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274 名前: 健守  投稿日: 02/02/20 03:48 ID:BLwD2wWY
    合宿の練習試合で新しいフォーメーションを試すことになった。
    松山と井沢がそれぞれ、右左のボランチとして、中盤の核となる翼を支える形をとる。
    同時に彼等はサイドの攻守の起点にもなる。
    もともと、ふらのの中心選手としてオールラウンドなプレイを常に求められていた松山は
    もちろんそつなくこなし、井沢も一応、及第点との評価を得た。
    今日の試合中、あまり仕事のなかった若島津はずっと井沢を目で追っていた。
    あぶなっかしいったらなかった。事実、井沢が合格点の働きができたのは、若島津の後方からの
    指示が的確だったことも大きい。

    試合が終わると井沢は、体をひきずるようにベンチに戻ってきた。そして柔らかな芝の上に
    倒れ込んでしまった。呼吸が荒く、肩が激しく上下する。目を開けていることさえおっくうらしい。
    伏せた眸を隠すように、顔を両手で覆ってしまった。
    不慣れなポジションで、もともとスタミナのあるタイプではない。その疲労度は他の選手の比では無かった。
    後半残りの25分、フィールド上に彼を立たせていたのはその、なけなしのプライドだけだった。
     痛々しい、とさえ若島津は思った。



275 名前: 健守2 投稿日: 02/02/20 04:41 ID:z76LLuuI
    その夜、若島津は井沢の様子が気になり部屋の前まで訪れていた。
    ためらいがちに扉を叩いてみるが返事は無い。中からドライヤーの音が聞こえてくるので部屋にはいるようだ。
    風音でノックが聞こえないのだろう。
     「井沢、いる?」
    扉を開くと、温風にのってシャンプーの匂いがあたりに漂う。
     「若島津、どうしたの?めずらしい。」
    井沢は乾き立ての髪を無造作にかきあげ、笑顔で迎え入れた。妙な違和感。
    昼間フィールドで、泣き出しそうに顔を歪めていたのに。別人みたいだ、と若島津は思った。
     「うん、今日の試合なんか気になってさあ。」
    初めて訪れる部屋なのに、勝手知ったるといった感じでベッドに腰を掛ける。
     「俺ふがいなかったろ。ごめんな。負担かけて。」
    突然、先手を打たれてしまい若島津はあわてた。
    それになんとも自虐的な物言いになんだか少し腹が立った。
     「そんな言い方するな!」
    思わず、怒鳴り付けてしまった。そして、驚く井沢の表情に垣間見えた、怯えの色に気付き
    我にかえった。
     「ごめん。大きな声出して。それにおまえ悪く無かったよ。もう少し自信もてよな。」
    バツが悪くてそっぽを向いてしまった若島津に、少し寂し気に笑いながらゆるゆると首を横に振った。





276 名前: 健守3 投稿日: 02/02/20 04:46 ID:z76LLuuI
    「いいんだ。心配かけてゴメン。意外とおまえって優しいのな。
    後ろにいたのが若林さんだったら、きっと怒鳴られ・・。」
    若島津の眸が鈍色に曇ったのに井沢は気付かなかった。
     (結局、それかよ。)
    若林の名前が出た瞬間に、井沢の両肩を大きな手で強く掴んでいた。
    肩に食い込む指先から怒気が伝わる。
     「若林だったらどうだって?もっと上手くできたかな。言ってみろよ。」
    耳もとで噛み付くように囁く。
     「若しっ・・・!」
    怒りに任せて井沢を押し倒すのは簡単だった。抗う両手は、一つにまとめて
    片手で頭上にひねり上げた。
     若林ならどうするか。それは若島津のずっとかわらない、呪縛だった。
    なんで井沢なんかに近付いてしまったんだろう。隠しておいたはずなのに
    井沢が無邪気にそれを引き出してしまった。罰を受けるべきだと思った。
     
    薄い胸に唇を落とし、下着の中に長い指をすべらせる。抵抗の声が甘い熱を持った喘ぎに
    変わり、頭上の両腕の力が抜けゆるりと若島津の背中に回されるのに時間はかからなかった。
     「若林はどうやるんだ?同じようにしてやるから言ってみろよ。」
    乱暴な痛みすら覚える愛撫にも、体の芯が疼き出す。
     「ああっ、若林さんとは・・・こんなこと・・してない」





277 名前: 健守4 投稿日: 02/02/20 04:51 ID:z76LLuuI
    「意外だな。若林とはまだなのか。そんな、初心なタイプには見えないけど?」
    意地悪く囁いてはみたが、既に若島津にも余裕はあまりなかった。
    井沢のその部分はたいして慣らしていなかったが、もともと罰のつもりなのだ。
    優しくしてやる必要など無い。それに、若林より先に井沢を抱いてしまうことで
    彼を出し抜いてやれるような気持ちが浮かんだ。
    あまりに浅ましいその考えは、すぐに頭を振って打ち消したが。
     
    井沢の足を大きく開き無理矢理、昂る自身を押し進める。
    硬く強ばる井沢の体は、容易には若島津を受け入れない。
     「痛っ。痛い、若島津、・・・」
    お互い、かなりの痛みを伴いながらそれでも一つに繋がろうとする。
    (こんなことをしていても、全然良く無い。二人とも、辛いだけなのに
    馬鹿みたいだ。俺達。)
     
    若島津が腰を動かし始めた頃、井沢は気を失いかけていた。
    お互いの眸の中に映る、泣き出しそうな自分の顔を確認しあうと
    どちらからともなく唇を重ねた。行為の中で初めてのキスだった。
    それはとても、穏やかで優しい。
    そのまま井沢は意識を手放してしまった。




278 名前: 健守5 投稿日: 02/02/20 04:57 ID:z76LLuuI
    夜中に目をさました時、まだ隣に若島津が眠っていたことに井沢はたいそう驚いた。
    ベッドサイドに水を張った洗面器と濡れタオルが置いてあったことにも。
    あのまま気を失ってしまってわからなかったが、自分の体の後始末までしてくれたらしい。
     「恨めないよ。おまえのこと。」
    小さなため息をついて、なんだか苦笑してしまう。
    呑気に寝息をたてる、若島津の鼻をちょっとつまんで軽い仕返しをしてやった。
    眠ったまましかめた顔が、なんだかおかしい。そのままシーツに潜り込む。
          多分、愛情なんかじゃ無いと思うけど。
    それでも若島津の隣で眠るのは悪い気分じゃないようだ。
    この気持ちが何なのか、分かるまでにはもう少し時間が必要だと井沢は思った。
    でも今は考えるよりも眠りたい。
    明日も早いから。合宿はまだ始まったばかりだった。