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「古田詩織のカットイン」(2010/04/14 (水) 14:47:39) の最新版変更点
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私、古田詩織は勇君の自転車の荷台に腰を下ろした。
「本当に大丈夫かよ。いつもみたいに歩いたほうがよくないか?」
「いいの。一度やってみたかったんだ、二人乗り」
私はそう言って勇君の肩に手をかける。
自分でもびっくりするくらい積極的な行動。勇君は気遣わしげに「いくぜ?」と言って自転車を出した。
×××
坂を下る私たちに、秋の肌寒い風が強く吹く。
私は風に煽られた髪の毛を掻き揚げ、前を見た。
「到着っと」
「よいしょ」
私は自転車から降りる。
ずっと荷台に乗ってたからか、お尻が痛い。二人乗りしてる人たちって、皆こんな痛い思いしてるのかな?
「大丈夫か?」
「うん。平気」
私は勇君の後に続いて『おもちゃのカキヨ』に入る。
年季の入った建物は、最初に来たときは失礼だけど廃墟か何かかと思った。
「女神2ある?」
「はいよ。松岡~あんたよかったね、こんな可愛い彼女さんができて~」
お店の店主であるカキヨお婆ちゃんは、私が勇君と来ると毎回そう言いながら微笑む。
そう言われる度、私は「いえいえ」と毎回言う。
忘れられてるのかな?
今日は新製品の発売日らしく、隣の空き家には人がそれなりにいた。
前に温泉に連れていってもらった公旗さんたちもいた。
「よっ勇、しおりん」
藤野君がすみの席で手を振っていた。
×××
「うげ…ガンダムナドレ出ちまったわ。ほら、武志にやるよ」
「まじ?おっしゃ、これで3枚目~」
藤野君は嬉しそうにバインダーにカードを入れる。
今回の新製品「戦場の女神2」はドラマチックブースターっていう種類の商品で、種類が少ないんだと勇君が教えてくれた。
私がデッキを組んでる赤色のカードもあるみたいだけど、勇君曰く「微妙」だって。
「あれ?つーか、京子は?」
一通り開封し終わったところで、勇君が周りを見渡すそぶりで言った。
藤野君も「知らないな」と首を振る。
「おかしいな、アイツが発売日に来ないなんて。また寝坊か?」
「じゃね?」
二人は口々に言った。
でも、私は少しだけ理由を知ってる。京ちゃんに口止めされてるから言えないけど。
「ま、いっか。よーし、いろいろ新しいカード増えたからやろうぜ!対戦!」
「よーし、じゃあ詩織が相手だな」
ビシッとカードの束を突き出す藤野君。
やる気満々の彼に勇君はそう言って、あたしの肩をポンと叩いた。
「えぇ…私?いいよいいよ、二人でやりなよ~。私見てるだけで楽しいから」
「遠慮することないって、それに俺、デッキ調整してないんだよな」
勇君はなおも進める。
じゃあ…
「わかった、やるわ」
私は勇君からデッキをもらい、デッキのカードを10枚づつ並べる。
このゲームをはじめて数ヶ月。慣れてきたけど、まだまだ古いカードとか詳しいルールとか知らないんだよね…。
「お願いします」
私は頭を下げる。
序盤のターンは双方基本Gを並べるだけの展開で、先攻の武志君は青・赤・赤とGを並べてターンを終了した。
色事故とかがないように勇君が組んでくれたこの赤単色デッキ、その甲斐あってか、今のところはきちんとGが並べられてる。ありがとね、勇君。
「ドロー。赤の基本Gを配備して、密約《1》をプレイ」
「オッケー」
手札に入ったカードはそんなに悪いカードじゃない。
「ギラドーガをプレイして、ターンを終了します」
私は終了時にギラドーガのテキストで1ドローする。
「よし、サラサ再臨をプレイするぜ!」
「うん」
藤野君はドローして、本国をサーチするカードを出した。
藤野君のデッキも赤のカードが多い、能力知ってるカードが多いから助かるわ。
「じゃあ、さらにサーチしたこの密約《1》を配備フェイズに。対象俺で。…そして、周辺警護をヴァリアブル展開して、ガンダムヴァーチェをプレイ!」
藤野君は勢い良く手札からユニットを出す。
いいカードなのかな?
