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笛吹かば・・・



島の南西部に広がる深い森。
昼間でも薄暗い森の中はもはや闇その物だ。
光があるとすれば木々の間を僅かに通り抜ける月と星の光だけだろう。

その森の中を、音もなく走り抜ける“何か”がいる。
いや、その動きは走るというよりも、むしろ滑るという方が似つかわしく思える。
まるで地面を流れるように移動しているのだ。
獣かであろうか?いや、ただの獣が、これほど速く、音も立てずに
こんな奇妙な走り方をする筈もない。
はたして、それは人であった。
ただし、ただ人ではない。
忍びであった。さらに言えば伊賀者であった。

名前は笛吹城太郎。
伊賀鍔隠れ谷出身の忍びである。

彼は、この森を一刻も早く出るべく、
闇の中を疾走している真っ最中であった。

凄まじい速さで森を駆ける城太郎の足が突然に止まった。
城太郎は周囲に耳を澄ませる。
今、確かに人の声が聞こえたのだ。
少し、遠い所にいるらしく、声の内容まではうまく聞こえないが、

「これは、歌・・・・か?」

聞こえてくる声は、何か一定の旋律に基づいているように聞こえる。
どうやら女のようだ。

「行くか・・・・」
城太郎は声の方へと駆けだした。
彼はこの島より一刻も早く脱出せねばならない理由があり、
そのためには脱出の方法を探らねばならない。
誰かと接触し、情報を得るのは急務と言えた。

城太郎の後ろ姿は、すぐに闇の中へと溶け込んだ。

少女、白河ことりは、辺りの木々の中では一際大きい古木の傍らで、
美しい歌声を夜の森に響かせていた。

ただただ、目を瞑って歌い続ける彼女は、
一種の「忘我」の状態にあるように思われた。
それ故か、一心不乱に、白い制服と、聖歌隊の帽子のリボンを
風にひらめかせて歌う彼女の姿は、怪しい星月の光と、
夜の闇も相まって、この世のものと思われぬ、ある種妖艶とした
美しさを持っていた。

事実、彼女は「無心」の境地にあった。
これは、彼女が、自分の心を守るために得た
ある種の防御行動であった。

彼女には、妖かしの桜の木より与えられた
「読む力」があった。読む物は、他人の心である。
厳密には「読む」のではなく「聞こえてくる」のである。
彼女の意志とは無関係に、周囲の人間の心の声が、
善意悪意好意劣情の区別なく、彼女の脳髄に流れこんでくるのである。
この能力により、彼女は「理想的」な人間関係を作ることができた。
相手の欲する事を先読みし、気配りして、嫌われぬようにつとめ来た。

しかし、いくら悪意を避けた生活を送れるとはいえ、
他人の「本音」に触れ続ける事は、彼女の心に並々ならぬ
ストレスを与えた。

そのストレスから逃れる為に、
彼女が考え付いたのが歌う事だった。

歌っている間だけは、「声」から彼女は解放された。
歌っている間だけは、全ての事を忘れていられる。

今も彼女は、胸を苛む様々な悩みや出来事を
一時の間でも忘れるべく、一心不乱に歌い続けていた。

その姿を眺める影に気付くことなく。

闇の中から、白河ことりを見つめる二つの眼光。

言うまでもなく笛吹城太郎である。

彼はことりの歌声に、
花の匂いに誘われる蝶の如く引き寄せられたのだ。

彼がこの場に到着した時、
月が雲に隠されて、古木の下のことりの姿は、
忍者の眼を持つ城太郎の眼をしても良く見えなかった。

解る事は、白い服を着た少女が、
美しい声で歌を歌っているという事。

そこまで認識した時、
雲が唐突に晴れて、月明かりが夜の森を唐突に照らした。

「あっ!」

思わず、城太郎は小さな叫びを挙げた。
月明かりの中、明らかになったことりの美しさに、
思わず我を忘れてしまったからである。

夜目の利く城太郎には、月明かりだけの暗い森の中でも、
ことりの姿は睫毛の先までも見えていた。

見たことも無い白い綺麗な装束、
美しく流れるような赤い髪、
すらりと伸びた細い体、
そして、月明かりの為かより一層白く見える美貌。
形のいい口からは、囀る様な歌声が夜の闇に伸びる。

城太郎は、一瞬、全ての事を忘れて、ことりの姿に釘づけになっていた。

動かぬ二人の姿を白い月明かりだけが包んだ。


【G-4 森の中/12月20日 午前1時20分 】

【白河ことり@D.C.~ダ・カーポ~(ゲーム版)】
 [状態]:健康、不安、大人の都合で設定上は18歳以上
 [道具]:四次元デイパック(中身未確認)
風見学園(通っていた学校)中等部の制服(着用中)
 [標的]:なし、好みのタイプは「心を読んでもよこしまなことを考えていない人」
苦手なタイプは「悪意を向けてくる人」「自分を性欲の対象にする人」「(文字通りの意味で)心が読めない人」
 [思考]:1:歌を歌って心を落ち着かせている。歌っている間は何も考えていないし、周りの状況が変化しても気づかない (笛吹城太郎に気付いていません)
2:相手に好かれることは可能だろうが、自分が好きになれる相手がいるのだろうかと不安に思っている
※自分の近く(明確な描写はないが、恐らく教室一個分程度の距離)にいる人の心を読める。
※原作の主人公(朝倉純一)と出会う前の時期から参戦

【笛吹城太郎@伊賀忍法帖】
[状態]:健康、ことりに見とれている
[道具]:不明
[標的]:無し。「現状では」恋愛が出来ない
[思考]1:天女か・・・・・・?
2:森を抜けて、脱出方法を探る。




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