海戦:基礎設定

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 コンセプト:突如現れた通常兵器が効かず意思疎通できない系のアレと、
 唯一それに対抗しうるのは選ばれた少女・女性だけ系のアレでインフレ海戦

 まだまだ未完成:これから整地します


【ネーレイデス】


 西暦2098年末に起こった系外天体『13I/ネーレウス彗星』の地球衝突事件、その墜落点である南極より現れた、異起源の生体兵器群の総称。

(13I→13th Interstella object、十三番目に発見された恒星間天体ということ。1I/オウムアウア、2I/ボリソフ彗星の系譜)

 名称はギリシア神話、海神ネーレウスの娘である、海の精霊たちより。
 多種多様なタイプが存在し、大別して◯◯級+亜種を区別する場合は(ギリシア数字)型の識別名で呼称される。
 アンピトリテ級、エーイオネー級Ⅰ型、スペイオー級Ⅳ型など。
 名の通り、基本的な活動場所は海上と海中。理由は後述。

 サイズはおおむね数十~数百メートル、表層質感(サーフェス)は金属色や白磁、大理石めいたものなど、総じて無機的。
 外形は、部位ごとに見れば腕、足、角、翼、尾など、生物の部位らしく見えるものだが、その配置はおよそ地球上のどの生物にも似つかない。なかでも翼や角などは、特に大きく、流麗典雅なシルエットを持つことが多い。異星・異教の神獣を象った巨像、とでもいうべき外見。

 その起源は不明。精神構造も不明。ネーレイデスの出現以降、幾度となくコミュニケーションは試みられたが、そのすべてが無為に終わっている。

 ただ、確実なことは二つ。
 一つ、絶大な戦闘能力を持つこと。核攻撃すら単発ではまるで通じない防御力と、それ以上の指向性エネルギー攻撃を連射可能な攻撃力は、二十一世紀末のあらゆる兵器技術を過去にした。
 二つ、人類に極めて敵対的であること。目的は不明ながら、出現から現在まで一貫して、ネーレイデスは執拗に人類を殺戮し続けている。

 彼女らの出現によって、人類は地球の覇者たる資格を失った。




隔距離仮想熱伝導(フォノンジャンプ)

 ネーレイデスを象徴する能力。おおよそ半径数kmの射程内の、任意の座標に対して、あたかも直接触れているかのごとくの高効率で熱を交換できる。略称は『跳熱』。

 攻撃として用いる場合、半径数km内の任意の座標を瞬時に摂氏数万度まで加熱し、熱いプラズマの塊に変えることが可能。
 これはアクティブ防御としても使用され、一定以上の速度でネーレイデスへ向かうあらゆる物体がフォノンジャンプにより自動迎撃される。あくまで加熱による融解-蒸発-電離を引き起こすだけで、運動量自体を直接変更するわけではない。
 が、空力学に基づいて設計された砲弾やミサイルが、突然に乱雑な荷電粒子の塊に変じて、今まで通りに直進できるはずもない。空気抵抗により急速に減衰し、拡散する。ネーレイデスに対し、固体弾頭はまず届かない。

 しかし、その本領は攻撃ではなく、廃熱にある。
 自在な元素転換・核改変能を標準で備えるネーレイデスは、周辺の空気や水を数グラム喰らうだけで、莫大なエネルギーを捻出できる。
 もっとも小型で貧弱なタイプの戦闘ユニットですら(※)、質量転換炉の推定最大出力は400テラワットを下らない。これは広島型原爆を毎秒、六発爆発させている以上のエネルギー量。大型の個体であれば数千TWの出力を持つものすら存在する。

(※直接戦闘を行わない、補助や支援、生殖などに特化した非戦闘型は、せいぜい数十ギガワット程度の出力しか持たないこともある)
(せいぜい?)
(重要なのはとにかくインフレスペック・バカ出力持ってるよ、という点なので、具体的な出力値の盛り具合はあとあと適当に変更するかも)

 しかし、それでも熱力学第二法則よりは逃れられない。
 扱うエネルギー自体が莫大であるなら、発熱もまた莫大なものとなる。数十メートルの躯体に数百TW、数百メートルの躯体に数千TWの出力では、たとえ体表面積すべてを海水に晒していたとしても、なお廃熱がとても追い付かない。

(単純な表面積でも足りない、というか実際には水蒸気爆発&ライデンフロスト効果あたりでまったく廃熱回らなそう)

 だが、射程数km内の任意の座標と、熱交換を行えるフォノンジャンプがあれば、話は違う。
 周辺数兆トンもの海水との熱的直結は、比類なき絶対の冷却効率を誇り、秒間数百テラジュール発生する莫大な発熱すら、完全に抑え込むことが可能。

 もちろん長時間、複数体のネーレイデスが戦闘出力で活動すれば、周辺海域は煮える。沸騰して蒸発する。
 が、蒸発した分だけフォノンジャンプの射程の外側から、海水は幾らでも流れ込む。
 フォノンジャンプこそが、ネーレイデスの規格外の高出力を支えている、といっていい。

 なお原理としては、カシミール効果を介した真空中の熱伝導、の拡張と推測されている。
 しかし本来はせいぜいナノ~マイクロオーダーでしか働かない極微の量子効果を、いかなる方法で射程数キロというマクロスケールに引き延ばしているのかは不明。

