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#88
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#88 ミキオのリングだ
「ヤベーぞっミキオォ!あと1分しないで3回戦始まる!」
並んで走る羽鳥が息を荒らげながら叫ぶ。
「俺のせいじゃねーよ!オメーがたらたらメシ食ってるからだろ!?」
俺は少しスピードを緩め、伊達会館の入り口に向かった。
「二人とも待ちなさいよー」
2mくらい遅れて夏樹が続く。
今日はガンダムウォーの地区予選大会、伊達CSの日。
朝から会場に一番で並べたり、姐さんのパンツ見れたりでいいこと続きだったが…ここに来て3回戦に遅刻の危機。いや確実に遅刻!
朝から会場に一番で並べたり、姐さんのパンツ見れたりでいいこと続きだったが…ここに来て3回戦に遅刻の危機。いや確実に遅刻!
失格とかになったらどうすんだよ。まだまだ活躍したりないのによ!
「うぉぉおっ!」
俺は階段を一気に駆け上がる。
会場ではすでに大半のCS参加者が席に着いていて、アナウンスでは俺たちの参加者番号が呼び出しをくらっていた。
「ハイハイ!」
俺は勢い良く手を上げながら、参加者のテーブルを通り過ぎて係員に誘導される席に向かった。
途中で姐さんを見つけたから、少し近づいて「やっちまいましたー」と言った。
途中で姐さんを見つけたから、少し近づいて「やっちまいましたー」と言った。
「バーカ。時間厳守って知らないわけ?」
京子姐さんは眉をつり上げてそう言った。
俺は視線を姐さんの顔から胸、そして前方へと戻し席に向かった。
俺は視線を姐さんの顔から胸、そして前方へと戻し席に向かった。
「ちょっと。何だって?」
後ろから夏樹が追いついてきて、顔をグイと寄せてそう言った。
「なんでイチイチ聞いてくんだよ」
「だってあの人、ウチのミキオにちょっかいばっかだすから…」
「いつからお前のになったんだよ」
「だってあの人、ウチのミキオにちょっかいばっかだすから…」
「いつからお前のになったんだよ」
それにちょっかいを出してるのは俺の方だっての。
「やっぱお前、帰れよ」
オレはそう言いながら席に着いた。
夏樹は3年になってから絡んできた女子で「ウチのミキオ」が口癖。
言っておくが、オレはこいつのことなんかただの一度も「彼女」だとか「俺の女」だとか言ったり、思ったりしたことはない。こいつの思い込み。
夏樹は3年になってから絡んできた女子で「ウチのミキオ」が口癖。
言っておくが、オレはこいつのことなんかただの一度も「彼女」だとか「俺の女」だとか言ったり、思ったりしたことはない。こいつの思い込み。
「ぶー」
頬を膨らましながら、あいつは一歩さがる。
けど、帰らないだろうな。終わったら終わったで夕飯食べにいこうだの何だの言い出すに決まってる。
けど、帰らないだろうな。終わったら終わったで夕飯食べにいこうだの何だの言い出すに決まってる。
「さてと。まだまだオレのMFはこれからが本番だぜ…?」
腕まくりをしながら席にしっかり座ったオレは、向かい合う椅子に誰もいないことに気付く。
なーんだ、遅刻か。オレたち以外にも遅刻してる奴いるじゃん。
なーんだ、遅刻か。オレたち以外にも遅刻してる奴いるじゃん。
「チッ…なんだ。ミキオかよ」
デッキケースからデッキを取り出して確認するオレに聞きなれた声が話しかけてくる。
「は…羽鳥!?まさか遅刻してきた3回戦の相手って…」
「その”まさか”だぜ。この府釜中のエースである俺様がお前の相手だ」
「その”まさか”だぜ。この府釜中のエースである俺様がお前の相手だ」
羽鳥は妙にどっしり席に着き、「相手にとって不足なし!」と笑った。
オレたちの到着で参加者全員がそろったのを確認した司会者は、待ちかねたように3回戦開始のゴングを鳴らした。
ここまで来て、なんでコイツと戦わなきゃいけねーんだよ…いや、スイスドローでこうなった以上、実力が同じくらいとも言えるか。
いやいや、これはある意味ラッキーだ。
コイツのデッキとは何度も対戦してるし、デッキの選択肢が「イナクトデッキ」しかないことも知ってる。
コイツのデッキとは何度も対戦してるし、デッキの選択肢が「イナクトデッキ」しかないことも知ってる。
「やっとユニット戦するデッキと戦える。MFの真髄はこれからだぜ」
「俺様がイナクトでギッタンギッタンにしてやんよ!」
「俺様がイナクトでギッタンギッタンにしてやんよ!」
×××
初めの2ターンはオレは茶の、羽鳥は緑の基本Gを2枚おくだけに留まり、スムーズにターンが流れた。
予想通り、先に動いたのは羽鳥。先攻の3ターン目だ。
予想通り、先に動いたのは羽鳥。先攻の3ターン目だ。
「3枚目の緑G!そしてAEUイナクト(デモカラー)の10thカードをプレイ!」
「来たな…!つーか10thレア宣言いらねーから」
「来たな…!つーか10thレア宣言いらねーから」
羽鳥は「はっ」と笑い、イナクトを攻撃に出撃させた。
いつもながら、この攻撃がボルジャーノンも引けてないオレの現状を打開してくれるんだぜ?
