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#35 始まりはここから


「お前、今の試合なんであきらめたの?」

大会が終わり、カキヨさんが見せのほうに戻った後、テーブルに突っ伏した俺に誰かが話しかけた。
透き通っているようで、どこかハスキーな感じの声に促されて、俺は顔を上げた。

「君は?」
「あたいは煉…赤坂 煉」

煉と名乗った女は俺と同い年、いや少し下に見える。
整った顔立ち。いや、素直な言い方なら…まさに俺のタイプだ。

「ふふっ”君は?”」

彼女は笑いながら、俺の口調を真似して聞き返した。

「公旗…一」
「変な名前~」

彼女は肩をすくめて立ち上がり、俺のデッキを指差した。

「あそこでゲルググが攻めれば、勝負はまだわからなかったわ」
「いや、菊池は撤退命令を握ってたのさ。それに、ロンビに弾を与える結果になる。どの道負けだ」

数点のダメージだけでは奴の本国は削りきれない。
前のターンに具現化する力《BB2》を張った段階で、奴は次のターンの決着まで全て見えていた。

「でも、やらない意味なんてないわ。バカね」
「ばっ…バカ?」
「そう、バカよ。やらないで後悔するより、やって後悔しろってよく言うでしょ?」

そうだが…。
というよりなんだ?この子は。
プレイヤーなのか?それとも試合後に入ってきた部外者?

「君はその…いつからここに?」
「ひどいわね。あたいは最初からいたよ?今日はちょっとデッキ忘れただけで、本当はむちゃくちゃ強いんだから」
「これは失礼」

俺は立ち上がり、ドアのほうまで歩いた。冬の風が肌に当たり、頭を冷やせといっているようだった。

「あたいね、強い奴と戦いたいんだ。んで、いつかガンダムウォーのてっぺん取るの!」

俺は背中越しにぶつけられた壮大な夢を笑い、振り返る。
しかし、彼女は笑ってはいない。大真面目だ。

「だから、あたいはあいつ…あいつを倒すよ」

菊池のことだろう…あいつは今この『おもちゃのカキヨ』SCSを4連覇中だ。
最後にあいつに勝ったのは、たしかおやっさんだったはず。それも先月の話。

「…面白い!」

それから俺と煉は親しくなっていった。
幾度となく対戦し、お互いの悪いところを指摘し、良いところを見習った。



月日は流れ、ついに煉は大会で菊池と戦うチャンスを得た。
SCSの事実上の決勝卓。
黒い覇道のランデスとティターンズガンダムの破壊力によって煉はゲームをものにしたかのように見えた…。

×××

「あーもう!なんであそこで具現化する力引くわけ?散々破壊してやったのに、フルバーニアン1枚に負けたーっ!」

煉は足をバタバタさせながら愚痴をこぼす。
今日わかったこと。菊池のデッキも無敵ではない…息切れせずに攻撃を畳み掛ければあるいは。
そして、それ以上に驚いたのは、煉が黒のデッキを見たことがないくらい上手に使うことだ。

「それでもすごいさ。あの菊池の青赤をあそこまで追い詰めたんだ」
「そんなことない。ゲームで重要なのは、勝ち負けとやる気よ。追い込んだかどうかなんて…」

ずいぶん偏った思考だな。
と思いながらも、おれは腕組しながら考えた。破壊カードとユニット戦での交戦力か。

「俺の先輩に”デッキビルダー”って呼ばれる人いるんだけど、その人のところ行かないか?」

俺の考えでは、その人に作ってもらったデッキならば…というのがあった。
煉はクスクスと笑って俺の方を見返した。

「いいわよ?でも、デートの誘いなら、もっと洒落た台詞使ってよ」
「冗談。誰が君みたいなカワイイ子誘うかよ」

はにかむ彼女に、俺は荷物を持ってないほうの手を差し出した。

×××

「ちょっと待った!ちょっと待ったあぁ!なんで恋愛ストーリーみたいになってんのよ!!」

あたしはたまらず叫んだ。
公旗があんまり普通に話すもんだから、危うくスルーするところだった。

「おい京子!いいから黙って聞こうぜ!今いいとこなんだから」

武志があたしを制止する。
それを見て詩織が吹き出した。


つづく


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txt:Y256

初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.08.27
更新日:10.04.14