 あくまで接触相当の熱伝導を遠隔で引き起こす、という能力であるため、対象の温度や熱伝導率、熱容量などの影響は当然受ける。
 ネーレイデスが基本的に海上や海中で活動するのは、見渡す限りの莫大な海水すべてを廃熱先として使えるため。
 陸上や高空でも活動自体は可能だが、土も、空気も、冷却材としてあらゆる面で、海水に遥かに劣る。ゆえ、海から離れれば廃熱効率は大幅に下落。熱暴走による自壊を防ぐため、質量転換炉の出力が1%未満まで切り詰められ、通常兵器でも対抗可能な域まで弱体化する。

 人操のネーレイデスである『アルゴノーツ』を除いた通常兵器のうち、至近距離での多重核爆撃/雷撃のみがネーレイデスを撃破しうるのも、実のところ単純な破壊力よりは、廃熱の問題である。
 重要なのは熱線でも爆風でもなく、起爆の瞬間に生まれる数百万度の火球。複数の火球でネーレイデス周辺の海水すべてを呑み込み、一瞬のみ全方位の灼熱空間に囲い込むことで廃熱不能に陥らせ(※)、熱暴走に導き自壊させる。

(※核火球の超高熱・高圧プラズマ自体は、ネーレイデスの電磁障壁により弾かれ、その無機なる硬肌を灼くことは叶わない)
(※理論上は、フォノンジャンプによる熱の逆流は起こり得る。だが実際には何らかの対策がなされているようで、周辺温度をどれだけ上げても『廃熱不能』が限度。
 幸い、あまりにも扱うエネルギーの桁が大きいためか、たった一瞬、完全に排熱を堰き止めることができれば、即オーバーロードで破裂する)

超々重元素


 Over173、TRans-Ustなどとも呼称される。ネーレイデスを構成する、原子数174以上の異様に『重い』、本来成立するはずのない元素群。

 異様な強度や耐熱性だったり、核化学的な触媒効果であったり、常温超流動性だったり、未知の物性を有するものが多い。
 存在しないはずの元素であり、かつ通常元素では再現困難な特性を持つことから、原子番号179〝ミスリル〟、原子番号202〝オリハルコン〟など、空想上の架空物質などの名を冠される。

 なお、あくまで安定しているのはネーレイデス・コアよりの干渉ありき。
 コアが失われれば(≒ネーレイデスが死ねば)、その躯体を構成していた超々重元素は一気に安定性を失い、
 わずかな刺激で(指向性エネルギー兵器が飛び交う戦場では不安定物質への〝刺激〟に事欠くことはない)盛大にアルファ線・ベータ線・中性子線にガンマ線、あらゆる電離放射線を放出しながら、通常元素へと崩壊する。
 つまり、まず斃すことが難しいのに、斃したら斃したで放射化汚染を撒き散らすということ。最悪。

 現在研究されている超々重元素サンプルは、戦場でネーレイデスから奪ったものではなく、研究施設の電波暗室内で、アルゴノーツより丁寧に切り取られたもの。

ネーレイデス・コア

 その名の通り、ネーレイデスの中核をなす器官。
 恒常性を保ちながら高速連鎖・高速反応し続ける素粒子の(カスケード)であり、反応が止まれば即座に全体が崩壊/『死んで』しまうその特性上、解析は極めて困難。
 見た目は、完全黒体の球と、それを縁取る黄金のリング。この光環は実体ではなく、強固な光の歪曲作用であるために、どの方向から見てもその外観は変わらない。
 さながら金環日食、あるいはブラックホールの光子球、といった見た目だが、あくまでこの光学現象は電磁的なものであり、重力場に(有意な)影響は与えていない、とされる。現状、コアの生産能力を持つのは〝ネーレイデスを産むネーレイデス〟であるドーリス級のみ。

電磁障壁


 ネーレイデスが標準で搭載・展開する、対荷電粒子の防御機構。
 ナノ秒単位で目まぐるしく変動する、超高強度の球殻状電磁フィールドであり、自身へ向かってくる荷電粒子をすべて偏向。軌道を逸らして受け流す。
 高速変動パターンは荷電粒子分離能を有し、平均電荷では中性なプラズマも、まず器用に陽イオンと電子に寄り分けた上で、それぞれ別個に誘導可能。

(なんなら中性原子すら無理やり引き裂ける……かは未定)
(どうせネーレイデスに接近すればフォノンジャンプによる加熱でプラズマに分解されてしまうので、そこを詰める必要はないかもしれない) 

 対荷電粒子防御機構である電磁障壁を、なお荷電粒子ビームで打ち破る手段は、主に二つ。
 一つは、単純に電磁障壁以上の運動量で突き破る。速度と質量は大きい方がよく、電荷は小さい方がよい。つまり電磁偏向で防御されにくい粒子とは、比電荷の小さい粒子であり、それはそもそも電磁加速することが難しい、ということでもある。

 もう一つは、そもそも一撃で障壁を抜こうとは、はなから考えない攻略法。
 電磁障壁の発振器官であるミスリルナノコイルは、常温超電導性と異様な機械的強度、さらに自己再組織化能力を併せ持つ。されど、頑丈ではあっても不壊ではない。
 電磁気力が相互作用である以上、電磁障壁が荷電粒子に与えた偏向作用の反作用は、きっちり発振コイルへと帰ってくる。
 単発であれば、コイルそれ自体や周辺組織の弾性、また全身ごと『押される』ことなどで、一定の負荷は吸収できる。
 が、挟み撃ちにされれば、それぞれが電磁障壁を貫けない運動量/電荷比であったとしても反作用の逃がし先がなく、発振器に掛かる負荷は激増。コイルを破損させてしまえば、当然電磁障壁は低減~展開不能に陥る。

