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165 名前: 1/4 投稿日: 02/05/05 04:07 ID:Z5zOOoUQ
ワールドユース決勝戦。熱く長い戦いは、日本の優勝で幕が降ろされた。
全日本のビクトリーランを、岬はベンチから眺めていた。
(おめでとう、日本…。おめでとう、小次郎、翼くん)
「担架の用意ができた。行こうか」
「…はい」
サッカー協会の片桐に促され、優勝後の喧騒に別れを告げる。祝賀会もなし、病院へ直行だ。
(もう、ダメかもしれないね…。お疲れさま、ボクの左足)
担架に移りながら、そっと左足をさすった。試合中に聞いた、骨の砕ける音を思い出す。
一度だけ、岬はグラウンドを振り返った。みんなの誇らしげな笑顔が眩しくて、それきり目を閉じた。
166 名前: 2/4 投稿日: 02/05/05 04:08 ID:Z5zOOoUQ
すぐに緊急手術となり、そのまま入院。絶対安静を言い渡された。
(「頑張ってリハビリを続けよう」か……)
そうすれば、またサッカーができる。そう先生は言った。
(だけど…、それは世界を狙えるサッカーなんだろうか)
ワールドユース優勝だけを目標にしてきたが、これからすぐに翼はブラジルに、若林はドイツに戻る。自分だって…という気持ちもあったのだ。
(小次郎だって…きっと海外に出る)
彼らと肩を並べるサッカーじゃなきゃダメなんだ。延々と続く、みんなの夢を叶えるには。
天井を見上げ、そんなことを考えていると、勢いよくドアが開き、
「岬っ!」
小次郎がジャージ姿で飛び込んできた。
「小次郎…。あれ、祝賀会は?」
岬は目を丸くして驚いた。今ごろはホテルで祝賀会が始まってるはずだ。
「馬鹿、そんなもんより、お前のほうが大切だろ」
みんなも―特に翼が―心配してたが、さすがに抜けてくるのは俺一人が精一杯だったと告げると、
「具合はどうなんだ?」
ベッドの端に腰を下ろしながら、心配そうに顔をのぞき込んできた。
167 名前: 3/4 投稿日: 02/05/05 04:09 ID:Z5zOOoUQ
「うん、大丈夫だよ。またリハビリすれば、サッカーできるようになるって」
「ホントか!?」
「うん。…ちょっと時間がかかるかもしれないけど」
だから心配しないで、と岬はにっこり微笑んだ。
「…! 岬っ!」
いきなり、小次郎の腕に抱きしめられた。
「どうして…、どうしてそんなふうに笑えるんだよ…」
「小次郎…」
「心配するな、だ? そんなにひどい怪我をしてるくせに…どうしてだよ…」
小次郎の腕に力がこもり、岬の顔を胸に押し付ける。身じろぎせずにじっとしていた岬に、小次郎の体の震えが伝わってきた。
「小次郎…、泣いてるの?」
「…るせっ」
あの、猛虎と呼ばれる男が泣いている。
それも、自分のために泣いてくれている…。
そう思うと、岬の胸は熱くなった。
168 名前: 4/4 投稿日: 02/05/05 04:10 ID:Z5zOOoUQ
「……待ってるからな。岬」
くぐもった声でそう言う小次郎に、「待っててくれ」と、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
「待ってないで。どんどん先に行って。じゃないと…自分を許せなくなるから」
「……」
「どんなに小次郎が先に進んでても、絶対追いついて見せる…よ。だから…」
岬の声も震えてきた。
「だから…、ずっと追いかけて行くから…」
「岬っ!!」
背中に回っていた腕がふりほどかれたと思うと、両肩を強く引き寄せられ、二人の唇が重なった。
165 名前: 1/4 投稿日: 02/05/05 04:07 ID:Z5zOOoUQ
ワールドユース決勝戦。熱く長い戦いは、日本の優勝で幕が降ろされた。
全日本のビクトリーランを、岬はベンチから眺めていた。
(おめでとう、日本…。おめでとう、小次郎、翼くん)
「担架の用意ができた。行こうか」
「…はい」
サッカー協会の片桐に促され、優勝後の喧騒に別れを告げる。祝賀会もなし、病院へ直行だ。
(もう、ダメかもしれないね…。お疲れさま、ボクの左足)
担架に移りながら、そっと左足をさすった。試合中に聞いた、骨の砕ける音を思い出す。
一度だけ、岬はグラウンドを振り返った。みんなの誇らしげな笑顔が眩しくて、それきり目を閉じた。
166 名前: 2/4 投稿日: 02/05/05 04:08 ID:Z5zOOoUQ
すぐに緊急手術となり、そのまま入院。絶対安静を言い渡された。
(「頑張ってリハビリを続けよう」か……)
そうすれば、またサッカーができる。そう先生は言った。
(だけど…、それは世界を狙えるサッカーなんだろうか)
ワールドユース優勝だけを目標にしてきたが、これからすぐに翼はブラジルに、若林はドイツに戻る。自分だって…という気持ちもあったのだ。
(小次郎だって…きっと海外に出る)
彼らと肩を並べるサッカーじゃなきゃダメなんだ。延々と続く、みんなの夢を叶えるには。
天井を見上げ、そんなことを考えていると、勢いよくドアが開き、
「岬っ!」
小次郎がジャージ姿で飛び込んできた。
「小次郎…。あれ、祝賀会は?」
岬は目を丸くして驚いた。今ごろはホテルで祝賀会が始まってるはずだ。
「馬鹿、そんなもんより、お前のほうが大切だろ」
みんなも―特に翼が―心配してたが、さすがに抜けてくるのは俺一人が精一杯だったと告げると、
「具合はどうなんだ?」
ベッドの端に腰を下ろしながら、心配そうに顔をのぞき込んできた。
167 名前: 3/4 投稿日: 02/05/05 04:09 ID:Z5zOOoUQ
「うん、大丈夫だよ。またリハビリすれば、サッカーできるようになるって」
「ホントか!?」
「うん。…ちょっと時間がかかるかもしれないけど」
だから心配しないで、と岬はにっこり微笑んだ。
「…! 岬っ!」
いきなり、小次郎の腕に抱きしめられた。
「どうして…、どうしてそんなふうに笑えるんだよ…」
「小次郎…」
「心配するな、だ? そんなにひどい怪我をしてるくせに…どうしてだよ…」
小次郎の腕に力がこもり、岬の顔を胸に押し付ける。身じろぎせずにじっとしていた岬に、小次郎の体の震えが伝わってきた。
「小次郎…、泣いてるの?」
「…るせっ」
あの、猛虎と呼ばれる男が泣いている。
それも、自分のために泣いてくれている…。
そう思うと、岬の胸は熱くなった。
168 名前: 4/4 投稿日: 02/05/05 04:10 ID:Z5zOOoUQ
「……待ってるからな。岬」
くぐもった声でそう言う小次郎に、「待っててくれ」と、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
「待ってないで。どんどん先に行って。じゃないと…自分を許せなくなるから」
「……」
「どんなに小次郎が先に進んでても、絶対追いついて見せる…よ。だから…」
岬の声も震えてきた。
「だから…、ずっと追いかけて行くから…」
「岬っ!!」
背中に回っていた腕がふりほどかれたと思うと、両肩を強く引き寄せられ、二人の唇が重なった。