私はちょっと身を乗り出して能力を見る。どうやら、私も赤Gを出してたから”立った状態”で出れたみたい。
でも、このカードそんなに…。大きいだけ?
「しおりん、攻撃ステップ入ってもいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、宇宙に出撃!さらに何もなければダメージ判定ステップ、範囲兵器の対象をギラドーガに変更し、範囲兵器を使用するぜ!」
トントン拍子で進む展開に私はぽかんと口を開ける。
「おい、武志。やりすぎだ」
「あ、わりぃ…」
勇君がやれやれといった口調で注意する。
状況を整理すると、どうやらあのヴァーチェの能力で私のユニットを破壊するところらしい。
「えっと…大丈夫だよ、勇君。ちょっと確認なんだけど、そのガンダムヴァーチェの範囲兵器って、まだ『未解決の効果』だよね…?」
「あ?…ああ」
私は手札から1枚カードを出す。
「雲散霧消このカードで範囲兵器を無効にしたいわ」
私は手札からコマンドカードをヴァーチェに向けて出した。
ギラドーガはこれで助かったね。本国には5ダメージ受けちゃったけど。
「ギラドーガ大切なの?まあオッケー、ターン終了」
私はドローする。
「私のターン、配備フェイズにまた密約《1》」
「オッケー。しおりん結構いい引きじゃん」
「そうなの?」
私は密約のドローをする。
あれ?このカードって…あぁ、そういうこと?
私は手札に舞い込んだカードを見て一瞬戸惑うが、テキストをさらっと読んですぐに意図を理解した。
「ローズガンダム(ローゼススクリーマー)をプレイ…これ全部赤で国力払えるよね?」
私は振り返りながら勇君に確認を取る。
書いてあることを見ればそう取れるけど、このカードゲームはなかなか用語が難しいから私の取り違えってこともあるかも。
「あぁ、それで問題ないぜ」
「じゃあ、ターン終了」
「…?了解。俺のターン」
藤野君は一瞬止まってからターンを開始した。
私どこか不自然だった?
「ドロー、よっしゃ!攻撃に入ってもいい?」
「うん、いいよ」
藤野君は、ヴァーチェをさっきと同じく宇宙エリアに出撃させた。
私は手札と場を見渡してから、一拍おいて口を開く。
「えっと…ギラドーガを防御に出撃して、勝利の陶酔。このカードを使いたいわ」
「お…”やっぱり”あったか。じゃあ俺はカットインで…」
藤野君は「予想通り」という顔でそう言った。
あ、今私『えっと』って言っちゃった?
煉さんに注意されたのに未だに直らない口癖に、私はため息を付きながらも藤野君が出したカードを確認した。
「宇宙を統べる者!これでプリベント無視のカウンターだぜ!」
「うん、おっけー」
「じゃあ念のためにダメージ判定の規定前に範囲兵器を…」
「ちょっと待って、防御ステップ」
私は慌てて手札を握る。
範囲兵器は4って書いてあるから、きっと大丈夫!
「クァバーゼ(ギリ機)《21》を能力があるから合計3でプレイ。場に出たからギラドーガが+3/+3/+3されるよ?」
「なにっ…了解。これで…」
「ガンダムヴァーチェとギラドーガが相打ちだね」
通った?通った?
