トップページ > ビジネス > 公認会計士 > 有資格者の収入(年収)等の現状と将来性

最終更新日時2012-03-15


第1章 監査法人が何をするところか知っていますか?
第2章 日本における監査法人の歴史
第3章 監査法人がよくわかるQ&A パート1
第4章 監査法人で働く人々の横顔(密着ルポ)
第5章 監査法人がよくわかるQ&A パート2
第6章 監査法人を理解するために――小説『最後のサイン』
第7章 監査法人の未来

内容(「BOOK」データベースより) 上場企業数の減少、IFRS強制導入、組織の巨大化・官僚化…。厳しい現実の先に見える、未来の公認会計士とその組織の姿とは?崩壊から原点回帰へ―。

公認会計士資格の現状と将来性はどうか。

公認会計士の将来性は、とりまく環境が激変しているため、不確定な部分が多く、個々人の予想の範疇を超えない。
ただ、これまでの会計士のキャリアとは、違うものになることは間違いない。
数年前の話なんて全くアテにならない。
個人的には特にTPPの動向に注意が必要と思う。あとはIFRS、税理士資格、就職問題など。

なお資格取得の難易度については、 難易度(合格者数、受験者数、合格率、勉強時間など) にまとめている。


■目次

■本文

現状

平成22年 公認会計士 の平均年収:841万円

厚生労働省調査および、サイト年収ラボで同値。
おそらく、年収ラボは厚生労働省調査の値を使っていると思われる。
公認会計士の年収・給料・収入・給与-年収ラボ


詳細データは厚生労働省による調査結果は、統計局のWEBサイトで閲覧可。辿るとエクセルファイルあり。見づらい。
平成22年賃金構造基本統計調査 > 一般労働者 > 職種
調査結果: e-stat 政府統計の総合窓口 
調査方法: 厚生労働省:賃金構造基本統計調査のページ

企業規模計(10人以上)(単位:千円)
きまって支給する現金給与額 597.2 ×12ヶ月 7166.4
年間賞与その他特別給与額 1243.0 1243.0
合計  8409.4

賃金構造基本統計調査の用語。

76 (きまって支給する現金給与額)
 労働協約又は就業規則などにあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給される現金給与額のこと。手取り額でなく、税込み額である。
 現金給与額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、家族手当が含まれるほか、時間外勤務、休日出勤等超過労働給与も含まれる。

77 (所定内給与額)
 労働協約又は就業規則等によりあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現在給与額(賞与等で算定期間が3ヶ月を超える給与は除く)から時間外勤務、休日出勤等超過労働給与を除いたもの。

78 (年間賞与その他特別給与額)
 前年1年間における賞与、期末手当等特別給与額をいう。
 賞与、期末手当等特別給与額とは、一時的又は突発的理由に基づいて予め定められた労働協約や就業規則等によらないで現実に支払われた給与や、予め支給条件、算定方法が定められていても、その給与の算定が3カ月を超える期間ごとに行われるものをいう。支給事由の発生が不確定なもの、新しい労働協約によって過去にさかのぼって算定された給与の追給額も含まれる。
引用元: 賃金構造/労働統計用語解説/統計情報/独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)


留意点1:合格者は元から稼げる人たち(出身大学別の会計士合格者数ランキングと、各大学卒業生の平均年収、高収入企業の年収)

800万円オーバーと聞くと、パッと見は良い年収に見える。
ただ、学力と収入のバランスでみると、もともと稼ぐ力のある人が公認会計士になっているだけかもしれない。

会計士試験合格者の多い上位10大学の卒業生の平均年収を、単純に平均をとると793.9万円。
また企業別にみても、会計士の平均年収を超える企業は、上場企業だけでも、ざっくり100社はある。

出身大学別の会計士合格者数ランキングと、各大学卒業生の平均年収
 ※注:カッコ内は、各大学の全卒業生の平均年収。会計士だけではない。
1.慶応(805万円)
2.早稲田(773万円)
3.中央(679万円)
4.明治(703万円)
5.東京(1133万円)
6.同志社(726万円)
7.立命館(648万円)
8.神戸(807万円)
9.関西学院(759万円)
10.京都(906万円)

