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第15(21)話 化け物



「クシャトリヤ!そうだ、これとやりたかったッ!」
「トビア・アロナクス《18》をセットし、密約《1》を。対象はこちらで」

真理はハタドーの感嘆の声を無視し、次々にカードをプレイする。
このトビアは、自軍コマンドが解決される毎に+1/+1/+1コインが乗るキャラクターだ。
コマンドを多数搭載する赤デッキでは、6国力のシャア・アズナブルを超えるサイズを獲得することも簡単だ。

「攻撃ステップ規定、クシャトリヤを宇宙に出撃させます」
「8ダメージ…受けよう」
「帰還ステップ規定後。慈愛の眼差しの効果で、奪った対ガンダム調査隊を除外。3点回復します」

ハタドーは本国のカードを捨て山にカードを送り、ターンを開始する。
カードを手札に加え、紫のGカードを出した。

「慈愛の返しターンにこのドロー…自分が乙女座であったことを、これほど嬉しく思ったことはない」
「…?」
「オペレーションカード、理想に仇なす者をプレイ!」

真理は許可を出した後、考えるような表情をつくる。

「2資源払わせるカードだっけ?」

観戦していたタンサンが、あくびをしながらミキオに聞いた。
ミキオは「あぁ」と相槌を打った後、「自分のACEにはロールコストとして都合がよく、相手のACEには追加資源で不都合なカードだ」と付け加えた。

「このカードが通ったということは…カウンターは無いな」

ハタドーは断言して、手札を見る。
真理の沈黙を肯定と受け止め、ハタドーは「戦闘フェイズ」と宣言した。
しかし、高いサイコミュを持つクシャトリヤの前では、防御力4のサキガケは出撃できない。

「フラッグ&グラハムはロールコスト4で地形適性を、ロールコスト3で高機動を得る」
「どうぞ」

Gとオペレーションを次々にロールさせ、ACEに効果を得させていくハタドー。
触れることが出来ない高機動ユニットが完成した。

「サイコミュ、バウンス、一切効かん!」
「4ダメージ受けます」

序盤で20ダメージを先制しているハタドーにとっては、毎ターン4ダメージを出せるだけでも勝ちにつながる。
真理の残り本国は10枚ちょっと。対して、ハタドーの本国は30枚近くもある。

「サラサ再臨」

ターンを開始した真理は、5枚目のGカードに続きコマンドをプレイする。
5枚見たカードのうち1枚を手札に加え、トビアに1コインを乗せた。

「司令部の移送をプレイします」
「人を超える存在で断固カウンターだ。…『緑相手なら、オペレーションがすんなり通る』といった”古い常識”は捨てたほうがいい」

挑発気味に言うハタドー。
”古い常識”という言葉に少し真理はむっとするが、大人しく司令部の移送を廃棄した。

「それに、今の貴殿にこれを打ち破るカウンターがないのは先刻承知」
「では、これを」

真理はオペレーションカードをもう1枚表にする。漁夫の利だ。
紫以外の国力を1種類しか持たないプレイヤーの全てのカードはプリベントが-5される。
赤単色の真理は当然のことながら、緑紫のハタドーも例外ではない。

「が、しかし。肝心のカウンターがなかろう」
「今は、そうですね。戦闘フェイズ、クシャトリヤを攻撃に出撃させます」

今度は真理が明確にカウンターがないことを認め、クシャトリヤを出撃させた。

大回復カードが阻止されたことによって、使用人さんの退路は絶たれたかのように見えるが、クシャトリヤの攻撃力は9と絶大。
サイコミュがあるから、ハタドー側はACEの4点攻撃しか出来ない。残り本国から換算すると…使用人さんに分がある。
「真理ピンチだね…」と落ち着かないナツキを横に、ミキオはそう計算する。

「9ダメージ、受けよう」

「では、私のターン」とハタドーはカードを手札に加え数秒。
前のターンと同じように、地形適正と高機動を得させたユニオンフラッグ&グラハムで攻撃を行うだけで、ターンを終了した。

「クシャトリヤを攻撃に出撃させます」と真理も、前のターンと同じ挙動だ。
ユニオンフラッグの倍以上の戦闘力を持つクシャトリヤは、見る見る本国差を縮める。
そんな状況だが、ハタドーはまだ口元に笑みを浮かべていたし、真理も過信している様子はない。
ナツキは無意識にミキオの服の裾を掴み、状況を見守る。