私は胸をなでおろし、自分のターンを向かえる。
相手にカードを破壊とかされないように妨害ができる赤を選んだけど…相手も赤だと、さらにそれも妨害されるのかぁ…考え物だね。
「ドロー…。うーん、基本Gを出して攻撃ステップ」
「了解」
どうもGが増えすぎてる感じ。
私は宇宙にクァバーゼを、リングエリアにローズを出撃させた。
「ちょっとヤバめかもな…リングには手が出せない」
なんかこの攻撃は藤野君にとってマズイらしく、彼は口に手をあてて考え込んだ。
「防御ステップ規定効果後、ガンダムエクシア《19》をプレイ。宇宙エリアに介入するぜ!」
藤野君は手札から紫色のユニットカードを出す。
あれは知ってる。ガンダムエクシア…勇君が「強すぎて好きじゃない」って言ってたカードだ。
私はリングエリアに出撃しているローズの効果でエクシアの格闘を下げ、武志君はエクシアの効果でクァバーゼの格闘を*にした。
これでお相子。リングのローズの攻撃だけが通る。
「うん、ターン終了」
「ドロー。…マジにピンチだ。ローズが強すぎる」
「そう?」
「-3が大きすぎるんだよ。あ、フェルトプレイするぜ」
武君はGとそのカードを出してターンを終了する。
エクシアは防御かな?
「私のターン、ドロー。配備フェイズにカードはなしで、戦闘フェイズ」
私はさっきと同じように宇宙にクァバーゼ、リングエリアにローズを出撃させる。
「フェルトの効果でまずハンガーに2枚カードを送るぜ」
「うん」
藤野君は「来訪者!来訪者!」と言いながらハンガーにカードを移す。
来訪者って…お客さん?お客さんがどうかしたのかな…?
「基本Gと…GNアームズ!よっしゃあ、俺のフェイバリットカード来た!…エクシアをリングの防御に出撃させるぜ」
「じゃあローズのテキストでマイナスするね?」
「俺は、とりあえずエクシアのテキストでローズの格闘を*に。これで両方倒れず、ギリバーゼの5点だけ通しだ」
私は頷いてユニット2枚を配備エリアに戻し、ターンを終了した。
藤野君はその間に、2ドローできる女の子のターン終了時に起動するテキストで、ハンガーに移った2枚のカードを本国の上に戻す。
「ドロー…フェルトの効果で本国トップはGNアームズだぁ!」
武志君はドローしたカードをそのままエクシアにセットする。
「さらに基本Gを追加して、攻撃ステップ。宇宙にエクシアを出撃させるぜ」
「うん」
「攻撃ステップ中に、GNアームズを起動!赤基本Gを廃棄して、しおりんの配備エリアのローズの防御を-6」
ビジッと私の配備エリアを指差して武志君は言った。
6もないよ~。
「破壊で、5ダメージも通るよ。強いね、紫のカード」
「まあね。ターン終了」
私はドローする。
本国の枚数的にもしかしていけるかも…?
「えっ…」
「?」
私はまた『えっと…』と言いそうになった自分の口を慌てて塞ぐ。
『えっと…』はなしだってば。
「藤野君の本国、残り何枚?」
「残り11枚だぜ…って、少なっ!」
「ありがと♪」
私はそう言って手札からカードをだす。
「憎悪の矛先。このカードでエクシアを私の配備エリアに移したいな」
「転向じゃなくてそんなカード!?り…了解」
エクシアはそのまま私の配備エリアにリロールで移る。
これで5+5で10点。行けるかな?
「宇宙にエクシア、地球にクァバーゼを出撃させるわ」
「あー…終わった」
藤野君は本国をもう一度数え直してから、投了を宣言しようとした。
ふー…なんとかなったね。
「おい、武志。フェルト、フェルトだって」
私の後ろから勇君がくくっと笑いながら言った。
あぁ、忘れてた。さっきの2ドローできる女の子!
「あ、サンキュ。フェルトでハンガーに2ドロー」
「…あれ?」
「お!」
ハンガーに移ったのは、ダブルオーガンダム《SP》と基本G。
ダブルオーガンダム?
