多世界:基礎設定

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
コンセプト:多世界ファンタジー、異種物理法則、認識が物理に優越する/というか物理法則すら神の主観でしかない、クソ強人間原理、RPG的ステータス&スキル、三~四人ぐらいのハーレム

環領域(ウム・ヴェルト)

 人智暦(エピステミック・イラ)において、無数に存在する小世界群。神の見る夢。世界殻。箱庭。法則インフラ。
 一文字短縮して、『領域』とも。

 それぞれが固有の法則、風土、環境、技術体系、文明、文化などを持ちつつも、今までに発見されている環領域は、そのすべてが純正人類の存在を許容し、かつその感覚系をすべて満たせるだけの情報のフォーマットを持つ。

 すなわち、『人間』を成立させられる程度には複雑なミクロ法則が存在し、その眼には光が映り、耳では音が聴こえ、鼻では微小粒子のいくらかを嗅ぎ分けられるということ。

 むろん細部まで見ていけば、環領域ごとに『光』の定義は領域ごとにまったく異なる。
 旧世界に近しい電磁波、太陽神の権能が無質量の輝塵となったもの、万物を構成する無色の魔力に〝光〟の属性を書き加えたもの、
 物理的には存在しない、領域内全生物が接続・同期している所与の外形情報取得システム……etc.、根本的にまったく異なるものばかりだが、そのすべてが『光として』『ヒトの目に映る』。

 同様ヒトそのもの、純正人類の肉体も、細部まで見ていけば、物理法則が異なる以上は当然、環領域ごとにまったくの別物。しかし機能と外形、抽象的・巨視的な域においては、共通して『ヒト』の枠を維持している。

 現在、汎領域間通商協定に加盟している(※)環領域は約620、加盟はしていないが協会が存在を把握している環領域が約400。
 環領域の(相互)発見や新規発生は今でも年に数回起こるため、未だ見知らぬ数多の環領域たちが、汎領域間通商協定以上に巨大な相互認識圏を築いている可能性も、ゼロではない。

(※一つの環領域内に複数の国家や政体が存在する場合は、そのうち一つでも加盟していればカウントされる)

 理論上、予想されるウム・ヴェルトの総体、あるいはウム・ヴェルトすべてに共通する基盤法則を指して、統環全域(ウム・ヴェルトール)と呼ぶことも。

無明(テュフロス)


 数多の環領域を旧世界の天体に喩えた時、真空の宇宙に相当する、環領域の外側に在る────否、無い(・・)もの。ありとあらゆる情報が欠落した真性虚無。
 時空間が未定義どころか、何かが有る/無いの1bitの情報すら保持していないため、何も無い、という表現すら正確ではない。

 通常規格の知性体が無明に曝露すれば、二秒と持たず(※)存在が希釈されて消失する。
 環領域(ウム・ヴェルト)という強固な世界殻と、それを展開する主観照典(テオーリア)は、多くの知性体にとって、存在基盤を提供する必須インフラ、と言える。

(※この二秒、というのも、主観者が時間認識を保っていられる限界であり、無明に時間の流れはない。流れがない、ということすら無い)


主観照典(テオーリア)


 人智暦の時代において、世界のすべては認識と情報で出来ている。
 ならば落ち葉の裏、新月の月、世界そのものを運行させる背後法則、時間の流れそのもの、誰も見ていない/見ることの出来ないものを、なお観る者は、誰か?

 その答えが、主観照典(テオーリア)と呼ばれる神的存在。
 無明を強固な主観によって照らし上げ・緻密な夢想により環領域を展開し・絶え間ない観測によって環領域を維持運営する、超知性たちである。

 世界を想像し/創造する彼らにとって、主観(自分がそう感じた)と観照(世界の客観的真理を識る)ことはいっさい相反しない、どころか同義ですらある。

 環領域が多様であるように、主観照典の在り方もまた多様。積極的に介入してくる者、基本的には見守るのみの者、そもそも自我があるのかすら不明な者。
 基本的には一つの環領域に一柱の主観照典が対応するが、複数の環領域を持つ者や、逆に他の主観照典と協同で一つの環領域を運営するタイプも存在している。

