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「ちくしょう!ちくしょう!チクショウ!」
今、ちくしょうちくしょうといいながら歩いているのはごく普通の悪魔、しいて言えば東嶽大帝の息子かなー。
名前は魔王子。
ボンボンで連載されていた最新版悪魔くんに登場していたキャラだ。
「ちくしょう……どうして悪魔くんはアニメ化しないんだ!
 今なら登場できるはずなのに!ちくしょう!」
そんなうっぷんを晴らすために公園のベンチの近くにやってきたのだ。
するとベンチに座るスーツを着た頭のでかい男の姿に気づいた。
「お、いいストレス発散相手。」
ぶん殴ろうと近寄った瞬間、男はにやりと笑った。
「こんにちは魔王子さん。」
「な、な。」
踏み込んだ前足を後ろに戻す。あまり知られていない自分を知っているなんて、こいつ、ただもんじゃない。
魔王子は肩幅分脚を開き、男を睨んだ。
「ふふふ。貴方のことはよく知れ渡っていますよ。
あの十二使徒とファウスト博士を石にし、悪魔くんを追い詰めた天晴れな悪魔と。」
「ま、まあな。あそこで見えない学校が裏切らなければ……。」
「ケンソンしないでください。貴方はあのクエレブレやロソンですら成し遂げなかった偉業を成し遂げたのですぞ。」
「そうだろうかなぁ。」
「容姿だってほら、あのタマネギ頭と違って気品に溢れているし、母性本能擽られるなど、悪魔界の婦女子に人気ですよ。」
「は、ははは。そうだろう。なにしろ俺は王子なのだからな!」
痛痒いほど褒められたからだろうか、魔王子に先ほどまであった刺々しさはすっかり形を潜めてしまっていた。
腰に手を当てて高笑いをする彼を見て、男はにんまりと頬を吊り上げた。
「ですが残念ながら貴方の活躍は人間界にはあまり知られていない……。」
「ちょっと待った。お前はさっき俺の活躍は知れ渡っていると言っただろうが!」
「ええ、言いました。貴方の事は悪魔界ではよく知られています。しかし人間の世界では媒体が少ないですからねぇ。
なかなか難しいのですよ。」
「うう……。」
「けれども、魔王子様。世の中にはテレビ、というものがあります。インターネットにアレルギーを持つ人間はいても、
 テレビにアレルギーをもつ人間はいません。テレビで貴方の活躍が流れれば、人間達も貴方の魅力に感服する事はまちがいでしょう。」
「偉そうに言うな。俺だってテレビというのは知っているし、アニメ化すれば老若男女に俺の存在を知らしめることが出来る事もわかっている。
 ただ……。」
「ゲゲゲの鬼太郎とちがって、一向にアニメ化されない、そういいたいのでしょう。」
「お前の言い分とはちょっと違うな。そのグゲゲのキダタローってやつは僕の台詞にはいらないんだ。」
「貴方はそうかもしれませんが、世間ではそうではないのですよ。」
「なんだと。」
「いいですかな。」
 男はごほん、と咳払いを一つした。

「貴方様はご存知ないのかもしれませんが、実は人間の世界ではゲゲゲの鬼太郎の方が有名なのです。」
「なんと!品のない名前なのに!」
「そしてゲゲゲの鬼太郎はその知名度をカサにきて、悪魔くんのアニメ化計画を叩き潰しているのですよ。」
「うぬぬぬぬぬ!!ギリギリギリ!!」
 品のよさはどこへやら。歯軋りをして地団駄を踏む魔王子を、男はますますニヤニヤした顔つきで見つめていた。
「今アニメ化したら、貴方の活躍は更にすごくなるでしょうなぁ。
 悪魔くんをひねり潰し、見えない学校を従える貴方の姿、いやぁ、見てみたいものですなぁ。」
「うぐぐぐぐぐぐうぐぐぐぐ!!」
「しかしそのアニメ化も、鬼太郎たちが邪魔して計画のけの字もできない……。」
「ちくしょう!鬼太郎め!」
先ほどまで、彼の怒りの矛先は先見の明のないアニメ会社の連中に向いていた。
だが男の話を聞いた今では、すっかり鬼太郎たちに向けていた。
「憎いでしょう。鬼太郎が。」
「ああ憎い、憎いぞ!俺は今、鬼太郎をこてんぱんにしてやりたい気持ちでいっぱいだ!
 生きたままミンチにしてやりたい!」
「ふふふ、そんな貴方には、これが相応しい。」
 スーツの袖に腕を突っ込む。何事かと見ていた次の瞬間、男の手にはハーモニカのようなものが握られていた。
「なんだそれは。」
「これはあまりにも強力すぎるので地獄で封印されていたものです。
 昔、殷の王が国内で暴れていた妖怪を鎮めるために使った由緒正しい笛なのですよ。」
「ふうん。これを吹くと何かあるのか。」
「ええ、これを音色を聞けば、どんな妖怪だろうと思考を失い、笛を吹くものの命令どおりに動いてしまうのです。」
「なんと!そうか、これを使えば……おい男。お前に感謝するぞ。
 悪魔くんがアニメ化された暁にはお前を大臣にしてやるからな。」
「ははぁ、ありがたき幸せ。」
「ようし、早速作戦開始だ!」
笛を持つ手を天に伸ばし、意気揚々と魔王子は走っていく。ゲゲゲの森へと。
男はその後姿を見て愉快に、呵呵大笑と笑ったのだ。
「はーはははははは!!やったぞ、成功した!」