 破損したコイルの再組織化・復元に掛かる時間は、個体差もあるがおおむね十秒前後。
 それだけの時間があれば、本命を撃ち込むには十分である。

(上記はある程度簡略化した説明。実際にはナノコイルは無数にあるため、『万全/破損』の二値ではなく、どの部位の何割がどの程度健在か、という問題になる)
(いやでも体表全部にびっしり、とかだと戦闘中のステータス管理が複雑冗長になりそうなので、密集したナノコイル叢を一ユニットとして、全身合わせて六とか七ユニットある、ぐらい? 実際戦闘描写を試し書きしてから調整するかも)

 また『高速変動する高強度電磁場である』ことから、副次効果として様々な波長の電磁パルスを放出する。
 中には可視波長も含まれ、これが、あたかも神秘的な光暈を纏っているように、ヒトの眼には映る(蛍光灯と同じで、実際には明滅しているが、肉眼の時間分解能では連続した発光に見えてしまう)。
 出現初期、ネーレイデスを神と/あるいはその御使いと崇めるカルトが全世界的に誕生したのは、この視覚効果によるところが大きい。人間の認知機能はどうしても視覚に大きく依存し、見た目によって受ける印象は左右されてしまう。

転熱緩衝装甲

 ネーレイデスが有する、基礎汎用防御機構。
 特定の部位や器官に依るものではなく、その全身の構造/組成そのもの。フォースターミネイター、Entropy Enhancement Accelerant Architecture/EA2などとも呼称される。

 一言でいえば、それは非常に高性能な、亜原子<フェムト>スケールで編まれた〝制振・衝撃吸収材〟である。
 自身に入射した巨視的な衝撃~微小な粒子線による化学的・核化学的擾乱までのあらゆるエネルギーを、自動的に・高速かつ・高効率で、物理世界の全ての力の終着点。すなわち熱に変換し、もって自身の致命的な変形や変質を回避する。
 何もしなくとも自然にそう進むはずのエネルギーの遷移の矢を、極限まで加速する構造体である、とも言える。

 実のところ、転熱緩衝装甲それ単体の防御能力には限度がある。
 あくまでエネルギーの総量は変わらないのだから、巨大な運動エネルギーを莫大な熱に変換して受け止めたところで、潰れはせずとも身が灼ける。
 しかし周辺数兆トンもの海水との熱的直結、絶対の冷却能力を保証するフォノンジャンプとの併用により事実上、オーバーヒートという弱点は消失しており、
 転熱緩衝装甲を突破する手段は熱変換/廃熱が追いつかないだけの超高エネルギーかつ超高密度の攻撃。あるいは単極化刀身(プロトンディケイア)などの『結合』ではなく構成素粒子『それ自体』を砕く兵装しか存在しない。

 ゲーム的に表現するなら、ほぼ全属性のダメージを固定値でカット。
 ある個体の転熱緩衝装甲の容量が500であるなら、威力500以下の攻撃で受けるダメージは一律でゼロ。
 501の威力で1ダメージ、600の威力でようやく100通る計算になる。


鏡面層/高周波プラズマ防御帯


 ネーレイデスが有する、二重の対レーザー防御機構。
 まず前提として、ネーレイデスに対して加熱で分子結合を灼き切る、という尋常のレーザー攻撃は、極めて非効率的である。素の耐熱性に加えて、なによりネーレイデスにはフォノンジャンプが存在する。
 着弾部位に与えられた熱量の大半は、即座に周辺の海水へと転送され、それで終わり。

 よってネーレイデスに対して有効なレーザーとは、転熱緩衝容量を上回るエネルギー密度を叩き付け、もって問答無用の光崩壊で原子核ごとぶち壊す、超高強度場物理の領域でのパルス発振──それが、最低ライン。
 汎用基礎防御で対応可能な域を超えて初めて、対レーザー防御である対鏡面層と高周波プラズマ防御帯の出番となる。
 鏡面層は、ネーレイデス体表の積層装甲、上から数えて二枚目か三枚目あたりにある、文字通りの鏡面の層。超々重元素〝アイギス〟の特異物性により、あらゆる波長の電磁波を高効率で反射する。
 高周波プラズマ防御帯は、電磁障壁の応用で形成・維持される、高密度に圧縮された電離気体の盾。

 前者は装甲の一部であるため常在であり、後者は能動展開型。また対レーザー防御に限れば後者が遥かに優れるが、電磁障壁のリソースを割くため、対粒子ビーム防御は低減してしまう。

前駆放射


 いかに優れたレーザー発振器・粒子加速器であってもエネルギー損失はゼロではなく、
発振や加速の過程では、必ず投入エネルギーの一部が電磁パルスやニュートリノ等の放出という形で失われる。
 この、撃ち出す過程で漏出する────言い換えれば、DEW発射の直前に放射されるエネルギーを、〝前駆放射〟と呼ぶ。その強度はおおむねエネルギーの総量に比例し、かつその比率は小さい。対人級のDEWであれば、前駆放射は検出不能なほど微弱なものでしかない。
 が、西暦2113年現在の海戦、アルゴノーツとネーレイデスの戦闘において用いられる(≒有効打となりえる)DEWの出力はテラ~ペタジュール級。最大では百京エクサジュールに達するものすら存在する。
 この域の投入エネルギー量であれば、その極一部の漏出でしかない前駆放射も十分に観測可能な強度を得る。結果、DEWが『発射された』ではなく『発射される』ことを、前駆放射の観測で一瞬だけ先んじて知覚可能。光速や亜光速のDEWをネーレイデスやアルゴノーツが対処可能な理由がこれ。