「おーし!まだ勝ちは残ってた!奪われたエクシアとジャンクのヴァーチェを本国に戻して、合計-2でダブルオーガンダムをプレイ!」
藤野君は勢い良くハンガーからそのカードを出す。
これで私の部隊は1つになって、その部隊もダブルオーにやられちゃう?
あ、でも…。
「カットイン…いい?」
「…?いいぜ」
私はつい申し訳ない口調になってしまってたと思う。
「宇宙を統べる者、このカードでダブルオーを無効にしたいな」
「なっ…!マジか~」
「ゴメンね」
勇君は、またくくっと笑った。
もしかして私の手札見て、わざとフェルト指摘したのかな?意地悪~。
「はぁ…5点受けるぜ。んでドロー…投了っす」
「ありがとうございました」
私は頭を下げる。
藤野君妙に落ち込んでるけど、カウンターしたら駄目なカードだったのかな?
×××
「そろそろ帰るか?」
対戦を終えた勇君が私に言った。
気付けば外はもう暗い。最近日が落ちるのが早いよね、寒いし。
「うん、そうする」
私は立ち上がり、勇君に続いて外に出る。
さすがに外は中に比べてすごく寒い。
「寒いから歩いて帰ろっか」
「そうか?」
手のひらに息を吐きながら言った私に、勇君は眉をひそめる。
もしかして寒いの私だけ?でも…息白いよ?
「…ほら」
勇君はそう言って、上着を私の肩にかけてくれる。
照れくさいのか「俺、暑いし」と続けた彼に、私はクスリと笑った。
「ありがと。勇君」
「ひゅーひゅー」と言う藤野君に勇君は「うるせー」と言って歩き出した。それに続く私。
今日は思い切って、自分から手でもつないでみようかな…。
おわり
----
[[短編]]
[[Season2>あたしのガンダムウォーSeason2]]
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー(08.11.14,21)
掲載日:08.11.21
更新日:10.04.14
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私、古田詩織は勇君の自転車の荷台に腰を下ろした。
「本当に大丈夫かよ。いつもみたいに歩いたほうがよくないか?」
「いいの。一度やってみたかったんだ、二人乗り」
私はそう言って勇君の肩に手をかける。
自分でもびっくりするくらい積極的な行動。勇君は気遣わしげに「いくぜ?」と言って自転車を出した。
×××
坂を下る私たちに、秋の肌寒い風が強く吹く。
私は風に煽られた髪の毛を掻き揚げ、前を見た。
「到着っと」
「よいしょ」
私は自転車から降りる。
ずっと荷台に乗ってたからか、お尻が痛い。二人乗りしてる人たちって、皆こんな痛い思いしてるのかな?
「大丈夫か?」
「うん。平気」
私は勇君の後に続いて『おもちゃのカキヨ』に入る。
年季の入った建物は、最初に来たときは失礼だけど廃墟か何かかと思った。
「女神2ある?」
「はいよ。松岡~あんたよかったね、こんな可愛い彼女さんができて~」
お店の店主であるカキヨお婆ちゃんは、私が勇君と来ると毎回そう言いながら微笑む。
そう言われる度、私は「いえいえ」と毎回言う。
忘れられてるのかな?
