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員数外の牙


 ――ソレはひどく餓えていた。

 廃村から程近い、小さな湖。
 普段ならば小動物が水を求めて集まる憩いの場であるはずだった。
 しかし今夜は何かがおかしい。
 いや、ソレに言わせれば、今夜は島全体がおかしかった。
 街から離れた場所でありながら、あちらこちらからニンゲンの気配が漂っている。
 おかげで縄張りを侵された小動物は警戒し、完全に姿を潜めてしまっていた。
 小腹を補う獲物すら見当たらない。

 ――空っぽの胃袋が潰れそうだ。

 本来ならばソレも身を隠すはずだった。
 ニンゲン達が自分達に危害を加えるのか否かを見極めて、それから動き出すべきなのだ。
 現に群れの仲間もそうしている。
 だが、ソレは押し寄せる空腹の波に耐えることができなかった。

 月明かりを浴びて輝く湖面。
 その畔に大きな動物の影。
 臭いからしてニンゲンのオスだ。
 ……あれはいけない。
 食おうとしても返り討ちに遭うに違いないと本能が告げている。
 ならば、アチラ。
 オスから離れた場所に隠れているメスだ。
 あれで隠れているつもりなのだろうか。
 秀でた嗅覚に頼らなくとも、ソレの貧弱な視力だけで充分見つけられてしまう。

 ――ああ、早く喰らいつきたい。
 ――音を立てずに駆け寄って、一気に喉を噛み切りたい。
 ――毛皮のない皮膚に牙を突き立てたい。
 ――柔らかい肉を食い千切りたい。
 ――血の染み渡ったハラワタを味わいたい。
 ――白い骨を噛み砕いて、苦い髄液を啜りたい。

 湧き上がる無尽蔵の食欲は、ケモノなりの理性を呆気なく振り切った。
 四肢の筋肉を急稼動させ、天性のバネを炸裂させる。
 たったこれだけの距離。
 ニンゲンのメスが振り向く前に詰められる。
 大きく開かれた顎が、獲物――黒井ななこの細い首へ迫り――



 瞬間、視界の半分が剥奪された。



「うわぁああっ!」

 驚き飛び退く黒井ななこ。
 先ほどまで身を隠していた木に衝突し、力なくへたり込む。
 背後から迫る気配を感じて、何気なく振り向いたのが数瞬前。
 眼前にあったのは牙を剥き出しにした獣の口腔。
 そしてその右目に突き刺さった、鋭い刃物だった。

「そこの御仁! お怪我は!」

 湖畔に座していたはずの男が、いつの間にか駆け寄ってきていた。
 悶絶する獣めがけて、止めとばかりに手にした飛刀を繰り出す。
 背と肩に突き刺さる飛刀。
 獣は情けない悲鳴を上げながらも身を捩り、野生動物特有の力強さで夜の闇へ消えていった。

「狼か野犬の類だな……不慣れな得物では仕留め切れぬか」

 少しばかり口惜しそうに呟くと、男は黒井ななこに向き直った。
 まだぺたんと座り込んだままのななこに無骨な手を差し出す。

「あ……えと……お、おおきに」

 未だに何が起こったのか理解し切れていない様子だ。
 ともあれ立ち上がろうと、男の差し出した手を取った。

「……あれ? 何でや? 何で立てへんのやろ」

 いくら身体を動かしても、腰から下があひる座りのまま変わらない。
 二十七という年齢からすれば情けないことなのか、一般人としては致し方ないことなのか。
 彼女はものの見事に腰を抜かしてしまっていたのだった。





 ――痛い痛い痛い痛い

 目が痛い。
 肩が痛い。
 背中が痛い。

 ――イタイイタイイタイ

 もはや空腹など感じない。
 激しい痛みと燃えるような熱さばかりが神経を焼き焦がす。

 ――イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛ーー

 苦痛は容易く憎悪に成り代わり、獣の総身を激しい憤怒で包み込む。
 しかしそれをぶつけるべき相手はここに無く。
 獣は血飛沫を撒き散らしながら、暗闇の中を我武者羅に駆け抜けていた。



【E-2湖/午前三時】

【張遼@三国志】
[状態]:健康、多少平静を取り戻した
[道具]:支給品一式、ダーク×37@Fate/stay night
[標的]:特に無い
[思考]:1.目の前の女性を助ける。
    2.これからどうするか考える。
※ダーク(投擲用の短刀)は全部で40本ですが、
 獣に投げた3本を回収し損ねたため減少しています。


【黒井ななこ@らき☆すた(アニメ)】
[状態]:健康、パニック
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(未開封)
[標的]:気に入ったなら誰でも
[思考]1.何がなにやら。
    2.いい彼氏を見つける。




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