 端的にいえば、目標内部に高エネルギー反応! がお互い筒抜けの状態ということ。威力が高い攻撃ほど、前駆放射もまた鮮明であり、ゆえに観測。

 ただし最近は、チャージに時間を掛ける(=時間あたりの投入エネルギー量を減らす)ことで、観測しにくい微弱な前駆放射で高威力砲撃を放てる狙撃型や、
 『あたかも前駆放射のような、単なる低エネルギー発振』で敵の防御リソースを空費させる空砲型などが双方に出現しており、前駆放射を巡った戦術も複雑化・多様化している。

 ネーレイデス/アルゴノーツにとって、前駆放射を感知するためのセンサー感度は、単純なエネルギー出力や攻撃力、防御力などに並んで、重要な能力値である。

バースター兵器

 指向性エネルギー兵器のうち、発射機構の耐久性と耐用性を犠牲にしたものを指す言葉。
 端的に言うなれば、一発撃つたびに銃身が熔け崩れて砲身が吹き飛ぶ、加速器や発振器というより『指向性をもって爆発する爆弾』である。
 ある意味では、原始的な火薬銃器に回帰している、とも言える。

 デメリットは、そのまま。耐久・耐用を軽視したものでは一発撃つごとに発射機構の修復・再生プロセスに時間を要し、
 無視したものは完全な使い切り。連射は不能であり、こと継戦能力と経済性においては、標準的なDEWに大きく劣る。

 ではメリットは?
 主に挙げられるのは、三つ。一つは単純な出力。二つ目は一基あたりの生産コスト。
 そして最後が、速射性ではない『即射性』である。

 光速・亜光速のDEWに対し、ネーレイデス/アルゴノーツが対処可能な最大の理由は、前駆放射の観測である。
 扱うエネルギーの総量が莫大であるがために、DEW発射直前の、割合では極僅かな電磁パルスやニュートリノの漏出すら、前兆として観測可能な強度を得てしまう。
 高エネルギーな砲撃であれば、発生する前駆放射が鮮明となり、敵に対処されやすく、
 一方でエネルギー量を減らせば前駆放射は読まれにくくなるものの、当てたところで有効打になりえない。

 このジレンマに対する一つの解が、『チャージ時間を長く取り、時間あたりの投入エネルギー量を減らすことで、前駆放射をギリギリまで低減させ、観測されないようにする』スナイパー型であり、バースター兵器はその対極。

 『どれだけ鮮明な前駆放射が発生・観測されようが、実射とのタイムラグが限りなく小さければ対処は不能』という、いわばクイック型である。通常の加速器や発振器では、砲身への負荷や制御の問題から、発射プロセス全体の所要時間の短縮にはどうしても限界があるが、
 ただ点火して起爆するだけの、指向性の爆弾たるバースター兵器にはその制約は存在しない。敵手のDEWの種別や距離などにも左右されるが、条件がよければ『敵砲の前駆放射を見てから〝後の先〟を取る』ことすら可能となる。

主なネーレイデス


ドーリス級Ⅰ型

 体長:約4300m
 フォノンジャンプ射程:躯体末端から2.4km
 推定最大出力:200TW

 北極に三体存在する、生殖機能に特化した個体。ネーレイデスを産むネーレイデス。

ドーリス級Ⅱ型

 体長:約820m
 フォノンジャンプ射程:躯体末端から2.3km
 推定最大出力:500GW

 元種であるⅠ型を、そのまま縮小したような外見。


テティス級

 多能性

ディオーネー級


 体高:約2000km
 フォノンジャンプ射程:廃熱根の末端ごとに半径3.2km × 75本
 推定最大出力:不明。最低でも70000TW以上。

 ネーレイデスの絶大な戦闘能力は、あくまで海という廃熱先あってのもの。海から離れた内陸では、その力は大きく削がれ、通常兵器で対抗できるレベルまで弱体化する。ネーレイデス自身もそれを理解しているようで、基本的には陸に出ない。

 ならば海は放棄して、よいのではないか? 自在な核変換を可能とするアルゴノーツが人類側にいる以上、もはや『構造』や『情報』ではない、単純な稀少元素やエネルギー資源の問題は、完全に解決された。
 正体も分からぬぽっと出の侵略者に、母なる地球の七割を明け渡す屈辱。それを忍んででも、少しでも平和を得られ、一人でも戦死者を減らせるのなら、内陸に引きこもるべきではないか────という楽観・・を、木端微塵に粉砕した種その一。

 初めて発見されたのは地中海、シチリア島付近。わずか一夜のうちに聳え立ち、ヨーロッパ・中東・西アジア全土とアフリカ大陸の赤道より北、の半径5000km範囲内すべての人類居住地を、レーザー爆撃で焦土に変えた。
 死者数は直接被害だけでも十億を下らないとされ、これは一個体のネーレイデスとして最大。完熟個体は地中海の一体だけだが、海中で折り畳まれた状態で成長中の幼体が、カリブ海と東シナ海で一回ずつ発見されている。どちらも即座に最優先討伐対象に指定され、激戦の末、辛うじて撃破された。
 四体目五体目がいつ、どこの海から生えてくるとも分からない以上、消極的な選択肢は完全に潰えた。積極的な偵察と、能動的な攻撃による支配圏の奪還で、少しでも『見えない海域』を削るほかない。