今日は新製品の発売日らしく、隣の空き家には人がそれなりにいた。
前に温泉に連れていってもらった公旗さんたちもいた。
「よっ勇、しおりん」
藤野君がすみの席で手を振っていた。
×××
「うげ…ガンダムナドレ出ちまったわ。ほら、武志にやるよ」
「まじ?おっしゃ、これで3枚目~」
藤野君は嬉しそうにバインダーにカードを入れる。
今回の新製品「戦場の女神2」はドラマチックブースターっていう種類の商品で、種類が少ないんだと勇君が教えてくれた。
私がデッキを組んでる赤色のカードもあるみたいだけど、勇君曰く「微妙」だって。
「あれ?つーか、京子は?」
一通り開封し終わったところで、勇君が周りを見渡すそぶりで言った。
藤野君も「知らないな」と首を振る。
「おかしいな、アイツが発売日に来ないなんて。また寝坊か?」
「じゃね?」
二人は口々に言った。
でも、私は少しだけ理由を知ってる。京ちゃんに口止めされてるから言えないけど。
「ま、いっか。よーし、いろいろ新しいカード増えたからやろうぜ!対戦!」
「よーし、じゃあ詩織が相手だな」
ビシッとカードの束を突き出す藤野君。
やる気満々の彼に勇君はそう言って、あたしの肩をポンと叩いた。
「えぇ…私?いいよいいよ、二人でやりなよ~。私見てるだけで楽しいから」
「遠慮することないって、それに俺、デッキ調整してないんだよな」
勇君はなおも進める。
じゃあ…
「わかった、やるわ」
私は勇君からデッキをもらい、デッキのカードを10枚づつ並べる。
このゲームをはじめて数ヶ月。慣れてきたけど、まだまだ古いカードとか詳しいルールとか知らないんだよね…。
「お願いします」
私は頭を下げる。
序盤のターンは双方基本Gを並べるだけの展開で、先攻の武志君は青・赤・赤とGを並べてターンを終了した。
色事故とかがないように勇君が組んでくれたこの赤単色デッキ、その甲斐あってか、今のところはきちんとGが並べられてる。ありがとね、勇君。
「ドロー。赤の基本Gを配備して、密約《1》をプレイ」
「オッケー」
手札に入ったカードはそんなに悪いカードじゃない。
「ギラドーガをプレイして、ターンを終了します」
私は終了時にギラドーガのテキストで1ドローする。
「よし、サラサ再臨をプレイするぜ!」
「うん」
藤野君はドローして、本国をサーチするカードを出した。
藤野君のデッキも赤のカードが多い、能力知ってるカードが多いから助かるわ。
「じゃあ、さらにサーチしたこの密約《1》を配備フェイズに。対象俺で。…そして、周辺警護をヴァリアブル展開して、ガンダムヴァーチェをプレイ!」
藤野君は勢い良く手札からユニットを出す。
いいカードなのかな?
私はちょっと身を乗り出して能力を見る。どうやら、私も赤Gを出してたから”立った状態”で出れたみたい。
でも、このカードそんなに…。大きいだけ?
「しおりん、攻撃ステップ入ってもいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、宇宙に出撃!さらに何もなければダメージ判定ステップ、範囲兵器の対象をギラドーガに変更し、範囲兵器を使用するぜ!」
トントン拍子で進む展開に私はぽかんと口を開ける。
「おい、武志。やりすぎだ」
「あ、わりぃ…」
勇君がやれやれといった口調で注意する。
状況を整理すると、どうやらあのヴァーチェの能力で私のユニットを破壊するところらしい。
「えっと…大丈夫だよ、勇君。ちょっと確認なんだけど、そのガンダムヴァーチェの範囲兵器って、まだ『未解決の効果』だよね…?」
「あ?…ああ」
私は手札から1枚カードを出す。
「雲散霧消このカードで範囲兵器を無効にしたいわ」
私は手札からコマンドカードをヴァーチェに向けて出した。
ギラドーガはこれで助かったね。本国には5ダメージ受けちゃったけど。
「ギラドーガ大切なの?まあオッケー、ターン終了」
私はドローする。
「私のターン、配備フェイズにまた密約《1》」
「オッケー。しおりん結構いい引きじゃん」
「そうなの?」
私は密約のドローをする。
あれ?このカードって…あぁ、そういうこと?
