「#92」(2010/04/14 (水) 15:13:24) の最新版変更点
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*#92 5点の行方は
「キュリオスじゃなくてよかったです」
相手はそう言いながらシャッコーをジャンクに移す。
「はは…確かに」
俺はリングの5点分の本国を捨て山に送る。
本国の正確な枚数は5枚だ。
「ターン終了です」
「はい。ドロー…」
相手の本国は6枚。
エクシアで攻撃すれば終わる?いや、魂の輝きでリセットされたら、ドロー負けするのは俺だ。
「ターン終了」
「了解です。ドロー…」
相手は「キャラ…引きませんな」と言った。
「何もなければターンを終えたいのですが」
このままターンを重ねても、俺の本国はドローで尽きる。
一か八かだ!
「いえ、配備フェイズ」
「…?」
俺はニッと笑い返し、拳を握り締める。
一勝が欲しいとかそういんじゃない。京子のこのカードに報いる戦いを…!
「宿命の螺旋のカードをプレイします!」
「宿命の…螺旋?」
「ええ。このターン、こっちの非交戦の防御部隊はそちらの本国に戦闘ダメージを与えることができるようになります」
俺は12弾のタイトルと同名称のそのカードを場にスッと出す。
ユニット展開で圧倒している場面で決定打を与えるカード。剣治に頼んでおいて正解だった。
「この状況で、お互い本国に5点受けることは死を意味する…”ユニットにせよゲームにせよ”、相打ち狙いということですか」
「さあ」
俺は両手を上げる。
ターン終了まで何もないと宣言してくれて助かった。
少なくとも、リセットはハンガーの輝き1枚だ。2枚目の最終兵器や核の衝撃があるなら攻撃を宣言していたはずだからな。
「では仕方ありません。出撃します」
相手は「マスターガンダムをリングで」と宣言した。
「防御ステップに入っても?」
「…はい」
相手は静かに俺の問いに答える。
少し意味ありげに聞きすぎたか?まあオーケーだ。
攻撃ステップに輝きでユニットをリセットしなかったのは、返しのターンでロックが切れて戦闘配備ユニットが出てくるのを警戒してか?
まあ、手札にユニットなんかないけどな。
「規定前…これで俺の勝ちです。鮮烈!シュラク隊のカードを第2テキストでプレイ!」
「第2…なんでしたっけ?」
鮮烈!シュラク隊は、ユニットリロールと本国防御のハイブリットコマンドだ。
第2テキスト「自軍本国は、ターン終了時まで、敵軍部隊1つから戦闘ダメージを受けない。」でマスターガンダムの部隊はこのターン、俺の本国に戦闘ダメージを与えられない。
「…確認しました。その間にこちらの本国を。というわけですね」
「そうです!防御規定…ガンダムエクシアを宇宙に!」
リングハンデスが起動するが、もう手札にはこの勝負に関係あるカードは残ってない。
「うーむ。では、終わりにします」
相手はそう言って頭をかく。
終わりにします?変な言い方だな。
「月面民間企業で緑国力、歴史を変える一撃。エクシアの部隊戦闘力分…5ダメージをそちらの本国に」
「…っ!?」
血の宿命や光の翼のような攻撃反射カード…!
繰り返すが、手札にはこの勝負に関係あるカードは残ってない。
「…負けました」
俺はそう言って頭を下げた。
「でも、変える一撃があったならこのターンは普通に出撃しても良かったんじゃ?」
「いえいえ。せっかく面白くなってきたのにすぐに終わってはアレですし…おかげで面白いものが見れました」
「そりゃ積みを確信した余裕ってやつですね」
俺は苦笑して「ありがとうございました」ともう一度頭を下げた。
さー4敗だ。面白くなってきた?
×××
「ガンスリ!ガンスリ!」と言って走っていった幹夫たちを見送った後、あたしは再びCS会場を見渡した。
ちょうど武志の試合終わったみたい。テーブルの一番端だからわかりやすい。
結果は…対戦相手がスコアシートを提出しにいったってことは負けかな?
あたしがこんな早く対戦を終えて会場をうろついてるのは、4回戦の相手が退艦許可だったからなのよね。
てか、コンボ多すぎ!マトモに戦う気ないわけ?