 なお、世界法則そのものでもある、という性質上、領域内に対して行使できる力の多寡や可干渉性はおろか、その人格や振る舞いまでもが法則化されている場合がある。
 この場合、主観照典自身も自身を定義する法則の枠から外れることは出来ない。

識子/識力


 人智暦における情報の最小構成単位。
 セマンティックピクセルや、単子(モナド)意子(イット)とも呼称される。

 個体が持つ識子の保有量・制御可能量の多寡を指して、『識力』と呼ぶことも。この単位は(SI接頭辞)イット。


識術(ディターミニクス)


 世界のすべてが認識と情報で出来ており、完全な客観というものが存在しない人智暦において、十分に高い識子量に裏打ちされた『願望』や『思い込み』は、もはや現実に等しい。
 この、識力を消費することで自身の主観を(ある程度の)客観に拡張する技術を、『識術』という。
 主観で世界ひとつ、法則体系ひとつを丸ごと創り出す環領域は、最大最緻の識術と言える。

 環領域を展開する主観照典の保有識力は、環領域内に住まう一般知性とは、桁が数億(つまり、10の数億乗)倍違う。

 が、その力は環領域全体の維持に分散されているため、個人の識力を一点集中させれば、主観照典のそれを部分的・瞬間的に上回り、環領域(=神の見る夢)のごく一部を塗り替えることも可能。これが、一般に環領域内部で暮らす知性個体が使う『識術』である。
 主観照典の観測強度が高い領域ほど、識術行使に求められる識力は大きくなり、逆に観測が緩い環領域では識術の抵抗は少ない。(そしてそもそも世界自体が不安定)。

 なお、認識を根幹とする力であるため、起こしたい現象についての〝正しい〟認識が必要となる。

 炎が浄化の象徴として定義されている環領域で『ただの急速な酸化』という認識で炎の識術を使おうとしても上手くいかないし、
 出身領域の雷が『天霊と地霊の交わる、瞬光の逢瀬』だったからといって、天霊も地霊もいない環領域にそのイメージを持ち込んでも、やはり識術の発動効率はひどく劣悪なものになる。認識を根幹とする識術において、解釈違いは最大の敵。

 生まれた領域から出る気がない、出たとしても識術を使わない場合は『出身領域での正しい、仔細な認識』を持っていれば必要十分だが、
 自身の識術に多領域間の互換性を持たせたいなら、細かい原理などは忘れて「メラメラ熱い」「ゴロゴロドーンビリビリ」という、『精密でない』がゆえに『どの領域でも間違いにはならない』、主観的・感覚的・抽象的・巨視的なクオリアのイメージをトリガーとした方がよい。
 理想的には、今いる環領域に合わせて『正しく、かつ精密な認識』を自在にスイッチできるのが最善だが、現実的には困難である。

原型八素(アーキタイプ・エレメンタル)

 ほぼすべての環領域において共通して存在する、八つの自然の象徴。【万物の尺度】たる純正人類の存在から敷衍される、原理を問わない巨視的な同義性。
 人智暦436年現在、自然のイメージを参照する上で、もっともメジャーな系統分類である。
 もっともメジャー、であって唯一ではなく、五行や四元素、元型“九”素なども、決して少なくはないシェアを握っている。
 以下個別解説↓

『炎』──炎とはヒトが用いた原初の炉であり、また熱の、生命の象徴である。
 ゆえにヒトが存在するなら、炎もまた存在する。

『水』──ヒトは水を飲みて生きる、湿潤な肉体を持つ存在である。
 ゆえにヒトが存在するなら、水もまた存在する。

『風』──ヒトは呼吸をする存在である。呼吸は息吹であり、それは大気の動きであり、恒常する動。時間の流れそのものである。
 ゆえにヒトが存在するなら、風もまた存在する。

『地』──ヒトは地を踏みしめ立つ存在である。地は空間の土台であると同時に、地層で、化石で、過去を遺す時間の基盤でもある。
 ゆえにヒトが存在するなら、地もまた存在する。

