
帽子を脱ぎながらお辞儀をしたのだ。
何処からともなく拍手が上がり、
頭上の闇から黒幕が下がり、青年の姿はその後ろに消えた。
レオナは目を覚ました。
頭上には白く怪しい月と、
それと並ぶ様に美しい男の顔があった。
「じゃあな、“レオナ”。また会う事もあるだろう」
それだけ言うと男は何処かへと霞のように夜の闇の中へ消えてしまった。
何が何だか解らないレオナが額をこすると、
不意に耳に青年の声が入ってきた。
「夢幻です」
「僕の名前は、夢幻魔実也というのですよ」
【H-3 森の中 /12月20日 午前2時35分ごろ】
【レオナ・ハイデルン@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:呆然・オロチ封印状態
[道具]:基本支給品・ランダム支給品
[標的]:?
[思考]:1.何が何だか解らない
【夢幻魔実也@夢幻紳士シリーズ(冒険活劇版を除く)】
[状態]:健康
[道具]:不明
[標的]:未定
[思考]:せっかくなので、このゲームを大いに楽しむ。
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