「9ダメージ、受けよう…私の本国はこれで8枚。貴殿のより、薄い」

真理が枚数を聞いたわけではないが、ハタドーは自ら確認するように数えた。
「ターン終了です」と告げる真理。
ここから数ターンが勝負になることはわかっている。

「宣言しよう。私はサキガケにより勝利するッ!」

カードを引くや否や、ハタドーは出し抜けにそう宣言した。
真理は少しだけ目を見開いたが、「そうですか」と返す。

この男がそう言うのだ。冗談やハッタリでは…ない。
真理はチラリとナツキを見て頷く。

「私の配備フェイズ、2枚目のアヘッド近接戦闘型『サキガケ』をプレイするッ!」
「…っ」

サキガケにより勝利…そういうことか。と真理は手札を確認し、思案する。
サイコミュで落とされる耐久しかないサキガケも、2枚あれば、うち1枚はダメージ判定まで生き残り、本国に打点を出すことが出来る。
ユニオンフラッグの打点と合わせると10ダメージ。慈愛の回復も間に合わない…致命傷になる。

「カットイン」

真理は静かにそう言い放った。

「代替コストの資源を1払い、合計国力を3に下げたガランシェール隊をプレイ。このカードで2枚目のサキガケを無効にし、こちらの場に」

ガランシェール隊は敵軍ユニットのプレイを無効にし、逆に使い捨てるカウンターコマンド。
漁夫の利でプリベントが-5されたサキガケのプリベントは2。余裕でカウンター可能なのだ。

「…いいだろう。しかし、こちらの場にガンダムはいないため、防御には出られまい」

そう言ってサキガケを手渡すハタドーに、真理は「使えないユニット」と小さく言い放った。
これでハタドーの元に残ったサキガケは、再びサイコミュの脅威に晒されることとなる。

「言ってくれる。では…これはどうか!」
「?」

ハタドーは余裕を持った宣言で、もう1枚の手札を表にした。

「秘密基地潜入。このカードの解決以後、貴殿は自動以外の効果を宣言できない」

それはつまり、サイコミュによる迎撃もも慈愛による回復も使えないということ。
真理の手札にはカウンターカードは残されていない。

「…サキガケにより勝利すると言った!」

それは、プレイされた2枚目のサキガケではなく、場にあったほうのサキガケを指した台詞だったのだ。
2枚目はあくまでも、前のターンにカウンターを引き込んだ可能性を考慮してのオトリ。
ハタドーの狙いは最初からここにあった。慈愛による延命も、サイコミュによる妨害も受けないこの一撃に。

決定的な場に、観戦していたプレイヤーは場の考察をする口を止める。
静まり返った対戦スペースに、ハタドーが「しかし」と口を開いた。

「4枚目のGを置いて何もしなかったあの1ターン…私はあの1ターンが気に入らん」
「何を…」

真理は意味がわからず、そう聞き返し彼を見る。
黒いサングラスは、真理の視線を遮り、ハタドーの内心を晒すことを拒絶しているかのようだった。

「心意気が万全でないとは。…ならば斬る価値もなし!」

ハタドーはきっぱりとそう言うと、場に出されたカードをひとつにまとめ始める。
ミキオたちはぽかんと口を開け、谷本たち常連組みは「やれやれ、またか」と困った顔をした。


×××


勝負は決まっていた…。
出撃されれば、投了していたのは自分。
あの男はただの変わり者なのか、それとも姫様の手前、私の顔を立てたのか。
真理は赤信号で止まった車内、ハンドルを握りながらそう考えた。

「あのオッサン、あそこから真理が逆転するの解ってたから逃げ出したんだね☆」

ナツキが後ろの席のミキオにそう言って笑った。
真理はいろんな意味で驚き、隣の席に座るナツキに目を向け、瞬きを2回。クスリと笑った。
馬鹿にしたような笑いではなく、自然に出た笑みだった。

「何?」

笑った真理に、ナツキが急に振り向く。
彼女が使用人でいるときに笑うのは珍しい。

「いえ、姫様。シートベルトをお締め下さい」

ナツキと目が合う頃には、真理はいつもの表情に戻っていた。
目つきが悪い、というよりは眠そうな表情だ。

「いーじゃん。真理のケチ」
「そういう問題ではありません」

ナツキはほほを膨らませ、しかし素直にシートベルトを締めた。
彼女は真理が好きだ。



「おいおい…主人公はこのオレだぜ?」と内心複雑な気分で、2人のやり取りを後部座席で見ていたミキオ。
隣に座ったタンサンは数分前から寝入っていて、寝言で「真根木先生~」と繰り返していた。

「負けたそっちが悪いよっ」

KING…諏訪部睦月の台詞が脳内で再生される。
思ったよりも、この負けは悔しい。

絶対リベンジしてやる!
ミキオは右の握り拳を左手で受け止め、そう心に決めた。


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.04.07-08)
掲載日:10.04.08
更新日:10.04.08