いつもながら、この攻撃がボルジャーノンも引けてないオレの現状を打開してくれるんだぜ?
「ターンエンド」
「オッケー。ドロー!」
「オッケー。ドロー!」
オレは3枚目の茶基本Gを配備してターンエンドを宣言した。
「ドローして、対ガンダム調査隊を配備。イナクトを出撃っ!」
「4点受ける!」
「ターンエンド」
「4点受ける!」
「ターンエンド」
しかし、イナクトは厄介だ。
毎回ディアナ帰還を引ければまだしも、回復が容易でないこのデッキで序盤に必要以上に捨て山が増えるのはマズい。
毎回ディアナ帰還を引ければまだしも、回復が容易でないこのデッキで序盤に必要以上に捨て山が増えるのはマズい。
「オレのターン、ドロー!ギンガナム軍を配備、さらに…」
オレは手札から宝物没収を出し、「お前が作ってくれた捨て山からありがたくドローさせてもらうぜ」と言った。
悪くない。ドローが連鎖してる。8点程度はちょうどいいダメージだったみたいだ。
悪くない。ドローが連鎖してる。8点程度はちょうどいいダメージだったみたいだ。
「ニュータイプの排除。このオペレーションを貼るぜ」
「おう」
「そして即座に使うぜ、ニュータイプの排除!」
「おう」
「そして即座に使うぜ、ニュータイプの排除!」
オレは基本Gをロールしつつ、手札のGカードを廃棄する。
捨て山からのハンガードローはローズガンダム(RS)《20》!!
捨て山からのハンガードローはローズガンダム(RS)《20》!!
「よっしゃー!飛ばすぜッ…ローズガンダムをハンガーからプレイ!」
「ウッゼー!あれウゼーよ」
「ウッゼー!あれウゼーよ」
羽鳥は足をバタバタさせながら頭を抱える。
ローズガンダム(RS)の特徴は、リングエリアを含む戦闘エリアにいる敵ユニット1枚の戦闘力を減衰させる強力なテキスト。耐久は-2で固定だが、格闘が高く耐久が低いのが特徴である緑のユニットには効果は絶大ってやつだ。
ローズガンダム(RS)の特徴は、リングエリアを含む戦闘エリアにいる敵ユニット1枚の戦闘力を減衰させる強力なテキスト。耐久は-2で固定だが、格闘が高く耐久が低いのが特徴である緑のユニットには効果は絶大ってやつだ。
「いつも通りで悪いけどよ、今回もコイツで押さえさせてもらうぜ?」
オレはニヤリと笑ってターンエンドを宣言した。
「チッ…ドロー。ターンエンドだ」
攻撃が止まった…やはり耐久のなさが足枷になっている。
今度はこっちの番だぜ!!
今度はこっちの番だぜ!!
「ドロー…行くぜ!ここからがオレの攻撃…シャァイニングガンダァムッ!」
オレは手札から16弾「覇王の紋章」収録の”それ”を戦闘配備させた。
戦闘配備と安定した戦闘力、そして何より配備エリアでの頑丈さを兼ね備えたユニットだ!