 外観としては、高さ2000kmの、天を貫く塔。
 頂点部には威力と連射速度、精度と同時斉射数を兼ね備えたレーザー砲塔。これがディオーネー級の唯一最大の武装となる。
 基本的に直進しかしないレーザーは、地平線/水平線の向こうへの曲射ができず、見える範囲しか狙えない。ならば天高く見晴らしのいい位置から撃てばいい、というシンプルな発想を、極限まで突き詰めた形。

 高度2000kmから見下ろす地平/水平線は、5000km以上も遠い。それはつまり、5000kmの有効射程を持つということ。
 頂点部よりのレーザー射撃によって発生した熱量は、中間の『幹』内をマッハ100超で循環する超流動体に移されて即座に2000kmの距離を滑り落ち、そして枝分かれした最下部。海中に潜る75本の〝根〟から捨てられる。
 軌道上の砲塔と、海中の廃熱根を、長さ2000kmの伝熱ケーブルで繋ぐことで、高度と海の恩恵を両取りできるようになった種、ともいえる。

 なお重量バランス的には、最下部の廃熱根は、まったく荷重を担っていない。
 人工衛星めいて低軌道と中軌道の境界に位置する砲塔からの垂れ下がり&中間部に分散配置されたイオンジェット・スラスター群による上昇力の合わせ技。イオンジェットの影響で、中間部には常に雷雲のリングが纏わりついている。

 高高度から広範囲に超威力のレーザーの雨を降らせる、という一点に純化した種であるため、基本性能は極めて低い。
 移動能力はほぼ皆無で、防御面は素の装甲も電磁障壁も脆弱。しかし絶大な威力と射程、連射速度によって、そもそも人類勢力を半径5000km圏内に寄せ付けない。
 『背の高さゆえ、遠方に射線を通せる』ということは、『遠方から射線を通される』ことも意味するが、精度と威力減衰の両面において、5000kmの距離はアルゴノーツにとっても、なお遠い。双方が双方を狙える位置関係であるのなら、精度と威力と連射性に優れるディオーネー級が当然、優位。

 そのうえ射程限界ギリギリの円上にはスペイオー級やパノペー級などの通常種が大量に配備されており、これがカウンタースナイプの難度をさらに上げている。
 射程円の内側にも多数のネーレイデスが巡回しているため、潜航による接近も困難。大ボス枠。



アンピトリテ級


 体高:82メートル
 フォノンジャンプ射程:半径5.3km
 推定最大出力:5800TW

 直接的・総合的な戦闘能力で比較するなら、間違いなく最強のネーレイデス。外観は極めて人間に近しく、一言でいえば女体化した阿修羅像。
 攻撃防御機動感知、そのすべてがトップクラス。

 その強大さに反比例するかのように個体数は少なく、亜種は確認されていない。

メリテー級


 体高:10メートル
 フォノンジャンプ射程:12.9km、ただし同時に繋げるのはせいぜい二、三点のみ
 推定最大出力:20TW

 内陸に引きこもれば戦わなくていいのでは? という楽観を打ち砕いた種その三。
 フォノンジャンプ以外に一切攻撃手段を持たない最弱の、そして最悪のネーレイデス。

 特徴としては、量産性の高さと、そこそこの防御力。そして全ネーレイデス中トップのフォノンジャンプ射程と熱容量を持つ、直径10mの渦巻く球体。

 単体では、メリテー級はいっさい脅威にならない。攻撃手段がフォノンジャンプによる遠隔加熱しかないうえ、それすら積極的には使わない。防御力も、サイズや出力のわりには硬い、程度。およそ海上では、何の役に立つこともない。

 メリテー級が最悪と呼ばれる所以は、陸上にこそ存在する。
 量産性の高さによる、個体数の多さ。そして最長のフォノンジャンプ射程と、最大の熱容量。これをもって実現されるのは、海岸を終点としてリレー方式で展延される、他種からメリテー級、メリテー級からメリテー級へのフォノンジャンプを使った陸上廃熱ネットワーク。
 海から遠く離れた場所で、なお海を使った冷却効率を得るためのコンセプト、という点では、ディオーネー級に近しい。違いは縦か横か、有線式か無線式か。

 多数のメリテー級のバックアップを受けることにより、本来海がなければ全力の1%も出せないネーレイデスは、極乾の砂漠の中ですらフルスペックの六割程度の出力を発揮可能。これは通常兵器ではまったく歯が立たない領域であり、
 かつ唯一全力のネーレイデスに対抗しうるアルゴノーツにも、『メリテー級に相当する発現形』は現状、存在していない。つまり、メリテー級のバックアップを受けた陸上のネーレイデスを斃すことは、ほぼ不可能であるということ。

 現状、メリテー級の廃熱ネットワークに対抗する唯一の手段は、文字通りの水際作戦。
 ネットワーク終端を断ち、またメリテー級の新規上陸を阻止する。これ以外には存在しない。

 多分作中の山場の絶望枠として登場。飛行能力を獲得したⅡ型も出るかも?