『氷』──ヒトは、生まれた時から死を宿命づけられた存在である。死とは熱の消失であり、凍り付く静止である。
 ゆえにヒトが存在するなら、氷もまた存在する。

『雷』──雷とは生物原初の情報であり、同時にヒトが生きる天地の狭間。そこを流れる力の象徴である。
 ゆえにヒトが存在するなら、雷もまた存在する。

『光』──ヒトは、眼で光を捉えることで、モノを識る存在である。
 ゆえに、ヒトが存在するなら、光もまた存在する。

『闇』──闇は、光と不可分である。
 ゆえにヒトの存在が光の存在を保証する時、その不在たる闇もまた、存在を保証される。


マテリアル体/エーテル体/アストラル体


 人智暦において、多くの知性種族を構成する三要件。階層構造を成しており、マテリアル体がもっとも下、アストラル体がもっとも上。
 ただし単純に最上位のアストラル体が下位二体をコントロールしている、というわけではなく、三体の複雑な相互作用の総体が、一つの知性を形作る。

 マテリアル体は、当地の領域法則に準じた物理構造体。フィジカル体とも。
 環領域内の共通法則に沿って存在しているため、良くも悪くも干渉・改変・操作しやすく、されやすい。

 アストラル体は、まさしく精神の中核。魂。体積を持たない(ゼロではなくnull)、芯我にして真我。最小単位の環領域。
 情報構造の型からして個体ごとにまったく別物であるため、侵入するのは極めて困難。
 三次元上の形而下、共通・共有法則界に座標も体積も持たないため、直接に攻撃を仕掛けることも一切不可能。なのだが、アストラル体は極めて繊細であり、後述するエーテル体の器が失われれば勝手に自壊してしまう。

 エーテル体は、マテリアル体とアストラル体を仲介するもの。魄、霊、氣、オーラ、プラーナ、その他色々の漠然とした生命エネルギー。
 性質としてもマテリアルとアストラルの中間に当たり、マテリアル体ほど共通法則に縛られているわけではないが、アストラル体ほど独自固有というわけでもない。
 同様、マテリアル体ほど敵対的な侵入や改変を受けやすいわけではないが、アストラル体ほど強固な防壁を持つわけでもない。
 エーテル体のうち、アストラル体と接する最上部界面層。繊細脆弱なアストラル体を包み込む器の部分を、〝銀の揺り籠〟と呼ぶ。

 なお、必ずしも三体すべてを全ての知性体が持つわけではない。
 たとえば精霊種や妖精種などは、マテリアル体を持たず、エーテル体とアストラル体のみで構成される。

魔法/魔術__Local-Law/Local-Logia

 環領域固有の法則を『魔法』、ならびに魔法によって定義される領域固有のエネルギーや権限通貨を『魔力』、それらを扱う技術や技能を『魔術』と呼ぶ……ものの、そもそも数多の環領域で共通しているのは、あくまで巨視的、人間が直に感覚できるレベルのみ。
 肉眼で見えるものが/得られる視覚クオリアが似通っていても、ひとたび顕微鏡を覗けば、それがまったく異なる原理で実装されていることはすぐに分かる。

 そのため微視的・根元的な分野に立ち入れば、それは必然的に魔法化・魔術化してしまう。

 たとえば物質の構成単位に『原子』を採用していない環領域から見れば、
 原子の存在やその挙動を示す物理法則は『魔法』であり、
 核力とはすなわち『魔力』、
 それを利用する原子力発電所や原子力爆弾とは、『魔術炉』であり『魔術兵器』ということになる。

 当然、魔術は他領域では基本、一切使えない。
 多くの環領域を渡り歩く人間が、自身の肉体を使った体術、剣や棍棒、弓や投石といった原始的な、巨視的作用に頼る武器を好むのは、原始的・巨視的ゆえに魔術化しない=どの領域でも変わらず使えるため。

魔力型魔術(マゲイア)


 領域固有のエネルギーを扱うもの。もっともポピュラーな魔術。
 環領域によっては、エネルギーとしての実体を持たない、〝支払う〟ことで初めて形而下に影響を及ぼす『権限通貨』が内部の知性に発行されることがあり、これも魔力と呼ばれる。

化学型魔術(ファルマケイア)


 魔力型にならび、もっともポピュラーな魔術。錬金型魔術(アルケミー)と呼ばれることも。
 エネルギーを扱うのが魔力型なら、化学型は物質を扱う魔術。領域固有の化学法則に沿い、物質の合成や変成を行う。
 ただしどの領域でもエネルギーと物質は不可分であるため、魔力型と厳密な線引きがされているわけではない。