戦闘配備と安定した戦闘力、そして何より配備エリアでの頑丈さを兼ね備えたユニットだ!
「戦闘フェイズ。シャイニングガンダム!リングアタックだ!」
「ッ…防御だ!デモクト!」
「ッ…防御だ!デモクト!」
声を張り上げるオレに、羽鳥もすばやくイナクトをシャイニングガンダムのカードの向かい側に移動させる。
そう来るよな、普通。
そう来るよな、普通。
敵軍ユニットがいる状態で、相手が防御規定でリングに上がらなければペナルティでハンデスが起動する。
いくらローズで撃ち落されようが、手札を落とされるよりはマシってわけだ。
いくらローズで撃ち落されようが、手札を落とされるよりはマシってわけだ。
「このままじゃ相打ちだしな、防御ステップにローズで-2修正。イナクトを破壊するぜ」
「仕方ねーな…破壊されたから2ドローするぜ」
「仕方ねーな…破壊されたから2ドローするぜ」
そして、シャイニングガンダムの3点は通る。
「いい気になんなよ?ミキオ…テメーが”いつもの”を引いたように、俺も今引いたぜ。”いつもの”を」
「…そうかよ。ターンエンドだ」
「…そうかよ。ターンエンドだ」
羽鳥は勢い良くドローする。
さっきのデモカラードローでアレを引いたのか…面倒っちゃ面倒だな。
さっきのデモカラードローでアレを引いたのか…面倒っちゃ面倒だな。
「配備フェイズ、緑基本Gと ニューヤーク。そして、AEUイナクト(指揮官機)の登場だッ!」
「…オッケー」
「…オッケー」
ちゃっかり防御用の拠点まで用意しやがって…デモカラー様様だな。
「戦闘フェイズ、指揮イナクトを宇宙に出撃!さー…どうする?本国に4点だよなァ?」
指揮イナクトは、場から離れると本国かユニット1枚に3ダメージを与えることができる効果を持っている。
配備エリアのシャイニングガンダムは対象に取られないが、耐久3のローズは落ちるということだ。
配備エリアのシャイニングガンダムは対象に取られないが、耐久3のローズは落ちるということだ。
「いや…防御ステップ、配備エリアのローズに風雲再起をセットするぜ!」
「クイック…キャラか!」
「クイック…キャラか!」
俺はコクリと頷き、2資源を払いローズのテキストを宣言する。-4/-4/-2を指揮イナクトに与えて撃破。キャラクターがセットされ、爆発的に耐久性が高くなったローズは、3ダメージ程度では落ちない。本国に3点飛ばすしかないだろうな。
オレはしてやったり顔で羽鳥を見る。
オレはしてやったり顔で羽鳥を見る。
「じゃあイナクトは破壊、廃棄されてテキストが起動するぜ。対象は…ローズガンダム!」
「なん…だと?」
「なん…だと?」
オレは唖然として羽鳥の裏になったままの手札を見る。
赤い彗星や試作ケンプファーなどといった代表的なダメージカードは、いずれも戦闘エリアにいるユニットしか対象に取れなかったはず…いったい?
赤い彗星や試作ケンプファーなどといった代表的なダメージカードは、いずれも戦闘エリアにいるユニットしか対象に取れなかったはず…いったい?
「ダメージ判定ステップ、衛星ミサイルを配備エリアのローズにプレイするぜッ!!」
「…!?」
「…!?」
衛星ミサイル…!?
防御力-1分のダメージ…このローズだと6点、をエリア不問で与えるダメージカード!
1枚では役に立たないあれを、イナクトのダメージと絡ませて、こっちがせっかく用意したセットグループを討ち取ってきやがった…!
防御力-1分のダメージ…このローズだと6点、をエリア不問で与えるダメージカード!
1枚では役に立たないあれを、イナクトのダメージと絡ませて、こっちがせっかく用意したセットグループを討ち取ってきやがった…!
「いつも通りじゃ、俺が不利だろうからなぁ~入れてみて正解だったぜ!!」
羽鳥はターンエンドを宣言して、ニューヤークのドローで手札にカードを加えた。
つづく
txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.07.14
更新日:10.04.14
掲載日:09.07.14
更新日:10.04.14