「ようやった。さすがはわが弟。」
 茂みががさがさと動き、のそり、と3期ぬらりひょんと4期朱の盆が顔を出した。
「ぬらりひょん様~お疲れ様です~。はい、ドリンクをどうぞ~。」
 朱の盆の渡した飲み物は、海のように青かった。
「おおすまないな。……ぶへぇあ!!」
「ああ!もったいない!」
「なんだこのくっそまずい飲み物は!」
「ええ、ポーションですよ~。知らないんですか~。」
「ポーションって!!お前、アレは味があれなんだぞ!しかももう一年以上も前の奴だぞ!]
「ぬらりひょん様~口を拭いたほうがいいですよ~。なんだか不気味……。」
「漫才をしている場合ではない!」
 持っていた仕込み杖の石突をどつん、と地面に叩きつけ、弟の漫才を止めさせた。
「そ、そうでした。兄さん、あれでうまくいくでしょうか。」
「行く。あそこまで魔王子の怒りに火をつけたのだからな。」
 自信満々の笑みを浮かべるぬらりひょん兄弟と対照に、朱の盆の顔は浮かなかった。
「でも~うっかり魔王子のところから我々の存在がばれちゃったら……。」
「安心しろ。あいつは我々のことを知らない。それに4期の顔は一見どこにでもいるさえないサラリーマンの顔だからな。」
「兄さん、それは褒めているんですか。冴えないサラリーマンて。」
「今この場では褒めている。……さて、朗報が届くまでバカンスとしゃれ込むか。」
「わ~いバカンス~。」
「行き先はどこです?」
「伊豆諸島の六軒島という風光明媚なところだ。5期の奴を先に行かせて準備させている。」
「わ~いわ~い。」
(鬼太郎、今日がお前の命日だ……。)
全ては、鬼太郎抹殺のため。
ぬらりひょん兄弟は顔を見合わせてほくそ笑んだ。


「あ~るはれた~ひ~の~こ~と~。」
「野沢、ハレ●れユカイをドナドナのリズムで歌うなよ。」
「そうそう、そんなことやってると、ジャス●ックがやってきておやつのプリンをもってっちゃうよ。」
「……うん。」
「平和じゃのう……。」
「そうですね父さん。あ、お湯を注ぎ足しましょうか。」
 囲炉裏にかけていたやかんを持ち上げる。だいぶ軽くなっているから、こっちも注ぎ足さなきゃなぁ、と考えていたその時だった。
「ん?あれ?」
「どうしたんだい戸田?珍しいものでもあったのか?」
「いや、なんだ、砂かけのお婆と子泣き爺だ。」
二人がここを訪れるのは結構な頻度であることだ。砂かけ婆は食事の誘いに、子泣き爺は目玉親父に酒を持ってきたりすることが多い。
今日もそんな事だろうと、その時までは思っていたのだが……。
「やあお婆。お昼の誘いに来てくれたの?」
階段を駆け下りて近づいていく野沢に、砂かけ婆は砂をかけた。しかも大量に。
「うっぺ!な、な、何をするんだよ子泣き爺も黙ってないでなんか言ってよ!」
「……。」
子泣き爺は何も言わなかった。言う代わりに野沢に飛び掛り、身体を石に変化させた。
「うわああ!!」
「ほぎゃあほぎゃあ、ほぎゃあ……。」
森の中を赤ん坊の泣き声だけが木霊していく。呆気に取られていた高山と戸田は正気を取り戻すと家から飛び降りた。
「子泣き爺なんてことするんだ!」
子泣き爺の頭を戸田は思い切り蹴り上げた。が、ゲタの足にそれは痛いだけだった。
「霊毛ちゃんちゃんこぉ!!」
松岡の声と共に飛んできたちゃんちゃんこが広がる。二人をすっぽり包んで上に浮んだその隙に高山は野沢を引っ張り上げた。
「大丈夫か野沢!」
「う、うん。ちょっとびっくりしたけど……。」
宙に浮かんだちゃんちゃんこがもごんもごんと苦しげに動く。動く。ぎゅ、と一瞬縮んだかに見えたが。
「ほぎゃああ!!」
と、子泣き爺の一声で包みは簡単にほどけてしまった。