 先の原子力関連で喩えるなら、ウラン濃縮技術などは化学型魔術。
 生命(のマテリアル体)も物質であるため、医療や生化学などもファルマケイアに属する。

神働型魔術(テウルギア)


 世界そのものである主観照典の力を借りる、最強至高の魔術体系。
 しかし環領域の固有法則性から必然的に発生する前記二種とは異なり、使える領域自体が限られる。

 たとえば、寡黙に平等に世界法則を敷くだけの主観照典では絶対に無理。
 テウルギアの第一の発動条件は、その環領域の主観照典が、下界に積極的に干渉・介入するタイプであること。

 これを満たした上でも、実際には感応値だったり、はたまた主観照典の『好み』『気分』などで振るいに掛けられたり出力が変動したりしてしまう。

 そもそも定義論として、安定して平等に、法則として実装されている力は魔力であり魔力型魔術にカテゴライズされるので、
 神働型に分類される時点でなんらかの依怙や贔屓があり、斉一性や安定性に欠ける、ということになる。


不正実行型魔術(ゴエーテイア)


 各領域法則ごとに存在するバグや脆弱性を衝く、最悪の魔術体系。

 オブジェクトが無限に倍々ゲームで増えていったり、左右にブレながら猛スピードで高速移動したり、発動者の手足がぐにゃぐにゃ伸びるが当人の体性感覚には変化なし、などの異常な挙動を引き起こす。

 統治機構を持つすべての環領域で、一般環境下の研究・使用が厳に禁じられており、故意に使えば一切の酌量の余地なく極刑。
 公に研究するには、十分に因果閉鎖された孤立時空が必要とされる。

 なぜゴエーテイアがここまで嫌われるのかと言えば、引き起こされる異常な挙動の悪影響がどこまで波及するか、誰にも予想できないため。
 内部環境が荒廃するだけならまだマシで、最悪の場合、環領域それ自体が破綻(クラッシュ)する可能性すら存在する。今までゴエーテイアによって引き起こされた事件のうち、最悪のものでは環領域ひとつが半壊。二百万人以上のマテリアル体を巻き込んで、完全に停止(フリーズ)してしまった。

 しかしゴエーテイア自体の危険性や、その禁忌性を知ってなお、
 それがもたらす無限の富や、統環全域への手掛かりに振れる可能性、単純な知識欲、あるいは禁忌であることそれ自体に惹かれて、ゴエーテイアという魔術体系に魅入られてしまう者は、常に少数、存在する。

魔人/魔族/魔獣──Local-Race


 魔法、すなわち領域固有の法則や概念に強く依存した存在形象を有するため、他の環領域で生きることが難しい種族や生物を指す言葉。
 原子の存在そのものが魔法であり、核力が魔力であるのなら、核エネルギーによって駆動する怪獣は魔獣である。
 とはいえ生まれた環領域から出ない限りでは「その領域の法則に準じた存在」という意味で特に他の生命と変わりはなく、『魔』に特段ネガティブな意味合いはない。

 他の領域法則との互換性がないならば、チワワめいた愛くるしくか弱い小動物も魔獣。
 逆におどろおどろしく凶暴な猛獣であっても、他の環領域で元気に活動できるなら、それは魔獣ではない。

 定義としては、上記のように善悪はおろか強弱さえも関係ないが、実際の傾向としては、より深く領域固有法則に根を張り、その身をもって魔術を体現する魔族や魔獣は、互換性の高い種族よりも(地元の環領域の中では)強力である場合が多い。

 あくまで何百と存在する他の環領域の中には、同一ではなくとも『似た』法則のものもあるうえ、
 『共通鋳型』『擬似・万物の尺度』スキルなどの使用、識力量に任せた強引な形象維持、自身の体内に絞って魔法(=出身領域の法則)を張る────などの手段もなくもないので、生まれ育った領域以外では絶対に生きられない、というわけではない。

純正人類と『魔』性について

 種族スキル【万物の尺度】によって、あらゆる環領域下での存在を保証されている純正人類は、もっとも非・魔族的な種族であるが、
 あくまで『魔人』や『魔族』、『魔獣』の定義は、異なる領域法則との互換性・可翻訳性の有無高低であり、存在のかたちが純正人類に似ているか否かは本質ではない。