10大学の単純平均:793.9万円



一般企業の平均年収ランキング TOP10(ランキングサイトからホールディングスをのぞいたもの※1)
1.朝日放送 1383万
2.三菱商事 1358万
3.住友商事 1338万
4.日本テレビ放送網 1333万
5.キーエンス 1285万
6.テレビ朝日 1275万
7.伊藤忠商事 1254万
8.三井物産 1246万
9.中部日本放送 1166万
10.電通 1163万


※1:ホールディングスは役員クラスの少数精鋭なので、比較の対象として不適切と判断。

公認会計士の年収841万円は、上記年収サイトでいうと、147位(ホールディングスを含む順位)。
147位 小野薬品工業 841.6万


留意点2:実際の平均年収はもう少し低い?(年収データは税理士資格者と同じ値)


賃金構造基本統計調査では、公認会計士の年収は税理士と合算して計算されている。合算されている理由は、推測になるが、公認会計士資格があると税理士資格の取得は登録だけだからだろう。
関連リンク: 税理士の年収・報酬統計調査-年収ラボ


公認会計士資格を持たない税理士資格者の方が、会計士の有資格者より多い。かつ、会計士資格を持たない税理士は年収にバラつきが大きい様で、どう影響を与えているのか完全には読みきれない。特に公認会計士でない税理士の一部の人たち(税務署OB)が、この平均年収を大幅に引き上げている可能性がある。
関連リンク: 税理士の10人に一人は「年収5000万円以上」  | 経済の死角 | 現代ビジネス 講談社

たとえば、会計士資格なしの税理士10人がいるとき、そのうち9人が年収500万円でも、年収5000万円が1人いるならば、税理士の平均年収950万円となる。
(500万円×9人+5000万円×1人)÷10人=950万円

すると、会計士資格者の実際的な平均値は841万円よりも低い値ということになる。

より正確な人数比率も見つけたのでもう少し正確にできる。後日やるかもしれない。
関連リンク: 5.全国の税理士の人数と税理士の人種(税理士資格取得方法)



留意点3:監査法人は、年齢による年収の伸びと福利厚生が少ない(20代の年収は高くみえるが、、)

20 代が610 万円、30 代が830 万円、40 代が950 万円となった。



  • 監査法人は福利厚生がほとんどない、住宅手当がほとんどない、退職金がめちゃめちゃ安い
  • 卒業してから2年目くらいまでに受かれば、若いうちは同世代間で相対的に高収入だが、
 30代半ばから40代にかけて、普通に就職した友達に追いつかけれ追い抜かれる。
  • 福利厚生や退職金を考えると、大企業は給料から引かれて積み立ててるのに対し、
 監査法人ではそれがなくその分若いうちに現金支給されてるだけなので、高収入に見えるだけで実際は大差ない



その他、監査法人の年収に関するリンク




就職

合格者の就職状況(2009年度、2010年度:計900人程度が就職できず。)

会計士は今、空前の就職難。
筆記試験に合格しても就職先があるかどうかわからなかったのが、この試験の怖いところ。そして就職できないことは会計士資格がとれないことを意味する。

これは多少改善されそうな兆しとして実務要件の緩和などもある。一方でオリンパス事件など、より悪くなる兆しもある。今後の動向に関しては、将来性で記載。

日本公認会計士協会は9日、公認会計士試験の合格者のうち、未就職者が累計で1036人(7日現在)に達したことを明らかにした。特に2010年の合格者1923人のうち、700人が現在も求職活動中。監査法人の採用抑制が直撃した形だ。08年以前の試験合格者のうち未就職者は158人、09年の合格者(1916人)のうち未就職者は178人。
引用元: asahi.com(朝日新聞社):未就職者が1000人超=公認会計士試験合格者 - ビジネス・経済 2011年3月9日