アルゴノーツ


 西暦2113年現在、ネーレイデスに真っ向から対抗しうる、唯一の人類戦力。
 海往く英雄。次代の霊長。人融人操のネーレイデス。

 総称はギリシア神話より。発現形タイプごとの呼称はレーベル:◯◯。亜種を区別する場合には元型にa、亜型にs1、s2、s3以下略。

 レーベル:ヘラクレス、レーベル:イピクロスs1、レーベル:スサノオs2、レーベル:ラーマaなど。

 当初は発現形の識別コードも総称と同じくギリシア神話、アルゴー船のクルーのみから取られていたが、多様な発現形が確認されたことでのネタ切れ&自分の民族の神話を使いたい、というエスニシティ的要望で、いまは世界中の神話英雄の混淆状態。

 製造手段は単純。人間の女性を素体として、鹵獲したネーレイデス・コア。未解明・高密度の素粒子作用の塊を、融合・同化させる。

 同化の過程で元の肉体は立体走査をかけられながら分解、消失し、代わりに超々重元素の巨人躯体が形成。その演算器官内に、素体となった人間の精神パターンが転写される。
 人間的精神を残したままに、ネーレイデスとまったく同質の能力を備え、また唯一ネーレイデスからのフォノンジャンプを〝拒絶〟できる、唯一最強の生体兵器にその身を変ずる。

(具体的な融合プロセスは未定。まず神経を繋ぐ? 体内にブチ込む? どうしよ……) 

 これが現状、唯一それなりの成功確率を持つ、鹵獲コアの制御・利用手段。少ないサンプルから偶然に見出された、原理も機序も分からないままの、それでも一定の実用性を持つ経験則である。
 人間以外の地球生物はことごとく適合せず、人間の中でも、理由は不明なものの同化の成功例は女性のみ。
 さらなる研究を重ねれば、ネーレイデス・コアの人工生産や、人間を犠牲にする必要のない制御手段が確立される可能性も、なくはない。

 だが現状、地球上に余裕のある戦線など存在しない。
 成功するかも分からない、どころか暴走させて施設ごと吹き飛ばす可能性すらある実験に貴重な鹵獲コアを費やすぐらいなら、早くアルゴノーツに仕立てて戦力に回すべきだ、という風潮は、近視眼的だが同時に、今日を生き延びるための切実な要請である。

HTSL

 neuralized Hadron-cluster TranScript Language/神経化されたハドロン群への転写用簡易記述言語。
 アルゴノーツの演算器官に介入し、機能を書き加えることを可能としたプログラム言語と、それによって書かれたアプリケーション群の総称である。
 現世代の全アルゴノーツにインストールされているメジャーなHTSLとしては、

  • 兵装統合管制HTSL『軍事大要<Epitoma rei militaris>』
  • 戦術データリンクHTSL『アルゴスアイド』
  • 併列語法<デュアルスピーク>インプラントHTSL『コールアスペイド』

 などが存在する。

 開発体制としては【人物名A】主導と【人物名B】主導の二チームが存在しており、製作された各HTSLは、そのネーミングで区別が可能。
 古典のラテン名を引用したものがA産、英語のイディオムを用いたものがB産である。

μ言語、ミューオン

 HTSLの発展形として、単なる情報処理能力の利用に留まらず、アルゴノーツの代謝制御系に介入。
 その躯体を望む方向に変異<ミューテーション>させ、ハードウェアレベルでの機能追加を可能とした特殊言語を〝μ言語〟。
 μ言語によって書かれた追加機能<アドオン>を、〝ミューオン〟と呼ぶ。

 通常のHTSL以上にアルゴノーツ≒ネーレイデスの深層、原理不明と未解明の塊に踏み込むμ言語/ミューオンの研究は難航しており、現時点で開発に成功したものは

  • 分子アセンブラ展開ミューオン『事物の本性について<De rerum natura>』

 の一つしか存在していない。


併列語法<デュアルスピーク>

 HTSL『コールアフィグ』を導入した者同士でのみ可能な、特殊な言語的コミュニケーション。
 自然言語=『音響言語<テセイ>』の〝発声〟と同時に、
 神経言語学的アプローチによって人間の標準的な抽象イメージ群をモデル化・テンプレート化した『意味言語<ピュセイ>』を〝発信〟することで、
 『文面的な意味』の高精度な伝達と、『音声』に乗る機微や抑揚、洒落等を、異言語話者間でも同時に・並列的に伝達可能としている。
 モノスピーク者にその感覚を表現するのは難しいが、あえて喩えるなら、常にテキストに振られるルビが『聴こえる』ようなもの。

コア鹵獲対損失比率/イグゼンテ・レシオ/ExenteRatio


 ネーレイデス・コアの養殖や人工生産は、現状まったく目途が立っていない。
 となると必然、新たなアルゴノーツを造るには、戦場でネーレイデスから鹵獲するほかなく、それが出来るのは今いるアルゴノーツだけ。コア鹵獲対損失比率とは、キルレシオと出生率の複合のようなもの。
 が、コアを壊さぬように躯体から引きずり出すのは、単にコアを破壊して斃すよりも、遥かに難しい。西暦2113年現在、イグゼンテレシオは1.02程度を彷徨っている。一応、現状維持はできているものの、わずかに下振れするだけで1を切る。

 なお時代的推移としては、始原にして最強のアルゴノーツ、レーベル:ヘラクレス/(人物名未定)がただ独りで無双していた時期がもっとも高く、
 彼女が鹵獲したコアで生み出された第二世代以降はずっと緩やかに降下していき、今の1.02周辺で落ち着いた。
 これはアルゴノーツ側の質の低下ではなく、敵であるネーレイデス側の適応進化・多様化が原因。出現当初にネーレイデスが相手にしていたのは、もっぱら潜水艦や航空機といった、圧倒的格下。工夫や戦術はまったく必要とされず、ゆえに発展しなかった。
 しかしアルゴノーツという同質の敵を得たことで、急速にネーレイデスは多様化し、また戦術らしきものを使い始めている。

