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「ミキオすごいや、あの状況を切り抜けるなんて」

カードを片付けながら、感心したようにため息をつく睦月。
向かい側に座ったミキオも、「だろ?」と言いながらカードの片付けを始める。
場に広げられ激闘を繰り広げたカードたちは、元の束に戻ろうとしている。

ミキオは睦月を打ち破ったのだった。


第40(46)話 次!



「やったじゃん。ミキオちゃん」

スコアシートに記入を終え立ち上がったミキオに、タンサンが声をかける。
会場内の熱気に耐えかねたのか、羽織っていた上着は荷物に加わっていた。

「なんだ、見てたのかよ」

ミキオの言葉に、タンサンは頷きながら「おれっちの4回戦は、あっという間だったからね」と答えた。
4回戦の対戦相手はタンサンを追い詰めはしたものの、デュアルカードを多用したデッキだったため、擬似太陽炉1枚で逆転を許してしまったのだった。

「さて、受付に結果報告に行くか」

まとめたカードをデッキケースにしまい、スコアシートを持って立ち上がるミキオ。
歩き出した彼に続く、睦月とタンサン。

「あー。君は確か、ジャブロー残留部隊入れ忘れたドジな人」
「ドジ言うなって。それにおれっちのほうが年上だぞ?」

顔を見合わせるなり、そんなやり取りをする2人。
対戦結果を報告した後、受付付近で話をしていると――結果を報告しに来たのか――武志が現れた。
ナツキの家で合宿をした時以来の顔合わせだった。

「藤野センパ~イ」

手招きするミキオに武志は「おう、栗田」と答えて、チェックを終えたばかりのスコアシートを片手に3人のところに歩み寄った。
ミキオの身長は決して小さいほうではなかったが、170センチ後半はあろうかという武志と並ぶと小さく見える。

「どうスか?調子は」
「俺、本番弱いタイプだからさー。地区予選クラスの大会では毎回ボコボコだぜ」

スコアシートを見せる。記入されている戦績は、4回戦が終わって2勝2敗。
ボコボコというほどではないが、この戦績は”良くはない”か。とミキオは苦笑した。
だが同時に彼は、藤野武志が「戦績だけを気にするプレイヤー」ではないことも知っている。

「そう言う栗田は…全勝!?スゲーじゃねーか!」

ミキオのスコアシートを見るなり、にわかに盛り上がる武志。
当のミキオは、言われて気付いたようで「あ!そうか」と声を上げて、自分のスコアシートを見直す。
勝ち星が4つで、勝ち点は12。

睦月を倒すことを目標にしていたため、”彼の後”に敵がいることをすっかり忘れていたのだ。

「なんだよ、しっかりしてくれよ?」

と武志は冷やかすように笑って、「じゃ」と3人の元を離れた。
睦月もミキオたちのもとを離れる頃合か、と荷物を持ち直した。
彼は視界の端に谷本を見つけ、次はそっちに顔を出そうかとも思案する。

「ボクを倒したんだからゼッタイ優勝してよね!」

そう言って手を振る睦月に、ミキオは「言われなくてもだぜ。KING」と返す。
さっきまで5回戦のことを忘れていたくせによく言う、とタンサンはクスクスと笑った。
睦月が2人の視界から消えた後、タンサンはまわりを伺うように目配せして首をかしげる。

「あれ?そういやナッちゃんは?」
「見てねーけど」

いつもなら瞬殺するか、されるかしてミキオの対戦を見ている彼女が、この4回戦に限ってはいない。
対戦中かな、とミキオも会場を見渡すが視界には入らなかった。

「ま、どっかうろついてるんじゃね?」

ミキオはすぐ近くのテーブルで行なわれている対戦に視線を移しながら、そうつぶやいた。


×××


会場を出た通路。並んだ自販機やゴミ箱の脇を走る細身の女の子。射勢ナツキだ。
彼女まっすぐ廊下を抜け、トイレのドアノブを握った。

「あ゛」
「お」

自分で力を入れる前に戸が内側から引かれ、ナツキはドアノブを握ったままつんのめる。
中から現れたのは、中肉中背の女性。ナツキより若干高いくらいの目線の彼女と、目が合う。
…姉さんだった。

「危ないじゃない。ぶつかる」
「ゴメンゴメン…って、あたしのせいかよ」
「違うけど」

ナツキは、リノリウムの床に一歩踏み出した足を廊下側に戻しながら、小声で撤回した。
姉さんはハンカチで手を拭きながら廊下に出て、壁に寄りかかる。

「どう?初参加の予選大会は」

彼女は廊下を行きかう人を見ながらそう口を開く。
ナツキは姉さんの動きを見て一瞬躊躇する顔を見せたが、肩をすくめて彼女の隣に寄りかかる。

「なんか不調。思ったように動いてくんない…☆」

ここまで1勝3敗。しかも、その1勝は相手の事故で勝った試合だ。
本格的に始めて4ヶ月ちょっと。少しは強くなったと思ったが、この数時間で”そうでもないらしい”というのが身に染みた。
姉さんは「あらら」と眉を上げる。

「抜きなよ、肩の力」

とナツキの肩を小突く。

「考えてみて。何をしにココに来たの?」

姉さんは床を…いや、予選の会場である『伊達総合会館』そのものを指した。
ナツキはむっとして彼女を見返す。
身長差はほとんど無いが、細身の彼女のほうが随分小さく見えた。

「その”お姉さん面”が嫌いなんだけど」

憤慨して顔を背けるナツキに、姉さんは頭をかく。
「自分も最初はそうだった」と、ただそう言いたかっただけなのだが、上手く伝わらない。

会場で5回戦の召集がかかっているのが聞こえた。
最後の召集といわんばかりに司会のスタッフは張り切っている。

「まぁ、いいわ。行きましょ」

「最後の戦いよ」と、きびすを返す姉さん。結われていない髪が広がる。
その後姿に、ナツキはイラついた声で「あのねぇ!」と声をぶつける。

「ウチ、”まだ”なんですけど!」

姉さんが振り返る頃には、ナツキはトイレのドアの向こうに消えていた。
「呼び止めてゴメンね」と彼女がいた場所に言いつつ、姉さんは一足先に会場へと向かう。

短い休憩時間が空ける。
5回目にして最後の、組み合わせ表が張り出された。


つづく


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初出:mixi(10.07.09)
掲載日:10.07.09
更新日:10.07.16