金融庁は合格者を年2000人未満に抑制したが、現在も900人程度が未就職者のままという。
公認会計士:実務経験の要件緩和へ - 毎日jp(毎日新聞)  2011年11月2日




公認会計士の将来性

公認会計士の将来性を取り巻く環境:1.TPP


TPPは、農業の自由化がとりあげられやすい。しかし会計士を含めた会計サービスも例外ではない。国家資格も原則自由化されるため、米国公認会計士などの海外の会計士が日本の会計サービスに算入してくる可能性がある。


公認会計士の将来性を取り巻く環境:2.IFRS


もしもIFRSが義務化されれば、今まで常識だった会計基準が全く異なるものになります。さらには、IFRSが本当に義務化されるという保証もありませんので、もしも義務化されなければ勉強に費やした時間が無駄になってしまうことになります。
現状では日本公認会計士協会がIFRSのための情報公開を行なうなどもしていますし、IFRSの知識が全くの無駄になるという可能性は薄いようですが、ゼロではありません。


公認会計士の将来性を取り巻く環境:3.粉飾決算(オリンパス事件)に関する会社法や金融商品取引法の改正

影響が全く不明。
オリンパスの損失先送りについて、取締役会や監査役会、監査法人のチェックが機能しなかったことを問題視。民主党として、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)や情報開示、資本市場のあり方や改善策などを議論する必要性を強調した。
同党はオリンパス問題などを踏まえ、8日に「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム(WT)」を設置することを決定、座長に大久保氏が就任した。今後、会社法や金融商品取引法の改正に議論を反映させる考えだ。
引用元: オリンパス7733.T は粉飾決算の可能性、取締役・監査法人など機能せず問題=民主・大久保氏| マネーニュース| 最新経済ニュース | Reuters  2011年 11月 8日


公認会計士の将来性を取り巻く環境:4.就職問題と収入への影響

筆記試験に合格しても就職先があるかどうかわからなかったのが、この試験の怖いところだった。そして就職できないことは資格がとれないことを意味する。

2011年も悪化傾向にある。
関連リンク: 監査法人への就職。。?

しかし、この問題に関しては解決への兆しが少しだけ見えてきた。

実務要件の緩和

公認会計士試験の合格者が増えたため、最終的な資格取得に必要な実務経験を積む機会を得られずに就職できない合格者の「救済策」として、金融庁は2日、実務経験の要件を緩和すると発表した。来年4月にも内閣府令などを改正する。資格取得は、監査法人や資本金5億円以上の上場企業などで2年間、正社員としての実務経験を積む必要がある。しかし、上場企業の合併や上場廃止などで監査業務が減少し、監査法人が採用を絞る中、資格取得に必要な実務経験を積めない「待機合格者」が増えていた。このため金融庁は、中小規模の監査法人の場合は契約社員など非正規雇用でも認めるほか、上場企業は資本金の規制を撤廃し、非正規雇用や連結子会社での雇用も認める。
引用元: ファイル:会計士実務の要件緩和 - 毎日jp(毎日新聞) 2011年11月3日



ただし、この実務要件の緩和は資格取得者の増加とともに会計士の平均年収の減少を意味する。

これまでの公認会計士の多くは試験合格後、監査法人に就職していた。そして監査法人は20代の年収が他業界に比して高い。

実務要件の緩和で会計士20代の平均年収が下がる。他の年代の年収があがらなければ、結果として会計士の平均年収は下がる。

公認会計士の将来性を取り巻く環境:5.税理士資格登録


現状、公認会計士は無試験で税理士登録ができます。逆に言うと税理士登録をせずに税務業務を行えば、たとえ公認会計士であっても税理士法違反になり、2年以下の懲役または100万円以下の罰金となる可能性があります。
この「無試験で税理士登録できる」という点について、今年6月、日本税理士連合会が税理士法改正要望として「公認会計士が税理士登録する場合は、所得税法か法人税法のいずれか1科目の合格を要件とする」という提言をしました。
引用元: 日本公認会計士協会による税理士法改正反対署名活動について思うこと 相続税専門 税理士法人ファザーズ: 相続税専門 税理士法人ファザーズ 公式ブログ 2011年10月15日