義体


 アルゴノーツに支給される、遠隔操作型のサイバネ義体。
 ヒトとしての精神を持ったままに、ヒトではないモノへと変じた彼女たちの、正気や自己定義を保つために開発された。
 人間と見分けの付かない容姿、同等の五感と運動機能に加え、涙、唾液、発汗などの体液や、不随意運動などもほぼ完璧に再現されている。標準設定ではオフになっているが、排泄・月経などの不便な生理機能もいちおう搭載。

 アルゴノーツの多くは、非戦闘時はこの義体に身体感覚を移行させ、基地や艦内で人間的な生活を行っている。なかにはこの身体こそ本当の自分であり、アルゴノーツ体の方が遠隔操作なのだ、と自己暗示を掛けている者も。その幻想が、当人の精神衛生上、必要であるのなら、とあえて訂正はされない。

 基本的には人間であったころ、アルゴノーツ化直前時の容姿をそのまま再現するが、望めば好きなようにアバターメイクも可能。

 ちなみにアルゴノーツの死亡時には、基地や母艦に残された、空っぽの義体を遺体に見立てて葬儀を行うことが多い。

トランスコフィン


 アルゴノーツの戦闘時に義体を収納しておくための、棺状のクレイドル。
 彼女たちはトランスコフィンに入って眠りにつき、海往く英雄として目覚め、出撃し、帰投後は調整槽の中で巨躯を眠りに沈めて、トランスコフィンの中で人間として目覚める。

 実のところ、アルゴノーツ本体と義体の身体感覚の切り替えに、トランスコフィンを介する必要は、技術的には存在しない。基地内/艦内LANが健在であれば瞬時にチェンジ可能。

 しかし戦場と日常、超々重元素の巨躯と、人体を限りなく模した義体の間に、なんの柵もなく、いとも容易く切り替えられてしまう、というのは、ひどい精神的不協和を生む。
 いま、自分はどちらの身体なのか? という肉体操作の混線や、セルフイメージの混濁は、アルゴノーツ開発の最初期から存在した、重篤な問題だった。

 それを解決したのが、トランスコフィンという『今からアルゴノーツとして戦場に立つ』『今から人間としての生をなぞる』という境界の線引きである。
 棺への出入りと一瞬の眠りという〝儀式〟を、必ず挟む。ただそれだけで、自己定義の混乱や肉体認識の齟齬の発症率は、劇的に減少した。

 加えて当人以外、周辺への影響という点でも、今まで人間らしく動いていたヒト型が、急に生気を失って崩れ落ち、一定時間後にまた急に動き出す、という光景は気味が悪く、〝アルゴノーツは人間ではない〟ことを強く印象付けてしまう。
 移行の瞬間を棺の中に隠して『見えなく』するのは、本質的な違いを生みはないが、印象の問題としては実際有効。

海底基地/隠装型潜水母艦(アルゴー船)


 アルゴノーツの運用基地や母艦は、基本的にアルゴノーツとネーレイデスの戦闘に参加しない。
 いくら銃砲やミサイルを積み込み、装甲を分厚くしたところで、ネーレイデスに対しては等しく無力。援護すらどれだけ果たせるかは疑わしい。
 よって重視されるのは三点。
 まず、そもそも標的にされないためのステルス性。次に余波や流れ弾などでの『狙われてすらいないが死んだ』を避けるための装甲能力。
 どちらも、それ自体の性能だけで実現するよりは、海水という天然の遮蔽・緩衝材を利用した方が効率がよい。というわけで、二十二世紀の軍事基地や艦船などは、基本的に深海に建造され・潜航する。

 そして最後が、アルゴノーツの心のケア。これがもっとも重要。
 冗談のようだが、そもそもいかなる基地、いかなる艦船も、戦闘能力は言うまでもなく、航行能力、航続能力、ステルス性、潜航可能深度、その他ありとあらゆる領域で、アルゴノーツより劣っている。物理な効率だけなら、アルゴノーツに『後方』はほとんど必要がない。

 しかし、それでも──もはや元の脳は神経細胞ひとつ残っておらず、そこにあるのは超々重元素の演算器官に転写・模倣されたものに過ぎないとしても──アルゴノーツは、人間の精神を持つ。
 ひたすら身一つでの航行と戦闘を繰り返すだけの日々では、躯体が保っても心が壊れる。人体を擬した義体で、人間として生活できる空間は、彼女らの精神衛生上、必要とされた。

天幕(ヘヴンズシェード)

 地球全天を覆う、光学特異体(メタマテリアル)の層。
 アルゴノーツとネーレイデスの戦闘による副次被害は多岐に渡るが、中でも最大のものが、地球の直接的な温暖化である。
 質量転換によって生み出され・そして最終的に海に棄てられる熱量の敵味方の合計は、小規模戦でも数ペタワット。大規模戦なら何十ペタワットにも達する。
 地球に射す太陽光の総エネルギー量が約175ペタワットであることを鑑みれば、このエネルギー出力は異常そのもの。
 24時間地球の半分を照らし続ける太陽とは違い、一回の戦闘は数分~数十分程度で決着するとしてもなお、気象・天候・生態系に留まらず、惑星スケールでの熱収支を破綻させるには十分といえる。

 際限なく上昇し続ける地球温度の対抗策として生み出されたのがこの『天幕』であり、高空に散布されたメタマテリアル層によって、太陽光を大きく遮断。
 前々世紀に提唱された『核の冬』に近い現象を人為的に引き起こすことで、なんとか熱収支の帳尻を合わせている。
 もっとも合わせているのはあくまで全体・平均の帳尻に過ぎず、実際に起きているのは、全地球の寒冷化と、戦闘海域の極端な高温化→熱拡散の、温度分布の二極化である。