私は手札に舞い込んだカードを見て一瞬戸惑うが、テキストをさらっと読んですぐに意図を理解した。
「ローズガンダム(ローゼススクリーマー)をプレイ…これ全部赤で国力払えるよね?」
私は振り返りながら勇君に確認を取る。
書いてあることを見ればそう取れるけど、このカードゲームはなかなか用語が難しいから私の取り違えってこともあるかも。
「あぁ、それで問題ないぜ」
「じゃあ、ターン終了」
「…?了解。俺のターン」
藤野君は一瞬止まってからターンを開始した。
私どこか不自然だった?
「ドロー、よっしゃ!攻撃に入ってもいい?」
「うん、いいよ」
藤野君は、ヴァーチェをさっきと同じく宇宙エリアに出撃させた。
私は手札と場を見渡してから、一拍おいて口を開く。
「えっと…ギラドーガを防御に出撃して、勝利の陶酔。このカードを使いたいわ」
「お…”やっぱり”あったか。じゃあ俺はカットインで…」
藤野君は「予想通り」という顔でそう言った。
あ、今私『えっと』って言っちゃった?
煉さんに注意されたのに未だに直らない口癖に、私はため息を付きながらも藤野君が出したカードを確認した。
「宇宙を統べる者!これでプリベント無視のカウンターだぜ!」
「うん、おっけー」
「じゃあ念のためにダメージ判定の規定前に範囲兵器を…」
「ちょっと待って、防御ステップ」
私は慌てて手札を握る。
範囲兵器は4って書いてあるから、きっと大丈夫!
「クァバーゼ(ギリ機)《21》を能力があるから合計3でプレイ。場に出たからギラドーガが+3/+3/+3されるよ?」
「なにっ…了解。これで…」
「ガンダムヴァーチェとギラドーガが相打ちだね」
通った?通った?
私は胸をなでおろし、自分のターンを向かえる。
相手にカードを破壊とかされないように妨害ができる赤を選んだけど…相手も赤だと、さらにそれも妨害されるのかぁ…考え物だね。
「ドロー…。うーん、基本Gを出して攻撃ステップ」
「了解」
どうもGが増えすぎてる感じ。
私は宇宙にクァバーゼを、リングエリアにローズを出撃させた。
「ちょっとヤバめかもな…リングには手が出せない」
なんかこの攻撃は藤野君にとってマズイらしく、彼は口に手をあてて考え込んだ。
「防御ステップ規定効果後、ガンダムエクシア《19》をプレイ。宇宙エリアに介入するぜ!」
藤野君は手札から紫色のユニットカードを出す。
あれは知ってる。ガンダムエクシア…勇君が「強すぎて好きじゃない」って言ってたカードだ。
私はリングエリアに出撃しているローズの効果でエクシアの格闘を下げ、武志君はエクシアの効果でクァバーゼの格闘を*にした。
これでお相子。リングのローズの攻撃だけが通る。
「うん、ターン終了」
「ドロー。…マジにピンチだ。ローズが強すぎる」
「そう?」
「-3が大きすぎるんだよ。あ、フェルトプレイするぜ」
武君はGとそのカードを出してターンを終了する。
エクシアは防御かな?
「私のターン、ドロー。配備フェイズにカードはなしで、戦闘フェイズ」
私はさっきと同じように宇宙にクァバーゼ、リングエリアにローズを出撃させる。
「フェルトの効果でまずハンガーに2枚カードを送るぜ」
「うん」
藤野君は「来訪者!来訪者!」と言いながらハンガーにカードを移す。
来訪者って…お客さん?お客さんがどうかしたのかな…?