 しかし【万物の尺度】たる純正人類に近しい種族は、【万物の尺度】の分け前に預かれる可能性が高いため、
(純正人類の肉体構造や代謝系があらゆる法則下で必ず成立する以上、『純正人類に近しい肉体構造や代謝系』も高確率で成立する)
 結果的には、純正人類との差異の大きさと、他法則への翻訳困難性(=『魔』性)は相関する傾向にある。

龍──Local-Optimus

 魔族の中の魔族。魔法をその身で体現するもの。
 各環領域の、固有最強種に与えられる称号であり、生命の形態の一類型を指す『竜』とは、明確に区別される。
 (相反するものではないので、『竜』型の生物が『龍』の座を占めている環領域も存在する)

 龍の定義とは、当該環領域の固有法則=魔法に適するように、もっとも純化・先鋭化を果たし、その結果として最強の地位を得た種族であること。
 一般的な魔族や魔獣が『核エネルギーによって駆動することをアイデンティティとする動物』の域なら、龍とは『生ける太陽、知性化した核融合プラズマ』のような存在である。
 ある領域で最強の地位を占めていても、『魔法への先鋭化』という条件を満たしていないなら、それは龍とは見なされない。
 生まれた領域法則に対して極限まで最適化され、完全に余剰と不足を排除された、魔族の究極であるからこそ、龍は己が環領域において冠絶した力を持ち、また他の環領域では、自己を維持するだけで著しい負荷を受けることとなる。

 とはいえ、龍は例外なく圧倒的な基礎ステータスを有するため、甚大な環境デバフを背負ってなお、他の環領域でもかなりの力を発揮できてしまったりする。
 他の種族の数十倍重いデバフを常時受け続けていても、素のステータスが百倍あれば相対的には強いまま、という理屈。
 (もちろん、百倍のステータスでさらに環境バフを受ける当地の龍には、まったく歯が立たない)

転移門(トランスレイター)


 環領域間を移動するのに使われる、高度かつ大掛かりな識的構造体。必ずしも『門』の形とは限らず、転移鍵や転移船、転移箱などもある。読みはいずれもトランスレイター。

 機能はシンプルに二つ。領域間の空間転移と、それに伴うマテリアル体およびエーテル体下層の翻訳・変換・調律。行き先の環領域が持つ法則体系に適合させる。

 基本的に環領域を渡るにはほぼ必須の代物。そのため全ての転移門は、領域国家によって厳に管理され、無許可での生産・所持・持ち込みなどはすべて違法。
 ある程度発展している環領域には、大型の転移門を複数基揃えた、巨大な転移港(トランスポート)が必ず存在する。

 取締りの厳しさや、それ自体の製造難度も相まって、非正規の転移門の数は非常に少ない。それだけ一つ一つに価値がある、ということでもある。

 また、イリーガル品すら使わない、完全な単独転移&自己翻訳も可能とする者も、極小数存在する。大抵は絶大な識力の持ち主でもあるため、国家でも縛るのは難しい。



スキル


 先天的な本能であれ、後天的な習熟であれ、とにかく特定のタスクを、表層意識という汎用処理を使わずとも、無意識下で高速・高効率でこなせる能力。ならびに、それを実現するための、特定タスクに特化した回路を指す。
 マテリアル体であれば神経回路(という物理作用を演じる識子)であり、エーテル・アストラル体であれば識子回路。

 リテラルには「普段の生活圏の中であれば、何も考えなくても正しい道順を歩ける」ことさえ、『オートナビゲートLv.2(発動条件:自宅より約3km圏内)』のようなスキルである。
 どころか、ただ二足歩行できることすらも、『自動姿勢制御Lv.3』のようなスキルとして見做せる。
 が、このような日常の範疇の能力まで含めていればキリがないため、実際にスキルとして扱われるのは、専門性の強い技能や識術のみ。

 なお、スキルの本質が特定のタスクを無意識・高速・高効率でこなせる〝回路〟である以上、切除や移植、改変や編集も可能。
 共通法則(マテリアル)体依存のスキルは比較的たやすく弄れ、逆に芯我(アストラル)体依存のスキルはほぼ無理。エーテル体はその中間。