そもそもTPP次第では税理士資格は無くなる可能性があるそうなので。。。




公認会計士の将来性を取り巻く環境:6.国内監査マーケットサイズ(監査対象企業数 × 監査報酬)


監査対象企業数の減少(上場企業数は、2006 年をピークに減少傾向)

東証の上場企業数は、2006年の2416社をピークに減少傾向にある。
2011年11月現在:2,284社
2010年末:2,292社
2009年末:2,334社
参考元: 東証 : 現在の上場会社数
2008年までは、グラフとして可視化されているものがあるので、そちらを参照。
東証の上場企業数と上場廃止数 - 株式公開入門Blog

上場廃止の内訳をみていくと、今後も減る方向にあるとは言えず、逆に上場廃止はこの勢いで増加しそうである。
引用元: 上場企業数の推移|考える、社会派会計士のブログ

監査報酬は上下動あり。

前期(H21年度)は、連結売上高が5000億円未満の会社では監査報酬が対前年比で約10%増加、5000億円以上の会社ではプラスマイナスゼロといった感じでしたが、今期(H22年度)は売上規模に関わらず対前年比マイナスになってますね。
引用元: ■CFOのための最新情報■ : 監査報酬伸びず/JICPA監査実施状況調査






公認会計士の将来性を取り巻く環境:7.会計士合格者数の増加


短期的な合格者数は増減しているが、会計士を増やすという最終目標の変更は金融庁から聞こえてこない。
現在1万5,000人の会計士だが、ごく最近までは平成30年頃までに公認会計士の総数を5万人程度の規模とする予定だった。
実務要件の緩和により就職に目処がつけば、また会計士試験合格者を増やす可能性がある。
関連リンク: 金融庁WEBサイト 公認会計士監査制度の充実・強化


平成23年1月の金融庁における議論:「今のままなら1,500人、雇用情勢等が変わってくれば、また2,000人もあり得る」


平成15年の公認会計士の改正を行った際の金融審議会においては、公認会計士といった会計の専門家が監査法人だけではなく、さまざまな企業、あるいは取引所や役所といったさまざまな分野で活躍するような経済社会をつくりたいという基本思想があって、その中で、一つの定量的な目安といったもので5万人であるとか、毎年2,000人から3,000人の合格者ということがあったんだろうと承知をしてございます。その基本的な思想は現在においても基本的には変わっていないと。したがって、今回も、それを実現するというか、できるだけそれに近づくためにも、新たな企業財務会計士という資格を設けて、会計専門家がいろんなところで活躍できるようなことをサポートしたいと考えているところでございます。

ただ、他方で、我々としても足元の試験合格者の就職状況といったものを考えたときに、2,000人の合格者でいいのかということはどうしても疑問に思わざるを得ないので、今のままの情勢が続くのであれば2,000人ではなくて1,500人ぐらいではないかと、ただその後の雇用情勢等が変わってくれば、また2,000人というようなこともあり得るのではないか。今後、その会計専門家といったものが、活躍のフィールドがどんどん広がって需要が出てくれば、またその時点で合格者数のあり方を考えていくことになるだろうと思ってございますが、現時点でいつごろに何万人というのはなかなか申し上げられないところでございます。しかしながら、基本的な思想は15年改正のときから変わっておりませんし、そうしていきたいというふうに考えているところでございます。


平成24年1月5日 金融庁 総務企画局 企業開示課 開示業務室

「平成24年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用され、平成23年の合格者数は1千5百人程度であったところであるが、合格者等の活動領域の拡大が依然として進んでいないこと、監査法人による採用が低迷していることに鑑み、平成24年以降の合格者数については、なお一層抑制的に運用されることが望ましいものと考える。」
平成24年以降の公認会計士試験合格者数のあり方について:金融庁


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