雲の花冠(クラウドカロウラ)

 アルゴノーツとネーレイデスの戦闘によって発生する、成層圏まで達するほど巨大な、特殊積乱雲。
 蒸発した大量の海水が、しかし戦闘の衝撃波によって一塊の雲のかたちを保てず、細切れに吹き飛ばされ続けることで、無数の雲片からなる、独特の雲柱が形成される。


閉殻都市(シェルドポリス)

 数億人の残存人類が暮らす、超巨大居住構造体。
 地球を何周とする衝撃波、輻射光、放射化汚染、全体的な寒冷化と極めて局所的に起きる超高温化、それがもたらす常態化した異常気象、壊滅した生態系。
 もはや閉殻都市の外で、人が生きていくことはできない。


強硬偵察・独立遊撃部隊/通称『リフコマ』




ポリウコス

 Polioukhos。
 都市守護者、という意味。アルゴノーツの中でも、戦闘に不向きだった者が回される役目。
 アルゴノーツの持つ自在な核改変・元素転換能力により、閉殻都市の維持に必要なエネルギーと元素資源を提供する。
 ポリウコスという事実上の半永久機関、兼、万有無尽の鉱脈無しに、閉殻都市は存続できない。

ネーレウス彗星


 13I。第十三番目に発見された恒星間天体。本来ならば太陽系内部を横切り、そのまま宇宙の果てに去っていくはずの軌道だったが、木星付近での探査機との接触直後に急速に軌道を変更。地球、南極へと墜落した。

(外殻の氷が大量の塩化ナトリウムを含むことと、年代測定の結果、極めてその起源が古いが判明したことから『海の老人』ネーレウスの名前を……とか考えてるけど、
 ネーレウス彗星の存在を知る→名付けのタイミングと、探査機の接触で人類がネーレウス彗星の性質を知るまでの時間差をどうするか……別用途で飛ばしてた探査機の宇宙的至近距離に突如出現→探査機がそっちに向かわせて人類がデータを取る→ネーレウス彗星と命名→直後、軌道変更?)


アルケイディア計画


 耐久性や環境適応性、耐用年数などにおいて人体に遥かに勝るアルゴノーツに、可能な限りの遺伝子情報(ゲノム)知識や文化(ミーム)を積み込み、これを方舟として用いる外宇宙への播種計画。
 まず第一段階で居住可能惑星を捜索、第二段階でのテラフォーミング後、第三段階で遺伝子アーカイブと分子アセンブラから地球生態圏と人類文明を再生。ネーレイデスの存在しない理想郷を作り出す。

 十年以上前に発案されたこの計画だが、いまだに実行はされていない。
 現在実用化されている分子アセンブラ展開ミューオン『事物の本性について』は、静物は自在に構築できても、無数の有機分子の動的相互作用の総体である生物の合成には対応していない、つまり計画に必須のピースが未だ揃っていない。
 が、仮に生物を合成できるミューオンが完成したとしてもなお、やはりアルケイディア計画の実行は、そのコストとリスクの観点から困難であると考えられている。

 そもそもアルケイディア計画に関係なく、終わりのない激戦の日々に嫌気がさしたアルゴノーツが脱走、全海域が戦場と化した地球から静かな宇宙に逃げ出そうとすることは現時点でもまれにあり──そのすべてが撃墜されている。

 海という廃熱先がなければ、アルゴノーツはその力の一端も発揮できない。
 反撃はできず、防御力も機動力も格段に落ちた状態で、一方的に浴びせられる地対空ならぬ海対空・海対宙射撃の弾幕を潜り抜けることが、まず困難。
 平時ではなんの脅威にもならないような低出力・拡散型のDEWすら、廃熱ができない状況では致命傷になりかねない。

 加え、なんとか通常種からの攻撃を耐え、地球圏を離脱したとして。広大な太陽系内空間で、地球の地中海が視認可能な位置のすべての瞬間が、ディオーネー級よりの超長距離狙撃(※)リスクに晒される。

(より正確には、狙撃というより拡散・連続照射での確実な炙り焼き。廃熱先がない宇宙では、エネルギー密度自体は低くとも、再現なく加熱され続ければ、いつか必ず破綻する)

 一応、多くの犠牲を払えば、ディオーネー級が健在の状況でもなお、外宇宙へと数体のアルゴノーツを送り出すことは可能──とシミュレーションされているが、多数のアルゴノーツを失って、少数のアルゴノーツを外宇宙に送り出したあとも、地球世界は続く。数億人の人類と、数千体のネーレイデスは地上に残る。

 戦況の悪化により、もはや地球と残存人類は守れない、わずかでもあっても遠未来・遠星系での文明再建の可能性に賭けるしかない、と判断されるか、
 あるいは人類が盛り返し、多少削れても十分な余力を得る、願うことならネーレイデスの掃討、最低でもディオーネー級の撃破によって、再び開かれた宇宙を手にするか……

 いずれにせよ、現状の拮抗が崩れない限り、アルケイディア計画が実行されることはない。

【未定】
 キャラもプロットもネーレイデスやネーレウス彗星の謎も、ことごとくがオール未定。
 主戦力であるアルゴノーツがほぼほぼ女性だけな以上、殺伐百合にする感じか……?
 他が男主人公かつ三人称ばっかになりそうな感じなんで、これは女主人公の一人称でやるのがいいかな、みたいな

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