「基本Gと…GNアームズ!よっしゃあ、俺のフェイバリットカード来た!…エクシアをリングの防御に出撃させるぜ」
「じゃあローズのテキストでマイナスするね?」
「俺は、とりあえずエクシアのテキストでローズの格闘を*に。これで両方倒れず、ギリバーゼの5点だけ通しだ」
私は頷いてユニット2枚を配備エリアに戻し、ターンを終了した。
藤野君はその間に、2ドローできる女の子のターン終了時に起動するテキストで、ハンガーに移った2枚のカードを本国の上に戻す。
「ドロー…フェルトの効果で本国トップはGNアームズだぁ!」
武志君はドローしたカードをそのままエクシアにセットする。
「さらに基本Gを追加して、攻撃ステップ。宇宙にエクシアを出撃させるぜ」
「うん」
「攻撃ステップ中に、GNアームズを起動!赤基本Gを廃棄して、しおりんの配備エリアのローズの防御を-6」
ビジッと私の配備エリアを指差して武志君は言った。
6もないよ~。
「破壊で、5ダメージも通るよ。強いね、紫のカード」
「まあね。ターン終了」
私はドローする。
本国の枚数的にもしかしていけるかも…?
「えっ…」
「?」
私はまた『えっと…』と言いそうになった自分の口を慌てて塞ぐ。
『えっと…』はなしだってば。
「藤野君の本国、残り何枚?」
「残り11枚だぜ…って、少なっ!」
「ありがと♪」
私はそう言って手札からカードをだす。
「憎悪の矛先。このカードでエクシアを私の配備エリアに移したいな」
「転向じゃなくてそんなカード!?り…了解」
エクシアはそのまま私の配備エリアにリロールで移る。
これで5+5で10点。行けるかな?
「宇宙にエクシア、地球にクァバーゼを出撃させるわ」
「あー…終わった」
藤野君は本国をもう一度数え直してから、投了を宣言しようとした。
ふー…なんとかなったね。
「おい、武志。フェルト、フェルトだって」
私の後ろから勇君がくくっと笑いながら言った。
あぁ、忘れてた。さっきの2ドローできる女の子!
「あ、サンキュ。フェルトでハンガーに2ドロー」
「…あれ?」
「お!」
ハンガーに移ったのは、ダブルオーガンダム《SP》と基本G。
ダブルオーガンダム?
「おーし!まだ勝ちは残ってた!奪われたエクシアとジャンクのヴァーチェを本国に戻して、合計-2でダブルオーガンダムをプレイ!」
藤野君は勢い良くハンガーからそのカードを出す。
これで私の部隊は1つになって、その部隊もダブルオーにやられちゃう?
あ、でも…。
「カットイン…いい?」
「…?いいぜ」
私はつい申し訳ない口調になってしまってたと思う。
「宇宙を統べる者、このカードでダブルオーを無効にしたいな」
「なっ…!マジか~」
「ゴメンね」
勇君は、またくくっと笑った。
もしかして私の手札見て、わざとフェルト指摘したのかな?意地悪~。
「はぁ…5点受けるぜ。んでドロー…投了っす」
「ありがとうございました」
私は頭を下げる。
藤野君妙に落ち込んでるけど、カウンターしたら駄目なカードだったのかな?
×××
「そろそろ帰るか?」
対戦を終えた勇君が私に言った。
気付けば外はもう暗い。最近日が落ちるのが早いよね、寒いし。
「うん、そうする」
私は立ち上がり、勇君に続いて外に出る。
さすがに外は中に比べてすごく寒い。
「寒いから歩いて帰ろっか」
「そうか?」
手のひらに息を吐きながら言った私に、勇君は眉をひそめる。
もしかして寒いの私だけ?でも…息白いよ?
「…ほら」
勇君はそう言って、上着を私の肩にかけてくれる。
照れくさいのか「俺、暑いし」と続けた彼に、私はクスリと笑った。
「ありがと。勇君」
「ひゅーひゅー」と言う藤野君に勇君は「うるせー」と言って歩き出した。それに続く私。
今日は思い切って、自分から手でもつないでみようかな…。
おわり
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[[短編TOP>短編]] / [[SeasonTOP>あたしのガンダムウォーSeason2]]
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー(08.11.14,21)
掲載日:08.11.21
更新日:10.04.14
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