 しかし、たとえマテリアル体であろうとも、精神の一部を切り貼りする行為には、どうしても一定のリスクが伴うほか、相性や親和性の問題も常に発生する。
 そのため公のスキル売買マーケットでは、買い手ともっとも相性がいいものを選び、また施術後のアフターケアが義務付けられている。

 極めて稀少なスキルが長期保存される場合もあり、争奪戦になったり適合者探しが始まったりすることも。

(個々人との相性とか移植後のアフターケアとか、一番近いイメージはサイバネ部品?
 扱うのは機械じゃないし実体すらない、自分の/誰かの無意識領域の一部なわけだけど、ヒトに対する人工的な機能追加や改造が市場化されてるって意味ではサイバーパンクっぽいかも)
(機械・実体の補助脳の追加は、マテリアル体依存のスキル追加、ということになるかな)
(補助脳として使えるレベルの物理コンピューター、必然的に魔術になるので他領域に持ち込むとただの重りにしかならない)

HP/Homeostasis Persistence

 人智暦において、ほぼすべての生命体が所持する自動発動型スキル。生存本能と直結した原始的識術。

 自身を構成するマテリアル・エーテル・アストラル体に生じた外傷すべてを一瞬で復元し、正常な状態に戻す。再生限度は事前にプールしておいた変質識力が底を付くまで。
 この、汎用識力から変質させた上で、HP用にプールされる識力もHPと呼ばれ、マテリアル体の全壊を一回、完治させられることをもって、HP量1とする。
 すなわちHP量30とは、30回細切れにしてもまだ死なない、ということ(この時のHPはゼロであり、この状態で致命傷を受ければ死ぬ)。

 なんら戦闘能力を持たない一般人でも数十のHPはあるため、人智暦において〝事故死〟は基本的に起こり得ない。
 例外は火口や深海などの『死に続ける』環境であり、このような場所で働く人間には、多額の危険手当が払われることが多い。

ATK/AnTi-Kernel aggresser

 対霊核侵蝕体。

 人智暦において、強力な知性体は数百、数千のHPを持つことも珍しくなく、まともにマテリアル体を壊しては直され壊しては直され……では埒が明かない。
 ATKとは、効率的に、一撃で一気に再生限界を削り取るための、〝毒〟として作用する自律識術群と、それを精製する任意発動型スキルの呼称である。

 干渉・改変しやすいマテリアル体やエーテル体下部などの、下位構造を損壊させても、容易く修復・再構成されるだけ。
 効率よく多くの修復コストを払わせるには、自身にすら自在な操作は難しい、アストラル体とそれを保護するエーテル体最上部〝銀の揺り籠〟。合わせて霊核(カーネル)と呼ばれる精神の中核/上位構造を叩くべき、なのだが、アストラル体やエーテル体は、共通法則(マテリアル)界との直接的な入出力を持たない。

 よって狙うのは間接攻撃。削れるHP自体は微々たるものでも、マテリアル体(と紐付けられたエーテル体下部)が損傷すれば、修復までの一瞬、情報的な隙ができる。
 その傷口を侵入経路として流し込まれるのがATK────最上位のアストラル体を目指して敵情報構造内を駆け上がる、識術ウイルスである。

 さながら刃に毒を塗るごとく、各種の攻撃にATKを〝載せる〟ことで、わずかな切り傷ひとつから一気にHPを数十、数百削ることが可能となる。
 マテリアル体の損傷面積や体積が大きいほど、またその部位が脳や心臓などの重要部であるほど、そこから流し込めるATKの量も増えるので、『ATKの乗り物としての攻撃』も軽視はできない。

 なお、ATKも識術の一種であるため、その載せやすさは自身の肉体を用いた殴蹴等がもっとも高い。ついで剣や槍などの手足を延長するもの。
 飛び道具でも自身の認識そのものである識術や、己の腕で投げた礫などはそれなりのATKを付与できるが、銃火器や戦車・戦闘機といった、身体性や直感性が低いものにはATKを載せにくい。

(誰もがHPを持つ人智暦世界では、ただ頸動脈を切っただけ、脳天に針を刺しただけでは、人は死なない。よって人智暦世界の暗殺者には、一撃でターゲットのHPを超過するだけの、高いATK値が求められる)
(HP&ATKシステムによって強者に弱者が一矢報いることは不可能になってることが格差拡大の一因に……とか考えたけど銃社会のアメリカの格差を考えると殺傷可能性と格差にそう強い関連はないのか……?)

