天狗風
「天狗風」(正式には 天狗風 霊験お初捕物控【二】)は宮部みゆき
の書いた捕物帳。
1994年から1年間新聞連載され、1997年1月に新人物往来社より発売された
ものを文庫化して、2001年9月に講談社庫から発売された。価格は781円+税。
目次 |
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1.あらすじ 2.登場人物 3.●目次● 4.振袖火事 5.解説 |
あらすじ
一陣の風が吹いたとき、嫁入り前の娘が次々と神隠しに・・・。不思議な力をもつお初は、算学の道 場に通う右京之介とともに、忽然と姿を消した娘たちの行方を追うことになった。ところが闇に響く謎の 声や観音様の姿を借りたもののけの翻弄され、調べは難航する。『震える岩』につづく”霊験お初捕物控 ”第二弾。
登場人物
- お初
主人公。17歳。人には見えないものが見えたり、聞こえたりする能力を持つ。勝気な性格で、はっきりと した物言いをする愛らしい顔の少女。 - 古沢右京之介
ひょろりと背が高く、メガネをかけた青年。吟味方余力である父親の許しを得て奉行所の役目をしりぞき 、算学の道へ進んだ。 - 根岸肥前守鎮衛
巷に流れる不思議な話、言い伝えに興味を持っていて、「耳袋」に書き溜めている。お初の能力を信じ、 神隠しの真相を調べてくれないか、と相談を持ちかける。 - 鉄 突然お初の前に現れたかぎしっぽの小さなとら猫。人間の言葉を話すことが出来るが、その言葉はお
初にしか聞こえない。
- 六蔵・およし夫婦
お初の兄と義姉。「まともな娘なら縁談だって来る年頃だ」と、お初が娘らしくしおらしくなることを期 待している。 - あき
神隠しの1人目の被害者で、17歳になる下駄屋の一人娘。半月後には料理屋へ縁付くことが決まっていた。 しかし、真紅の朝焼けが広がる朝、一陣の風とともに忽然と姿を消してしまった。
●目次●
第一章 かどわかし 朝焼けの怪/御番所模様
第二章 消える人々 おあきの足跡/ささやく影/魔風/再び、ささやく影/明けない 夜
第三章 お初と鉄 姉妹屋にて/浅井屋脱出/夢の娘/矢場の男
第四章 武家娘 吹き矢/鉄と御前さま/御前さまと和尚
第五章 対決 しのの涙/桜の森/お初と御前さま
解説 清原康正
振袖火事
江戸時代に江戸の大半を焼失するに至った「明暦の大火」がある。その大火事には諸説あるが、この物
語のベースになっているのは「振袖火事」と呼ばれる伝承である。
美しい寺小姓に恋をした少女おきくは、その小姓の着ていた着物に似た柄の振袖をこしらえてもらい小姓
を思い続けた。しかし、16歳の若さでこの世を去ってしまう。その後振袖は古着屋の手を経て、2人の若い
女性、お花、次におたつの元に渡るが、どちらも振袖を手にした後、亡くなってしまった。
おたつの葬儀の後、3人の娘の家のもので話し合い、結果振袖を本妙寺で供養してもらうことにした。しか
し、和尚が読経しながら振袖を火の中に投げ込んだ瞬間、突如吹いたつむじ風によって振袖が舞い上がっ
て本堂に飛び込み、それが燃え広がって江戸中が大火となったという。
解説
テンポよく話が流れていくので、500ページを超える長編だということを忘れさせるくらい熱中して読めて
しまった。鉄という言葉を話す猫とお初との軽快なやり取りが面白く、鉄という存在がとてもかわいらし
く書かれている。女性の美へのこだわりや、そこから生まれる怖さとが上手く事件と絡んでいた。
By:A