…いや、言い過ぎね。「それも戦術」って公旗とかが言いそうだし。
「あ、剣治」
あたしは会場を抜けてこっちに歩いてきた剣治を捕まえる。
話があるわけじゃないのにね…。
「どうした?」
「うんん。どうだったかなーと思って。4回戦」
あたしはとりあえず、ここではお決まりの台詞を言う。
「ふむ…アフリカが引けずに撲殺された」
剣治は『必勝』の鉢巻を解きながらそう言った。
「あーそうなんだ。アレ強いのにね」
「フッ…23弾で黒がプッシュされれば問題は解決する」
あたしは話半分に聞きながら、剣治の手にある鉢巻を見ていた。
「ねえ。その鉢巻、外しちゃうの?」
「いや、ズレたから巻き直そうと思っただけだが?」
「そっか。あ…あたしやったげようか?」
最後にかけて声が小さくなっちゃったけど、言えた。言えたよ!
「いや自分でやるから…」
「いーから!これ言うのにどれだけドキドキしたと思ってるわけ?」
「…何の話だ?」
あーだこうだ言いながら、あたしはなんとか鉢巻を奪取する。
が、思いっきり取ったせいであたしは後ろにバランスを崩す。
「あっ…」
女の子の声。
直後、ぶつかったその子の荷物が床に落ちる音が聞こえた。
「あースミマセン」
あたしは慌てて振り返り、頭を下げながら床に落ちたデッキケースに4ポケットバインダー、そしてそこから落ちたカードを拾う。
「こっちこそすみません」
相手の人は苦笑して一緒に荷物を拾う。
ウェーブした髪と赤いフレームの眼鏡。よく見るとあたしより少し年上っぽい。
あたしと剣治は何度か頭を下げてその場を離れた。
「結ぶなら結んでくれ。それがないと戦えない」
剣治はそう言って立ち止まった。
あたしは「あ、忘れるところだった」とかなんとか言いながら、笑って鉢巻を彼の頭にあてた。
「これでよし」
「やはり自分でやらないと違和感が…」
「いーからいーから♪」
あたしはそんなことを言いながら、剣治の背中を押した。
2勝2敗で迎える最終5回戦―。
ホワイトボードで対戦する席を確認して、あたしは鼻歌交じりに向かう。
今度もコンボデッキってのはゴメンよ?ユニットで戦うのが、あたしの白デッキの持ち味なんだから。
「「あ」」
自分が座る椅子を引いたときに、対戦相手と目が合う。
…さっきぶつかっちゃった人だ!
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#92 5点の行方は
「キュリオスじゃなくてよかったです」
相手はそう言いながらシャッコーをジャンクに移す。
「はは…確かに」
俺はリングの5点分の本国を捨て山に送る。
本国の正確な枚数は5枚だ。
「ターン終了です」
「はい。ドロー…」
相手の本国は6枚。
エクシアで攻撃すれば終わる?いや、魂の輝きでリセットされたら、ドロー負けするのは俺だ。
「ターン終了」
「了解です。ドロー…」
相手は「キャラ…引きませんな」と言った。
「何もなければターンを終えたいのですが」
このままターンを重ねても、俺の本国はドローで尽きる。
一か八かだ!
「いえ、配備フェイズ」
「…?」
俺はニッと笑い返し、拳を握り締める。
一勝が欲しいとかそういんじゃない。京子のこのカードに報いる戦いを…!
「宿命の螺旋のカードをプレイします!」
「宿命の…螺旋?」
「ええ。このターン、こっちの非交戦の防御部隊はそちらの本国に戦闘ダメージを与えることができるようになります」
俺は12弾のタイトルと同名称のそのカードを場にスッと出す。
ユニット展開で圧倒している場面で決定打を与えるカード。剣治に頼んでおいて正解だった。
「この状況で、お互い本国に5点受けることは死を意味する…”ユニットにせよゲームにせよ”、相打ち狙いということですか」
「さあ」
俺は両手を上げる。
ターン終了まで何もないと宣言してくれて助かった。
少なくとも、リセットはハンガーの輝き1枚だ。2枚目の最終兵器や核の衝撃があるなら攻撃を宣言していたはずだからな。
「では仕方ありません。出撃します」
相手は「マスターガンダムをリングで」と宣言した。
「防御ステップに入っても?」
「…はい」
相手は静かに俺の問いに答える。
少し意味ありげに聞きすぎたか?まあオーケーだ。
攻撃ステップに輝きでユニットをリセットしなかったのは、返しのターンでロックが切れて戦闘配備ユニットが出てくるのを警戒してか?