ATKの〝属性〟

 HP/Homeostasis Persistenceによってほぼ全生命が準不死と化した人智暦世界において、
 なお敵や獲物に有効打を与えるための観念的・情報的な侵蝕毒ことATK。
 その練り方・組み方には多種多様な系統や流派が存在するが、もっとも普遍的に使用されるのは、
 【元型八素】から『生命に害を与えるもの』としての側面を抽出した、自然イメージ群である。
 あくまでATKが各種攻撃に載せ・付与する『毒』である以上、攻撃の実体と載せるATKが一致しなければならない、というわけではない。
 極論、実体としての氷の剣に、炎のATKを付与する、ということも不可能ではない。
 が、認識を根幹とする識術において、『わかりやすい』『見たまま』であることは、何より強い力をもたらし、逆に直観に反する組み合わせはひどい効率の悪化を招く。
 そのため、氷の剣には素直に氷のATKを載せるのが、正道であり常道。

『炎』──過剰で急速な反応による崩壊
『氷』──停滞と鈍麻による壊死

『風』──曝露と摩滅による風化
『土』──埋没と忘却による固化

『水』──絶縁と窒息による遮断
『雷』──伝導と短絡による亀裂

『光』──情報の上書きによる変質
『闇』──情報の消失による無化



DEF/Diagnosis & Exclusion Filter


 個人防壁。セキュリティ。免疫スキル。
 ATKや、エーテルネット上の野良ウイルスなどの侵入体に対する、拒絶・防護機構。HPと同じく、程度の差はあれ(※)、あらゆる生命が所持する。
 ATKによって削られるHPを大きく軽減できるが、あくまで注意しなければならないのは、DEFはATKに侵入されたあとに効果を発揮するもの。そもそも侵入させないための、物理的な強度や回避能力などは、また別の問題である。

(※HPと同じく、普通に数百数千数万倍の差が発生することも。ありすぎ。)

AGI/Acceleration Gear of Intrinsic time

 主観変速。任意発動型スキル。
 あらゆる事象が認識によって形作られる人智暦において、『自身の主観速度の加速』と『自身の加速』は同義である。
 思考のみにとどまらず、あらゆる動作が高速化し、かつ音速などの壁に阻まれることも、基本的にはない。

 ただし、環領域の標準時間速度から外れすぎると、世界から〝振り落とされる〟あるいは、自分が世界を置き去りにしてしまい、
 環領域という世界殻から落下。無明に放り出され、数秒と持たず意味消失してしまう。
 そのためAGIの加速レートには、環領域ごとに必ず限界が存在する。
 この限界を回避するための手法も研究されているものの、そもそもAGIの限界加速倍率に達せられる者自体が、ごく少数。
 さらにその中から、一歩速すぎれば即消失する、存在論的チキンレースに参加しようとする者は、非常に稀少である。

 AGIの主な測定基準としては、『現在、標準時間速度の何%の加速/減速状態か?』と『最大で、標準時間速度の何%まで加速できるか?』の二種があり、
 基本的に、後者が100を下回ることはない。
 また、『実際の速さ』は本来の反応速度・運動速度と、AGIによるその加速倍率の乗算であるため、ただAGIだけが速ければいい、というものではない。
 分かりやすく言えば、AGI:600=6倍加速状態の人間よりも、AGI:100=等速の光の方が速いということ。

界避

 任意発動型スキル。
 自身とマテリアル界との相互作用を断つことで、あらゆる攻撃を素通りさせ、無効化する。
 しかしマテリアル界と相互作用しないとは、つまりその世界に存在しないということ。
 界避状態に移行したその瞬間から、環領域という世界殻から形而上的座標がズレ始め、
 数瞬のうちに無明<テュフロス>に投げ出され、自滅してしまう。
 そのため界避状態に入った瞬間には、既に復帰・再接続プロセスを開始する必要があり、
 実用的な界避時間は一瞬。連続使用することも難しい。

万物の尺度


 純正人類(オリジン)の種族スキル。
 ありとあらゆる環領域での存在を可能とし、また環領域内部の情報が五感で得られるようになる。ただそれだけのスキル。同時に、人智暦においてもっとも強力かつ、もっとも凶悪なスキルでもある。