「早く家の中に!!」
「お婆!子泣き!目を覚ましてくれ!」
「戸田、早く戻れ!!って、うわぁ!!」
「にゃああああ!!!!」
体力の回復していない野沢をおんぶした高山に、五期ネコ娘が飛び掛ってきた。
「やめろ!止めてくれネコ娘!!」
「にぎゃああああああ!!!!!!」
体勢を崩した高山に馬乗りになると腕といわず腹といわず引っ掻いていく。
引き剥がそうともがくが、なかなか離れてくれなかった。今のネコ娘の力は明らかに普段のものではない。
「よすんだぬりかべ!」
仲間達に襲われる弟を助けようとした松岡の前に立ったのはぬりかべだった。
彼は身体を明らかに松岡の方に向けて倒していく。
「わああああああああ!!!」
「に、にいさん!!!くそ、どうなってるんだ!!」
ぬりかべたちだけではなかった。一反木綿、油すまし、豆腐小僧、カワウソ、アマビエ、夜行さんと、ぞくぞくと仲間達が自分達を襲ってくるのだ。
「この!……お?」
オカリナロープを出して戸田が今にも打たんとしたその時に、笛の音が聞こえた。
それはなんだか懐かしくて、郷愁に溢れていて、音符が耳に入るたびに胸を切なくさせる。
「ご苦労だったな。」
妖怪の塊が割れた先に立っていたのは西洋の格好をした男の子だった。
「誰だお前は!」
「俺は東嶽大帝の息子、魔王子だ!どうだい、仲間たちにやられていく気分は!」
「お前が皆を操っていたのか!元に戻せ!」
「ふん、おことわりだね!お前達もこいつらのようにしてやるぜ!」
魔王子はそう啖呵を切ると笛を吹き始める。
子守唄のようなそれは真綿で包むように優しく彼らを包囲していった。
「ぐうう!!」
蹲り、それでも耐えようとするが、甘い音楽は容赦なく心に入ってゆく。
そして…………。


「ふふふ、さあ立ち上がるんだ。」
魔王子の命令とともに、松岡と野沢と高山は立ち上がった。
「ぐ、ぐ、ぐぅ……。」
「ん?おかしいな。まだ聞き足りないのか?」
まだ命令を聞かない戸田の耳元で大音量を聞かせる。しかし彼はまだ立たなかった。
「言う事の聞かない奴だな!おいお前ら!こいつを殴れ。」
ひょこんひょこんと戸田に近寄ると、松岡は容赦ない蹴りを入れた。無表情で。
「ぐえ!」
ぴょんぴょんと戸田に近寄った野沢は、おもいっきり叩いた。無表情で。
「いぎぃ!!」
とんとんと近寄ってきた高山は、ものすごい勢いで引っ叩いてきた。無表情で。
「あがががが!!」
どんな折檻を食らわせても、戸田は命令に従わなかった。
「ふん、まあいい。こいつ一人どうでもない。いくぞ皆のもの。」
魔王子は一発腹に蹴りをいれ踵を返す。枯れの率いる妖怪軍団もそれに倣った。
「に、兄さん、高山、野沢ぁ……。」
傷だらけの彼の耳に、小さな足音が聞こえた。あれは、父さんの足音だ!戸田はかすかな希望を目に灯した。
「と、父さ……。」
しかし、無常にも父は通り過ぎていった。
「うえっ。」
しかも息子の頭を踏んで。