まあ、手札にユニットなんかないけどな。
「規定前…これで俺の勝ちです。鮮烈!シュラク隊のカードを第2テキストでプレイ!」
「第2…なんでしたっけ?」
鮮烈!シュラク隊は、ユニットリロールと本国防御のハイブリットコマンドだ。
第2テキスト「自軍本国は、ターン終了時まで、敵軍部隊1つから戦闘ダメージを受けない。」でマスターガンダムの部隊はこのターン、俺の本国に戦闘ダメージを与えられない。
「…確認しました。その間にこちらの本国を。というわけですね」
「そうです!防御規定…ガンダムエクシアを宇宙に!」
リングハンデスが起動するが、もう手札にはこの勝負に関係あるカードは残ってない。
「うーむ。では、終わりにします」
相手はそう言って頭をかく。
終わりにします?変な言い方だな。
「月面民間企業で緑国力、歴史を変える一撃。エクシアの部隊戦闘力分…5ダメージをそちらの本国に」
「…っ!?」
血の宿命や光の翼のような攻撃反射カード…!
繰り返すが、手札にはこの勝負に関係あるカードは残ってない。
「…負けました」
俺はそう言って頭を下げた。
「でも、変える一撃があったならこのターンは普通に出撃しても良かったんじゃ?」
「いえいえ。せっかく面白くなってきたのにすぐに終わってはアレですし…おかげで面白いものが見れました」
「そりゃ積みを確信した余裕ってやつですね」
俺は苦笑して「ありがとうございました」ともう一度頭を下げた。
さー4敗だ。面白くなってきた?
×××
「ガンスリ!ガンスリ!」と言って走っていった幹夫たちを見送った後、あたしは再びCS会場を見渡した。
ちょうど武志の試合終わったみたい。テーブルの一番端だからわかりやすい。
結果は…対戦相手がスコアシートを提出しにいったってことは負けかな?
あたしがこんな早く対戦を終えて会場をうろついてるのは、4回戦の相手が退艦許可だったからなのよね。
てか、コンボ多すぎ!マトモに戦う気ないわけ?
…いや、言い過ぎね。「それも戦術」って公旗とかが言いそうだし。
「あ、剣治」
あたしは会場を抜けてこっちに歩いてきた剣治を捕まえる。
話があるわけじゃないのにね…。
「どうした?」
「うんん。どうだったかなーと思って。4回戦」
あたしはとりあえず、ここではお決まりの台詞を言う。
「ふむ…アフリカが引けずに撲殺された」
剣治は『必勝』の鉢巻を解きながらそう言った。
「あーそうなんだ。アレ強いのにね」
「フッ…23弾で黒がプッシュされれば問題は解決する」
あたしは話半分に聞きながら、剣治の手にある鉢巻を見ていた。
「ねえ。その鉢巻、外しちゃうの?」
「いや、ズレたから巻き直そうと思っただけだが?」
「そっか。あ…あたしやったげようか?」
最後にかけて声が小さくなっちゃったけど、言えた。言えたよ!
「いや自分でやるから…」
「いーから!これ言うのにどれだけドキドキしたと思ってるわけ?」
「…何の話だ?」
あーだこうだ言いながら、あたしはなんとか鉢巻を奪取する。
が、思いっきり取ったせいであたしは後ろにバランスを崩す。
「あっ…」
女の子の声。
直後、ぶつかったその子の荷物が床に落ちる音が聞こえた。
「あースミマセン」
あたしは慌てて振り返り、頭を下げながら床に落ちたデッキケースに4ポケットバインダー、そしてそこから落ちたカードを拾う。
「こっちこそすみません」
相手の人は苦笑して一緒に荷物を拾う。
ウェーブした髪と赤いフレームの眼鏡。よく見るとあたしより少し年上っぽい。
あたしと剣治は何度か頭を下げてその場を離れた。
「結ぶなら結んでくれ。それがないと戦えない」
剣治はそう言って立ち止まった。
あたしは「あ、忘れるところだった」とかなんとか言いながら、笑って鉢巻を彼の頭にあてた。
「これでよし」
「やはり自分でやらないと違和感が…」
「いーからいーから♪」
あたしはそんなことを言いながら、剣治の背中を押した。
2勝2敗で迎える最終5回戦―。
ホワイトボードで対戦する席を確認して、あたしは鼻歌交じりに向かう。
今度もコンボデッキってのはゴメンよ?ユニットで戦うのが、あたしの白デッキの持ち味なんだから。
「「あ」」
自分が座る椅子を引いたときに、対戦相手と目が合う。
…さっきぶつかっちゃった人だ!
つづく
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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.07.24
更新日:10.04.14
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