 基本的には、当地の法則への自己翻訳スキルとしてしか働かない。
 領域を渡った際の変換ロスによる消耗を大きく抑えるほか、識術における解釈違いも、ある程度は軽減される。

 では、渡った先の領域が、たとえば『二次元しか空間方向がない』とか。
 『生物が成立するだけの複雑性を備えたミクロ法則を持たない』場合。

 どうあがいても、この領域法則下では純正人類は成立しない場合────『万物の尺度』スキルは、その真価を発揮する。空間次元が足りないならば拡張し、生物が成立しないレベルで法則が単純すぎるなら勝手に複雑化させて。

 領域法則の側を捻じ曲げることで、当該領域内における純正人類の存在を確立する(※)。

 また、環領域内を飛び交う情報もまた、『どうあがいても人間の知覚系では理解できないもの』である場合、人間が理解できる形に歪められ、分割され、零落する。

 一度内部に入られてしまえば、この法則改変は絶対かつ不可逆的。
 ただひとりの純正人類の、ただひとつのスキルが、世界そのものであるはずの主観照典の力を、完全に上回るのである。

 よって一部の環領域/主観照典は、領域間転移自体をシャットアウトすることで、純正人類の侵入を防いでいる。
 純正人類が存在できない環領域、純正人類に理解できない情報の形は、純正人類が一度も立ち入ったことのない環領域の中にしか、存在しない。

(※とはいえ、あくまで【万物の尺度】スキルが保証しているのは、「理論上は存在できる」ことであって、「実際に生存できる」かはまた別の問題である)

擬似・万物の尺度

 純正人類の種族スキルである『万物の尺度』を、純正人類以外の種族が劣化模倣したスキル。
 主に、他領域法則への可翻訳性が著しく低い魔族が、なお他の環領域で活動するために用いる。

 しょせんはデッドコピーに過ぎず、本家『万物の尺度』の本質である、『自身を存在させるために領域法則の側を捻じ曲げる』ことは行えない。
 あくまで他法則への、自身の可翻訳性や適合性を得る・高めるのみのもの。しかしその効果は絶大であり、後天的に得られる自己翻訳・領域適合用スキルの中では間違いなく最優といえる。

 難点としては、ひとつ厄介な条件がある。
 それは純正人類の種族スキルの模倣・再現であるために、発動する際には自身のカタチも純正人類を模倣・再現したモノ(擬人形態/アンスロポモーフィクス)に変化させる必要がある、ということ。

 メタ的には、つまり人外が人化する理由付け。

共通鋳型(アロトロープ)

 同祖体。エルフやドワーフなどの〝有名どころ〟が持つことが多い種族スキル。
 別の環領域における同名の種族との互換性が保証される。

 つまり、環領域Aに棲むエルフA種が、すでにエルフB種が確立している環領域Bに渡った場合、
 『自身がエルフである』ことは維持したままA→Bの変換が可能ということ。
 この変換は、種族名が同じである限り、魔族→魔族間ですら有効となる。
 渡る先の環領域に同名種族が存在するなら、『擬似・万物の尺度』よりも強力な自己翻訳スキルになるが、存在しないなら何の役にも立たない。

併列語法(デュアルスピーク)

 人智暦世界においてはごく一般的に行われる、言語的コミュニケーション。
 旧世界における自然言語に相当する『音響言語<テセイ>』(※)と、
 識術を用いた、認識・知覚の(直接的だが情報量を制限された、抽象性を保った)共有である『意味言語<ピュセイ>』を同時に発声することで、
 『文面的な意味』の高精度な伝達と、『音声』に乗る機微や抑揚、洒落等を、異言語話者間でも同時に・並列的に伝達可能としている。
 モノスピーク者にその感覚を表現するのは難しいが、あえて喩えるなら、常にテキスト上のルビ振りが『聴こえる』ようなもの。

(※【万物の尺度】たる純正人類を含めて、音声で話す種族がマジョリティなために音響言語、と一般に言われているが、実際には光学パターンによるテセイや大気中の微粒子成分、つまり匂いによるテセイもある)

 身内のみで話したい、なるべく異種族や異領域出身者に聞かれたくない場合、意味言語を切り、音響言語のみで会話する場合もある。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー